放課後、一度家に帰った鷲は、着替えて猫町との待ち合わせ場所のバス停へと向かった。
そこには、猫町とシスコンがいた。
「あ、鷲くん!」
「相変わらずシスコンだな」
「会って一言目にそれか!?」
「違うのか?てっきり猫町が心配だからついてきたと思ったんだが」
「違う!俺も忍の家に用があるんだ!」
「・・・・・・」
「えっと、忍さんはすずかちゃんのお姉さんで、お兄ちゃんの恋人さんなの」
いきなり、知らない名前を出されたので、コイツ何言ってんの?みたいな目でシスコンを見ていたら、猫町が説明してくれた。
「へえ、つまりイチャコラしに行くと」
「ふえ?」
「な、何を言ってるんだ!」
意味がわかってない猫町と、あからさまに動揺するシスコン。
「いや、別に止めないけど、子供がいるところでそれはどうかと思うぞ」
「だから、そんなことはしない!」
「なんだ、イタチも連れてきたのか」
「うん」
「話を聞け!」
「あ、バスが来たぞ」
「聞けー!!」
叫ぶシスコンをおいて、鷲と猫町は先にバスに乗る。その後、慌てて乗り込むシスコンを乗せてバスは走り出した。
「・・・・・・」
「驚いた?ここがすずかちゃんの家だよ」
すずかの家に着いた鷲が見たのは大きな屋敷だった。
「ほんとにお嬢様だったんだな」
「うん、アリサちゃんの家もこれくらいあるよ?」
「へえ」
―ピンポーン
猫町と話しているうちにシスコンがインターホンを鳴らした。
『はい』
「俺だ」
『恭也様ですね、少々お待ちください』
少し待つとドアが開いた。
「ようこそいらっしゃいました、恭也様、なのは様、黒沢様」
出てきたのはメイドだった。
「・・・メイドがいるのか」
「うん、お金持ちってすごいよね」
「はじめまして、黒沢様。私は月村家のメイドのノエルと申します」
猫町と話しているとメイドに挨拶をされた。
「・・・どーも、黒沢鷲だ」
「はい、以後お見知りおきを」
華麗にお辞儀をするメイド。
「どうぞ、中へ」
そして、鷲たちは中へと案内された。
「やっと来たのね」
「いらっしゃい、二人とも。こんにちは、恭也さん」
通された部屋に入ると既にお転婆とお嬢様がお茶を飲んでいた。そして、周りには猫、猫、猫。大量の猫たちがいる。
「・・・猫屋敷か」
「うん、怪我をした猫とか身寄りのない猫とかを家で預かってるの」
「へえ、それはご大層なことで」
「にー」
「ん?」
鷲が扉の前で立っていると一匹の黒い子猫が足元に寄ってきていた。
「なんだ?・・・構って欲しい?」
鷲はしゃがむと猫を撫で始めた。すると、子猫は気持ちよさそうに目を細め、仰向けに寝転がった。
「ん、ここがいいのか?」
「にー」
他の人からはまるで、会話をしているように見える。
「鷲君、猫の言葉がわかるの?」
「何言ってるのよ、わかるわけ―「わかるぞ」・・・へ?」
お転婆の言葉を遮る鷲。
「だから、わかるぞ、言葉。お前、名前は?」
「にー」
「アンタ、馬鹿にしてるの?」
確かに動物の言葉がわかるといっても誰も信じないだろう。
「ハレ」
「え?」
「この猫の名前、ハレだろ?」
子猫を抱き上げて、お嬢様に聞く。
「え?う、うん」
「なっ」
「ふえー」
「・・・・・・」
「すごいよ、鷲くん!なんでわかったの!?」
「だから、言葉がわかるからだって」
抱き上げた猫を撫でると、気持ちよさそうに鳴いてる。癒される。
「じゃ、じゃあ、この子が何を言ってるのかわかる?」
お嬢様は近くにいた三毛猫を抱き上げる。
「にゃー(どうも、ミケですにゃ。かれこれ三年くらいはここでお世話になってますにゃ。ご主人もとっても優しい人で助かってますにゃー)」
「ミケが、お嬢様は優しい奴で助かってるって言ってる」
「すごい」
驚くお嬢様たち。そこに部屋に一人の女性が入ってきた。
「いらっしゃい、みんな」
入ってきたのはお嬢様を大きくした感じの女性だった。女性は鷲に気づくと近づいてきた。
「はじめまして、すずかの姉の月村忍よ。君が黒沢鷲君?」
「・・・・・・ああ」
「君のことはすずかから色々と聞いてるわ」
「何を聞いたか知らないが、良い事だと期待しよう」
「ふふふ、面白い子ね」
「で、令嬢はあのシスコンと恋人同士なのか?」
「令嬢って私のこと?」
「ああ」
「聞いてた通りの子ね。そうよ、恭也は私の恋人よ」
「へえ、大変だな、色々と」
「そうね、でも、楽しいわよ?あなたも恋人を作ってみたら?例えば、すずかなんてどう?」
「お、お姉ちゃん!」
「ははは、冗談よ。ノエル、私は恭也と部屋にいるから」
令嬢とシスコンは部屋を出て行った。
「かしこまりました。皆様、飲み物をお持ちいたしますが、何になさいますか?」
「あ、おまかせします」
「コーヒー、ブラックで」
「かしこまりました、少々お待ちください」
そう言って、ノエルは部屋を出た。
Side-月村忍
部屋を出た忍は恭也と自室へと向かっている。
「あの子、話に聞いてた通りの子ね」
「黒沢鷲のことか?」
「ええ、それに只者じゃないわ」
「ああ、以前鷲と勝負をしたが負けてしまった」
「恭也が?それもすごいわね」
驚いたという顔で恭也を見る忍。
「それも?他に何かあるのか?」
「ええ、さっきの猫の言葉がわかったのもそうだけど」
「聞いてたのか」
「ええ、あれにはびっくりしたわ。さらに驚いたのが、あの子、私たちの正体に感づいてるかもしれない」
「なっ、それは本当か!?」
「最初に挨拶したとき、あの子は私をじっと見つめていたわ」
「見とれていただけじゃないのか?」
「ふふふ、それならそれで光栄なことね。でも、違うわ。あれは何かの違和感を感じている時の目だった」
「・・・もしそれが本当なら」
「ええ、でもそれは彼の行動次第ね」
あの子が自分たちにとって危険な存在でないことを祈る忍であった。
次回、ついにあの子が!?