「・・・・・・・・・」
鷲が目を覚ますとベッドの上だった。今は朝なのか、カーテンが閉められた窓から陽の光が溢れている。
『目が覚めたか?』
そう言って顔を覗き込んできたのは真紅だった。
『その子に感謝しろよ?つきっきりでお前の看病をしてたんだから』
真紅の視線の先を見ると、ベッドの淵に体を預けて眠ったユーリがいた。
「どれ位寝てた?」
『まる二日だな』
「そうか」
思ったより力の消費が激しかったらしい。鷲は傍で眠るユーリの頭を優しく撫でた。
「う、うぅ」
撫でているとユーリの目が覚めた。
「起こしたか?」
「らいじょうぶれふ」
寝起きのためか呂律が回っていない。
「はれ?」
何かに気づいたように固まるユーリ。
「シュウ?」
「なんだ?」
「シュウ!」
ユーリはガバッと身を乗り出して叫ぶと鷲の身体をぺたぺたと触る。
「大丈夫ですかっ、どこも悪くないですかっ」
「ただの過労だ、心配ない」
「そうですか」
ホッと息をつくユーリ。
「お前はちゃんと寝たのか?」
「え?はい、寝てましたよ?」
「・・・・・・・・・」
鷲は無言でユーリをベッドに引っ張る。
「ちょっ、しゅ、シュウ!?」
突然のことで声を上げるユーリ。
「寝ろ」
鷲は一言だけ言うと、ユーリを自分の横に寝かした。
「あ、あぅ」
「俺の看病で倒れられても困る」
「で、でも」
鷲と同じベッドで寝るのに抵抗があるのだろう、ユーリは言い淀む。
「おっと悪い、さすがにこのベッドは嫌だな」
流石に、体は拭いてくれているみたいだが二日も自分が眠っていたベッドで寝るのは嫌だろう。
「あ、い、いえ、そんなことは・・・・・・」
ユーリは否定すると鷲に抱きつき、毛布の中に入る。
「すぅ、すぅ」
少しするとユーリの寝息が聞こえてきた。疲れが溜まっていたのだろう。
鷲はそのままユーリの隣で眠った。
『・・・・・・・・・』
あとには不機嫌になった真紅が残された。
あれからしばらくして起きた鷲は眠っているユーリをそのままに、リビングに出た。
「あ、シュウさん」
そこにいたのはアミタだった。アミタはいつものように朝食の準備をしていた。
「もう大丈夫なんですか?」
「ああ」
「そうですか、よかったです」
アミタもユーリ同様に安心していた。
「そういえば、ユーリはどうしたんですか?シュウさんの看病をしていたはずなんですけど」
「疲れてそうだったから寝かせた」
「そうですか」
アミタは返事をすると朝食の準備に戻った。
それからしばらくしてシュテル、ディアーチェ、キリエ、博士、ユーリという順に起きてきた。ユーリはぐっすり寝たので眠気もないようだ。そして、やはりと言うべきか起きてきた皆に心配された。ディアーチェは素直ではなかったが。
今は皆席について朝食を待っている。
「後はレヴィだけですね」
シュテルは椅子から立ち上がる。
シュテルがリビングを出て少しするとドタバタと騒がしい音が聞こえてきた。
―――バンッ
勢いよく開かれたドアから現れたのは案の定レヴィだった。
「シュウ!」
そして一目散に鷲に駆け寄る。
「シュウ!もう大丈夫なの!?怪我は!?体調は!?どこも悪くない!?今日は遊べる!?」
駆け寄るや否やレヴィはものすごい勢いで鷲に詰め寄る。
「落ち着かんか、鷲は病み上がりなんだぞ」
「あ、ゴメン」
ディアーチェの言葉にシュンとなるレヴィ。飼い主に構って欲しくて叱られた犬のようだ。
「ダンジョンのドラゴンだろ?約束したからな」
鷲はそんなレヴィの頭を撫でながらフッと微笑む。
「エヘヘへ」
撫でられた本人は嬉しそうに目を細めている。
「だ、ダメですよっ、まだ起きたばかりじゃないですか!」
それを見たユーリは慌てて鷲を止める。
「ユーリの言うとおりです。起きたばかりなのに無理をしてはいけません!」
ユーリの後にアミタも続く。
「体が鈍るから却下」
「鷲君、病み上がりなのだから無理はしてはいけないよ?」
博士は止めはしなかった。ただ、注意をするだけで鷲の意思を尊重した。
「お父さん!」
「まあまあ、そんなに心配なら誰か鷲君の監視役として一緒に行けばいいじゃないか」
「じゃあキリエで」
「って、わたし!?」
鷲が即答すると、今まで会話に入らなかったキリエが声を上げた。
「なぜキリエなんですか!」
アミタは納得がいかないと言うように立ち上がる。
「熱血は暑苦しいからヤダ、ディアーチェは場所が場所だから役に立たない、シュテルはドラゴンと相性悪いし、ユーリは当然そんな危険な場所に連れて行けない、残るはキリエだけだ」
「あ、暑苦しい・・・・・・」
「役立たず・・・・・・」
「相性ですか、それなら仕方ありませんね」
「うぅ、力がなくて悔しいと思ったのは初めてです」
「わたしとしてはこっちで復興作業をしたいんだけど」
「じゃあ、それで。ダンジョンには俺とレヴィで行く」
キリエが行きたくないと遠まわしに言うと鷲は了承し、レヴィと行くと言い出した。
「キリエ!こっちはいいのでシュウさんを見張ってください!」
「残念ですが、ここはキリエに任せます」
「シュウに無茶させたらダメですよ?」
「ちょっと!?」
アミタ、シュテル、ユーリに促されて慌てるキリエ。ディアーチェはそんな彼女の肩に手を置いて言った。
「諦めろ」
その一言で肩を落とすキリエだった。
次回はレヴィ編になります。それから順番は決まってませんが個人編になりますので、よろしければご覧下さい!
では、今後共よろしくお願いします。