「まず、ここはどこだ?」
「ここはあなたたちで言うところの天国でしょうか。他にも呼び名はありますよ。世界の果て、理想郷、楽園、始まりと終わりの場所などですね」
『始まりと終わりの場所?』
「ええ、世界はここから始まり、様々な生物が生まれるのです」
「・・・てことは、ここにある本はその生物たちの人生が書かれたものか」
「・・・察しがいいですね。その通りです」
美女は心の底から驚いた顔をしていた。
『どういうことだ?』
真紅は理解できず、首をかしげる。
「さっき言ってたろ、「管理者」って。つまり、ここにある本は管理されているものだ。管理されるということは何かしらの大事な情報が書いてあるということだ」
『そうだな』
「そして、ここは天国であり、始まりの場所でもあり、終わりの場所でもある」
『ああ、そうか。生物はここから生まれて、ここに帰ってくるんだな』
「はい、帰ってきた魂はここでひと時休み、生まれ変わり、新たな本が生まれるのです」
「そしてその生物は本に書かれたままに生きるわけだ」
「はい、それが運命というものです」
「そじゃあ、俺らが死んだのも運命ってやつか」
「はい・・・」
つまらなそうに言う少年に美女は申し訳なさそうに答えた。
『じゃあ、なんで私たちはここであなたと話してるんだ?』
「それは、二人にお願いがあるのです」
『お願い?』
「二人にはある世界へ行ってある存在を退治して欲しいのです」
「ある存在?」
「はい、ワタシはそれを【魔族】と呼んでいます」
『まじん?』
「彼らは人の強い念が実体化したものです。放っておけば世界に悪影響を与えてしまいます」
『それは大変だな』
「はい、なのであなたたちに魔族を退治して欲しいのです」
「・・・なぜ俺たちなんだ?」
「と、いいますと?」
「なぜ、才能のない俺に頼む?いろんな世界があるならもっと強い奴もいたはずだ」
『シュウ・・・』
「これはとある力を持っていないとできないことなのです。そのひとつがあなたの一族の力です」
「ハッ、なら期待はずれだな。俺はその一族の中で一番の出来損ないだ」
鼻で笑い、残念だったなというように少年は吐き捨てた。しかし、その言葉に美女は首を振る。
「いいえ、あなたは出来損ないではありません」
「てめえに何がわかる」
勝手なことをいうな美女を少年は睨みつける。
「あなたのことは知っています。ずっと見ていましたから・・・」
「覗きとはいい趣味持ってんな」
「それは、返す言葉もございません。ですが、遊びや娯楽などで見ていないということだけは信じてください」
「・・・・・・」
少年は黙り、ただ美女を見た。
『それで、シュウが出来損ないじゃないってどういうことなんだ?』
少年の代わりに真紅が問う。
「はい。まず、あなたが使う呪文があなたに合っていないのです」
「・・・・・・」
少年は沈黙を続けて聞くことにした。
『あってないって?』
「あなたは一族に伝わる呪文を使っていましたが、それはあなたと相性が悪いのです」
『だからほとんど術が使えなかった?』
「はい」
『なら違う呪文を使えば術を使えるのか?』
「はい、それもかなり強力なものを」
『その呪文は?』
「それはワタシにはわかりません。あなた自身で見つけていただくことになります」
『それは―』
「無責任なことを言っているとはわかっています。しかし、これはあなたが見つけないと意味がないのです。呪文はそのものの道を表すものですから・・・」
美女は真紅の言葉を遮り、申し訳なさそうに言う。
「わかった、その呪文は自分で見つける」
「はい、申し訳ありません。ただそれはあなたの魂に刻まれた呪文です、見つけるのに時間は掛からないでしょう」
「それはいい。で、「まず」って言うんだからまだあるんだよな」
「はい、それは真紅さんも関係しています」
『私も?』
突然話を振られて首を傾げた。
「それは真紅さんが半透明になっていることも関係していますね」
『それは私が死んだからじゃないのか?』
「そうですね、確かに死んだことに変わりはありません。あなたは命と引き換えに彼の力を封じたのですから」
「失敗したんじゃないのか?」
「いいえ、封印の術は成功しています。そして、真紅さんの術によってあなたの力が少し解放されているはずです」
『そうなのか?』
「はい、試しにこの岩を殴ってみてください」
美女がそう言うとどこからか岩が出てきた。
「ここはなんでもありなのか?」
「ははは、そんな感じです」
「まあいい。じゃあ遠慮なく―」
言って、少年は思いっきり岩を殴った。普通の人間ならば手の骨が砕けるだろう。しかし、今の少年の場合はそうはならなかった。
ドゴンッ!!!
「ん?」
『え?』
少年と真紅は驚きを隠せなかった。なぜなら、岩が粉々に砕けたのだから。
「これは・・・」
「それは、あなたの力が解放されたことによる副作用のようなものです」
いまだに驚いている少年に美女が答えた。
「それと「その力」特有の術も使えるようになっているはずです」
「こいつはいいな」
「これであなたが出来損ないではないとわかっていただけましたか?」
「全然」
「即答ですか!?」
『あははは』
即答する少年に驚く美女と、苦笑いの真紅。
「これで、その「魔族」とやらを倒せるのか?」
「はい」
「・・・・・・なら、試しにやってやる」
少年はなにかを考えた後答えた。
「本当ですか!?」
『いいのか?』
「ああ。どうせすることもないしな」
『シュウがそう言うなら』
心配そうに少年を見つめる真紅。
「で、今行くのか?」
「はい。その前にこれを渡しておきます」
美女は少年に蒼いピンポン玉ほどの大きさの玉を手渡す。
「これは?」
「それはデバイスといって魔法を使うための道具です」
「普段は違う魔法を使えと?」
「察しが良くて助かります。その世界では二人がいた世界の魔法とは全く別物です。色々と調整するのでなるべくこちらの魔法を使ってください」
「なるべくってならバレてもいいんだな?」
「そこはあなたにお任せします」
「わかった」
「ではあなたたちを異世界に送ります」
美女はそう言うと、手を合わせた。すると二人の足元に魔法陣が描かれ、二人の姿が消えていく。
「それではよろしくお願いします」
「まあ、適当にやるさ」
「ははは、お願いします。それとあなたの住居と生活費は用意してありますので」
「太っ腹だな」
「あと、協力者と訳ありの方が向こうにいるのでお願いしますね」
「おい、待てコラ」
虫のいい話はなかったようである。
「名前も変えときましたから安心してください」
「・・・・・・」
「詳しくはデバイスに聞いてください。あなたたちの次の人生が幸せになることを願っています」
美女がそう言うと二人は完全に消えてしまった。
結構長くなってグダグダになってしまった気がする。やっと次はなのはの世界に入ります。まだ頑張ります。