かくことがなく
どうしよう
鷲が封印装置を作り始めてから、二週間が経った。魔力結晶は二日で作ることができたが、ユーに合う封印の術式が見つからなかった。
「ここをこうして、こっちを少し変えて」
『こことここも変えてみたらどうだ?』
鷲と真紅はほとんど部屋に籠りっきりで、部屋の中は術式を書いた紙が散らばっていた。ご飯は部屋まで持ってきてもらい、部屋から出るのは風呂と術式を試す時だけだった。
「これでどうだ」
『うん、これで試してみよう』
そう言って、二人はユーのもとへと向かった。
さっそくユーにペンダント型にした封印装置を付けてもらい反応を見る。
「どうだ?」
『昨日より抑制されてる』
「そうか、ならあとは魔力結晶の密度を増やして、術式を強化すればいいか・・・」
「もう、シュウ君、ユーちゃんの為になるのはわかるけど無理したらダメだよ?」
また考え始める鷲にお茶を持ってきたリア。
「暇だからいいんだ」
「暇って、学校が―ピンポーン―あ、お客さんだ」
言葉の途中でインターホンが鳴ったので、リアは玄関に向かった。
「さて、一息ついたし戻るか」
部屋に戻ろうとした鷲だったが、廊下に出たところで声を掛けられた。
「あ、鷲!」
「鷲くん!」
「こんにちは、鷲君」
そこには金、茶、紫の髪の三人の少女がいた。
「シュウ君のお友達?」
「・・・誰だっけ?」
「「「「ええ!?」」」」
三人娘だけではなくリアまでも驚く。なぜ?
「学校のクラスメイトじゃないの?」
「一回しか行ってないのに覚えてるわけ無いだろ」
「始業式のあと一緒に翠屋に行ったじゃない!」
「そうだよ」
「そこで変なあだ名付けたの!」
(始業式、翠屋、あだ名・・・)
それを聞いて、少し考える鷲。
「ああ、お転婆とお嬢様と一般人Aか」
「「違うの(わよ)!」」
「違うのか?じゃあ、知らん」
「「違わないけど、違うの!」」
「何言ってるんだ?」
「えっと、二人はそのあだ名に納得してないから」
「なるほどね」
お嬢様の言葉に納得。
「ダメだよシュウ君、変なあだ名付けちゃ」
「だって、名前覚えてないし」
「もう、ゴメンね、シュウ君も悪気があるわけじゃないから」
鷲を諌めて、三人に謝るリア。
「あ、いえ」
「えと、えっと」
「気にしないでください」
「立ち話もなんだから上がって?」
「おい」
三人を家に上げようとするリアを鷲は止めた。
「なーに?」
「なぜ上げる?」
「まあまあ」
そう言って、鷲はリアに押し切られた。
「それで、今日はどうしたのかな?」
リビングに招かれた三人はソファに座った。その反対側に鷲とリアも座る。そして、元から座っていたユーが奥に詰めたので必然的に鷲はユーとリアに挟まれて逃げれなくなった。
「えっと、今日は鷲に話があって」
「そうなの?じゃあ、私たちがいたらお邪魔かな」
「いえ!むしろ居てくれた方が助かります」
「で、なに?」
「なにじゃないわよ、どうして学校に来ないのよ」
「つまんないから」
「そんなことないよ、楽しいこともいっぱいあるよ?」
「それはお前が決めることじゃないな」
「うう」
一言で撃沈する一般人A、・・・めんどいからAにしよう。
「でも、さすがに不登校は良くないよ?」
「たまに行ってるから問題ない」
「たまにじゃなくて毎日来なさいよ」
「土日も来いなんて鬼畜だな」
「もー、ああ言えばこう言う!」
「シュウ君、私も三人の意見に賛成だよ」
『私も』
リアだけではなく、ユーまで三人に賛成する。
『私も学校は行って損はないと思うぞ、前だって碌に行けてなかったんだから』
(真紅までもか・・・)
もはや味方はいなかった。今まで真紅は何も言わなかったが、やはり学校に行ったほうがいいと思っていたんだろう。
「(真紅に言われたら仕方ないな・・・)はあ、わかった。行くから、あと三日待て」
「なんで三日なのよ?」
「まあ、やることがあるんだ」
「わかったよ、約束だよ?」
「うん、約束なの」
「仕方ないわね」
三人は深くは聞いてこず、三日後ということで妥協した。
「シュウ君がやっとまともに学校に行ってくれるよユーちゃん」
『長かった』
そして、同居人二人は抱き合ってるし。何がそんなに嬉しいんだか。
「ところで、どうして九浄先輩がこの家にいるんですか?」
話は変わり、お転婆がリアがここにいる理由を聞いてきた。
「リアのこと知ってたのか?」
「知ってるもなにも」
「九浄先輩って」
「すごく有名なの」
「は?」
意外な事実に驚いた鷲はリアを見る。
「ええっ?私、そんな有名じゃないよ」
「だって、テストで常に一位だし」
「四年生で生徒会の仕事を手伝ってるし」
「誰にでも優しいの」
「みんなの憧れよね」
「うん」
「多分、知らない人はいないんじゃないかな?」
「へえ、リアがね」
ニヤニヤと鷲はリアを見る。おそらく、生徒たちは普段の天然な姿を皆知らないのだろう。
「もう!なんなの、シュウ君!」
「別に、で、リアがここにいる理由は一緒に住んでるからだ」
「ああっ、話そらしたー!」
「ここで」
「一緒に」
「住んでる?」
お転婆、お嬢様、Aは言ったことを繰り返す。
「「「ええ!?」」」
三人は同時に声を上げる。
「ちょっと、どういうことよ!」
「そうだよ!」
「なんで一緒に住んでるの!?」
「落ち着け」
大声を出す三人をなだめる鷲。
「一緒に住んでる理由は俺らが親戚同士だからだ」
「親戚?」
「ああ、リアとユーはここに住んでて俺がここに居候してるんだ」
「あれ?鷲くんたちのご両親は?」
「・・・俺とリアも両親は忙しくて家に帰ってこない」
リアはともかく俺の両親は死んでいる。リアの両親は前の世界で生きてるか知らんが。
「え、えっと、そうなの。だから、普段は私たちだけで住んでるんだ」
慌てながらも話を合わせるリア。
「ふーん」
「へえ」
「そうなんだ」
納得する三人。
「でも、意外よね」
「何が?」
「学校一の優等生と学校一の問題児が同じところに住んでるなんて」
「うん」
「でも、小説みたい」
「あはははは」
「・・・・・・」
苦笑いするリアとお茶を啜るユー。
「いろいろあんだよ。ところでいいのか?」
「なにがよ?」
「そろそろ暗くなるぜ?」
鷲がそう言うと三人は外を見る。外は既に薄暗くなっていた。
「うわっ、やばっ」
「大変!」
「はやく帰らないと!」
慌ただしく帰り支度をする三人。
「鷲!三日後、必ず学校来なさいよ!」
「絶対だよ?」
「約束だからねっ」
そう言って、三人は帰っていった。
「はあ、めんどくさ」
なぜ、あんな約束をしてしまったのか。
「もう、そんなこと言わないの。一緒に学校行こうね」
「はいはい」
そう返事をするとリアは、うんと頷いて夕飯の支度を始めた。
―くいくい
袖を引かれる。
「なんだ?」
『鷲が学校に行かなかったのは私のため?』
「・・・そんなんじゃねえよ。学校がつまんないしメンドイからだ」
『そう』
いつものように無表情だが、何故か嬉しそうに見える。
その日の夕飯は、鷲の隣に座ったユーとの距離が心なしか近く感じられた。
次回はやっと学校に行くのか!?そろそろ原作が始まる、・・・かも