放課後、すずかとアリサと途中で別れ、鷲、リア、猫町、テスタロッサ姉妹は帰路についていた。
季節は既に冬に入っているので、日が暮れるのも早くなっている。夕暮れの道を猫町とテスタロッサは前を、その後ろにリアとテス姉、その後に鷲という順番で歩いている。それぞれ何やら話していて、鷲も真紅と話していた。
『まさか、あの時の子たちが転校してくるなんてな』
「(まあ、予想は出来たけどな)」
『でも名前は覚えてないんだろう?』
「(当たり前だ)」
いくら自分が生き返らせたからといって、他人に興味がないことに変わらない鷲だった。
『でも、よかったじゃないか。この中にあの子もいれて』
「(・・・そうだな)」
何気なく前にいる四人を見る。猫町とテスタロッサは互いに笑い合い、テス姉もリアに何かを楽しそうに話している。そんな当たり前のことが、鷲には眩しくも見えた。
『・・・大丈夫だ、シュウには私がついてる。何があっても私はお前のそばにいるよ』
前の四人を眩しげに見る鷲に、真紅は笑顔で言った。
「(・・・それはプロポーズか?)」
『バ、バカッ、何言ってるんだよっ。わ、私は、シュウが羨ましそうに見てるから言っただけでっ。だ、だいたい、ぷ、プロポーズとか、き、気が早すぎるというかっ』
顔を真っ赤にして慌てる真紅を見て、鷲はフッと笑った。
「(・・・ありがとな)」
『うー』
真紅は余程恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしたまま姿を消してしまった。
(・・・俺はお前と一緒にいる資格があるのだろうか)
鷲は真紅が消えた隣の場所を悲しげな目で見ていた。
―ギュッ
と、突然、両手を握られる感触がした。前を見るといつの間にか猫町とテスタロッサがいて、鷲の手をそれぞれ握っていた。
「鷲くんもお話しようよ」
「私ももっとシューと話したい」
「・・・なんだ、イチャつきは終わったのか?」
「い、いちゃついてないよっ」
「そ、そうだよっ」
鷲のからかいに頬を染める二人。それを見るとますます疑わしくなってくる。だが、純粋な二人に鷲は、少し心が楽になった気もした。
「あー!私もー!」
「ちょ、ちょっとアリシアちゃん!」
それを見て、先に歩いていたテス姉とリアも後ろに戻ってくる。少し、平和な日常を味わっているような感じがした。
そして翌日、猫町とテスタロッサが堕ちたと聞いた。
「で、誰にやられたんだ?」
アースラの会議室に呼ばれた鷲は二人が誰にやられたかを聞いた。部屋にはテス姉、テス母、艦長殿、中二、おまけ(エイミィのこと)がいた。
翌日の放課後、猫町とテスタロッサ姉妹が学校を休み、いつものように帰ろうとしたら中二から通信が来た。最初は鬱陶しかったから切っていたが、あまりにもしつこいので出たら、二人が堕ちたと聞いた。そして、事情を説明するからと言ってアースラに呼ばれたのだった。
昨晩は、鷲は最果ての図書館にいた。ただ暇だったので、あそこで本を読んでいた。その間に二人が襲われたらしい。
「彼女たちを襲ったのはこの四人だ、エイミィ」
「はいはーい」
中二の言葉でモニターが映し出される。そこにはハンマーを持った赤い少女と剣を持ったピンクの女剣士、それと緑の医療服のようなものをまとった女と銀髪の犬耳の生えた男が映っていた。
「この四人が二人を襲った」
「目的は?」
「目的はおそらく、魔力だ。最近、無人世界の魔力を持った生物や管理局の人間も魔力を奪われる事件が発生している。同様に、二人からも魔力を奪われている」
「魔力を集めてどうするんだ?」
「そこまではわからない」
「ふーん」
それを聞くと、鷲は興味が失せたように目を閉じた。
「一応、あなたも魔力を持っているから気をつけてね」
艦長殿が鷲に注意を促してくる。一応というのは鷲が魔力を抑えている分、ほとんど感じられないからだ。
「俺よりそっちの心配したらどうだ?」
鷲は言葉を発さないテス姉を見る。テス姉は俯いて、先程から声を出していない。二人が心配なのだろう。
「その事なんだけど、アリシアの護衛を頼めないかしら?」
テス姉の横にいたテス母が鷲に言う。
「・・・・・・」
「あなたなら、アリシアが襲われてもなんとか出来るでしょ?」
「おいおい、俺はただの小学生だぜ?」
「ただの小学生が魔法を素手で消せるはずないでしょ」
それはジュエルシード事件の時を言っているのか、魔法を打ち消したことを覚えているようだ。・・・そうそう忘れないと思うが。
「俺じゃなくて管理局に頼めよ」
「管理局だと気が重くなるのよ。あなたなら気負わなくてもいいでしょ?」
「・・・残念ながら今回は無理だ」
「・・・なぜかしら?」
鷲の返答に目を細めるテス母。
「ちょっとな。ただ、これは渡しておく」
鷲が取り出したのはコインだった。
「・・・これは?」
「魔法のコイン」
鷲はニヤリと笑って言った。
「使い方は簡単、これに行きたい場所を念じるだけ。範囲はだいたい半径五十キロってとこだな」
「・・・そんなものが?」
「ま、持っておけ」ピンッ
鷲はテス母に向かって指でコインを弾いた。
「ちょっと待て、どうしてそんなものを君が持っている?」
中二がなぜ鷲が魔法のコインを持っているか問い詰める。
「さあ?」
「とぼけるな!」
「あ、そろそろ晩飯の時間だな」
鷲は部屋を出ていく。
「おい、待て!」
中二の声を無視して鷲はそのまま帰っていった。
その翌日、鷲は学校をサボって市内の図書館にいた。暇つぶしに件の四人でも探そうかと思い、ブラブラしていても見つかるはずもなかった。目的もなく歩いていると、どうせなら図書館で本を読みたいと真紅が言い出した。
仕方なく、鷲は図書館で真紅が読みたい本を借りて読んでいた。ただ、鷲はページをめくるだけで、真紅は鷲の膝の上で読んだら次にめくるように言うだけだった。
「わっ」ガシャッ
すると何かが倒れる音がした。音がした方を見ると茶髪の少女が床に倒れ、横には車椅子が倒れていた。周りには誰もいない、周りには誰もいない。
少女がこちらを見ている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
鷲は本を読んでいる真紅に視線を戻した。
「あのっ」
先ほどの少女がこちらに向かって叫んでいる。仕方なく視線をそちらに向けた。
「あの、助けてくれませんか?」
「・・・・・・」
鷲は溜息をつくと真紅に断りを入れて、立ち上がり少女を車椅子に乗せた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
鷲は座っていた席に戻り、また本をめくる。
「隣いいですか?」
車椅子の少女が隣に来ていた。
「・・・ああ」
特に断る理由もなかったので、承諾する。
「さっきはありがとう。でもなんですぐ助けてくれなかったんですか?」
「面倒だから」
「はっきり言いすぎや!・・・あ」
「無理して標準語話す必要はないぞ」
「そ、そう?じゃあ、普通に話させてもらうわ」
鷲の言葉で関西弁に切り替わる少女。
「あ、自己紹介まだやったね、ウチの名前は八神はやてや、よろしゅうな」
「マイケルだ」
「よろしゅうな、ってちゃうやろ!どっかどう見ても日本人やん!」
「ジョウダンだ」
「うまいこと言ったつもりか!」
鷲のボケに突っ込む車椅子の少女。
「うるさいぞ、図書館では静かにしろ」
「あ、すみません、ってあんたのせいやろ!」
「で、何か用か?」
「スルーかいな。まあええわ。用はお話したかっただけや」
「・・・そうか」
「お宅、ウチと同い年くらいやろ?なんで平日にここにおるん?」
「サボり」
「・・・はっきり言うなあ。ところで本当の名前はなんて言うんや?」
はっきりとサボりという鷲に苦笑いする少女。
「黒沢鷲だ」
「黒沢君か、よろしゅうな」
「・・・ああ」
「黒沢君はよく来るん?」
「たまにだ」
「そうなんか、ウチはほとんどおるから、見かけたら声かけてくれる?」
「・・・お前は寂しいのか?」
「え?」
鷲の言葉に目を見開く少女。
「さっきから会話が途切れないように、必死に話しているように見える」
「ほ、ほんまに?」
「・・・・・・」
鷲は無言で返答した。
「そっか。ウチな、友達が一人しかおらんねん」
少女は語りだした。
今より幼い頃、両親が事故に遭い亡くなった。そして、不運は続き、原因不明の病で足も動かなくなった。なので、学校もほとんど行っておらず、友達もいなかった。しかし最近、家に親戚が来て家族になったとか、この図書館で同い年の女の子と友達になったとのことだ。
「だからな、よかったらウチと友達になって欲しいんよ」
「・・・・・・」
「ダメ、かな?」
「・・・読書仲間なら」
「ホンマに!?それでも嬉しいわ」
本当に嬉しそうな顔で笑う少女。
「なら、鷲君って呼んでもええ?」
「好きにしろ」
「ならウチの事もはやてって呼んでや」
「もはや?」
「ちゃうわ!はやてやは・や・て!」
「やはや?」
「だからちゃうって!わざとなん!」
「・・・さて、そろそろ行くか」
「このタイミングで!?」
「静かにしろ狸」
立ち上がり帰り支度をする鷲。
「狸ってウチのこと!?」
「まあな。それにあれはお前のツレじゃないのか?」
鷲の視線の先には金髪の女性がキョロキョロとしていた。
「あ、そうや、おーい、シャマルー」
「あ、はやてちゃん!」
金髪の女性はこちらに近づいてくる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
鷲と女性は互いを見て固まった。
「シャマル、こちら、さっき友達になった鷲君や」
「あら、そうなの?私はシャマルって言うの、よろしくね」
狸の紹介に何事もなかったかのように自己紹介する女性(以降影薄)。
「どうも、じゃあな」
「うん、また会おうな」
「・・・・・・」
狸は嬉しそうに手を振っていたが、隣の影薄はただ鷲を見ていた。
はやてが登場。関西弁って難しいっ
次回、ヴォルケンと主人公のバトルになるかな?