あれからしばらく座禅を組んだが、結局呪文はわからなかった。そして、日が暮れたので、鷲たちは家へ帰ることにした。
『結局、わからなかったな』
《ああ》
《ですが、今日は場所を見つけられただけでも良しとしましょう》
《そうやって妥協するから、駄バイスと言われるんだぞ》
《そんなこと言われたことありません!》
森の広場からの帰り道、彼らはそんな他愛もない話をしながら歩いていた。
『なあ、シュウ』
《なんだ?》
公園の横を通りかかったところで真紅は声をかけた。
『あの子、昼もあそこにいたんだ』
そう言って、指を指す先にはブランコに座る、鷲と同い年くらいの茶髪の少女。
《で?》
『もしかして、ずっとあそこにいるんじゃないかな』
《・・・暇人なんだな》
『そうじゃないだろ』
《黄昏るのが趣味なんだな》
『・・・シュウ』
少しふざけすぎたか、真紅は鷲を睨む。
《冗談だ。話しかけろってことか?》
『ああ、今の私じゃあできないからな』
「はあ」
深い溜息をつく鷲。真紅があのように寂しそうにしている子供を放っておける性格ではないのは知っている。前の世界でも、一人でいる子供たちを集めて、遊びに付き合わされたことも多々ある。
そして、ここで無視をしたら彼女の機嫌が悪くなることも重々承知だ。
「はあ」
もう一度溜息をつくと彼は茶髪の少女のもとへと歩いた。
「ここで何してるんだ、暗くなったら家に帰ってこいって言われなかったか」
声をかけた鷲をちらりと見る少女。
「あなたには関係ないの」
「あっそ、じゃあ警察呼んで補導してもらうか」
「それはダメ!」
軽い冗談のつもりで言った鷲だったが、あまりにも必死な少女の反応に驚く。
「なぜ?」
気を取り直して聞く。
「それは・・・」
少女は黙り込んだ。黙ってしまった少女に困った鷲は真紅に助けを求める。
《真紅、どうすればいい》
『とりあえず、待とうか』
《・・・マジか》
『マジだ』
笑顔で言う真紅に逆らえない鷲だった。仕方なくブランコの周りの柵に腰掛けて待つことにする。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
彼らは黙ったままだったが、やがて少女が口を開いた。
「あなたは帰らないの?」
「気が向いたら」
「そう・・・」
「・・・・・・」
すぐに会話がなくなる二人。
「あのね」
「ん?」
そして、少女は話しだした。
今、父が大怪我をして入院をしていること。家で経営している店が忙しいこと。自分が家族に迷惑をかけない、良い子でいないといけないこと。
鷲は少女の話を聞いて、なぜ少女が必死に否定したか理解した。
「で?」
「え?」
話を聞いた鷲は続きを促す。
「それで、お前はどうしたいんだ」
「だから私は良い子でいないと・・・」
「俺が聞きたいのはお前がやることじゃない。お前がしたいことだ」
「したいこと?」
「お前はこのまま一人でいたいのか?」
鷲の質問に首を振る少女。
「お前はこのまま家族に遠慮して生きていくのか?」
さらに首を振る少女。
「じゃあ、何をしたい?」
「・・・私は」
鷲は言葉の続きを待った。
「私はもっと家族に甘えたい、お店のお手伝いもしたい」
「・・・なら、そうすればいいじゃん」
「それができないからここにいるの!」
「・・・お前の場合できないんじゃなくて、やらないだけだろ」
「!?」
その言葉に驚く少女。
「たく。お前、家は?」
「え?」
「お前の家はどこだ」
「えっと・・・」
突然の言葉に戸惑う少女。
「言わないなら適当に引きずって歩くぞ」
そう言って、少女の手を取る。
「えっ、ええ?」
戸惑う少女は無視して、さっさと歩く鷲。
「ちょ、ちょっと、じ、自分で歩くから!」
「ならさっさと歩け」
言われるままに歩く少女。そして、彼はその隣を歩く。
そして、歩くこと数分。二人(厳密には三人と一機)はある店の前にいた。翠屋、それがこの店の名前だった。
「ここか?」
「う、うん」
「じゃ、まあ」
というと、鷲はドアを勢いよくあける。
バンッ!
「!?」
突然の行動と音に驚く少女。それは中にいた、二人の女性と一人の男性も同じだった。
「あの、君は?」
眼鏡をかけた女性が話しかけてくるが、鷲はそれを無視して言った。
「お宅の娘があんたたちに話があるそうだ、有無を言わずに話し合え、以上」
そう言うと彼は少女を前に押し出して、帰っていった。
「うわっ」
「え、え?」
「なんなの、一体」
「・・・・・・」
取り残された人たちはしばらく唖然といていた。
やっと原作キャラを出せました。名前は出ていませんが、まあ、わかりますよね。誤字脱字指摘お願いします。