魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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第十五訓 到着&出発

それは正に強大なる動く要塞であった。

春雨の海賊達は驚愕する

アレが自分達の船よりもずっと大きいというだけではない。

あの地球人がこの様な恐ろしい力を兼ね備えていた事に絶望していたのだ。

 

「こちらの損害率60%! 徐々に増えていきます! 被害甚大!!」

「おのれぇ地球の猿共め! まさかあんな兵器を持っていたとは!!」

 

春雨の団員達が船の中で既に半ばパニック状態になってる中、隊長格の天人は一人映像モニターを見つめながら奥歯かを噛み締める。

今そこに映っているのは次々と仲間達をハエを叩き潰すかの如く殲滅していく。

 

「おのれ天空の城ラピュタめぇ!!」

 

所詮は古い文明を掘り起こしたに過ぎないと最初は甘く見ていた、しかしこの歴然の力の差を見せ付けられれば自分の早合点があまりにも愚かであったと実感するであろう。

 

「隊長! 全ての艦隊に対してラピュタから通信が!」

「な、なに! まさか降伏しろとでものたまうつもりか!?」

 

敵から通信が来るとは予想だにしなかった。

何を狙っているのかと天人が思案を巡らせていると目の前のモニターが通信画面に変わる。

これだけの味方を倒してきた猛者だ、一体どれ程の風貌をしているのだろう……

 

しかしブンッと目の前の画面に現れたのは意外にもどこか地味な顔立ちをした若い少年であった。

 

「……おい、なんだこの見るからにモブっぽい奴は、通信先間違えたんじゃないか?」

「いやそんな筈ないんすけど……」

『僕の名はモブではない』

「「!!」」

 

画面先で少年はこちらに向かって言葉を投げかけるとスッと眼鏡を取り出してそれを掛け

 

「僕、いや私の名は服部・範蔵・ウル・ラピュタ。古の歴史に消えていった一族の末裔にして王の血を引くものだ」

「オイィィィィィィ!! なんかとんでもない事言い出したぞ! 自分の事をムスカ大佐みたいに名乗りだしたぞ!!」

 

こちらに向かって邪悪な笑みを浮かべ名を名乗る少年に驚く一同。しかし画面に映る服部という少年は更に話を続ける。

 

『言葉を慎みたまえ。君達はラピュタ王の前にいるのだ、無礼を働く君達にこれから王国の復活を祝って諸君にラピュタの真の力を見せてやろう』

「真の力だと……! バカなあのロボット兵よりも恐ろしい物を搭載しているというのか……!」

『見せてあげよう!ラピュタの雷を!!』

 

服部は声高々にそう言うと自分の目の前置かれている黒い石で造られたラピュタの操作機の様な物の上をゆっくりと指でなぞり始める。

すると黒い石が突如光りだしたと思いきや……

 

自分達の頭上にあるラピュタの底にある球形状の底がこちらに向かってカッと光った次の瞬間には巨大な雷が

 

「……え?」

 

隊長の意識はそこで途絶えた。

雷はあっという間に彼らの乗る船を飲み込み、そして周りの船も木の葉のように吹き飛んでいく。まさにとてつもない威力だ、あまりの破壊力に春雨の部隊は言葉を失う。

 

『旧約聖書にあるソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ。ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えているがね。この圧倒的強さを前に、いずれ全宇宙はラピュタの元にひれ伏すことになるだろう』

 

まだ残っている春雨の艦隊達に向かって服部はそう宣言すると、今度はラピュタ内部からワラワラとロボット兵を戦場に投入させる。

 

「こ、今度はまたあのロボット兵を出してくるだと!」

「そんな! 五隻沈められてやっと一つ落とせるあの兵器がさっき以上に!!」

『ハッハッハッハ! 素晴らしい!最高のショーだとは思わんかね!?』

「ダメだこんな奴敵に回しても無駄死にするだけだ! 早く撤退を……ぐわぁ!!」

 

両手を広げて感極まって喜びの声を上げている服部を前に春雨の団員達が抱いた物は彼に対する恐怖。

圧倒的力の差を前にもはや無様に逃げるしか道はないと思い急いで撤退命令を出そうとするが

 

「ぐわぁ!! す、既にわが船にもロボット兵が!」

『ハッハッハッハッハ! どこへ行こうというのかね!?』

 

しかしそれすらも許さない服部、誰一人討ち漏らす気はないという気迫で巧みにロボットの軍隊を操り蹴散らしていく。

 

そして通信先の春雨の舞台から聞こえる阿鼻叫喚の嵐を前に、服部は腕を高く掲げて勝利を喜ぶのではなくラピュタの力そのものの強さと恐ろしさに歓喜するのであった。

 

『ハッハァ!見ろぉ!!人がゴミのようだ!!!』

 

服部・範蔵・ウル・ラピュタの快進撃はまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

その頃、服部がラピュタで暴れまわっている隙に快臨丸が率いた地球連合軍はというと

 

「作戦通りじゃ、全艦上手く入り込めたの」

 

蓮蓬達が使う船の出入り口に難なく侵入出来ていた。彼等は遂に主犯である蓮蓬の母星に辿り着いたのである。

 

「ラピュタが思った以上に暴れ回ってくれてるおかげで春雨も蓮蓬もアレに釘付けじゃきん、あの少年思った以上にようやってくれたわい」

「いや……」

 

快臨丸の船頭室にて感心したように褒めているのはこの船の副官である陸奥。

しかしその隣には全く附に落ちない様子で肩を震わせている志村新八の姿が

 

「やり過ぎだろうがぁぁぁぁ!! なにあのエセムスカ大佐!? 人がゴミのようだって笑ってましたよ!!」

「落ち着けヨ新八、ラピュタ動かしていいって言われたら誰だってみんなムスカ大佐になるって決まってるネ、いいなー私もあそこでフハハハハハって笑いたかったアル」

「まさかあの人ずっと出番無かったけどもしかしてずっとラピュタ操縦してたの!? あんな危険人物に僕等助けてもらっていたのかよ!」

 

羨ましそうにモニターにまだ映っているラピュタを見つめながら神楽が呟いている中、新八は頭を抱えて叫びだす。

彼の言う通り、ラピュタの操作は向こうの世界からずっと服部が操作をしていた。

なぜ彼がそんな大任を任されていたのかというと、彼がラピュタの奥深くにあるコントロールルームから絶対にこの場から動かんという姿勢で陣取っていたからだ。

その為、「じゃあもうそこまでやりたいならやらせてあげようか」とその場にいたメンバー一同の適当な判断で服部がラピュタの操作を任されていたのだ。

 

しかしその適当な判断がまさかここまでの成果を発揮するとは

ラピュタを宇宙船に改造にした一人である藤林響子も少々驚いていた。

 

「驚いたわね、アレを操作するには古式魔法の類を用いてるし扱いが凄く難しいから私が操作しようと思ってたのに、もしかしたら本当にラピュタの一族の末裔なのかしら彼?」

「ラピュタの末裔なんていねぇよ! 僕らの世界もあんた等の世界にもいねぇからそんなの! いるのはジブリの世界だけだから!」

 

もしかしたらと思ってしまうほどの操作テクを見せ付けられて響子が服部を高く評価してる中すかさず新八がツッコミを入れる。

 

「あれ? ていうかアンタ誰ですか?」

「私? 私は向こうの世界で軍人をやっている藤林響子よ、今は将軍様の護衛を勤めているわ」

 

知らない相手でもツッコミを怠らない新八に対し響子はやんわりと微笑む。

 

「よろしく若いお侍さん」

(うわ、さっきから思ってたけどこの人笑うとますます綺麗だな、こんな人が軍の人だなんて信じられないよ……)

 

ただの挨拶なのに新八が顔を赤らめて動揺していると、そんな彼の下に一人の少女が近づき

 

「いづ!」

「決戦前に鼻の下伸ばしてんじゃねぇよぱっつぁん」

「ぎ、銀さん!」

 

後ろから思い切り新八の背中に張り手を入れる。すぐに新八が振り返るとそこにいたのはけだるそうに首をかしげいてる司波深雪。

 

「ったくいい加減向こうの世界の女に慣れろよ、もう人目でわかるんだよ、童貞オーラ放ち過ぎだ」

「童貞オーラってなんだよ!! そ、そんなモン放った覚えねーし!!」

「じゃあ立った方?」

「立ってもねぇよ! いい加減そっちもその顔で卑猥なこと言うの止めて下さいよ!」

 

見た目は可愛らしい美少女なのに中身がおっさんなおかげで違和感バリバリの深雪に新八がツッコんでいると快臨丸が速度を遅めてゆっくり止まり始めた。

 

「よし上手く内部に潜り込めた、待たせたのおまん等、久しぶりの外出ぜよ」

「遂に来ましたね銀さん……」

「ああ、これでようやくこの体ともお別れ出来らぁ」

 

陸奥がそう言うと新八は深雪に向かって頷き彼女もまたフンと鼻を鳴らし腰に差した木刀に手を置く。

 

「最初で最後の修学旅行だ、観光スポットで羽目外しすぎて浮かれんじゃねぇぞ」

「はい!」

「へー若いのに勇ましいわね」

「へ!?」

 

ゆっくりと歩き出す彼女に新八は強く返事するとすぐに後に続こうとするが、そんな彼の顔すぐ近くにヒョコッと響子が顔を覗かせてきた。

 

「私は将軍様の護衛任されてるから一緒には行けないから応援しているわ、頑張ってね」

「は、はいぃぃぃぃぃ!!」

 

二人の顔の距離は僅かちょっとの隙間しかない。そんな状態でウインクして激励してくれた響子に新八はダラダラと汗を掻きながら裏返った声で返事するとすぐに深雪の後を追おう。

 

「銀さん待ってください!」

「遅ぇぞ新八、おめぇ一体なに……って」

 

後ろから呼び止められて深雪は死んだ魚のような目で振り返るとそこにいた新八を見て目を丸くさせる。

 

なぜか頭を腰の近くまで深く下げたまま半腰の状態という変な歩き方をしながら顔に汗をしたらせやってきたのだ。

 

「さ、さあ僕等で世界を救いにいきましょうッ!!」

「やっぱ立ってんじゃねぇかお前!!」

「おごぉ!!!」

 

すぐに新八が今何かを隠しているのかを察知した深雪は即彼の股間に向かって蹴りを入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

深雪達は久しぶりに船から外に出た。

そこは出入りしてきた船の待機室のような場所。

幸い、春雨の船は既に全部出撃してるみたいで自分達の船しか見当たらなかった。

 

「それじゃあ潜入作戦の内容を今から説明するぜよ」

 

戦いに赴く者達がこの場にいる事を確認すると、彼等の前で陸奥が指揮を取り始めた。

 

「まずはおまん等で小隊を編成し捜索班とここの防衛班に分ける。捜索班は入れ替わり装置の破壊を最優先にしつつ出来ればSAGIの破壊もやっておく事、防衛班はわしと一緒にここに陣取って船を護る、わしらにとって船は要じゃき、事が済んでも帰る船が無かったらそれでおしまいじゃからの」

「そんじゃあわしは防衛班じゃの」

 

陸奥の説明を聞いていち早く手を上げて立候補したのは快臨丸の持ち主である千葉エリカ。

 

「この船はわしにとって大事なモンじゃ、それに直にここに蓮蓬の連中ば押し寄せてくるじゃろうからわしのもう一つの目的も果たせるええ機会じゃけんの」

「前衛に出れないのは勿体無い気もするが、坂本さんが守備側に入るなら俺もそうするぜ。“こっちの坂本さんの方”も心配だしな」

「あたしだって本来の体なら無双してやるわよ、けどこの体じゃ古傷のせいで剣が握れないの。ということで船だけでなくあたしの事も護りなさい」

「すげぇ上から目線な頼み方だな……コイツとは元の世界に戻っても仲良くやっていける自信がねぇや」

 

エリカに続いて彼女を慕う西城レオンハルトとまともな戦力にならない坂本辰馬が防衛班に。

そして今度は深雪が小指で耳をほじりながら眠そうに欠伸をしながら

 

「じゃあ俺は捜索班で、理由? さっさとこんな体からおさらばしたいからに決まってんだろうが」

「じゃあ私もこの人と一緒の捜索班」

「ええ! 雫も!?」

 

深雪が捜索班に立候補すると続いて北山雫も手を上げた。明らかに危険度が防衛班より高いのにあっさりと決めてしまう彼女に親友である光井ほのかが驚きの声を上げる。

 

「いやそりゃ深雪達や世界を救いたいってのは私も同じ気持ちだけど、ここは慎重に考えたほうが……」

「そんな事言って迷ってると中学生の頃の班決めみたいに取り残されるよほのか」

「この土壇場で人のトラウマほじらないでよ! じゃあ私も二人と同じ捜索班で!」

 

なにか触れてほしくない部分を刺激されたのかムキになったほのかはほとんど勢いで深雪達の班に加わった。

 

「んじゃあ俺はこのガキ二人と新生万事屋チームとしてやっていくわ、お前等はプロト版万事屋として頑張ってくれ」

 

そう言って深雪が手を上げた相手は神楽、しかし彼女はジト目でどこか軽蔑の混じった表情で

 

「新生万事屋とか銀ちゃんいつの間にそんなモン作ってたアルか、もしかしてロリコンだったアルか? もう私に近づくんじゃねーぞ」

「人聞きの悪いこと言うな、誰がテメェ等ガキ共に発情するか、新八じゃあるめーし」

「アンタこそ人聞きの悪いこと言わないで下さいよ! 僕がいつ彼女達に発情したっていうんですか!」

「おっ立ててる奴に言われたくねーよ」

「コレは違いますから! 命を賭けた決戦を前に体が勝手に興奮してるだけですってば!」

「いいよもうそんな言い訳しなくて、どうせあの女にちょっと甘い事言われてコロッとやられたんだろ。童貞のお前にはちょっと刺激が強すぎたな」

 

神楽の隣にいたのはまだ半腰状態の新八。そんな彼を呆れた様子で深雪が見つめていると彼女の頭にゴツンと硬い拳が振り下ろされる。

 

「人の体でおっ立ててるとか童貞とか言わないで下さい」

「イダッ!」

 

彼女の頭を殴ったのは他でもない坂田銀時だった。深雪はすかさず後ろに振り向くと冷たく見下ろす彼に対抗するように睨み上げる。

 

「テメェ随分と人の体で好き勝手やってくれるじゃねぇか、言っとくが全部終わったらこれ100倍にして返すからな、覚えとけボケナス」

「それはこっちの台詞です、ほのかや雫も巻き込んで勝手な振る舞いの数々。全てが終わったら1000倍にして返すのでお忘れなく」

「だったら俺は10000倍にしてカウンター決めてやるよ」

「なら私は100000倍で」

「それなら俺は1000000倍だ」

「では10000000倍で」

「100000000倍」

「1000000000倍」

「……」

「……」

 

子供の喧嘩みたいな不毛な張り合いを続けていた深雪と銀時だが両者にらみ合ったまま遂に

 

「だーもうめんどくせぇ! 事が済むまでなんか待ってられっか! ここでシメてやらぁ!!」

「望む所です恥知らずが!! 魔法も満足に扱えないでしょうあなたなど腕力だけで捻じ伏せれますから!」

「上等だ俺の力もまともに扱えねぇガキのクセに! 見せてやらぁ俺の斬魂刀を! 霜天に坐せ氷輪丸!」

 

遂に互いに実力行使に出てまたもや掴み合いを始める深雪と銀時。

出会ってからずっとこの調子の二人、人目も気にせずギャーギャー喚きながら喧嘩していると

ズイッと司波達也こと徳川茂茂が(ちゃんと着物を着てる)二人の間に割って入る。

 

「戦いを前に無駄な体力を使うんじゃない」

「「お兄様!!」」

「いやなんで銀さんもお兄様呼びなんですか?」

 

銀時と一緒に同じ呼称を使う深雪に静かに新八がツッコむ中、茂茂は銀時の肩に手をポンと置く。

 

「出来るなら兄としてお前には安全な場所にいて欲しいと思うんだが。すぐにでも元の姿に戻りたいと本気で思っているお前を諦めさせる言葉は今の俺には思いつかない。無事に生きて俺の下へ戻ってきてくれ、深雪」

「は、はい! すぐにでも元の姿に戻ってお兄様の下へ帰ります!」

「近い近いおたくら顔近い! 俺の体で将軍と見つめ合いながら顔赤らめてんじゃねぇ! 気持ち悪ぃんだよマジで!」

 

傍らに自分がいるにも関わらず互いの目を覗き込むぐらいに顔を近づけあっている茂茂と銀時に深雪が腕にさぶいぼを作りながら叫んでいると、それをちょっと離れた所から見ていたほのかがボソリと

 

「嫉妬……!」

「宇宙にぶん投げられてぇのかクソガキ!」

 

変な勘違いをしている様子のほのかに深雪がすかさず近寄ろうとすると、突然茂茂にガシッと肩を強く掴まれる。

 

「というわけで深雪の体は俺が護ろう、よろしくな銀さん」

「ってふざけんなぁ! 将軍の体を前線に出せる訳ねぇだろうがボケェ!!」

 

どうやら自分達と同じ捜索班に加わろうとしている茂茂

そんな彼の手を払いのけながら深雪は指を突きつける。

 

「テメェは将軍と一緒に船の中で待機だ! 少しは自分の体がとんでもない御方のモンだという事を自覚しくれませんかねぇお兄様!」

「そうは言ってもこちらとしても妹の体で好き勝手に暴れ回ってもらうのは心配なんだ」

「テメェの都合なんざ知るか! 人間皆命の価値は平等だと思ってんじゃねぇぞ! 将軍の体に傷でも付けたらこの場にいる俺達全員の首が飛ぶんだよ!」

 

前線に加わろうとする茂茂に説教しながら深雪が乱暴に突き放していると

 

それをほのかはジッと見つめると首を横に振り

 

「一緒にいたいけどそれはお兄さんに危険が及ぶ可能性がある、だからここは自分の気持ちを押し殺してでも護ってあげたい、そういう事なんだね銀さん」

「お前はいい加減その腐った脳みそどうにかしろ!」

 

そっと目を拭いながら呟いてる彼女にいち早く感づいた深雪が拳を振り上げ怒鳴り声を上げた後、再び茂茂の方へ振り返る。

 

「お前さんが妹の事護りてぇって気持ちはわかったよ、けど今のテメェはそう身勝手に動かせる体じゃねぇんだ」

「……そうだな」

「だから少しだけ待ってろ、入れ替わり装置破壊したらお前も晴れて元の体だ、テメェがどれほど強いのかどうか知らねぇし相手がどれ程手強いかもわからねぇがそん時にいくらでも妹護ってやれや」

 

そう言って深雪はクルリと踵を返して歩き始める。

 

「それまでは俺がお前の妹の体護ってやるよお兄様」

 

最後にそう言うと彼女はほのかと雫を連れて言ってしまった。

 

「……なんとなくはわかっていたが、やはりただの乱暴者ではないらしいな」

「騙されちゃいけませんよ、付き合いの長い僕等が判断するにきっと滅茶苦茶深雪さんの体酷使しますからあのちゃらんぽらん」

「デリケートな女の子の体を徹底的に弄ぶ魂胆ネ、私もアイツの元で散々コキ使われてるからわかるアル」

 

静かに頷く茂茂の後ろから新八と神楽もまた前に出て好き勝手言いながら前に出た。

 

「だからせめて深雪さん自身の方は達也さんの代わりに僕らが護らせて頂きますから」

「報酬はプロト版万事屋に振り込んで置けヨ、新生万事屋には一文も渡さなくていいからな」

 

それだけ言い残して二人は行ってしまう、そしてそれを追うように銀時も動き出し

 

「では行ってきますお兄様」

「……ああ」

 

僅かに笑いかけながらそう言うと銀時は新八と神楽の方へと駆け足で向かって行った。

残された茂茂もまたそんな彼の後姿を眺めながら真顔に戻り

 

 

 

 

(さて、体よく任せたフリをしたがどうやって周りからバレずに上手く抜け出そうか……)

 

残念ながら彼は三人を信頼していなかった。

 

「司波深雪を護れる者は自分を置いて他にいない」という信念がある。

例えこの場にいる者全員を敵に回そうと、それだけは絶対に譲れないのだ。

 

 

 

 

茂茂が企んでる頃、司波達也の方はというと響子に快臨丸の待機室へと案内させられていた。

 

「将軍様はこちらで待機してて下さい、後で達也君の方も連れてきますので」

「……やはり余が戦場に出ては駄目か」

「ええそりゃ当然ですよ」

 

末恐ろしい事をボソッと呟く達也に響子はバッサリと斬る。

 

「春雨、蓮蓬だけでなく私達の仲間にも将軍様のお命を狙う輩もいるとか。背中から刺される可能性もありますので将軍様にはこちらで隠れてもらいます」

「総大将が迂闊に前線に出てはいかぬ事は余もわかっておる、しかしこんな時だからこそ余も彼等と共に戦地へ赴きたかった」

 

イスに座りながら名残惜しそうに達也は呟く。

 

「攘夷志士も将軍も異世界というのも関係なく、ただ一つの人間として共に手を取り合って戦ってみたいと」

「勇敢なのはいい事ですがここは自分の身を護る事だけに徹しておいてください」

 

将軍としては立派な志かもしれないがそのような真似を許す訳にはいかない。

響子はビシッと言ってあげると厳重に注意する。

 

「ドアの前で見張ってますからね」

「仕方ないな、余は将軍らしく本陣であるここで良い知らせが来る事を待っている事にしよう」

「わかってくれて何よりです、それでは私は達也君を呼んできますね。用があったらドアの前にいる私に声を掛けて下さい」

「うむ」

 

達也が返事すると詢子はこちらに会釈してゆっくりと部屋を後にした。

残された達也は一人窓から見える蓮蓬の母星の内部を眺めていると。

その窓からヌッと一人の少女が顔を出してきた。

そして窓を音を出さずにゆっくりと開けると彼女は中へと入ってきた。

 

「将軍を密室の部屋に一人にしたままにするとはあの軍人もまだまだだな」

 

その少女は桂小太郎にして七草真由美、今最も将軍に近寄らせてはいけない人物であった。

彼女が現れても達也は全く動じることなく

 

「貴殿は縄で縛られ拘束されていたと聞いていたのだが」

「この桂小太郎、縄抜けの技など当の昔に熟知しておる」

 

そう言って真由美は窓辺に背を向けて腕を組みながら不敵に微笑んだ。

 

「案ずるな、別にこの場で貴殿を殺そうとは思っておらん、少しばかり面白い話を持ってきたのだ」

「ほう、退屈しのぎにはいいかもしれんな、してどのような話だ」

「将軍殿」

 

興味深そうに笑みを浮かべ返してきた達也に真由美はクイッと親指で窓の方を指差した。

 

 

 

 

 

「たまには互いの立場を忘れて俺達と一緒に少し観光巡りでもしてみぬか?」

 

 

 

 

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