―放課後―
帰りのHRが終わり、クラスの人たちがそれぞれ帰る。そんな中、高町は鷲に声をかけようとした。
「黒沢くん、一緒に―」
帰ろうと言おうとしたが、既に彼の姿はなかった。
「あれ?」
「なのはちゃん?」
そこに高町の友達の二人がやってきた。
「どうしたのよ?」
「えっと、もう黒沢くん帰っちゃったみたい」
「なんですって!?」
バニングスもすぐに彼がわずか数秒で帰るとは思ってなかったので、驚いた。
「早く追うわよ!今ならまだ間に合うわ!」
そう言って、三人は校門へと急いだ。
その頃、鷲はちょうど靴を履き替えたところだった。
『今日はどうする?このまま帰るか?』
[そうだな、特に何もないし、本屋に寄って帰るか]
真紅と話し合いながら帰ろうとしたら、声をかけられた。
「待ちなさい!黒沢鷲!」
声に振り向けば、そこには茶髪のツインテール、紫のロングヘアーに白いヘアバンド、金髪でハーフっぽい、三人の少女がいた。
「・・・・・・」
鷲は気にせず歩き出した。面倒事な気がしたから。
「って、待ちなさいよ!」
しかし、すぐに三人に追いつかれ、行く手を遮られる。
「あんたが黒沢鷲ね」
「・・・人違いだ」
また歩きだそうとしたら、金髪に肩を掴まれた。
「さっき、自己紹介してたじゃない」
「それはドッペルゲンガーだ、俺じゃない」
「そんなわけ無いでしょ!」
どうやら逃れられないようだ、仕方ない。
「なんか用?」
「えっと、一緒に帰らない?」
そこで茶髪が話しかけてきた。何故知らない人間と帰らなければならないのか。それに、紫からは何か違和感がある。
「・・・お前ら、誰?」
「え、えっと、同じクラスになった高町なのはだよ」
「月村すずかだよ」
「アリサ・バニングスよ」
「バーニング?」
「バ・ニ・ン・グ・ス!」
「バングっす?」
「あんたねえ・・・」
どうやらご立腹のようだ。
「あんた、人の名前覚える気あるの!?」
「ない」
「ムカッ」
名前を間違えた挙句、覚える気がないと即答したことに余計に腹を立てる金髪。
「落ち着いて、アリサちゃん」
「そうだよ、黒沢君もふざけてるだけだよ」
茶髪と紫が金髪を止めに入る。
『ダメだぞ、仲良くしないと』
「・・・・・・」
しばらく、真紅とそれを眺めているとやがて、金髪の怒りが収まった。
「コントは終わったのか?」
「誰のせいよ!」
「まあまあ」
また怒り始めた金髪を紫がなだめる。
「えっと、黒沢くんともっとお話したいなあって思って」
「事務所を通してくれ」
「黒沢君は本が好きなの?」
「・・・・・・」
紫は構わず質問をしてきた。スルースキルの持ち主らしい。仕方ないから答える。
「まあ、本を粗末に扱うやつを、拘束して長時間朗読を聞かせ続けてやるくらいには」
「怖いよ、それ!」
「どんな拷問よ!」
「私も好きなんだあ、黒沢君はどんな本を読むの?」
紫はまたしてもスルー。
[こいつやるな]
『シュウのボケをスルーするなんて、すごいな』
[天然なのかそれともわざとなのか、どちらにしてもなかなかやるな。]
『ははははは』
苦笑いで返す真紅。だが、読書好きに関しては好感が持てる。実際、鷲の部屋はほとんど本で埋め尽くされている程だ。なので、普通に会話をすることにした。
「いろいろ」
「へえ、私もいろいろ読むんだあ。結構読んでるの?」
「まあ、時間があれば」
「へえ、じゃあ―」
この時の他二人はというと、
「なんか会話に入っていけないの」
「本の話ばかりだしねえ。アタシも読むけど、たまにしか読まないし・・・」
会話に入れずにいた。
「今度うちに来ない?たくさん本あるよ?」
「・・・・・・」
悩む鷲だが、
「絶版になった本もけっこうあるよ」
「行かせてもらう」
絶版という言葉に惹かれた鷲は即答した。絶版、今では既に売られていない本。こちらの世界に来てからも本を読んでいるが、絶版になった本はやはりそうそう売ってはいないのだ。
「いつの間にかすずかちゃんの家に行くことになってるの!?」
「話進みすぎでしょ!」
急な展開に驚く二人。
「そうだ、このあとなのはちゃんの家のお店に行くんだけど、黒沢君も一緒に来ない?」
ようやく、他二人も加われるような会話をすずかがする。
「そ、そうなの!うちの喫茶店でお昼を食べるんだけど、どうかな?」
「・・・・・・」
「なのはの家の店は海鳴市じゃあ有名なのよ?」
「翠屋って言うんだけど知らない?」
「知らん」
「そ、そっかあ。でもおいしい評判だからきっと黒沢くんも気に入るよ」
「というか、翠屋を知らないなんて人生損してるわよ」
「うん、ご飯も美味しいけど、スイーツもすごく美味しいよね」
「へえ」
「ね、どうかな?」
「行ってやろう」
「なんで上から目線なのよ」
「まあまあ、来てくれるんだから」
そして、四人は翠屋に向かった。
―カラン、カラン
ドアを開け、四人は中に入る。
「いらっしゃいませー、あら、なのはじゃない、おかえり」
中から若い女性が出迎える。姉だろうか。
「ただいま、お母さん」
『お母さん!?』
(母親、だと・・・)
見た目があまりにも若い母親に鷲と真紅は驚いた。
[世の中、不思議なこともあるもんだな]
『そうだな』
「「おじゃましまーす!」」
「アリサちゃんにすずかちゃんもいらっしゃい。あら?そっちの子は・・・」
「黒沢鷲だ」
母親がこちらを見ていたので、とりあえず名前を言った。
「黒沢君っていうのね、あの時はありがとう」
「あ、そうだ、わたしからもありがとう」
笑顔で親子にお礼を言われたがなんのことだかわからない。
「あの時?」
「ええ、四年くらい前にここに来たでしょ?なのはを連れて」
「・・・・・・」
何も覚えていない鷲は戸惑う。鷲は基本的に他人には興味がないので、今まで関わってきたほとんどの人間のことは覚えていない。
「覚えてないかな?」
「全く」
「そう。でもあなたのおかげで家が助かったことは確かなの。だからお礼を言わせて?」
「まあ、受け取っておく」
「あんたって、誰に対してもそうなわけ?」
「そうとは?」
「目上の人に敬語を使わないの?」
「俺だってそいつを敬えれば使うぞ」
「でも、年上だよ?」
「年上だろうが関係ない」
「そ、そうなんだ」
「はあ」
「ははははは」
最早、三人は呆れていた。
「まあ、改めて、なのはの母親の高町桃子です。これからよろしくね?」
改めて挨拶されたので、軽く頭は下げといた。
「じゃあ、あっちのテーブルに座って、メニューが決まったら呼んでちょうだい」
「「「はーい!」」」
三人は返事をしてテーブルに向かう。それに鷲も続いた。
そして、メニューを決めて料理が来るのを待っている間、金髪に話しかけられた。
「それで、ちょっとあんたに聞きたいことがあるの」
「聞いてやる」
「相変わらず上から目線ね」
「で、なんだ」
「あんたが毎回テストで一位を取ってるんでしょう?」
「へえ」
「黒沢くん一位なんだ」
「すごいねえ」
「二人はともかく、なんであんたが驚いてんのよ!」
そう言って、鷲を指差す金髪。
「指を差すな。順位なんか知るか、テスト受けてほとんど授業受けてないんだから」
「つまり、アタシなんて眼中にないってことね」
なにやら被害妄想をしているようだ。
「義務教育で順位を争っても意味ないと思うが?」
「毎回一位の奴に言われたくないわよ!」
「まあまあ、アリサちゃん、抑えて」
「つまり、一位を取れない八つ当たりか。お」
どうやら料理が来たようだ。三人娘はミートスパゲッティを頼み、鷲はボンゴレを頼んでいた。
「む、仕方ないわね」
どうやら、先に食べることにしたらしい。
「「「いただきまーす!」」」
「いただきます」
四人は昼食を食べ始めた。
長くなりそうなので区切りました。