自由なチート暇人   作:sakuya-syu

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第55話

「オラァアアアアアッ!」

 叫びとともに管制人格の腕を殴りつける鷲。

「ぐっ」

 管制人格は衝撃で海に叩きつけられた。

「よし」

「「よしじゃないよ!?」」

 一息ついたところで猫町とテスタロッサが飛んできた。その後ろに二人をゆっくりと追いかけてくる弥生の姿もある。

「なんでいきなり殴ったの!?」

「不意打ちは卑怯だよ!!」

 なにやら二人は怒っているが鷲は気にせずに言った。

「蛇を外してやったんだからいいだろ」

 鷲は管制人格が落ちた方向へと指を指す。

「「え?」」

「なかなかグロテスクね」

 猫町とテスタロッサ、弥生がその先を見ると管制人格から離れたナハトヴァールが海に黒い淀みを作ってその中から触手がうごめいている。

「それとよかったの?彼女たちの前で魔法使って」

「「え?」」

 弥生の言葉に二人は鷲を見る。その先には黒いバリアジャケットを来て腰に剣を下げて浮いている鷲の姿があった。

「そういえば」

「シューが飛んでる?」

 鷲を見ながら固まる二人。そして、

「「えぇえええええ!?」」

 悲鳴に近い叫び声を上げる猫町とテスタロッサ。

「「うるさい(わね)」」

 耳を塞ぎながら鬱陶しそうに呟く鷲と弥生。そんなことは気にもせずに鷲に詰め寄る猫町とテスタロッサ。

「しゅ、鷲くんって、ま、魔導師だったの!?」

「そうだけど?」

「だ、だって、あの時は使ってなかったよね!?」

 テスタロッサが言うあの時とはジュエルシードの時のことだろう。

「必要性がなかったからな」

「ひ、必要性って・・・」

「シューって、何者・・・?」

 唖然とする猫町と考えるテスタロッサ。それを見ていると海から光の柱が立つ。

「ん、あいつらも戻ってきたみたいだな」

 鷲が空中に視線を上げるとそこには白い光の玉を囲むように立つヴォルケンリッターの騎士たちがいた。

「「あっ」」

 そして、白い光が砕け散り、黒いバリアジャケットを纏い杖を持ったタヌ子が現れた。

「はやてちゃん!」

 猫町とテスタロッサは嬉しそうにタヌ子を見る。そんな二人を見てタヌ子も微笑む。

「夜天の光に祝福を」

 タヌ子が杖を抱えながら言うと、彼女の周りに一つの紫の光が舞う。

「リインフォース、ユニゾンイン!」

 紫の光がタヌ子の胸に吸い込まれ、光が彼女を覆った。

 光が止んで現れたのは先ほどのバリアジャケットに白いジャケットを装着して髪色や瞳の色が変わったタヌ子だった。

 タヌ子はヴォルケンリッターの元へと降り立つ。

「はやて・・・」

 タヌ子を見て泣きそうな顔のロリっ子。

「すみません」

 目を伏せて謝る桃剣士。

「・・・・・・」

 何も言わずただ黙っている犬耳男。

「あの、はやてちゃん、私たち・・・」

 胸に手を当てて事情を話そうとする影薄。そんな騎士たちを見てタヌ子は言った。

「ええんよ、みんなわかってる。リインフォースが教えてくれた」

 自分の胸の中にいるリインフォースに手を当てるタヌ子。

「ま、細かいことは後や。とりあえず今は、おかえりみんな」

 そう言って微笑み、手を広げる。

 それを見たロリっ子は我慢できずにタヌ子に抱きついて、泣きながら何度もタヌ子の名前を言った。それを見守る他のヴォルケンリッター。

 そこに鷲たちが降り立つ。タヌ子はこちら見て微笑む。それを見た猫町とテスタロッサは笑顔で返した。

「すまない、水を指してしまうんだが」

 そこに中二とイタチ、オレンジ狼が来た。

「「なら帰れば?」」

 飛んできた中二に声を合わせる鷲と弥生。

「そんなこと言ってる場合じゃないだろっ」

 鷲たちの元に降り立った中二は怒鳴る。

「全く、君たちは緊張感ってものがないのか・・・」

「そんなもの、あったって力むだけだろ?」

「そうね、場を和ませようとした私たちに感謝して欲しいわ」

「君たちは・・・」

 呆れながらも話を続ける中二。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。時間がないので簡潔に事態を確認したい」

 そう言って中二は海から黒い淀みから出ている方に指をさした。

「あそこの黒い淀み、あれは闇の書の防衛プログラムであと数分で暴走を開始する間違いないか?」

 タヌ子に確認する。

「うん。自動防衛システム、ナハトヴァール」

『暴走は周辺の物質を侵食し、ナハトの一部にしてゆく。臨界点が訪れるまではこの星一つくらいは飲み込んでしまう可能性がある』

 タヌ子の肩ぐらいの高さに小さくなった管制人格が透けて浮かんでいた。

 それを聞いて驚く猫町とテスタロッサ。

「停止のプランは二つ用意してある。一つ、極めて強力な氷結魔法で停止させる。二つ、軌道上に待機している艦船アースラの魔導砲、アルカンシェルで消滅させる。これ以外に他にいい手はないか、闇の書の主とその守護騎士たちの皆に聞きたい」

「ええっと」

 そこでおずおずと手をあげたのは影薄だった。

「最初のは多分、難しいと思います。主のいない防衛プログラムは魔力の塊みたいなものですから」

「凍結させてもコアがある限り再生機能は止まらん」

 理由は桃剣士が説明してくれた。

「アルカンシェルもぜったいダメ!」

 手で大きなバツを作って却下するロリっ子。

「こんなところでアルカンシェル撃ったら、はやての家までブッ飛んじゃうじゃんか!」

「そ、そんなにすごいの?」

 アルカンシェルがどういったものなのかいまいち理解していない猫町。

「発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら反応消滅を起こさせる魔導砲、って言うとだいたいわかる?」

 イタチもどきが猫町に説明する。

「猫町の頭じゃ無理だろ」

「国語は残念だものね」

「む、無理じゃないよ!」

 鷲と弥生の反応にプンスカと怒る猫町。

「まあ、私は反対ね」

 猫町を無視して話を続ける弥生。

「同じく、絶対反対!」

 それにテスタロッサも賛同する。

「僕も艦長も使いたくないよ。でも、あの暴走が本格的に始まったら、被害はそれより遥かに大きくなる」

「暴走が始まると触れたものを侵食して、無限に広がっていくから」

 イタチもどきが補足する。

《はい皆!暴走臨界点まであと十五分切ったよ!》

 おまけから通信が入った。

「ほら、どうするんだ」

 通信を聞いてどうするか聞く鷲。

「何かないか?」

 中二が皆に聞く。

「すまない、あまり役にたてそうもない」

 桃剣士も案が浮かばないらしい。

「暴走に立ち会った経験は我らにもほとんどないのだ」

「お、犬耳がしゃべった」

「犬ではない、狼だ」

「からかうな」

 ふざけている鷲をたしなめる中二。

「でも、なんとか止めないと・・・」

 どうするか悩む影薄。それに続き、他の者も悩む。

「あ、鷲くんならなんとかできるんじゃない?」

「そうだね、シューならいつも予想外のことするし」

「鷲君ならやりかねないな」

 猫町の案に同意するテスタロッサとタヌ子。

「できなくはない」

「「「本当!?」」」

 声を上げる三人、周りの弥生以外の人間も驚いている。鷲は言葉を続けた。

「地球がなくなっていいんなら」

「「「「「「「「「「それはダメ(や)(だ)(だよ)!!」」」」」」」」」」

 一斉に声を合わせて却下する一同。

「前みたいに拳で解決はできないの?」

「拳でやったら地球が割るけど?」

「「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」」

 テスタロッサの問いに答えた鷲の言葉に次は固まる一同。

「まあ、それ以外にも方法はあるが」

「「「「「「「「「「それを先に言え(ってよ)!!」」」」」」」」」」

「うるさい奴らだな」

「全くね。それで、その方法は?」

「殴れないなら撃てばいいじゃないと昔の人は言いました」

「そんなこと誰も言ってないと思うで!?」

 律儀に突っ込んでくれるタヌ子。さすが関西弁、ツッコミは忘れないか。

「ここで撃てないなら違う場所で撃てばいいじゃないだっけか」

「それもちゃう!そんなこと誰も言わへん!」

「あら、どうして言い切れるのかしら?」

「そ、それは・・・」

 弥生の返しに言葉に詰まるタヌ子。

「そうだぞ、言った奴はいるぞ」

「誰や?」

「「俺だ(私よ)」」

「あかん、ウチには手に負えん」

 そう言って膝を着くタヌ子。

「殴れないなら撃つ・・・」

「別の場所・・・」

 タヌ子をスルーして考え込む猫町とテスタロッサ。

「「あっ」」

 ハッと顔を上げる二人。

「クロノくん、アルカンシェルってどこでも撃てるの?」

「どこでもって、例えば?」

「今、アースラのいる場所、軌道上、宇宙空間」

 テスタロッサが答える。

《管理局のテクノロジーを舐めてもらっちゃあ困りますなあ。撃てますよぉ、宇宙だろうが、どこだろうが!》

 通信で回答するおまけ。

「おい、ちょっと待て君ら。ま、まさか!」

 

 

 と、いうことで

「防衛プログラムのバリアは魔力と物理の複合四層式、まずはそれを破る」

 立ち直ったタヌ子がどうするか説明する。

「バイアを抜いたら本体に向けて、私たちの一斉砲撃でコアを露出」

「そしたらユーノくんたちの強制転移魔法でアースラの前に転送!」

 テスタロッサと猫町もそれに続ける。

「実は他に方法があったんじゃないの?」

 一同が話しているところで弥生がこっそりと鷲に話しかける。

「どうしてそう思う?」

「あなたのことだもの、もっと簡単な方法を考えてそうだわ」

「まあ、なくはない」

「参考までに聞いていいかしら?」

「俺一人で片付ける、もちろん地球は壊さないようにしてな」

「どうして言わないの?」

「こっちの方が面白いだろ?」

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべる鷲に、フッと笑う弥生。

「そうね、あなた一人に任せたら私の出番もなくなるものね」

「ま、バリアくらい俺一人でやってもいいんだがな」

「ダメよ」

「へいへい」

 二人は軽口を叩きながらナハトヴァールを見下ろす。

 その間に猫町とテスタロッサは影薄に回復してもらっていた。

「そういえば私もほとんど魔力がないわね」

「俺のでよければやるぞ」

「そう、ならお願いするわ」

 鷲は弥生に魔力を渡す。そのついでに傷も癒す。

「すごいわね、こんな量の魔力持ったことないわ」

「これで思いっきり行けるだろ?」

「そうね、ありがとう」

 そこでナハトヴァールから黒い柱が幾つも出てきた。

「暴走の始まりか」

 鷲の呟きとともに巨大な怪物が現れた。

 

 




最後まで読んでくれてありがとうございます。次はナハトヴァールとの戦闘です。
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