鷲は狸と別れてからスーパーで買い物をしてから家に向かっている途中、つけられている気配がした。
「・・・・・・」
立ち止まり振り返る。そこにはピンクの髪をポニーテールにした女が立っていた。・・・・・・どこかで見た気がする。
「・・・・・・」
「恨みはないが貴様の魔力、貰い受けるぞ」
鷲がどこで見たのか思い出そうとしていると、女はそう言ってバリアジャケットを装着して、手に持った剣で斬りかかって来た。
「はあああっ」
「・・・ああ、お前か」
ヒラリと剣を躱すと、鷲は思い出した。
「・・・私を知っているのか?」
「一昨日、猫町とテスタロッサを襲った奴だろ?」
「っ、あの子らの仲間か・・・」
「まあ、クラスメイトではあるな」
「そうか・・・」
桃剣士はそう呟くと、再び剣を構えた。
「悪いとは思っている。だが、我らの目的のためには仕方ないのだ!」
そして、斬りかかってくる桃剣士。今度は少し剣の速度が上がっている。
「はっ、犯罪者の言い分だな」
鷲は何度も迫り来る剣を避けつつ、軽口を叩く。器用にも買い物袋を手に持ったまま。
「・・・自覚はしているっ」
「へえ、そんなにあの車椅子の奴が大事なのか」
「っ、なぜそれを!」
鷲の言葉で攻撃の手をやめてしまう桃剣士。
「そりゃあ、さっきお前の仲間とそいつが一緒にいたしな」
鷲は昨日の映像でこの桃剣士と他三人の顔を見たことを思い出した。そのうちの一人が他の奴といるのを見ると関係者と思うだろう。
「あいつは知ってんのか?」
「・・・いや、主は何も知らない」
「主ね・・・。じゃあ、俺が言ってやろうか?」
「なっ、貴様!」
鷲を睨みつけて怒りをあらわにする桃剣士。
「てか、お前ら馬鹿だろ?」
「なんだとっ!」
「いくらお前らの主が何も知らないからといって、あいつの罪にならないってことはないぜ?」
「っ」
「お前の言葉からして、あいつはお前の主でお前らは従者か何かなんだろう。主が何も知らないからといっても、従者の責任は主人にくるんだぜ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばらく、沈黙する二人。
「・・・それでも」
沈黙を破ったのは桃剣士だった。
「それでも、私たちは、主に生きていて欲しいんだっ、レヴァンティン!」
桃剣士がそう叫ぶと、持っている剣から薬莢が出てきて炎を纏った。
「紫電っ」
桃剣士がそれを横に振りかぶり、斬りかかってくる。
「一閃!」
剣が鷲に振り切られる。やったっと思う桃剣士。
「なっ」
しかし、目の前の光景を見て驚愕した。自分の剣を受け止めているのだ、・・・素手で。
「その程度か?じゃあ、次はこっちの番だな」
そう言うと鷲は、そのまま剣を掴む。桃剣士は今だに驚いていて、身動きが取れない。
「あいつが死ぬから助けるために、お前らは罪を犯す。だが、あいつは助かっても犯罪者になるんだな、・・・お前らのせいで」
「っ」
「今までではまともだったぜ、あんた」
鷲はそう言って桃剣士ごと剣を持ち上げ、地面に叩きつけた。
「がはっ」
叩きつけられた桃剣士は肺の空気を出される。
「・・・・・・」
そのまま帰ろうとしたら、近づいてくる気配を感じた。
「うおおおおおっ!」
叫びとともに突っ込んできたのは、ハンマーを振りかぶった赤い少女だった。
「・・・はあ」
鷲は溜息をつくと、突っ込んできた少女を受け流した。
「ちっ」
受け流された少女は勢いで後ずさりながら、ハンマーを構える。
「よくも、シグナムを!」
「正当防衛だ」
「黙れ!」
少女はハンマーを振りかぶって、鷲に襲いかかる。
「やめとけ、お前じゃ勝てない」
「うるせえ!」
「よ、よせ、ヴィータ」
そこで、地面に叩きつけられた桃剣士が少女に声をかける。
「そいつには私たちだけでは勝てん、今は引くんだ」
「なっ」
少女は桃剣士の言葉に驚いた。自分たちの将がそこまで言う程に鷲が強いということに。
「・・・わかった」
少女は了承すると鷲を見る。
「帰っていいぞ、そいつも連れてけよ」
「・・・・・・」
少女は桃剣士を連れてこの場を去っていった。残された鷲も二人の姿が見えなくなると家へと帰っていった。
「ただいま」
家に帰るとリビングにはユーとリアがいた。
「おかえりーって、どうしたのシュウ君、ボロボロだよ!?」
鷲の姿を見て声を上げるリア。ユーもそれを見て驚いている。炎の剣を受け止めたはいいが、代わりに服が焼け焦げたりしてしまった。
「ただ、ちょっと襲われただけだ」
「お、襲われた!?だ、大丈夫なのシュウ君!」
鷲に近づいて怪我がないか調べるリア。
「大丈夫だからここにいるんだろ、ほら材料」
鷲はそう言って、買ってきたものをリアに渡す。不思議なことに買ったものは無傷だった。
「え、あ、ありがとう」
それを受け取ったリアはとりあえずお礼を言った。
「じゃ、着替えてくる」
鷲は自室に向かう。
―ギュッ
が、服を掴まれた。
「ユー、着替えるから離してくれないか?」
服を掴んだのはユーだった。
「先に何があったのか話して」
「だから、襲われた」
「誰に?」
「剣を持った女とハンマーを持った子供」
「そう・・・」
ユーはそれを聞くと、服を離した。
「後で話すから」
鷲はユーの頭を一撫ですると今度こそ自室に向かった。
あれから数日後、鷲は放課後の街をブラブラと歩いていた。猫町とテスタロッサも学校に復帰したが、魔力が戻るのにまだ少し時間がかかるようだ。
住宅街に入ると、十字路でキョロキョロと辺りを見渡すクマのぬいぐるみを持ったロングヘアーでウェーブが掛かった赤色の髪の少女がいた。その少女は右往左往していて、迷子のように見えた。
「迷子か?(魔力反応、それも結構でかい)」
昔から真紅との付き合いで、子供には甘い鷲は―自分も子供だが―声をかけた。
「え?えっと、その・・・」
少女は鷲を見ると俯いてしまった。警戒されているか人見知りが激しいようだ。
「どこかに行きたいのか?」
鷲は目線を少女に合わせる。
「えっと、その、こ、公園に・・・」
「公園?この辺のか?」
コクりと頷く少女。
「そうか、じゃあ、右だ」
「え?」
「右に真っ直ぐ行けば公園がある」
「・・・・・・」
少女は鷲を見た。
「一人で行けるか?」
「・・・はい」
「そうか、じゃあ―」
鷲がじゃあなと言おうとしたとき、結界が張られた。
「っ」
突然景色が変わって少女も驚いている。
「お前は!」
そこに現れたのは先日のハンマーを持った赤い少女だった。