「よう偽物、探したぜ」
偽物の鷲の剣を自らの剣で受け止める。
「殺してやる!」
「お前には無理だ」
そう言って、鷲は偽物を弾き飛ばす。
「ぐっ」
「お前らそっちは任せたぞ」
「いいわ、あなたが偽物を倒す前に終わらせておくわ」
弥生は剣を抜き答えた。
「ハァアアア!!」
偽物は斬撃を飛ばしてくる。
「そんなんじゃ俺を殺せないぞ」
鷲はそれを躱して、同じく斬撃を放つ。
「ぐあっ」
偽物はそれを剣で受け止めるが、衝撃で後退する。
「なら、これでどうだ!」
その瞬間、偽物の体に黒いオーラが纏われる。
「・・・・・・・・・」
「ガアアアア!!」
オーラはやがて竜の形になる。
「・・・・・・厄介だな」
あれは力の暴走形態。この世界に来る前の鷲もあれになりかけた。
「ガァアア!」
剣を一振りするだけで、ものすごい衝撃の斬撃が放たれる。
「ちっ」
さすがの鷲も剣で受け止めて、後退る。
「やりがいが出てきたな!こうじゃなきゃ面白くねえ!」
しかし、それを見てもなお、鷲は楽しそうに笑う。
「グアアアアア!!」
偽物は叫びながら斬りかかってくるが、鷲は
「オラ!」
対抗して剣を振るう。
――ガキンッ
剣同士がぶつかり合い、金属音が鳴り響く。それとともに衝撃も凄まじかった。
「きゃあっ」
「うっ」
「ちょっと!」
余波がシステムU-Dと戦っている弥生たちの方にまで及んでいた。
「はっはっはっ」
しかし鷲はそんなことは全く気にせず、何度も打ち合う。
「ガァアアアア!」
偽物が叫ぶと、オーラの密度が濃くなってきた。
「おっと、そろそろマズイな」
「ガアアアアッ」
偽物は闇雲に斬撃を放ってくる。
「これで終わりにするか」
そう言うと鷲は斬撃の中に飛び込み、それを躱して偽物に近づいていく。
しかし、そこで誤算が出た。
システムU-Dから魔力弾が飛んできたのだ。鷲はそれも躱すが、そこに一瞬、隙が出来てしまった。それを見逃す偽物の鷲ではなかった。
「ちっ」
――ザシュッ
肉を切断する音。
鷲の左腕は肘から下まで切り落とされた。
「ぐっ」
苦痛に顔を歪ませるが、
「いい加減、消えろ」
剣を一閃。
「ガ、ガガ」
偽物は停止すると消えていった。
「さすが俺の偽物だな、予想外だったぜ」
鷲は切られた左腕を拾って、切断された部分に当てる。
すると、魔法陣が展開されて、切られた腕は元にくっついた。
『ちょっと、シュウ君大丈夫なの!?』
いきなり、リンディから通信が入った。おそらく腕を切られたことだろう。
「大丈夫だ、気にするな」
『本当に?』
「ああ、この通りだ。さて、次はあっちだな」
鷲は通信を切ってシステムU-Dの方へ飛ぶ。
「こっちは終わったぜ」
「あら、意外に早かったのね」
鷲は肩で息をする弥生に近づいた。
「おう、そっちは意外に遅いな」
「悪いわね、想像以上にやりづらいのよ」
「なら、俺が行くぜ」
「ええ」
鷲はシステムU-Dと呼ばれる金髪幼女に近づく。
「次はあなたですか」
「おう」
「私を止めようとしても無駄です」
「なぜ?」
「この力は誰にも止めることはできません」
U-Dは自分の手を見ると、悲しそうな顔をした。
「へえ」
「だからあなたも―――「その程度の力で笑わせんな」―――え?」
鷲はU-Dの言葉を遮る。
「聞こえなかったか?その程度の力でいい気になるな」
「・・・・・・さっきと言ってることが違います」
「おっと」
「それにその程度ですか?あなたはこれがどんなものか知らないからそんなことが言えるんです!」
「じゃあ、見せてやるよ。お前のその力、エグザミアがどの程度なのか」
「え?」
瞬間、U-Dの視界は真っ暗になった。
「ここは?」
U-Dが気がつくと、暗闇の中にいた。
「簡単に言えば俺の心象世界だ」
背後には鷲が立っていた。
「っ」
「無駄だ、ここではお前の力は使えねえよ」
驚くU-Dに説明する鷲。
「さあ見ろ、俺の中の化物を」
鷲が手をかざすと、暗闇がなくなる。そして二人の目の前には、
「ガァアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「ひっ」
鎖に繋がれ、楔を打たれたドラゴンがいた。ただのドラゴンなら驚かないだろう。しかし、ここにいるドラゴンは力が、存在が、次元が違うのだ。
言葉では言い表せない。言葉にできないほどの存在、恐怖。ただ、これだけは言える。
――これは危険だ
「わかったか?自分の力がどの程度か」
「あ、ああ」
U-Dは恐怖で何も言えなくなっている。
「まあ、普通はこうなるな」
鷲はU-Dに近づくと、抱き寄せた。
「あ」
「大丈夫だ、心配ない」
ゆっくりとU-Dの頭を撫でながら言う。
そして、しばらくして落ち着いたU-Dが口を開く。ちなみに場所は暗闇の中、ドラゴンは見えないようにしている。
「あなたの中に、あんなものがいるんですか?」
「そうだ」
「怖く、ないんですか?」
「ああ」
「・・・・・・なぜですか?」
「・・・・・・・・・」
鷲はしばらく考えたあと答えた。
「誰にも言うなよ?」
「え?は、はい」
「ある奴が、封印してくれてるからだ」
「封印・・・・・・」
「だから俺はこうしていられる」
「ですが、封印が破られないとも限らないじゃないですか」
「俺はそいつを信じてる。それに、そいつの封印だけじゃない、俺だってあれを抑え込んでるんだ」
「そんな!あれを抑えるなんて普通の人間にできるわけが!」
「現に今できてるだろ」
「それは・・・・・・」
鷲に言われて、言葉が言えなくなるU-D。それを見た鷲が言った。
「俺はある奴が封印してくれているおかげで、自由に生きてる」
「・・・・・・自由に」
「お前はどうしたい?」
「どう??」
「自由に生きたくないか?」
「ッ」
「お前は俺と似たような境遇だしな、お前が望むなら助けてやる」
鷲は手を差し伸べる。
「望むならこの手を取れ」
「わ、私は」
声が震える。その表情は怯えもあるが、希望もある。
システムU-Dと呼ばれた、金髪の少女は鷲の手を
――取った
瞬間、辺りは光に包まれる。
システムU-Dが目を開けると、そこは空の上だった。
「ここは」
「あそこから出ただけだ」
隣には鷲が立っていた、・・・・・・手を繋いだまま。
「ッ」
U-Dは恥ずかしくなって手を離した。
「さて、お前の意思を聞いたから、あとはそれを封印するだけなんだが」
鷲はU-Dの背にある魄翼に目を向ける。
「あ」
U-Dはそれに気づくとその場から離れようとする。
「待て、どこに行く」
「は、放してください!離れないとあなたが!」
「大丈夫だ、それは俺には効かねえよ」
「でも!」
魄翼はU-Dの意思とは無関係に鷲に襲いかかる。
「はっ」
しかし、鷲はそれを鼻で笑うと手を払って消した。
「え?」
それにはさすがのU-Dも驚いている。
「さて」
鷲はU-Dの胸、正確には心臓に手を当てる。
「あ、あわわ!」
「じっとしてろ」
慌てるU-Dに大人しくするように言って、言葉を紡いだ。
「封」
鷲が一言呟くとU-Dの胸に五芒星が浮かび上がって消えた。
「え、あれ?」
「どうよ」
「エグザミアが、止まった・・・・・・」
U-Dが自分の体をペタペタと触って確かめる。
「つーわけで、とりあえずついてこい。お前らも早く戻ってこいよ」
鷲はU-Dと戦闘していたメンバーに呼びかけ、U-Dと二人アースラに転移した。