自由なチート暇人   作:sakuya-syu

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指摘された箇所を修正いたしました。指摘ありがとうございます。


第54話

「ん、んん」

 鷲が目を覚ますと、最初に目に入ったのは木製の天井だった。

「・・・・・・」

 周りを見渡すと、窓や出入り口を除く壁際に本棚に敷き詰められた数々の本。鷲はその場所に見覚えがあった。

「俺の、部屋」

 ここは前世界の鷲の部屋だった。

「・・・・・・」

 鷲は取り合えず部屋を出た。部屋を出ると目の前には池や鹿威し(ししおどし)などの和風の庭が広がっていた。

(確か闇の書に吸収されたはず・・・)

「真紅」

 何があったか聞こうと真紅に呼びかけるが、反応がない。

「ここにはいないのか?」

 鷲は闇の書の中には入ってこれなかったのかと考えた。仕方なく、一人で庭を見ながら目を覚ます前のことを思い出そうと顎に手を当てて考える。

(そうか、間に合わなかったのか・・・)

 鷲はテスタロッサも助けることもできずに一緒に吸収されたのを思い出した。

「もう起きたのか」

 しばらく考えながら庭を見ていると横から声がかけられた。

「っ」

 振り向くまでもない。声でわかる。この声は―

「親父」

 

―鷲が一番嫌いな人間だった―

 

 

Side-高町なのは

 

「鷲くん!フェイトちゃん!」

 鷲とフェイトが闇の書に吸収されて叫ぶなのは、弥生も声には出さないが驚いている。そんな彼女らを見て闇の書の管制人格は言った。

「我が主もあの二人も、覚めることのない夢のうちに、終わりなき夢を見る。生と死の狭間の夢、それは永遠だ」

「・・・永遠なんてないよ」

 なのははどうにかそれだけ言った。

 

Side out

 

 

「・・・・・・」

 鷲は今、食卓にいた。まずは様子見ということで、流れに身を任せている。向かいには新聞を読んでいる親父が座っており、母親が朝食を作り終わるのを待っている。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 二人の間には沈黙が流れ、新聞のめくる音と母親が料理を作る音しか聞こえない。

 やがて、キッチンの方の音が止み、母親が料理を持ってきた。

「――、鷹史(たかふみ)を呼んできて。道場にいるから」

 鷹史、それは鷲の兄の名前だった。

「・・・・・・」

 鷲は何も言わず、道場に向かった。

 鷲の兄は天才である。一族の中で初代当主、今までの中での一番の実力者に匹敵すると言われているほどである。

 そんな兄を鷲は当然嫌った。自分とは正反対、天才の兄と無才の弟。だが、兄は普通に接してくる。だから鷲も最初はそれなりに接していた。仲がいいというわけではない。ただ、兄は鷲を普通の人として過ごさせようとしていた。

 それでも鷲は諦めなかった。負けず嫌いというのもあるが、それだけじゃない。認めてもらいたかったというのも多少はある。一番の理由は真紅を守りたかった。だから、才能がなくとも魔術だけではなく、素手や武器を持っての戦い方、知識、様々な面で努力した。しかし、兄が目立てば目立つほど、鷲の努力なんて霞んで見えてくる。だから、ある時、兄と大喧嘩して、それっきり兄とは話さなくなった。

 

 

 鷲は兄を呼びに行ったあと、鷲と親父は無言で食事をした。母親と兄は二人で話していてる。これはいつもの風景。鷲が親父を嫌っているように、親父も鷲を嫌っているのだ。親父との会話も鍛錬の時しかない。

 

―そのはずなのに、

 

「――、今日の鍛錬は休みだ」

「・・・・・・」

 鷲は驚きのあまり、何を言われたのかわからなかった。親父は毎日毎日、鷲に鍛錬をさせた。魔術の才能がないのだからと言って。鷲が努力してやっとできた魔術を見せても親父はただ、首を振るだけだった。

「どうした?」

 驚いて固まっている鷲を心配して、声をかけてくる親父。

(心配?あの親父が?)

 ありえないことだった。今まで鍛錬の時に鷲が骨を折ったり体中がボロボロになっても心配して声をかけることすらしなかったのだ。

「どうしたの?大丈夫?」

「具合が悪いのか?」

 母と兄も心配そうに見てくる。兄とは話さないが、母とは極力話をしない。兄は喧嘩した時から一切関わらなくなった。母は親父側の人間なので才能のない鷲には冷たくもなく、温かくもなかった。今みたいに具合が悪そうだからといって心配するような二人じゃない。そんな二人も鷲の心配をしてくる。

「・・・なんでもない」

 鷲はそれだけ言って、朝食を食べて外に出た。

 

 

Side-紅弥生

 

 その頃、弥生となのはは管制人格と戦闘を繰り広げていた。ただ、なのはは遠距離で、弥生が近距離の戦闘なので今はなのはが管制人格と戦っている。

「全く、ああも飛び回れたら、私は何もできないじゃない」

 最早、海の上で戦闘している二人を見てボヤく弥生。

「なのはさんがやられそうになったらフォローしないといけないわね」

 弥生はいつでもフォローできるように、出来るだけなのはの流れ弾が当たらないような場所まで近づく。

 近づくと、なのはと管制人格が並んで飛んでいる。そして、なのはが岩の後ろに回ると管制人格はそのまま岩を突き破っていった。

「まずいわね」

 そう言うと弥生は一気に二人に近づく。

 案の定、岩の近くにいたなのはに、管制人格が突き破って飛んできた岩の破片が飛んでいく。

「うっ」

 なんとかそれをシールドで受け止めるが、管制人格が追撃をかける。

「ううっ」

 なのはは衝撃で吹き飛ばされる。管制人格はさらに追撃をかけようとする。

「させないわ!」

 弥生は魔力弾を撃とうとしている管制人格に斬りかかる。

「くっ」

 管制人格の左腕に剣が当たって軌道をずらすことはできた。

《ごめん弥生ちゃん》

 管制人格から距離を置くとなのはから念話が来た。

《気にしなくていいわ。それよりもっと大きな魔法を使いなさい。相手が硬すぎるわ》

《うん、わかった》

《時間は稼いどくわ》

 弥生はそう言って、管制人格に斬りかかる。

「やあああああっ!」

 管制人格の後ろからもなのはが向かってくる。

「ふっ」

 管制人格は上に飛ぶと、弥生となのは目掛けて魔力弾を撃ってくる。

「くっ」

「きゃあっ」

 二人はそれを防ぐがバリアジャケットはボロボロになってしまった。

「お前たちももう眠れ」

 そんな二人を見て、管制人格が静かに言った。

「いつかは眠るよ。だけどそれは、今じゃないっ」

「私もまだ眠る予定はないわ」

「レイジングハート、エクセリオンモード」

 なのはは管制人格にデバイスを向ける。レイジングハートに二回、カードリッジが装填される。

「ドライブ!」

<エグニション>

 なのはのバリアジャケットとデバイスが変化する。

「悲しみも、悪い夢も、終わらせてみせる!」

 それを見た管制人格は闇の書を出し、魔法陣を展開させる。そして、弥生となのはの周りに数々の金色の魔法弾が生成される。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 弥生となのははそれぞれデバイスを構え、管制人格と向き合った。

 

Side out

 

 

「・・・・・・」

 あれから鷲は近所の森の広場にいた。

「はあ」

 鷲は寝転びながら、空を見る。空は雲も少なく、晴れ渡っていた。

(ここは夢の中か・・・)

 そんなことを考えていると、日差しが遮られた。

「ここにいたのか、シュウ」

「・・・真紅」

 そこにいたのは真紅だった。それも半透明じゃない。それを見て鷲は立ち上がる。

「お前・・・」

「ここでは私も実体化できるみたいだ」

「・・・・・・」

 鷲は思わず真紅を抱きしめた。抱きしめられた真紅は最初は驚いていたが、そのまま身を任せることにした。

「痛いぞ、シュウ」

 そう言いつつも、鷲の背中に手を回す真紅。

「やっと、触れた・・・」

「ああ、私もお前の温度を感じるよ」

 しばらく抱き合っていた二人だが、鷲は真紅から離れた。

「シュウ?」

「真紅」

「なんだ?」

「これは夢だ」

「・・・ああ、そうだな」

「俺の親父が俺のことを心配するはずもないし、一族が生きているはずがない。それにお前だって・・・」

「ああ」

「俺はお前を生き返らせるために夢から覚める」

「ああ」

「待っててくれるか?」

 鷲の問いに真紅は微笑んだ。

「当たり前だ。私はいつまでも待つよ、お前とちゃんと触れ合える日々を」

「・・・ありがとう」

 鷲はフッと笑うと左手を握り締める。

「全く、とんだ悪夢だな」

 真紅と触れ合えるのはいい。ただ、家族が自分を心配するというのは想像し難いもの、否、想像できないものだった。それだけでも悪夢になり得た。

「またな、真紅」

 真紅に背を向けて、最後に真紅に声をかける。

「シュウ」

 呼ばれたので、鷲は振り向いた。

 

―チュッ

 

 鷲の唇に温かく、柔らかいものが押し当てられた。

「っ」

 それが何かわかった瞬間、鷲は目を見開いた。

 少しして離れた真紅を見ると、その顔は真っ赤に染まっていた。

「この機会を逃したらいつできるかわからないからな/////」

 真紅は恥ずかしそうに早口で言った。

「・・・・・・」

「・・・だから、なるべく早く頼むな?」

 顔を真っ赤にして上目遣いで言う真紅。それを見て、鷲はいつもの様に不敵に笑った。

「まかせろ!」

 そう言って鷲は地面に拳を叩きつけた。

 

―そして、世界が壊れた・・・

 

 

Side-紅弥生

 

 鷲が世界を壊す少し前。

「はぁあああっ」

「ふっ」

 弥生が管制人格に斬りかかるが、その剣はナハトヴァールによって受け止められる。

「バスター!」

 なのはの声が聞こえた瞬間、弥生はすぐに距離を取る。

 管制人格の後ろから桜色の砲撃が放たれるが、それは躱されてしまい、なのはは管制人格に殴り飛ばされた。

 しかし、なのは途中で体制を整え、海から出た岩に着地する。

「一つ覚えの攻撃、通ると思ったか」

 同じく、違う岩に降り立った管制人格が言う。

「「通す(のよ)!」」

 弥生となのははデバイスを構える。

 なのはのデバイスから薬莢が二つ出てきて、桜色の翼が生える。

<A.C.S、スタンバイ>

「こっちも行くわよ、グラム!」

<スタンバイ>

 剣が紅い光に包まれる。

「レイジングハートが力をくれてる、泣いてる子を救ってあげてって!」

<ストライクブレイク>

 レイジングハートから赤い刃が現れる。

「私も彼女にプレゼントをあげる約束があるしねっ」

<ブレイク>

 グラムの剣身の光が巨大な円錐形になる。

「エクセリオンバスターA.C.S」

「クリムゾンジャベリン」

「「ドライブ!!」」

 なのはと弥生はそれぞれのデバイスは一本の槍となり、先端を管制人格に向けて一気に距離を詰める。

「くっ」

 管制人格は二人の魔法をシールドで受け止めるが、勢いで背後の岩を次々突き抜けていく。

 そして、大きな岩に当たって勢いが止まり、鍔迫り合う。

「くっ、うう」

 なんとか押し返す管制人格。

「届いて!」

 しかし、なのははさらにカードリッジをリロードして魔力を上げる。

「なら、私も使おうかしら」

 弥生もカードリッジを使って魔力を上げる。

 二人の槍の先が管制人格のシールドの中に入る。

「「ブレイク」」

 それを見た管制人格も驚いている。

「まさか」

「「シュート!!」」

 

―ドォオオオオオン!!

 

 辺りは轟音と光に包まれた。

「これでダメなら打つ手なしね」

 音と光が止み、弥生はなのはの隣に並ぶ。

「そうだね」

 なのはは左腕を痛めたのか、右手で抑えている。

<<マスター>>

 二人のデバイスが声を上げる。

 二人が見るとその先には無傷の管制人格がいた。ただ、左腕についていたナハトヴァールは形態を維持できずに、蛇がうねった形になっていた。

「もう少し頑張らないとだね」

「ええ」

 

 

 それからは二人は管制人格相手に防戦一方だった。先ほど、魔力を使いすぎた二人は疲労が溜まっていた。

「はあああっ」

「うっ」

 殴りかかってくる管制人格の攻撃を躱すなのは。しかし、足を掴まれて弥生の方に投げれる。

「きゃあっ」

「なのはさん!」

 投げられたなのはを捕まえる弥生。衝撃が全身に響く。

「お前たちが、お前たちがいなければ!」

 そう言って、また殴りかかってくる管制人格。弥生は衝撃が強すぎてすぐに動けなかった。なので、なのははシールドを張る。

 ひたすらシールドを殴り続ける管制人格。

 そして、シールドを破られ、落ちていくなのは。管制人格はさらに、追撃をかけて鎖のバインドでなのはを拘束した。

「うぅ」

「くっ、なのはさん!」

 声は上げれども、弥生の体は動かない。

 そして、管制人格はなのはの真上に巨大なネジのような黒い槍を出現させ、その柄に手をかける。

「眠れえ!」

 そのまま槍をなのはに振り下ろす。槍は回転しながらなのはに向かう。

「っ」

 その光景に恐怖のあまり目を見開く。

 しかし、次の瞬間、金色の閃光が走った。

 その閃光は槍を真っ二つにしてなのはに当たる寸前で分かれていった。

 なのはの前にフェイトが並び、微笑み合う二人。そこに動けるようになった弥生も並び、すぐに管制人格と向き合う。そして、三人は魔法陣を重ねて展開させて構えた。

「くっ」

 管制人格は忌々しげに三人を見下ろした。しかし、次の瞬間には左腕のナハトヴァールがうごめいて、管制人格が悲鳴を上げた。

「うあああああ!」

 その様子を伺っていると念話が聞こえてきた。

《外で戦ってる方、すいません、協力してください!》

 その声に三人は声の主が誰かすぐにわかった。

「はやてちゃん!?」

《この子に取り付いてる、黒い塊を―》

 言いかけたところで、管制人格が悲鳴をあげる。その声に思わず耳を塞ぐ三人。

《なのは、フェイト!》

「ユーノくん!」

《フェイト、聞こえる?》

「アルフ」

 そこでユーノとアルフから通信が入った。

《融合状態で主の意識を保ってる。今なら防衛システムを融合機から切り離せるかもしれない!》

「ほんと!?」

「具体的に、どうすれば!?」

《三人の純粋魔力砲でその黒い塊をぶっ飛ばして!全力全開!手加減なしで!》

 ユーノの言葉になのはとフェイトは微笑み合い、デバイスを掲げる。

「さすがユーノ」

「わかりやすい!」

<<全くです>>

「私はもう魔力があまり残ってないから二人に任せたわ。それと鷲君はどうなるの?」

「え?」

「そういえば」

 今まで忘れていたという表情でどうしようか悩み始めてしまった二人。そこに、

 

「オラァアアアアアッ!」

 

 そんな叫び声が管制人格の方から聞こえてきた。

 

 




最後まで読んでくれてありがとうございます。
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