第66話
鷲たちは時空移動を終えて、大地に立った。
「ここがエルトリアか」
鷲は荒れ果てた荒野を見渡した。
『本当に枯れた大地だな』
「シュウさん!大丈夫ですか!?」
着いた途端、アミタが鷲の体をペタペタと触れながら心配する。キリエはアミタの行動にやれやれと首を振り、マテリアルズは辺りを見渡している。
「大丈夫だ」
鷲は満足そうに返答した。時空移動が楽しかったと見える。スリルもそうだが、宇宙のような万遍ない光の粒、そして、様々な場所や時代の景色が写真のように映し出されていた道は、鷲の好奇心を存分に満たした。同時に他の場所も行きたいという好奇心も掻き立てられたが。
「そうですか」
返事を聞いてホッと安堵するアミタ。
「もう、心配しすぎよアミタ」
「何を言ってるんですかキリエ!もし彼の身に何かあったらどうするんですか!」
「熱血、心配してくれるのは嬉しいが、うるさい」
「ね、熱血?それは私のことですか?」
「それ以外に誰がいる」
「まあ、アミタにぴったりな呼び方ね」
「熱血、いいじゃないですか!今日から熱血お姉ちゃんです!」
「ピンク」
「わたしはピンクなのね」
「お前の姉は大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、あれが正常だから。心配するのもオーバーなのよ」
「・・・・・・・・・」
あれで正常。アミタが頑張ればその時はどうなるのだろうか。
「む、キリエだって、移動中にシュウさんのことを心配そうに見てたじゃないですか」
「な、何言ってるのよアミタ!」
「ふふ、お姉ちゃんは妹のことならなんでもお見通しなのです!」
胸を張って、自慢げに言うアミタ。
「ほう、お前も心配してくれてたのか」
ニヤニヤと笑いながらキリエを見る鷲。
「うっ、な、なによ」
「いや、別に?」
「―――ッ!お姉ちゃん!余計なこと言わないで!」
顔を真っ赤にしてアミタに当たるキリエ。呼び方がお姉ちゃんに変わっている。感情が昂ると呼び方が戻るのだろう。
「ところで熱血」
「はい、なんでしょう?」
キリエに追いかけられていたアミタは鷲が呼ぶとすぐに戻ってきた。
「これからどうするんだ?」
「そうですね、とりあえず家に行きましょう」
「そうか、おい、マテリアルズ」
「はい、なんですか?」
「なになに?」
「なんでしょう?」
「何か用か」
鷲がマテリアルズに声を掛けるとすぐに来た。
「移動するぞ」
鷲たちはアミタの案内に従って移動した。
「ここが私たちの家です!」
「何もない所だけど遠慮しないで上がって」
「何もないとは失礼だなー」
中に入ると、中年の男がいた。
「父さん!」
「パパ!」
「博士と呼びなさいといつも言っているだろう」
駆け寄る二人に呼び方を注意するが、特に気にしていないようだった。
「おや?お客さんかい?」
「はじめまして、シュテル・ザ・デストラクターと申します」
「ボクはレヴィ・ザ・スラッシャーだよ!」
「ユーリ・エーベルヴァインです、よ、よろしくお願いします」
「我はロード・ディアーチェだ」
「黒沢鷲だ」
「やあ、はじめまして、私はグランツ・フローリアンだ」
「アンタが二人を?」
「ああそうだ、すごいだろう?」
「まあな、素直に尊敬するよ」
この荒れ果てた世界で、アミタやキリエのようなアンドロイドを作るのは並大抵のことではできないだろう。鷲の目の前にいる男は本物の天才だ。
『・・・・・・シュウが素直だ』
真紅が失礼なことを言っているが、まあいいだろう。
「聞いたかい、二人とも!やはりわかる人にはわかるんだよ!」
「落ち着てください、父さん」
「はいはい」
興奮したグランツ博士を宥めるアミタとキリエ。
「シュウ君と言ったかな?君に他の物も見せてあげよう!」
グランツ博士は鷲を連れて、違う部屋に連れて行こうとした。
「ゴホッ」
しかし、突然グランツ博士が口に手を当てて咳き込んで膝を着く。
「はあはあはあ」
口から手を避けると、手のひらが赤くなっていた。
血だった。
「父さん!」
「パパ!」
慌てて駆け寄るアミタとキリエ。心配そうに背中をさする。
「・・・・・・病気か?」
「あ、ああ、見苦しいものを見せてしまったね」
顔は笑顔だが、声が苦しみに満ちていた。
「・・・・・・・・・」
鷲とマテリアルズは何も言えず、ただ立ち尽くすだけだった。
しばらくして、博士を寝室に寝かせて鷲たちはリビングにいた。
「見ての通り、父さんには時間がありません。この世界では既に薬さえ満足に手に入らないのです」
「・・・・・・だから、エグザミアを使ってこの世界を元に戻したかったのか?」
博士が生きているうちに綺麗なエルトリアを見せたかった。だから、キリエは無茶をしたのだろう。
「・・・・・・そうよ」
そして椅子に座ったキリエはポロポロと涙を流した。
「・・・・・・・・・」
鷲はキリエに近づき、頭を撫でた。
「え?」
「任せろ、俺が治す」
「な、治すって、父さんの病気をですか?」
「それ以外に何がある」
「む、無理ですよっ、この世界では薬さえ手に入りにくいんですよ?」
「薬なんて使わねえよ」
「「え?」」
目を丸くしている二人を置いて、鷲は博士が眠っている寝室へ入っていった。
―三分後―
「治ったぞー」
「「「「「「は?」」」」」」
その場にいた全員が一瞬、なんのことかわからなかった。
「だから、博士の病気」
・
・
・
「「「「「「えぇえええええ!?」」」」」」
「うるさいな」
「な、治ったって、父さんの病気がですか!?」
「ああ」
アミタとキリエは顔を見合わせると、博士がいる寝室へ走り込んだ。
『父さん!病気が治ったって本当ですか!?』
『大丈夫なの!?気のせいじゃないの!?』
二人が騒いでいる声が聞こえ、やがて、
『父さーーーん(パパーーー)!!!』
二人が泣き叫んでいた。
「シュウ、一体どうしたのですか?」
シュテルがマテリアルズを代表して聞いてくる。
「魔法を使っただけだ」
「そんなっ、病を治す魔法など聞いたことがありません!」
「世の中にはいろんな魔法があるんだぜ?」
「・・・・・・・・・」
確かに、世の中には様々な魔法があるだろう。しかし、簡単に死の病を治す魔法など聞いたことがない。
「(シュウ、あなたは一体何者なんですか?)」
シュテルは心の中で問いかけるが、その答えが見つかることはなかった。
エルトリア編始まりました!そのうち、一人ひとりとのストーリーも書いていこうかなと思いますので、読んでくれたら嬉しいです。
最後に感想や誤字脱字があればお願いします。では!