第46話
―夏の街中―
日が暮れて人々が学校やら会社から帰宅する時間も過ぎた頃、一人の車椅子に乗った少女がバスに揺られていた。周りには誰もおらず、ショートカットの茶髪の少女は膝の上に鎖が巻かれた本を乗せて、本を読みながら目的地に着くのを待っていた。
目的に着くと親切なバスの運転手が少女をバスから降ろしてくれた。少女は運転手にお礼を言って、家に向かう。
途中、信号で待っている時に携帯電話に留守電が入った。相手は病院の担当医の石田という先生だった。
留守電を聞いた少女は信号が青になったのを確認してから車椅子を前へと動かす。横断歩道の半分より少し手前あたりに来たところで、トラックが蛇行して走ってくるのに気づいた。その運転手は眠っているのか全く少女に気づいていない。
「っ」
「!」
運転手も直前で少女に気づいたが、既に急ブレーキをしても間に合わない距離だった。
―キイィィイッ!
少女は轢かれると思い目を瞑った。しかし、いつまでたっても痛みは来ない。恐る恐る目を開けてみると、
「っ」
そこは空の上だった。
白く光る三角の魔法陣が少女と車椅子を空へと浮かせていた。戸惑いながら辺りを見渡すと上から紫に輝く、禍々しい光を放つ鎖に巻かれた本が降りてきた。本は気味悪くも脈を打っている。
すると、本に巻きついていた鎖に日々が入り砕け、本が開かれる。少女は驚きと恐怖に目を見開く。
<封印を解除します>
そんな声が本から聞こえた。そして、本は閉じられて少女に近づいてくる。
<起動>
本がそう言うと光が放たれた。
―十二月―
「ふああ~」
大きな欠伸をして道を歩く、白い制服を着た少年。その少年のとなりを歩く同じく白い制服を着た青髪の少女が声をかける。
「もう、また夜更かししたの?最近多いから、メッだよシュウ君」
「リア、俺は朝に弱いんだ。だから今からでも帰って寝たいんだが」
鷲は青紙の少女―リア―に、そんな軽口をたたいて踵を返そうとする。
「もう、めっ」
リアは両手を腰に当てて頬を膨らます。それを見て溜息をつき、仕方なく一緒に登校することにする鷲。
それを見たリアも満足そうに歩く。
学校の廊下でリアと別れ、教室に入る鷲。自分の席に着き、早速寝ようとする鷲に声がかけられた。
「アンタ、来て早々寝るとか、どれだけ寝れば気が済むのよ」
「おはよう、鷲君」
鷲の席に来たのは活発な印象を持った金髪の少女と、大人し目の印象を持った紫の髪の少女だった。
「よ、すずか」
金髪の少女には挨拶をされなかったのですずかにだけ挨拶をした。
「アタシを無視するなんていい度胸じゃないっ」
「お前には挨拶されなかったからな」
「うっ」
鷲の反論に言葉が詰まる金髪の少女。
「まあまあ、あれはアリサちゃんなりの挨拶なんだよ」
「ちょっと、何言ってんのよすずかっ」
「なら仕方ないな」
「スルーするな!」
手を振り上げて鷲を叩こうとするアリサだが、それは鷲に止められた。
「アリサ、お前もお嬢様なんだからもっとお淑やかになれよ」
「なっ/////」
「・・・いいなあ」ボソッ
手を握られ、鷲に顔を近づけられて顔を赤くするアリサ。すずかはそれを羨ましそうに見ていた。ちなみに、鷲がアリサを猫町とすずかの前で名前で呼んだら、
「わたし、まだ苗字すら呼ばれてないのに・・・」
「むう、私だけだったのに・・・」
何やら呟いていた。猫町はその後、名前を呼んでと言ってきたが鷲は軽くあしらった。
「おはようっ」
そこで教室に入ってきたのは、その猫町だった。猫町は鞄を自分の席に置くとすぐにこちらに来た。
鷲はまた眠れないなと思いながら、ホームルームまで猫町をからかうことにした。
「鷲君、起きて」ユサユサ
誰かが眠っている鷲の肩を揺らしている。
「鷲くん、起きてってば」
違う奴の声もする。そして、周りに何人かの気配、五人?
「いい加減、起きなさいよ!」ゴンッ
「―っ」
誰かに頭を殴られた、グーで。仕方なく顔を上げると拳を抑えて、涙目になっているアリサがいた。
「新手のコントか?」
「そんなわけないでしょ!」
「で、なんかようか?」
ひたすらマイペースな鷲に苦笑いしながら、一人が声を出す。
「えっと、シュー」
「ん」
呼ばれたので顔を向けるとそこには二人の金髪の少女がいた。顔立ちも似ていて、見るからに双子にしか見えない。
「・・・なんだテスタロッサか」
あっさりとした反応に呆然とする五人。
「えっと、鷲君?その反応はないんじゃないかな?」
すずかが笑顔のまま顔をヒクつかせながら言う。
「・・・・・・グスッ」
そして、テスタロッサは鷲のそっけない反応に泣いてしまった。
「なに泣かしてんのよ!」
アリサはテスタロッサを泣かせた鷲を責める。
「鷲くん、フェイトちゃん、鷲くんに会えるの楽しみにしてたんだよ?」
猫町も鷲に詰め寄る。
「はあ、・・・テスタロッサ」
「グスッ」
テスタロッサは泣きながらも鷲を見た。
「悪かった」
「グスッ、うん」
テスタロッサはコクりと頷くと、鷲の横に来た。
―ギュッ
そして、そのまま鷲に抱きついた。
「「「「「なっ!?」」」」」
テスタロッサの行動に猫町たちだけではなく、教室にいたクラスメイトも驚いた。
「・・・で、なんかよう?」
鷲はテスタロッサの頭をポンポンと叩くと話を続けた。
「「「「「そのままつづけるの(かよ)!?」」」」」
その場にいた全員がつっこんだ。
「うるさいぞお前ら。で、なんのようだ?」
「え、ええっと、フェイトちゃんとアリシアちゃんが鷲くんと話したいって」
それでもブレない鷲に猫町が説明する。
「誰それ?」
「私だよ!シュー、良くも私の妹を泣かしてくれたね!」
横から出てきたのはテスタロッサと似た顔立ちで金髪の少女だった。ただ、身長はテスタロッサより低いし、見た目や雰囲気も子供っぽい。
「・・・ここは幼稚園じゃないぞ」
「同い年だよ!それにフェイトのお姉ちゃんなんだよ!」
「背伸びしたい年頃なんだな」
「ホントだってば!」
「・・・冗談はさておき、お前とは初対面のはずだが?」
「ちょっとー!」
なぜ、初対面の相手に名前を呼ばれているんだと思う鷲。
「ビデオレターで会ったよ?」
「それは会ったとは言わない、それに俺はお前を知らん」
鷲は一度だけビデオレターに出たことがあったが、それ以降は出たことはない。加えて、テスタロッサから送られてきたビデオレターも見ていない。
「ビデオレター見てないの?」
「全く」
テスタロッサ姉?が猫町たちを見るが、彼女は苦笑いするだけだった。
「む~、じゃあ、はじめまして、アリシア・テスタロッサです」
むくれながらも自己紹介をする自称テスタロッサ姉。
「黒沢鷲だ。で、テスタロッサ、本当にお前の姉なのか?」
鷲は未だ抱きついているテスタロッサに聞いた。
「うん、私の姉さんだよ」
すっかり機嫌を取り戻したテスタロッサは満足した顔で鷲から離れた。
「・・・そうか」
「ふふんっ」
鷲がテスタロッサ姉(以降テス姉)に目を向けると誇らしげに胸を張っていた。
「で、なんでテスタロッサがいるんだ?」
「なんでって・・・、はあ、アンタ、寝てたもんね」
アリサが呆れた目で鷲を見てくる。
「今日転校してきたんだよ」
アリサの代わりにすずかが説明してくれた。
「うん、これからよろしくね?」
「よろしく!」
「・・・・・・はぁ」
騒がしくなりそうだなと思い、溜息をつく鷲だった。
―昼休み―
屋上に連れてこられると(今日は五人に)、そこには既にリアの姿があった。
「お~い、みんな~」
六人はリアが呼んでいるところに行った。
「はじめまして、九浄リアです」
「ふぇ、フェイト・テスタロッサですっ」
「アリシア・テスタロッサです!」
「よろしくね~」
自己紹介をするリアとテスタロッサ姉妹。勢いよくお辞儀するテスタロッサと元気よく挨拶するテス姉、双子(クローンだけど)でも性格はかなり違うようだ。
そんなこんなで、話題はテスタロッサ姉妹のことが主で昼を食べた。
ちなみに鷲とリアの弁当を見たテスタロッサ姉妹が驚いて、それを鷲が作ったと知るとさらに驚いていた。
劇場版とアニメ版を混ぜていきたいと思います。後、アリシアも魔法が使える設定になります。