辛かった・・・
今、鷲は学校の屋上で寝転がって、空を見ながら真紅と話していた。
『あの子はどうして攻撃されたんだろうな』
「さあ。パツキンが母さんって呟いてたから、虐待でも受けてるんじゃね?」
屋上には誰もいないので、鷲は普通に真紅と話す。
『それは問題だぞ』
「まあな。服があって見づらかったが、体中に傷跡もあったしな。結構ひどい虐待かもな」
鷲がパツキンを抱えたとき、鷲は彼女の服の下が傷だらけであるのを見てしまった。あのくらいの歳で体中に傷をつける理由はほとんどない。考えられるのは虐待だったが、先日のことでそうだと確信した。
『・・・どうにかできないかな』
真紅は寂しそうな顔で呟く。
「どうにかしたいのか?」
『ああ、子供が傷つくのは見たくない』
「・・・・・・」
真紅は空を見上げる。おそらく、昔を思い出しているのだろう。鷲が一族に認められず、蔑まされ、いじめや虐待を受けていたときのことを。
その時のこととパツキンの虐待が重なっているのだろう。
「・・・あの時は真紅に何度も手当してもらったな」
『・・・ああ、いくら手当してもキリがなかった。シュウは一人で無理して傷つくから』
「おいおい、俺だって虐待受けてたぞ」
『それよりもシュウが自分で作る傷の方が多かった』
「あの時は必死だった、後先考える余裕がなかった」
真紅にジト目で見られた鷲は棒読みで言った。
『まあ、いいけどな。それよりもあの子のことだ』
「放置に一票」
『・・・・・・』
「大丈夫だ、猫町が何とかする」
『人任せは良くないぞ』
「・・・・・・」
『・・・シュウ』
「はあ、わかった、やれることはやる」
『シュウ・・・、ありがとう』
「気に―ガチャ―」
鷲が気にするなと真紅に言おうとしたとき、屋上の扉が開いた。そして、女子の話し声も聞こえてきた。
「なのはちゃんっ、よかったー、元気で」
見てみると手を握り合ったすずかと猫町、それと腕を組んだお転婆の姿があった。
「うん、ありがとう、すずかちゃん。あ、アリサちゃんもゴメンね、心配かけて」
「まあ、よかったわ、元気で」
そっけないふりをしているお転婆を見て、二人は笑いあった。
「お前ら百合の関係だったのか」
「「「え?」」」
鷲が声をかけると驚いた顔をして三人が振り向いた。
「よっと」
鷲は今いる場所から降りて三人に近づいた。
「あ、鷲くん。百合って?」
「ち、違うよっ、私は百合じゃないよ!」
意味がわからない猫町と、必死に否定するすずか。
「アンタ、今までどこにいたのよ」
そんなすずかをスルーして話をするお転婆。
「そこで寝てた」
鷲もすずかの必死の抗議を無視して、さっきまでいたところを指差す。
「アンタ、また授業サボる気?」
「出たってつまんねえ」
「アンタねえ」
はあと溜息をつくお転婆。最早、何を言っても無駄だと諦めている。
「うう」
「すずか、百合じゃないってわかったから、涙目でこっちを見るのはやめろ」
すずかをスルーして話していると、彼女は涙目で鷲に訴えかけていた。
「だ、大丈夫だよすずかちゃん」
とすずかを慰める猫町。
「あ、いたんだ猫町」
「いたよ!?最初っから!」
「・・・ほら、そろそろチャイムなるぞ」
「無視しないでよ!」
「そうね、行くわよ」ガシッ
「うん、行こう」ガシッ
「・・・なんでお前らは俺の両腕を掴んでるんだ?」
鷲がチャイムを理由に三人を教室に戻そうとしたらお転婆とすずかに両腕をホールドされた。
「決まってるじゃない」
「鷲君も一緒に授業に受けるんだよ?」
「・・・・・・」
「ほら、鷲くん、早く行こ?」
前にいる猫町が笑顔で言ってくる。・・・・・・うん、後で何か報復しよう。
鷲は仕方ないと溜息をついて三人に連れて行かれた。
「そっか、また行かないといけないんだ」
「うん」
鷲が教室に連行されて授業が終わり、休み時間。三人娘と鷲(強制的に連れてこられた)は猫町の席に集まっていた。
「大変だね」
「うん」
「変態だな」
「うん―って、違うの!わたしは変態じゃないの!」
「はいはい」
空をスカートで飛ぶやつは変態に入らないのだろうか。
「放課後は?少しくらいなら一緒に遊べる?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、ウチに来る?新しいゲームもあるし・・・」
「本当?」
「あ、そういえばね、夕べ怪我してる犬を拾ったの」
「犬?」
「うん、すごい大型で、毛並みがオレンジ色で、おでこにね、赤い宝石が付いてるの」
「あ」
「・・・・・・」
猫町と鷲はその犬に心当たりがあった。
放課後、さっそくお転婆の屋敷に行った四人は件の犬を見に来た。
《やっぱり、アルフさん》
《アンタらか・・・》
猫町はオレンジ狼と念話で話し出す。
《そのケガ、どうしたんですか?それに、フェイトちゃんは・・・》
それを聞くとオレンジ狼は後ろを向いてしまった。
「あらららら、元気なくなっちゃった。どうした、大丈夫?」
「傷が痛むのかも」
心配そうに見るお転婆とすずか。そして、三人は立ち上がる。
「そっとしておいてあげようか」
「うん」
立ち上がるとすずかが腕に抱えていたイタチが飛び降りた。
「あ」
「ユーノ、コラ危ないぞ」
「大丈夫だよ、ユーノくんは」
そういって微笑む猫町。
「じゃ、俺も残るわ」
「・・・なんでよ」
不満そうな顔で鷲を見るお転婆。あの誘拐事件以来、お転婆は鷲の傍に居たがるようになった。特に話すわけでもなく、ただいるだけ。理由を聞けば、そっぽを向いて、
「い、いいじゃない、別に」
という。
「話し、聞いとく」
「そっか、鷲君、動物の言葉がわかるもんね」
「・・・それなら、仕方ないわね。いい?ちゃんと聞いておきなさいよ」
「はいはい」
そして、鷲とイタチを残して三人は屋敷の中に入っていった。
「で、何があった」
さっそく、話を聞く鷲。すると、オレンジ狼は念話で返してきた。
《アンタらがここにいるってことは、管理局の連中も見てるんだろうね》
「うん」
『時空管理局、クロノ・ハラオウンだ。どうも事情が深そうだ、正直に話してくれれば悪いようにはしない』
「パツキンの虐待に耐え切れなくなって、母親に手を出して返り討ちか?」
《っ、どうしてそれをっ?》
驚いてこちらに振り向くオレンジ狼。
「まあ、それはいいから、とりあえず話せ」
「・・・話すよ、全部。だけど、約束して。フェイトを助けるって、あの子は何も悪くないんだよ」
『ああ、約束する』
「フェイトの母親、プレシア・テスタロッサがすべての始まりなんだ・・・」
そして、オレンジ狼は話し始めた。
話を聞いた鷲たちは今後のことについて話し合った。
中二曰く、彼らはプレシア・テスタロッサが管理局を攻撃した罪で捕縛するそうだ。
《それで、猫町はどうするんだ?》
《・・・わたしは、わたしはフェイトちゃんを助けたいっ。アルフさんの想いと、それからわたしの意思。フェイトちゃんの悲しい顔は、わたしもなんだか悲しいの。だから助けたいの、優しい子だから・・・。それに友達になりたいって伝えた、その返事もまだ聞いてないしね》
『わかった、こちらとしても君の魔力を使わせてもらえるのはありがたい。フェイト・テスタロッサについてはなのはに任せる。それでいいか?』
中二の問いかけに頷くオレンジ狼。
『君はどうする?黒沢鷲』
「・・・・・・」
《鷲くんも、手伝ってくれる?》
《・・・いや、俺は俺で動く。だから、そっちは任せた》
《鷲くん・・・》
『わかった。だが、くれぐれも犯罪まがいなことはしないでくれよ?』
《・・・努力する》
『おい、なんだ、今の間はっ』
《聞こえねえな》
鷲はそれっきり、通信を切った。
「さてと、そろそろエピローグが近いな」
空を見上げながら、そんなことを呟く鷲だった。
最後まで読んでくれてありがとうございます。誤字脱字ありましたら、指摘お願いします。次はいつになるかわかりませんが、なるべく早く投稿したいです。