魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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第十三訓 秘部&恥部

世界の狭間にて春雨と蓮蓬の攻撃により乗組員のほとんどを敵に奪われてしまい大きな被害に遭った快臨丸。

しかしそこに現れたのが別の世界からやってきた巨大宇宙船、というより天空の城であった。

突如やってきた助っ人達によって無事に快臨丸を奪取することに成功するのであった。

 

「まさかあなたまでこんな所に来ていたとは」

「久しぶり達也君、将軍様の体になっても相変わらずみたいね」

 

彼等が今いるのは快臨丸でなく接続している天空の城の内部、かつて使われていたと思われる武器庫のような場所であった。その部分だけでも船自体の大きさが大きさなのでやはりスペースは快臨丸の待機室とは比較できないほど広大であった。

そこで徳川茂茂が早速出会ったのは、本物の将軍の護衛役兼この船の管理責任を請け負っている藤林響子であった。茂茂の中にいる司波達也にとっては少なからず縁のある人物であった。

 

「そちらの船の中は片付いた? ウチの方から何人か出向いたと思うけど」

「おかげで早く片付きました、蓮蓬と入れ替わった乗組員は全員拘束して無力化させています」

「そう、けどあまり無茶なことはしないでね、なにせ達也君の体は今将軍様なんだから」

「十分承知していますよ、この体じゃ魔法も使えない。幸い筋力の方は将軍でありながら中々に鍛えられているので動きに支障はないです」

 

冷静に自分の体について説明する茂茂、魔法が一切使えないというのはネックだが体の操作に関してはなんら問題ないらしい。

 

「ところでそちらの世界、俺達の世界での話を教えてくれませんか」

「そうね、こんな状況だから手短に話すけどいいかしら」

「構いません」

「それじゃあまず」

 

自分達がいない世界が今どうなっているのか今の内に聞いておこうと思っていた茂茂。

現在進行形で敵の魔の手が迫ってる状況でもあるので響子は簡単に教えてあげた。

 

「軍に将軍様の意に反する者には切腹という教えが生まれたわ」

「……すみません何言ってるのかわかりません」

「つまり私達にとって将軍様とは神にも等しい存在なのよ」

「ますます言ってる事がわかりません」

 

真面目な表情でとんでもないことを言ってのける響子にさすがに茂茂に理解出来なかった。

 

「よくわからないんで俺から質問いいですか」

「なに、将軍様の事なら何でも聞いて頂戴」

「いや将軍の事ではなく、もうしばらく将軍から数百キロ程離れて下さい」

 

茂茂はふとチラリと横目をやる。

 

「……あそこで立っている人物は俺達の味方ですか?」

「ああ、あの人ね」

 

部屋の奥に立っているのは頭からすっぽりマントを纏った人物。

顔はローブを被っている為見えないが小柄で細身。

茂茂と響子が来る前に薄暗い武器庫の中にずっと潜む様にいたのだ。

 

「大丈夫よ、いざという時は動いてくれるって言ってたから。向こうの世界の人で達也君達と同じ入れ替わり組よ」

「どうして皆と合流せずにこんな所に」

「それが会うのが気恥ずかしいんだって」

「そんな理由で、腕の方はどうなんですか?」

 

口元に手を当てて面白そうに笑う響子に理由を聞いて少々不安そうな態度を見せながら尋ねる茂茂の所に

 

「!」

 

ダッ!とマントを羽織ったその人物が動いたと思ったら杏子の背後に一瞬で現れ

 

目にも止まらぬ速さで右手に持った刀を響子の首筋近くに後ろからピタリと置いた。

 

「……」

「……ちょっと将軍様の身体に手を出せないからって私で試さないでくれない?」

「なるほど、腕は確かな様だ。動きに対して全く反応出来なかった」

 

どうやら茂茂に自分の実力を見せる為にその者が立ち回ってくれたらしい。

将軍の身体であったとはいえその動きを追う事が出来なかった茂茂は背後にいる小柄な人物にしかめっ面を浮かべている響子をよそにその人物をジッと眺めていた。

顔はローブで覆われて見えない長く赤い髪と……

 

(仮面……?)

 

金色に輝く二つの目と顔の上半分を覆った仮面。

分厚い服の上からでも分かる均整の取れた肢体。

マントの下に見えた制服は黒紫色

 

(あの制服は……)

 

 

 

 

 

 

 

茂茂が響子から話を聞いている頃。新八と神楽は別の部屋であたりを見渡していた。

 

「いやいやウソでしょ……これまんまアレだよ、まんま天空の城だよ……」

「間違いないネ! ここ軍の連中がムスカ大佐に落とされた所アル! すげぇ私達遂にラピュタデビューだぜキャッホーイ!!」

「神楽ちゃん落ち着いて、つうかラピュタを宇宙船に改造するとか罰当たりもいいところだよ」

 

どっかで見たような光景の数々に神楽がはしゃいでいる中、新八が一人申し訳なさそうにしていると後ろから一人の少女、司波深雪が近づいてくる。

 

「おい、こんな事で騒いだりビビってんじゃねぇよコノヤロー」

「あ、銀さん」

「そういうリアクションはもう向こうの世界で俺達が十分にやってるから今更いいんだよそういうの」

「てことは銀さん達も騒いだりビビッたりしてたって事ですね……」

 

けだるそうにしながらやってきた深雪に新八はボソッと呟くと改めて彼女を見て

 

「にしてもやっぱその見た目だと違和感バリバリですよ、目が若干死んでたりけだるそうにしている所が銀さんっぽいですけど」

「こっちだって違和感バリバリだよ、こちとら上から下まで何もかもが変わってんだからな。おまけに未成年だから深夜に飲み屋行ったら追い出されるし」

「当たり前ですよ、それに女の子の体で夜中出掛けるとか危ないじゃないですか、何考えてんですかアンタ」

「道場再興の為とか言って夜中男共に無理やり酒たらふく飲ませて金ふんだくる女よりは危なくねぇよ」

「そういう危ないじゃねぇよ! てかそれ姉上の事言ってるだろ!」

 

悪びれもせずに平然と答える深雪に新八がツッコミを入れていると神楽も寄ってきた。

 

「おい銀ちゃん向こうの世界どうだったアルか? ラピュタがあるなんてきっとすごい所だったんだロ?」

「ああ? 別にたいしたことねぇよ、強いて言うなら定春にいつも食わせてたドッグフードが俺達の世界より若干安かった事ぐらいだな」

「マジでか、これはもう私達万事屋も異世界に移住するしかないアルな」

「そうだな、ババァの家賃の催促もうんざりしてた頃だし、夜逃げしてあっちで店構えるのもアリだな、定春のエサ代も安くなるし」

「ペットのエサの為に異世界飛び越えるなんて聞いた事ねぇよ! 行くんならあんた等だけで行ってください!!」

 

安直な考えで異世界に永住しようか考え始める深雪と神楽。しかしすぐに深雪は小指を鼻に突っ込みながらヘラヘラと

 

「冗談に決まってんだろ、結野アナのいねぇ世界なんざに誰が住むかよ」

「ちょっとぉ! なに深雪さんの姿で鼻に指突っ込んでだアンタァ!!」

「誰の姿だろうが俺の勝手だ、俺は俺の自由にやらせてもらうぜ。あれなんかデジャヴ?」

 

鼻に指を突っ込んだまま深雪は前にこんなやり取りあったようなとか考えていると

 

「私の姿でそんな醜態をみんなの前で晒さないでくださいこの恥知らず」

「ギャァァァァァァ!!! これもデジャブゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

背後から近づいてきた本来彼女の体の持ち主が宿っている坂田銀時が容赦なく日本刀でブスリと彼女の後頭部を突き刺す。

前にもこんな仕打ち受けたようなと思いながら深雪は流血する頭部を押さえながら後ろに振り返った。

 

「テンメェ自分の体になにしてんだゴラァ!! ていうかどこで見つけたそんな刀!」

「七草会長から拝借したまでです、ほのかと雫に聞きましたけどあなた人の体で随分と楽しくやっておられたようですね」

「ああ?ガキの体に俺が欲情する訳ねぇだろうが」

「そういう意味で言ったんじゃありません、もしそうであったならこの程度じゃ済みませんから」

 

こちらを凄い威圧で睨み付けて来る銀時に深雪がしかめっ面を浮かべていると、先ほど銀時と話し込んでいたらしい光井ほのかと北山雫がやってきた。

 

「なんか深雪の後頭部に日本刀がぶっ刺さる音がしたけど何かあったの?」

「何で音だけでそこまで状況読み取れるの……?」

「別にユッキーと銀ちゃんが喧嘩してるだけアル、大したことじゃないネ」

「そしてこの人はさっき私を散々殴ってきたのにどうして平然と話しかけてこれるの……?」

 

相変わらず不思議な感性を持つ雫と何食わぬ顔で状況を説明してくる神楽にほのかが顔を引きつらせている中、深雪は顔をしかめたまま銀時のほうへ顔を上げる。

 

「つうかお前こそ銀さんの体になにかよからぬことしてねぇだろうな、風呂ちゃんと入ってたよな」

「目隠ししながらちゃんと入りました、あなたこそどうなんですか」

「当たり前だろ目隠しせずに堂々と入ってたよ。テメェの裸なんざもう見飽きたわ」

 

両手を腰に当てながらハッキリと宣言した深雪に銀時はスッと持っていた日本刀を掲げる。

 

「殺します」

「いやちょっと待てェェェェェェ!! 刀振り上げんな! アレだアレ! シャンプーの量減ってたからちゃんと買い込んでおいたから! それでチャラでいいだろ!!」

「バラバラに刻みます」

「いやいやテメェだってどうせ銀さんのあられのない姿を拝んでんだろうが! お互い裸見せ合ってんだからこれで完璧プラマイゼロだろ! むしろシャンプー買ってやった俺の方がマイナスだからね!」

「ふん!」

「ギャァァァァァ!! 自分殺し!!」

 

慌てて弁明してなんとか刀をおさめてもらおうとする深雪だが残念ながら銀時の持った刀は勢いよく彼女に振り下ろされる。

それを間一髪で避けながら必死の形相で逃げる深雪。

 

「あの状況におかれて置きながら凄まじい勢いで言い訳出来るなんて……」

「なかなか出来ることじゃないよ」

「何言ってんすかアンタ……」

 

呟くほのかの隣でうんうんと頷いている雫に新八がジト目でツッコミを入れている中、ギャーギャー喚いていた深雪は銀時に壁に追いやられていた。

 

「おい待て! ここで俺殺したらお前帰る体無くなっちゃうよ! 一生銀さんとして生きていく事になるよ!!」

「問題ありません、性転換した後整形を繰り返してオリジナルの体と瓜二つの容姿にします」

「無理に決まってんだろそんな事! ルパンの変装じゃあるめぇし!」

「ということでさよなら私の元体」

「いやぁぁぁぁぁぁ!! 助けてお兄様あなたの妹がご乱心です!」

 

ジリジリと歩み寄りながら刀を構える銀時に深雪が咄嗟に兄に助けを求めていると

 

「二人とも冷静になるのだ、仲間同士で争う事ほど無意味なことはない」

「「!」」

 

いつの間にか銀時と深雪の間に入って止めに入ってきた人物に二人は目を見開く。

その人物は

 

「そのような行い、この現征夷大将軍、徳川茂茂が黙って見過ごすわけにはいかん」

 

天下の将軍様、徳川茂茂こと司波達也、体が変わっていてもなおその体からは後光が差して見える。

 

「お兄様……! ではなく将軍様! アレ?」

「将軍様ァァァァァァ!! 助けてくれてありがとうございますホント! アレ?」

 

現れた達也に銀時と深雪が様々な反応する中二人はある事に気づいてピタッと止まる。

なぜなら今の達也の状態は

 

「ってなんで服着てないんだよ将軍!!! なんでパンツも穿かずに生まれたままの姿になられておいでなのですか!!」

「イヤァァァァァァァァ!! お兄様の恥部が大衆の面前で堂々とお見せにならないで下さい!」

 

そこには裸一貫で堂々たる立ち姿で股間にモザイクをかけた達也がそこにいた。

悲鳴を上げる二人に対して達也は無表情のまま

 

「うむ、すまない。実は先ほどつい着ている物全てを洗濯機に入れて湯に浸かっていてな、皆が帰ってきたのに将である余が迎えねばという思いと裸のまま会いにいくのはどうかと悩んでいたのだが。思い切ってここは前者を選んでみた」

「なんでそこで前者選んだ! 他人の体をこんな面前で晒す事が将軍どころか人としてどうなの!? それが許されるなら将軍皆全裸だよ! つうか俺達がやり合ってる時になんで呑気に風呂入ってんの!?」

 

全裸になっても将軍としての責務を果たそうとしていた達也に深雪がツッコミを入れていると新八も慌てて駆け寄る。

 

「ちょっと何やってんですか! 女の子達がいる所でなんて格好でいるんですか! てかアンタ誰!」

「新八、これ将軍」

「えぇぇぇぇぇ!! 申し訳ありません将軍! 我々には遠慮なくどうぞ恥部を曝け出していて下さい!!」

「いやそれもダメだろ」

 

駆け寄って来てそうそう相手が天下の将軍だと聞いてビビッて滑りながら土下座する新八。

 

 

「おいどうすんだよ新八、将軍また全裸になっちゃったよ。何で毎度毎度全裸になるんだよ、別にこちとら期待してねぇんだよ。どんだけこっちは将軍の股の足軽拝んでると思ってんだよ、もう見飽きてるよこっちは」

「あ、待ってください銀さん! 将軍のアレ足軽じゃありませんよ!」

 

深雪が小声で非難しているなか、新八は立ち上がりながら達也のある場所を指差す。

 

「足軽どころか名のある武将クラス並にご立派になられてます! 島左近です! 島左近がぶら下がっています!!」

「オイィィィィィ!! やべぇよお兄様島左近だったよ! 将軍様の足軽なんて軽く消し飛ばせる猛将隠し持ってたよ! あれじゃあ比べられて将軍様も立つ瀬が、アレ?」

 

前より大き目のモザイク使ってる部分を指差して叫んでいた新八と深雪だが、二人はある事に気づいた。

表情に変化はないが心なしか達也が自信ありげに立っている様な気が……

 

「銀さん、将軍様ちょっと嬉しそうですよ、足軽から島左近になった事を僕等にツッコまれて待ってましたと言わんばかりに両手に腰を当てて堂々と見せ付けてきました」

「いやちょっと将軍それアンタのじゃないですから、お兄様のモンですから。どんだけ自慢げに見せびらかしてもアンタのチンコは足軽だという事に変わりないですから」

 

フンッ!と鼻から息を出しながら少々自慢げな様子の達也に深雪がジト目でツッコミながらチラリと隣にいた銀時に話しかける。

 

「おい妹、お前からも言ってやれよ、自分の兄貴の全裸公開されてんだぞ。島左近丸見えだぞ」

「お兄様の姿であのような痴態を行うとは」

 

銀時は腕を組みながら裸の達也を見つめる。

 

「いかに将軍であろうとあのような真似は許しません、罰としてお兄様の体でいる間ずっとあのままにしておきましょう」

 

ドクドクと鼻血を出しながら

 

「いやその鼻血はどういうことだコラァ!! 何兄貴の全裸見て興奮してん変態妹!!」

 

ポタポタと床に鼻血を落とす銀時に深雪がキレながら彼の裾を掴む

 

 

「それだとまるで銀さんがお兄様の体に興奮してるような絵面になるだろうが! 今すぐその鼻から出てるもん止めろ!!」

「止められません! この想いだけは永遠に!」

「知らねぇよそんな事! 想いじゃなくてさっさと鼻血止めろつってんだよ!」

 

決死な表情でそういい切る銀時の腰に深雪がローキックをかましていると、ほのかがタタタッと駆けよって来る。

 

「銀さん!」

「おお丁度良かった、コイツちょっとどうにかしてくれ」

 

やってきたほのかに彼の介抱を求めるがほのかは突如深雪の目を手で隠し

 

「刺激が強すぎると思うからお兄さんの裸見ちゃダメ」

「いや俺じゃなくてそっちぃ!!」

(銀さん……深雪をよそにやって自分だけお兄さんの裸を独占しようとするなんて……)

「おい今物凄いとち狂った事頭の中で考えてんだろ!! ぜってぇまだ勘違いしてるよコイツ!!」

 

地球から飛びだってからずっと誤解したままでいるほのかであった。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、深雪達のいる宇宙船と下で繋がっている快臨丸では。

無人になった船頭室で陸奥と千葉エリカがモニターを眺めていた。

 

「あれから蓮蓬軍からの攻撃は無し、どういう事じゃ一体?」

「膨大な力を使うには膨大なモンを代償にしなければならん、この世の生業は等価交換。わし等を入れ替えた装置もよほど動かすのに手間のかかるっちゅうもんじゃった話じゃけ」

 

敵艦の姿も見えず蓮蓬からの攻撃も無い。どうやら異空間転心装置は長時間による連射はそれ相応の時間を費やしてチャージしなければならない様だ。

 

「しっかしまさかおまん等もこっち来ておったとはのぉ陸奥、そんなにわしに会いたかったんか? アハハハハハ!!」

「艦長としての責任をほっぽり出してるバカをさっさと連れ戻そうと思っただけじゃ、おまんがいなくても快援隊はわし一人でどうとでもなるが、長くいなくなられるとさすがに仲間の士気に影響が出るきん。全くこういうトラブルは一回限りに……」

 

ヘラヘラ笑っているエリカに陸奥は淡々とした口調で注意をしていると彼女の後頭部にポンと丸まった紙くずが当たった。

 

「……なんじゃ」

「何やってんのよそこはツンじゃなくてデレでしょうが!!」

 

不機嫌そうに陸奥が振り向くとそこには物陰に隠れてこっちを見ていた坂本辰馬が

 

「もうちょっと自分に素直になりなさいよ! ほら抱きしめろ! 私の体だからって遠慮しないで抱きしめろ! そんな勇気もないなら今まであたしに散々な無礼な振る舞いをしていたことを謝れこのヘタレが!!」

「やれやれ残党がここにまだ残っておったか、どれ大人しくさせて拘束させるか」

「え!? いやちょっとあたし蓮蓬じゃないんですけど! ちょ、ま! ギャァァァァァァァ!!!」

 

顔を覗かせながらわけのわからない事を叫んでいる坂本の所へ陸奥は何食わぬ表情でこぶしを鳴らしながら近づいていく。しばらくしてその場から断末魔の叫びが

 

「……うるせぇな、敵陣の中にいるって事に自覚ねぇのかアイツ等」

「その敵に襲われてる最中に宇宙船で優雅にキセル咥えてた人は誰だったかな……」

 

窓辺に立って宇宙を眺めていた中条あずさに共に行動をしている桐原がボソッと呟くと彼女はフンと鼻を鳴らして

 

「俺はアイツ等と組んだ覚えはねぇ、身内同士の争いになんで俺が参加しなきゃならねぇんだ。それにテメェも行かなかっただろうが」

「アンタに認めてもらいたいんだからアンタに見てもらわなきゃ困るんだ」

「ハナっから誰もテメェなんざ見てねぇよ」

 

宇宙の中でスクラップと化している春雨の船達を眺めた後あずさはニヤリと笑いながら彼の方へ振り返る。

 

「誰かに見てもらいてぇならテメーの力で示して見せつけてみろってこった。もっともテメェのお遊び剣道なんざ見る気起きやしねぇが」

「なに! また俺の剣を愚弄するのかアンタは!」

「待て待て、こげな時に仲間同士でなに喧嘩しようとしてんじゃ」

 

あずさの挑発気味な誘いに逆上する突っかかりそうになる桐原の肩に手を置いて止めるエリカ。

 

「その鬱憤はこれから向かう星の連中相手に晴らせばええじゃろ」

「すまない……どうもこの男を相手にすると……」

「アハハハハ! 高杉は人見知りじゃけぇゆっくり仲良くなればよか!」

 

そう言うとエリカは桐原の肩から手を放して真正面のモニターを見据えた。

 

「さて」

 

 

 

 

 

 

「今度こそ奴さんの心開けるといいんじゃがの」

 

目的地はすぐそこまで来ている。

 

いよいよ蓮蓬との対決の時間が迫って来ていた。

 

二つの世界の命運は彼等に任せられる。

 

 

 

 


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