魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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第二十四訓 四組&肆組

中層部で反乱軍VS蓮蓬軍が対決間近となっている頃、

司馬深雪とリーナはようやくゴミ箱から脱出できた。

 

「……どうする?」

「いやどうするって、お前が何とかしろよ、知り合いなんだろ……」

「いや俺コイツの事はヅラと風紀委員長から話を聞いただけだし、向こうの世界でコイツに会った時だって……」

 

しかし二人の表情は何処か冴えない。

顔を合わせて小声で会話しつつ、深雪はチラリと目の前にいる男を見た。

 

「中身高杉だったし……」

「はわぁ~、なんだか近くでドタドタと大騒ぎしてるみたいですね~」

 

彼女達の前にいるのは恐るべき攘夷志士、高杉晋助。

そして現在はその身体の中にいるのは本人ではなく中条あずさ、つまり自分達と同じ入れ替わり組だ。

 

「あの、高杉、じゃねぇやあーちゃんだっけ? あんまキョロキョロしながらこの辺うろつこうとすんなよ、危ないから」

「はい、それにしても司波さんも男の人と中身が入れ替わってたなんて私ビックリです」

「今俺の方がビックリしてんだけど、心臓バクバクなって今にも破裂しそうなんだけど」

 

こちらに振り返った高杉の顔にはパッとモザイクが、恐らくいつもの彼が到底しないような表情を作っているのだろう。

そんな彼を前にして深雪はずっと畏怖したまま上手く接する事が出来ないでいた。せいぜい自分達の事情を軽く説明しただけである。

 

「なんなのアレ、何あのモザイク? 高杉今どんな顔してるの? 気になるけど見たくないというこの気持ちはなんなの?」

「だから俺に聞くなよ、直接アイツに聞けばいいだろうが」

「いやいやこれならまだ本物の高杉の方が相手すんの楽だわ、もし高杉と入れ替わった野郎が出てきたら笑ってやろうかと思ってたが、これじゃあ笑えねぇよ……」

 

深雪は頭を抱えながら隣のリーナに助けを求めるも彼女は知らん顔。

すると二人のヒソヒソ声に気付いたのか、高杉はクルリと彼女達の方へ振り返り

 

「えーとあの……銀時さんでいいんですよね?」

「え? あ、はいそうです、私が坂田銀時です」

「なんで敬語使ってんだお前、相手は見た目コレでも中身はガキだぞ」

「うるせぇ! 昔からの知り合いが「はわわ~」とか言いながら顔面モザイクになってるのと直面してみろ! どう対応していいかわかんねぇんだよ!」

「俺は近藤さんとはかなり長い付き合いだが、俺は別にあの人がモザイク付けててもなんとも思わねぇぞ」

「年中股間にモザイク付けてるゴリラと一緒にすんじゃねぇよ!」

 

どこかズレた事を言うリーナにツッコミを入れつつも、深雪は渋々高杉の方へとまた振り返った。

 

「いやあのその……そういやお前、鬼兵隊とはぐれたとか言ってたな。あいつ等も内部に入って来てるの?」

「ううそうなんですよぉ、河上さん達と入れ替わりを直せる機械を探す為にここまで来たんですけどはぐれちゃってぇ……銀時さん達とと会えてなかったら私怖くて泣いてたかもしれません……」

「へ~そう、良かったね俺達と会えて、本当に……じゃあ俺達と一緒に入れ替わり装置を捜しに行くがてらに鬼兵隊の奴等も探しに行こうか」

「は、はい! 良かったぁ銀時さん良い人で、司波さんが羨ましいです、私なんか入れ替わった人が本当に怖い人で……」

「……」

 

まあ相手がアレなら怖がるのも無理はない。大方ここで互いの顔を合わせたのであろうが、相手がどんな顔をしてこの高杉を前にどういった反応をしたのかは深雪も容易に想像できる。

 

「すっごく怖かったんですよぉ、私の顔してるのに目つきが怖くて、私の体なのにキセルとか吸ってたし、私未成年だから吸っちゃいけないのにぃ……うう」

「ご、ごめんねあーちゃん! あのバカには俺がちゃんと厳しく言っておくから! いやアイツって煙吸ってればカッコいいと思ってる典型的な厨二病患者だからね! 俺がぶん殴ってすぐ止めさせるから!」

「わ、私の体を殴るんですかぁ~?」

「ううん殴らない! 銀さん暴力とか大嫌いだからね! しっぺ! しっぺでアイツを懲らしめます!」

 

どんどん濃くなるモザイクの向こうでは高杉の泣いてる声が……

それに頬を引きつらせながら深雪は慌てて彼に向かって叫ぶと、すぐにリーナの方へ振り返り

 

「俺もう無理! リーナさんパス!」

「はぁ? さっきからお前どんだけアイツにビビってんだよ、あんな泣きじゃくってる奴なんざちょっと強く言って黙らせればいいんだよ」

「出来る訳ねぇだろ! そら見た目がただのガキなら俺だって普通に接する事出来るよ!? でも見た目高杉なんだもん! 世界ぶっ壊したい病患者なんだもん! 顔面モザイクなんだもん!」

 

こうも接する事が難しい相手が現れるとは深雪も想像だにしなかった、基本相手が鬼だろうが仏だろうがいつも通りの自分のままでいられるのに、この高杉を相手にすると調子が狂いに狂いまくる。

 

そんな彼女にリーナは呆れつつ、制服のポケットに両手を突っ込んだまま代わりに高杉の方へ一歩足を出す。

 

「お前には悪いがその身体となっちまったからにはお縄につけさせてもらうぞ、高杉晋助は俺達がずっと追い続けてきた過激派攘夷志士だからな」

「ふ、ふえぇ!? どういう事ですかそれ! もしかして私捕まっちゃうんですかぁ!?」

「おい腐れポリ公! 何考えてんだ! この状況であーちゃん捕まえてもなんの意味があんだコラ! 遂に頭の中までマヨネーズに浸食されたかテメェ!」

 

唐突に捕まえようとしゃがみ込んでいる高杉に手を伸ばそうとするリーナの前にすかさず深雪が遮る。

するとリーナはため息交じりに

 

「目の前で弱体化した犯罪者がいる、状況はどうであれこれは俺達にとってはまたとないチャンスなんだよ、邪魔すんな日本人形」

「誰が日本人形だ! 祟り殺されてぇのか!」

「そん時は寺の坊さんにでも頼んでテメェを倉にぶち込んでもらってやるよ」

 

深雪とリーナがまたも顔を合わせて口論を始め、それを高杉が後ろで震えながら見ていると

 

「そこまででござる」

「「!!」」

「あ!」

 

喧嘩を始める彼女達の下へフラリと現れた人物に高杉はすぐに振り返る

 

「その身体に指一本でも触れてみろ、そなたらの華奢な体は跡形もなく肉片と化そう」

「お前は!」

「河上万斉……!」

 

深雪とリーナは突然現れた男、鬼兵隊の幹部、河上万斉の姿に驚いていると、高杉は黄色い声を上げ

 

「河上さぁ~ん!! 会いたかったですぅ~!」

「う……」

 

立ち上がると間髪入れずに彼の方へ駆け寄っていく。

しかし万斉の方はそんな彼の姿に一瞬冷や汗を垂らしつつ

 

「あ、あずさ殿ご無事でござったか、この辺は危険なので迂闊に歩き回るなと念を押して言ったはずでござるよ」

「ごめんなさ~い! どうしても皆さんのお役に立ちたくて~……」

 

少々引き気味の様子で万斉は高杉をなだめていると、今度は彼の背後からタッタッタと走る音

 

「河上せんぱ~い! 見つかりましたか~!? 早くしないとこの辺戦場になるっスよ! 私達も急いで行かないと連中のいざこざに巻き込まれるかもしれないって武市先輩が!」

 

万斉に続いてやって来たのは鬼兵隊の「紅い弾丸」と恐れられ、二丁の拳銃を巧みに操る事に長けた来島また子。

彼女がやってくると高杉は手をブンブンと手を振って

 

「また子さ~ん!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

万斉の傍に高杉がいる事を視覚で確認するや否や、また子はいきなり物凄い声を上げながら彼の方へ駆け寄り

 

「心配したんスよ、”晋助ちゃん”! もう私の目が届かない所に行っちゃったらダメっスよ! 全く晋助ちゃんのお世話役は私なんだからグヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!!!!」

「おいその女目つきヤバいって! 完全にイッちゃってるって!! 今にも晋助ちゃん食べそうな勢いだって!」

 

すぐに高杉に抱きつき、血走った目で舌なめずりしながら下卑た笑い声を上げるまた子を見て思わず深雪がツッコミを入れる中、気まずそうにコホンと咳をしながら改まって深雪達の方へ目を向ける万斉。

 

「なるほど、姿が変われど主らの中から奏でられるそのやかましい音色……白夜叉と鬼の副長土方でござるな」

「いや俺達の事よりその女どうにかしろよ! 晋助ちゃん今にも捕食されそうな勢いだよ!?」

「すぐにでもお主らとかつての斬り合いを興じてみたい所ではあるが、今はそんな事してる暇も無し」

 

後ろで高杉が「止めて下さ~い!」と泣きそうな声を上げ、イッったってるまた子に抱きつかれながら頬ずりされている光景を目の当たりにしている深雪にとっては万斉の話も耳に届かない。

 

そんな中、唯一冷静でいられるリーナはケッと呟くと、腰に差す刀の鞘に手を置く。

 

「そちらがやりたいかやりたくねぇかなんざどうでもいい、真撰組の副長が攘夷志士が目の前にいるのにみすみす取り逃がすと思ってんのか? よりにもよってデケェ借りがあるお前を……」

「はて? 伊東の件はそちらで事を済ませたと聞いたでござるが? アレを斬ったのは他でもないぬし本人であろう」

「テメェ……」

 

リーナには色々と元の世界で万斉とは因縁がある。瞳孔が開き、腰に差す刀に手を置き、万斉と一触即発の状態になっていると

 

「おやめなさいお二方、我々攘夷志士と真撰組が戦うのは世の常、ですが今置かれてる立場を今一度思い出して欲しいですな」

 

万斉、また子に続いてやってきたのは気味の悪い目つきをした中年の男。

鬼兵隊の参謀役として数々の謀略を用いて敵味方を巧みに操る事に秀でた策略家、武市変平太だ。

 

「我々がこの場で戦う事こそまさにこの母星の住む種族の狙いです、将軍を奪えば将軍を取り返さんと幕軍が動き、攘夷志士を奪えばそれを慕う者達が動きここに集う。我々がここに集まる事は当然敵も把握していたという事でしょう、本来力を合わせ連中と向き合えばならぬのに、こうして我々は今にも矛を交えそうなぐらい均衡状態なのですから」

「なるほど、真撰組の名だたる者達が体を奪われたのもそいう事でござるか、要するに地球人同士の仲間割れも狙っていると」

「そういう事です」

 

さすが策略家のプロと言った所か、色々とアレな性格ではあるがその辺に関してはキッチリと冷静に分析を行っていたらしい。

そして武市自ら、深雪とリーナの方へ歩み寄る。

 

「お久しぶりです晋助殿のかつての盟友、白夜叉殿。そしてウチの万斉さんがお世話になりました、鬼の副長殿」

「なるほど、俺等が分かるって事はもうとっくに情報収集済みって訳か……」

「こちらも晋助殿が奪われておりますからね、普段より少々頑張らせてもらいました」

 

事前に深雪達を始め他の者達の正体も把握済みなのであろう、さすがは鬼兵隊、幕府を脅し国家転覆を狙うだけあって様々な情報を仕入れる事も容易いと言った所か。

 

「今回ばかりは我々同士でいざこざをやってては連中の思うツボ、故に我々とあなた方が手を結ばぬ限りこの戦は負けるでしょう、我々の星だけでなくもう一つの星も。我々と共に戦ってはくれませんか?」

「まさかテメェ等の方から同盟結ぼうだなんて言い出すとはな、どうすんのリーナさん?」

「……確かにこの現況では勝ち目は相当薄い、手を組めば勝率も僅かなりに上がるかもしれん」

 

鬼兵隊と万事屋、そして真撰組が手を結ぶだなんて想像もできない。

こんなありえない状況に思わず深雪は苦笑しつつリーナの方へ振り向くと。

彼女は難しそうな表情で武市に向かって目を細める。

 

「だがイマイチ信用に足らんテメェ等に背中見せる真似なんざも到底出来ねぇ、現にテメェ等は仲間のフリして俺達の同志を斬った、その事チャラにしてテメェ等と仲良く手を繋ごうと俺が考えるとでも?」

「なるほど、真にごもっともな話です、ならば少しでも我々が今の所敵ではないと証明する為に用意した物をあなた方に献上させてもらいます」

 

小さな少女であるにも関わらずその殺意に満ちた眼光は正に鬼の副長そのもの、こちらを睨みながら威嚇してくる彼女に対し、武市は至って冷静に懐からゴソゴソとある物を取り出そうとする。

 

「コレは現在力の大半を失っているであろうあなた方にお力添えできる為に私が用意した物です、コレを使えばあなた方は入れ替わる前と同等、いやそれ以上の力を手に入れる事が出来ます」

「「!!」」

 

肉体を失い華奢で細身な体つきとなってしまった深雪とリーナにとっては願ってもない事だ。

一体それはどんな物だと二人が目を見開いていると、武市がバッとそれを取り出した。

 

 

 

 

 

「柔らかな生地を使い伸縮自在! どんなスタイルにもジャストフィット! 年頃の女の子が着ればその魅力三倍増し!! お肌にぴっちり張り付いて成長途中の少女の魅力をより鮮明に引き立てる事が出来る事間違いなし! 私が数多の地を巡りに巡って厳選し手に入れた最強宝具!! その名も「スク水」!!!」

「「いるかボケぇ!!!」」

 

ビニール製の袋にキッチリと収納された紺色と水色のスクール水着をなんの抵抗も無く堂々と出してきた武市に向かってすかさず飛び蹴りをかます深雪とリーナであった。

 

「おめぇさっきまで結構カッコいい策士キャラやってたじゃん! どうしてこの期に及んでロリコンキャラに逆戻り!? 結局お前の行く先はそこしかないの!?」

「ロリコンではありません、フェミニストです」

 

指を突き付けながらブチ切れている深雪にに向かって否定しつつ、武市は鼻から出た鼻血を袖で拭きとる。

 

「いいじゃないですか別にあなた方の本当の体ではないんですし、さあ着てください今すぐに、なんならお金出しますから、土下座でもなんなりしますから」

「すげぇなコイツ完全にプライド捨ててるよ! てか頼むなら高杉に頼めよ!!」

「もうとっくに頼みました、けど断られました。いやはやあの時はマジで殺されるかと思いましたよ、目がマジでしたホント」

「ウソだろオイ! 冗談で言ったのにまさかあの高杉にスク水着てくれって言ったの!? すげねぁある意味そこまでいくと本物だよ! 本物のバカだよ!」

 

自分達だけならともかく自分の組織のトップにさえ頼み込んだという武市に深雪は驚きを隠せないでいると、武市の話を聞いていた高杉がモザイク越しに「ひぃぃ~!」と悲鳴を上げ

 

「やっぱりあの人怖いですぅ! 私と入れ替わった高杉さんと会話してた時もすごい呼吸荒かったんですも~ん! 一体私の体を見て何を考えてたんですかあの人~!」

「くおらぁ! 武市変態! 私の晋助ちゃん怖がらせるとかいい加減にしてくださいよこのロリコン!!」

「だからフェミニストだって言ってんじゃん、そういうのじゃないから、別にそういうので見てる訳じゃないから、そういうのでスク水着て欲しいと思ってる訳じゃないから、あくまでフェミ道を貫く為にですよ」

「なにがフェミ道っスか! フェミっつかフェチでしょそれただの!! 死ねスク水フェチ!!」

「誰がスク水フェチですか、私はスク水以外にも好きなモノはあります、バニーとかボンテ―ジとか」

 

 

今度は怯える高杉の頭をなでながら激昂するまた子を武市がなだめようと余計な事を言い続けていると

 

「ほう、鬼兵隊の幹部が統率乱れてこうも大騒ぎしている所から見るに、高杉のカリスマ性も大した事ないという訳か」

 

鬼兵隊とは反対の方角、深雪達がやってきた方から一組の男女がフラリとやって来る。

 

「やはり日の本を変えるカリスマはこの世に一人、この桂小太郎だという事か」

「日本の夜明けよ! 桂さんこそ新しい国を照らす太陽なのよ!」

「ハッハッハ、さすが俺、ビバ俺、ビバ小太郎」

「ヅ、ヅラァ!? それとバカ会長までなんでこんな所に!?」

 

現れたのは鬼兵隊と同じ攘夷志士、その候補の七草真由美と桂小太郎。

どうやら茂茂達から逃げるルートが偶然にも深雪達と同じだったらしい。

 

「全くこの俺が攘夷志士として一世一代の悲願を達したというのに貴様等揃いも揃って一体何を……ん? そこにいるのはもしや……」

「も、もしかして会長さんですかぁ!?」

 

不敵な笑みを浮かべながら自分が何をやったのか言いたげな様子の真由美だが、ふと鬼兵隊の中に一人見知った顔があるのを確認する、高杉だ。

そして高杉もまた真由美の存在に気づき感極まった様子で

 

「来てくれたんですか会長! もしかして私を捜しに!」

「た、高杉!? なんだその喋り方と顔面にかかってるモザイクは!? まるで猥褻物扱いではないか! 一体何があった!」

「違うわ桂さん! 高杉さんは今あーちゃんの体の中に、そして私たち同じ様に入れ替わったという事は今高杉さんの体には……!」

「はえぇ!? もしかして会長も入れ替わってるんですか!?」

 

一瞬高杉とは思えない口調で話しかけてきたのでさすがに真由美も面を食らうが、すぐに桂が彼の正体を看破する。

そして高杉もまた桂の方へ目を向けて

 

「てことは会長はそっちじゃなくてそっちの男の人……」

「ええそうよ! 私が七草真由美よあーちゃん!」

 

互いに相手の中にいる者が誰だと悟った時、二人はバット両手を広げ同じタイミングで駆け寄っていく。

二人の背景には綺麗なバラが映し出される。

 

「か、かいちょぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「あーちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「おいぃぃぃぃぃぃ!! 高杉とヅラが大量のバラをバックにして抱き合おうとしてんだけど!? すっげぇ気持ち悪い絵面で俺もう吐きそ! うえ!」

「何を言う銀時! 長く離れていた二人が遂に感動の再会を遂げて今まさに熱い抱擁を交わすのだぞ! これを見て泣かぬのであればいつ泣くのだお前は!」

「お前なぁ! 昔同じ学び舎にいた二人がいい年して泣きながら抱き合おうとしてんだぞ! こんなの見せられる俺の身にもなってみろ!」

「学び舎か……きっと松陽先生も俺達の抱擁を見て草葉の陰で泣いておるであろうな……」

「別の意味で泣いてるよきっと!!」

 

何故か二人の間の空間だけがスローモーションとなり、ゆっくりと徐々に距離が縮まっていくのを深雪は気持ち悪そうに口を押え、真由美は両目から涙を流しうんうんと頷いている。

そして遂に二人が熱く抱き合おうとしたその瞬間

 

 

 

 

 

「俺の身体で気色悪い事すんじゃねぇ」

「「ごふ!!」」

 

突如天井から小さな影が二人の頭上目掛けて落下。

そして両足の裏で高杉と桂の頭上へ思い切り踏みつける。

哀れ二人は抱き合う前にその場でバタリと倒れてしまうのであった。

 

「俺が見てない間に身の毛もよだつ事しやがって……」

「って高杉ぃ!?」

 

その人影の正体は少女であり、本来の高杉晋助の魂が入っている中条あずさであった。

ずっと別行動をとっていたのでしばらく見ていなかったが、どうやら彼も内部に入って来ていたらしい。

 

「まあいいや俺の代わりにそいつ等やってくれてあんがとよ、危うくトラウマ抱える所だったぜ。今度牛乳奢ってやるよ、もう手遅れかもしれねぇけどもしかしたら背ぇ伸びるかもしれねぇぞ」

「チッ、テメェまだくたばってなかったのか」

「おめぇもまだおっ死んでなかったみたいだな、チビなのを利用してコソコソ隠れてたのか?」

「オメェの方はどうなんだ、その身体でちゃんと得物振れんのか、向こうの世界で俺と会った時みたいに間抜けな醜態晒してたんだろどうせ」

「あァ?」

「あ?」

 

高杉と桂を踏みつけた後、あずさは綺麗に床に着地しつつ、相変わらず癪に障る物言いをしてくる深雪を睨み付けながら歩み寄って行く。

やはりこの二人、どう足掻いても顔を合わせれば喧嘩しないと気がすまない性質らしい。

 

そしてそれを傍観して見ていたリーナは苦々しい表情で奥歯を噛みしめる。

 

(鬼兵隊の次は桂、そして高杉だと……コイツはさすがに今の俺じゃ分が悪すぎる……)

 

攘夷志士が続々と集まり出しているこの状況、あのモザイクまみれになってしまっている高杉一人なら捕まえるのも簡単であったのに、今となってはもう迂闊に近寄る事さえ出来ない。

 

なんとか打開策を……そうリーナが思っているとまたしても

 

「よっしゃぁ逃げ切ったぁ! ってぇぇ!? なんかここ一杯いるんだけど!?」

「おぉぉぉぉぉ!! なんじゃおまん等! わしがいない間に仲良く合流してたんかぁ!? つれない奴等じゃのぉ、ならばここはわし等攘夷組4人でuno大会でも!」

「げぇ! また増えた!」

 

今度は前々回、謎のゴリラと蓮蓬の襲撃に撤退を余儀なくされた千葉エリカと坂本辰馬であった。

ここが騒がしかったのでてっきり味方の本拠地だと思ってやって来たのであろう、そうそうたる面子にビビる坂本に対し、エリカは反面嬉しそうにunoを取り出している。

 

「チ……ここは一度奴等の案を呑んだ方がよさそうだな」

 

この状況ではさすがに手も足も出ない、幸い向こうはやる気はなさそうだしあちらから襲って来る事は無いであろう。

リーナは腰に差す刀からようやく手を離していると、やってきたエリカに早速真由美が話しかけている。

 

「坂本貴様何故ここに! 将軍を護るため、そして蓮蓬との交渉の為に船で待機していたのではなかったのか!」

「アハハハハハ! 実はちょっとウチの組員が敵さんにやられとったみたいでの! 命からがら逃げだしてきたんじゃ! ていうかヅラ、将軍護るも何もおまんのせいでとっくに台無しぜよ」

「台無し? フッフッフそうだな台無しだな、そういえばそうだ、フフフ……」

「どうしたヅラ、気色悪か笑い方しおってからに」

「ヅラじゃない桂だ。坂本お前もきっと驚くぞ、俺が一体何をしたのか」

「まあそれはおいおい聞かせてもらうとするきん、それよりも」

 

何やら様子のおかしい真由美にエリカはグラサン越しにジト目を向けた後、まだ二人で睨み合っている深雪とあずさに向かって手を振る。

 

「おい高杉! 金時! 久しぶりにuno大会でもせんか! 宇宙ルールでやるのは初めてじゃろうからわしが教えちょるばってん! 久しぶりに仲良くゲームするのも悪くないじゃろ!」

「うるせぇ! 世界がやべぇのに呑気にunoなんてやれっか!」

「おい銀時、どちらが先に坂本の奴を斬れるかで勝負つけるか?」

「上等だあんなバカすぐに俺がたた斬ってやらぁ」

「うえぇ!? 世界がヤバいのにどっちがわしを斬るか勝負しようとしちょる!」

 

少なくともエリカにとっては損しかないゲームを始めようとするあずさと深雪。

ジリジリと近づいて来る二人にエリカが額に汗を流しているとすかさず坂本が彼女達の間に躍り出た。

 

「くおらぁアタシの身体傷付けようとしてんじゃないわよ!」

「おお! おまんわしの為に身を挺して!」

「コイツが死んでも全然構わないけど、今コイツの体ごと斬られたらアタシが困るのよ! 斬るなら入れ替わりが戻った後にして!」

「この薄情モンがぁ!」

 

カッコ良く出てきたと思ったら実際は坂本辰馬の魂などいつ消えても全然構わないといった様子。

あんまりな仕打ちにエリカが叫んでいると

 

 

 

 

 

「ったくギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ」

「「「「「!?」」」」」」

 

 

そのあまりにもけだるそうな低い声に、その場にいた全員が反応してしまう。

奥の通路からツカツカと足音を鳴らし、一人の男がこの同窓会気分でワイワイ騒いでいる者達の中へ颯爽と現れる。

 

「お、お前は!」

 

いち早く彼の登場に声を上げたのは深雪、そしてその男。

 

銀髪天然パーマの男は洞爺湖と彫られた木刀を肩にかけ、死んだ魚の様な目をしながら首を傾げこちらに顔を上げる。

 

 

 

 

 

 

「発情期ですかコノヤロー」

「ぎ、銀さぁぁぁぁぁぁぁん!!」

「いや銀さんお前だろ」

 

新八や神楽も連れず、たった一人でフラリと現れた坂田銀時を前に驚く深雪に、珍しく真由美がボソッとツッコミを入れるのであった。

 

 

 

 




銀魂実写版の映画観て来ました。
いやはや一年前から実写決定&主演小栗旬&監督はあのヨシヒコで有名な福田監督と聞かされずっとずっと待っていましたのでようやく見れて感激です。
私個人としては大いに楽しめる作品でした、原作沿いではあるが福田監督らしいギャグもあったり、女優陣が心配になるぐらい体張り過ぎてたり、中村勘九郎さんの股間のモザイクがやたら薄くて普通に見えてたりと色んな意味で危ない映画だなぁと思いました。

それと作品に戻りますが感想欄で「もう誰が誰と入れ替わってるのかわからなくなってきた」と書かれていたので、今一度ここで”現時点”の入れ替わり主要メンバーを書いておこうと思います。


坂田銀時≒司波深雪
桂小太郎≒七草真由美
高杉晋助≒中条あずさ
坂本辰馬≒千葉エリカ
徳川茂茂≒司波達也
土方十四郎≒アンジェリーナ
近藤勲≒ゴリラ
十文字克人≒ゴリラ
沖田総悟≒????
神楽≒????

それでは

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