自由なチート暇人   作:sakuya-syu

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第42話

「よっこらせ」

 鷲は別室にパツキンを運んだあと、ベッドに座らせた。

「さて、どうするか」

 目に生気が宿っていないパツキンをどうするか考える。

[なんかないか?]

『んー、難しいな。目の前で母親に拒絶された子にかける言葉は、私にはわからない』

 良い案がないか真紅に聞いてみるが、彼女もかける言葉が見当たらないらしい。

『こういうのは時間が解決してくれると思うけど、それじゃあダメだよな』

[本人の意思で立ち上がらないと、今後のトラウマになりかねないな]

『ああ』

 再びどうしようかと考えていると部屋の扉が開いた。

「どうだい、フェイトの様子は」

 入ってきたのはオレンジ狼(人型)だった。様子を尋ねる彼女に、鷲は肩を竦めた。

「あいつらは?」

「なのはたちなら時の庭園に行ったよ、アイツを止めるために・・・」

「そうか。お前は?」

「アタシはフェイトが心配だから・・・」

 オレンジ狼はパツキンの前に跪き、手を握る。

「お前はいい使い魔だな」

「そ、そうかい?」

 鷲に褒められて照れるオレンジ狼。

「オレンジ狼、悪いがあいつらが心配だから、加勢してやってくれないか?」

「え?」

「あいつらだけじゃ心許ない」

「わ、わかったよ。アタシも心配だし、行ってくる」

 オレンジ狼はパツキンの手をギュッと握った。

「フェイト、行ってくるね」

 彼女はそう言うと、部屋を駆け出して出て行った。

 残された鷲はパツキンの前に立つ。

「・・・パツキン、聞こえるか?」

 鷲は未だ動かないパツキンに話しかけた。

「聞こえるならこっちを見ろ」

 彼女は鷲の言葉に僅かに顔を向ける。

「お前の母親、操られてると言ったら信じるか?」

「・・・・・・」

 その言葉に目を見開くパツキン。

「俺ならお前の母親を開放することもできる」

「・・・・・・」

「だが、開放しても元の母親に戻るとは限らない」

「・・・・・・」

「お前はあのポッドに入った奴の代わりとして生まれた。お前の母親が操られてなくてもお前をどう思うかは知らん」

 パツキン母が操られて、今の状態になっていることはわかる。ただ、元に戻ったあと彼女がパツキンをどう扱うかは彼女次第だ。

「俺は俺の事情もあるからどちらにしろ、あいつを倒してお前の母親を元に戻すことになる。お前はどうする?」

 鷲はパツキンの目を見る。その目には光が宿ってはいないが、鷲を映している。

「それでも母親を助けに行くか?」

「わ、私は・・・」

 やっと声を出すパツキン。だが、その目にはまだ迷いがあった。

「お前は誰だ?」

「・・・・・・」

 鷲の問いかけに答えることができないパツキン。

「お前は元に戻った母親に拒絶されても生きていけるか?」

「・・・・・・」

 答えが出ないパツキンを見て溜息をつく鷲。

「たとえ、拒絶されてもお前には使い魔や猫町たちがいるだろ?よかったな一人じゃなくて」

「一人じゃ、ない?」

「ああ、お前は一人じゃない。お前がクローンだとしても、お前だけの居場所はちゃんとある、まずはそこから始めろ」

「っ」

 パツキンの目から涙が零れる。

「・・・けたい」

 しばらく泣いた後、パツキンは小さな声で呟いた。

「助けたいっ、母さんを、元の優しい母さんに、戻してあげたいっ」

 彼女は泣きながら言った。

「たとえ拒絶されても、私は、母さんの娘だからっ」

「・・・もう一度聞く。お前は誰だ?」

「私は、・・・私はフェイト・テスタロッサ!」

 彼女の言葉に鷲はニヤリと笑った。

「なら行くぞ、あいつらも待ってる」

「うんっ」

 パツキンは目をゴシゴシと腕で拭って、立ち上がる。

「バルディッシュ!」

<セットアップ>

 パツキンはバリアジャケットを装着する。

「シュー」

 扉の前で立ち止まったパツキンが声をかけてきた。

「・・・シューも、私の、居場所に、なってくれる?」

「・・・・・・ああ」

 鷲の短い返事に顔を輝かせるパツキン。

「行こう、シュー!」

 二人は時の庭園へと向かった。

 

 

Side-フェイト・テスタロッサ

 

 二人で部屋を出たあと、シューは寄るところがあるからとどこかへ行ってしまった。なので、時の庭園にはフェイト一人で来ていた。

 しばらく飛んでいると、広いドーム状の空間に出た。そこではアルフや白い子と金髪の男の子が機械兵相手に戦っていた。

 そして、金髪の子がバインドで抑えていた機械兵が、バインドを破り白い子に迫った。

「(危ないっ)」

<サンダーレイジ>

 フェイトの雷の魔法が機械兵に直撃する。

「あっ」

 白い子もこちらに気づいた。

<ゲットセット>

「サンダーレイジ!」

 再び雷が当たり、機械兵が爆発していく。

「フェイト!?」

 それに気づいたアルフがフェイトを見上げる。そして、フェイトは白い子の元に降りてきた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 見つめ合う二人だが、次の瞬間、壁が壊されて巨大な機械兵が現れた。

「大型だ、バリアが強い」

「うん、それにあの背中の」

 白い子が言った瞬間背中にあったキャノン砲に魔力が溜められていく。

「だけど、二人でなら」

 フェイトの言葉に白い子は顔を輝かせる。

「うんっ、うん、うん」

 嬉しさのあまり何度も頷く白い子。

「行くよ、バルディッシュ」

<ゲットセット>

「こっちもだよ、レイジングハート!」

<スタンバイ、レディ>

 それぞれのデバイスが形を変える。

「サンダーバスター!!」

「ディヴァインバスター!!」

 二人の砲撃が機械兵のバリアに当たる。

 

「「せーの!」」

 

 二人の掛け声とともに魔力が一気に膨れ上がる。

 

―ドオオォォオン!

 

 そして機械兵ごと城の壁を破壊した。

「フェイトちゃん!」

「・・・・・・」

「フェイトっ、フェイトっ」

 そこに泣きながらアルフが駆け寄ってくる。

「フェイト!」ガシッ

 アルフはそのままフェイトに抱きついた。

「アルフ、心配かけてごめんね。ちゃんと自分で終わらせて、それからはじめるよ、本当の私を」

 そして、フェイト、アルフ、白い子、金髪の子は移動した。

 

 

 途中で二手に分かれて、白い子と金髪の子は動力炉に、フェイトとアルフは母であるプレシア・テスタロッサの元に向かった。

 プレシアのもとに着くと、そこには管理局の執務官が彼女に叫んでいた。

「こんなはずじゃない現実から、逃げるか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ!だけど、自分の勝手な悲しみに無関係な人間まで巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしない!」

「ゴホッ、ゴホゴホ」

 その時、プレシアが咳き込んだ。

「母さんっ」

 フェイトは咳き込む彼女に駆け寄った。

「何をしに来たの?」

 そういうプレシアの口からは血が垂れていた。

「・・・・・・」

 フェイトもプレシアの言葉に立ち止まる。

「消えなさい、もうあなたに用はないわ」

「あなたに言いたいことがあって来ました」

「・・・・・・」

「私は、・・・私はアリシア・テスタロッサじゃありません。あなたが作ったただの人形なのかもしれません」

「・・・・・・」

 フェイトの言葉をプレシアは黙って聞いている。

「だけど、私は、・・・フェイト・テスタロッサはあなたに生み出してもらって、育ててもらった、あなたの娘です!」

「・・・フフフッ、アハハハ、アハハハハハッ、だから何?今更あなたを娘と思えというの」

「あなたが、それを望むなら」

 フェイトは意志の篭った目でプレシアを見る。

「それを望むなら、私は世界中の誰からも、どんな出来事からもあなたを守る」

「・・・・・・」

「私があなたの娘だからじゃない。あなたが、私の母さんだから!」

 そう言って、フェイトは手を伸ばす。

「・・・くだらないわ」

「えっ」

 プレシアの言葉に涙を浮かべるフェイト。そしてプレシアはフッと笑うと魔法陣を展開させた。

「まずい!」

 その様子を見ていた執務官が声を上げる。時の庭園が崩壊し始めたのだ。

「フェイト・テスタロッサっ」

 

―ドオオォォオオン!

 

 執務官がフェイトに声をかけた瞬間、壁が壊されて一人の少年が現れた。

「今はそんなこと言っても無駄だぜ、フェイト・テスタロッサ」

 

Side out

 

 

「今はそんなこと言っても無駄だぜ、フェイト・テスタロッサ」

 壁を蹴り壊し、その場に現れたのは鷲だった。

「君はっ」

 鷲の登場に驚く中二だったがそれを無視して、鷲はテスタロッサ母に近づく。

「さあ、鬼退治の時間だ」

「・・・あなたは」

「つっても、ここじゃなんだから、場所を移すぜ」

 鷲は一瞬でプレシアとの距離を詰めると、服を掴んでそのままポッドごと虚数空間に落ちていった。

「っ、シュー!」

「心配すんな、お前の母親、元に戻してやるよ」

 そして、鷲とテスタロッサ母はポッドごと虚数空間に消えていった。

「シューーー!!」

 テスタロッサが手を伸ばすが、既に彼らの姿はなかった。

 

 

「さて、やるか」

「・・・あなた正気なの?」

 自分ごと虚数空間に落ちた鷲に目を細めるテスタロッサ母。

「んなことはいいんだよ。それより、とっとと出てこいよ、魔族」

「・・・やはり気づいていたのね」

 プレシアの体から黒い霧が吹き出し、人の形をとる。テスタロッサ母は魔族が出たあとその場に倒れ込んだ。

「・・・子供をなくした憑依型の魔族か」

「そうよ」

「なるほど、それで同じく子供をなくしたそいつに取り付いたのか」

「ええ、同じ苦しみを持ったものに取り付けば強力な力を得られるの」

「アルハザードに行くのも嘘なんだろ?」

「フフフッ、あなたって頭の回転が早いのね。そうよ、力を蓄えたらこの人間を虚数空間に捨てて自由になるつもりだったわ」

「・・・そうかい」

 鷲は魔族の発言に怒りを隠せないでいた。力を蓄えるためにテスタロッサ親子を利用して、テスタロッサを泣かせていたことが許せなかった。

 鷲は親に拒絶される苦しみを知っているから、今回のことに腹を立てていた。

「一応聞いてやる、言い残すことは?」

「その口ぶりだと、私を倒せると言ってるのかしら?」

「・・・・・」

 鷲は無言で魔族に飛び掛かった。

「っ、早い!」

「オラアアア!」

 一瞬で距離を詰めて殴りかかる。

「ぐっ」

 魔族は鷲の拳をなんとかガードするがそのまま飛ばされる。

「我理を紡ぎて、雷火を撃つ」

 黒い雷の球体が魔族に撃たれる。

「がはっ。貴様、やはり、管理者の使いか!」

 忌々しげに鷲を睨む魔族。

「口調が変わってるぜ」

「ちっ」

 魔族は周りにたくさんの魔力弾を生成した。

「死ねっ」

「我理を紡ぎて、神速を尊ぶ」

 鷲は加速の呪文を唱えて、魔力弾をすべて躱していく。

「なっ」

 魔力弾を躱していく鷲を見て驚く魔族。

「我理を紡ぎて」

「くっ」

 鷲が呪文を唱えたので防御体制に入る魔族。

「―なんてな」

 しかし、鷲は魔術を使わずにそのまま近づいて、思いっきり蹴り飛ばした。

「があああああ!」

 虚数空間の中、飛んでいく魔族。鷲はそれを追いかける。

「ぐうっ」

 うめき声を上げている魔族のもとに鷲が立った。

「・・・これで終わりだ。我理を紡ぎて、咎人を裂く」

 鷲は魔力刃で魔族を切り裂いた。

「がっ、あああ」

 魔族はそのまま消えていった。

「・・・さて、戻るか」

 鷲はテスタロッサ母とポッドのところに戻った。

 

 

「おい、起きろ」

 鷲はテスタロッサ母を起こそうと頬をペチペチと叩く。

「う、うう」

 ようやく目を覚ましたテスタロッサ母をよく見ると、何故か若返っていた。おそらく、魔族が奪っていた生命力が戻ってきたためだろう。

「起きたか」

「あ、あなたは?」

「そんなことはどうでもいい、早くここから出るぞ」

「ここから?」

 あたりを見渡すテスタロッサ母。周りには鷲とポッド以外何もない。

「ここって、虚数空間?」

「らしいな」

「・・・そう、なら脱出できないわね」

 テスタロッサ母は諦めて目を瞑る。

「随分、諦めがいいんだな」

「このまま死ぬのも悪くないわ。私がフェイトにしてきたことを考えれば」

「覚えてんのか?」

「ええ、全てではないけど微かに覚えてるわ」

「・・・そうか」

「心残りがあるとすれば、あの子に謝れないことかしらね」

「・・・・・・」

 心底残念だという風に言うテスタロッサ母を鷲はただ見ていた。

「ごめんなさいね、あなたまで巻き込んで」

「・・・勝手に諦めんなよ」

「え?」

 鷲の言葉に何を言っているのかわからないという顔をするテスタロッサ母。

「いいから出るぞ」

 鷲はそう言うとポッドから少女を出した。

「んー、さすがにこのままはまずいか」

 鷲は少女に上着を着せて、抱えた。

「おい、俺に掴まれ」

 鷲の行動に呆然とするテスタロッサ母に声をかけた。

「早くしろ、テスタロッサに謝るんだろ?」

「できるの?」

「ああ、それにこいつの墓も立ててやれよ」

「・・・・・・」

 鷲は抱えている少女を見る。その子はまるで眠っているだけのようにも見える。

「・・・わかったわ。でも、どうやって?」

「足場があればなんとかなる」

「足場って、こんなところにそんなもの」

 辺りを見渡すがそれらしきものは見当たらない。

「あるだろ?これが」

 鷲が足を乗せたのは先程まで少女が入っていたポッドだった。

「・・・まさかそれで?」

「そのまさかだ、つべこべ言わずに早くしろ」

 テスタロッサ母は納得できなかったが、言われたとおり鷲にしがみついた。

「よし、じゃ、行くぞ」

 鷲はそのままポッドに乗ると上へと飛んだ。

 

 




読んでくれてありがとうございます。誤字脱字ありましたら指摘お願いします。
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