魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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第四十訓 離別&就職

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」

 

銀雪の降り下ろされた木刀が悲しき魔物、魔堕王の頭部へ刺さると、一気にその巨大な体がピキピキと割れ始め徐々に崩れ落ちていく。

 

銀雪の持つCAD搭載型特殊木刀の力は「中和」

 

分解、吸収とも違い、ありとあらゆる魔法を浄化し、無かった事にする為の魔法。

 

異世界へと渡った平賀源外がその世界の者達と発明したのは

 

魔法が日常的に扱われてる世界に対して冒涜とも呼べる

 

魔法そのものを否定す

 

魔堕王は天を仰いで叫びながら徐々に光に包まれてみるみる小さくなっていく。

 

「この私が、夢半ばで散るなんて……」

「コレで、俺達の戦いは終わり、だ……」

 

決着は着いたと悟った瞬間、銀雪はグラリと前のめりに倒れた。

 

 

 

 

薄れゆく意識の中で体の中にある二つの魂がゆっくりと離れていくのを感じながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他の者達が各々決着をつけている一方で

 

高杉一派もまた一つの戦いを終わらせていた。

 

「コレでこの場にいる蓮蓬は全て捕まえてたでござる」

「フン、所詮は影でコソコソ企むぐらいしか出来ねぇ種族だ、他愛ねぇ」

 

一仕事終えた様子でキセルを咥えながら一服をたしなむ高杉晋助、彼の目の前には数十匹以上の蓮蓬達が

 

皆縄にきつく縛られた状態で拘束されている。

 

そして彼の後方には河上万斉、来嶋また子、武市変平太の幹部勢だけでなく、他の鬼兵隊部隊も全員揃い踏みの状態であった。

 

短期間で無数にいた蓮蓬達を自らの部隊のみで捕まえることに成功した高杉。

 

銀時・桂と互角、もしくはそれ以上の剣術を持つ上に、部下をまとめる統率力は流石と言った所か。

 

「晋助殿、この者達はいったいどうしますかな?」

「んなの決まってるっスよ、武市先輩。コイツ等のせいで晋助様がどんな目に遭ったか考えれば答えは明白っス」

 

武市が晋助に歩み寄り参謀らしく進言すると、また子もまた身動き取れない上でいる蓮蓬の一人に冷徹に銃口を突き付け

 

「貴様等ぁ! 早く入れ替わり装置をもう一回作り直せぇ! そして晋助ちゃんを再び私の下にカムバァァァァァク!!!」

「また子殿、あなた一体どちらの味方なんですか? 反逆罪で粛清しますよ?」

 

血走った目で銃口をグリグリと蓮蓬の顔に押し付けながらとち狂った命令をするまた子に静かにツッコミを入れながら、武市は再度高杉の方へ顔を上げた。

 

「アレはほおっておいて話を続けます。蓮蓬、私としてはあまり生かしておくべきではないと思いますね。あの科学力は是非ともこちらで活用したい所ですが、いかんせん信頼できる相手ではありませんので」

「拙者も同意見でござる、あの者達の思想は危険すぎる。この場でさっさと処断する事が得策」

 

武市に続いて万斉も同じ考えだった様だ。

 

殺さず捕まえたのは改めてどう判断するか考える為、二人の意見に耳を貸しながら高杉は無言でキセルを吸っていると

 

「いや、ここで連中を殺すのは反対だ。それでは坂本さんの望みが果たせない」

 

この緊張感の中で唯一反対派だと訴えたのは、鬼兵隊のメンバーではない桐原武明だった。

幹部勢を相手に対し全く物怖じせず、堂々と高杉に進言する。

 

「坂本さんは蓮蓬達全員を説得し、再び彼等と手を取る事こそが一番の目的だと言っていた。ここで連中を殺したら和解なんて出来る筈がない、それではまた連中から恨みを買うだけで同じ事の繰り返しだ」

「なるほど、戦いをよく知らぬ若者らしい意見ですね桐原殿、ですがそれなら解決策はもう一つあります、それは彼等から恨みを買わねばいいだけの事です」

「どういう事だ……」

 

やたらと不気味な目をした武市が振り返って来たので、桐原が若干顔をこわばらせていると

 

武市はあっさりとした感じで答える。

 

「ここにいる蓮蓬を一人残らず我々の手で排除すれば、遺恨はおろか彼等の存在さえ消えてなくなる」

「な!」

「ぬしは晋助と共に行動していたのであろう? なら自ずとわかっている筈でござる、晋助は白夜叉に桂小太郎、坂本辰馬のような甘い考えは持ち合わせておらぬ」

 

高杉が彼等と行動していたのは、自分に対して刃を向けて来た相手にそれ相応の報復をする。それだけだ。

 

協力関係だろうが一時同盟だろうが知ったこっちゃない、鬼兵隊はあくまで容赦無しの過激派一派。

 

それを桐原にわからせようとしているのか、高杉はキセルを懐に仕舞うとすぐに腰に差す刀に手を置く。

 

「そういう事だ桐原、俺は坂本がなに企んで用が知ったこっちゃねぇ、俺がやるのは壊す事だけだ」

「ま、待ってくれ高杉さん! 連中を一人残らず全員殺すななんて真似したら坂本さん達がアンタ等にどう出るかわからないぞ! 下手すればかつての戦友同士で抗争に発展するかもしれん!」

「そいつはいい、坂本はともかくヅラと銀時とはいい加減決着つけてぇと思ってた所だ。それにコイツ等と和解するなんて到底無理な話だ、見ろ」

 

チャキッと刀を抜きながら高杉は桐原に捕まえてる蓮蓬達を見てみろと促す。

 

言われるがままに桐原は彼等を縄で縛られている見下ろしてみると

 

『おのれ地球人、またしても我等の星を滅ぼす気か……!』

『例えこの命尽きようと決して、この恨み決して忘れぬわ!』

『貴様等の話など聞かん、さっさと斬れ野蛮な猿共め!』

 

全員の蓮蓬がこちらを睨み付けながら、縄の隙間からかろうじてプラカードを出しながら恨みの言葉を漏らす。

 

これ程までの憎しみの感情が一体となっているのを見た事がない、桐原はあまりの異様な光景に思わずゴクリと生唾を飲み込む。

 

「まさかここまでとは……敗北はもう確定しているのに、コイツ等命は惜しくないのか……!?」

「惜しくもなんともねぇよ、コイツ等にとって俺達への復讐を失敗した時点で死んだも同然なのさ。コイツ等は見た目はアレだが中身は俺達侍とそう変わらねぇ、こんな連中を一体どう説得して和解する気なんだ?」

「確かに……だがどうにかして連中に一度落ち着いてもらえればもしかしたら……」

「今にも噛みついて来そうなコイツ等が落ち着くの待ってたら、それこそ俺達の方が寿命で死んじまう、だからその前に俺達が介錯してやろうってこった」

「!」

 

抜いた刀を怪しく光らせ、ほくそ笑みを浮かべてゆっくりと蓮蓬達に歩み寄っていく高杉。

 

間違いなくこの場で処断するつもりだ、彼を評価しているのも事実だが坂本の本願を叶えてやりたいのも本音

 

桐原はどうにかして彼等を止める術、そして蓮蓬達を説得させる策がないかと必死に考えていると……

 

「ま、待ってください高杉さん!」

「中条!」

「……」

 

蓮蓬達を斬ろうとする高杉の前に一人の少女が庇う様に両手を横に広げて現れた。

 

それは彼と入れ替わりを行った人物である中条あずさであった。

 

声を震わせ、こちらをギロリと睨み付ける高杉に対してビビりながらも、自分を奮い立たせ懸命に止めようとしたのだ。

 

彼女が現れた事に驚く桐原を尻目に、高杉の口元から笑みが消え、本気でイラっとした様子で彼女を見下ろす。

 

「おいおい、よりにもよって二度と見たくねぇツラがノコノコと俺の前に出てくるとはな。さっさと消え失せろ、後ろの化け物共と一緒に斬り殺されてぇなら別だが」

「ダ、ダメです! この人達はただ利用されていただけです! 話し合えばきっとわかってくれます!」

「俺達はそんなモン望んじゃいねぇ、二度は言わねぇ、殺すぞ」

「うう……やっぱり物凄く怖いですこの人……!」

 

坂田銀時と司波深雪の相性も最悪であろうが、この二人もまた別の意味で相性最悪である。

 

蓮蓬だけでなく自分に対しても殺気を放ってくる高杉に対し、あずさはすっかり涙目になってその場で縮こまるか逃げたいという衝動に駆られながらも、ここで負けたくないという精一杯の維持を張って耐える。

 

「だ、だったら私の力で高杉さんを止めて見せます!」

「あ?」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 

 

小リスのような印象を持たれるぐらいの虫も殺せない見た目をしている少女が自分を止めると言った。

 

過激派として江戸全域はおろか天人にも恐れられ、最凶最悪の攘夷志士として君臨する高杉晋助を止めると彼女は言った。

 

これにはさすがに高杉も本気で癪に障ったのか、手に持つ刀を強く握りしめて一層彼女を強く睨み付ける。

 

悲鳴を上げて泣き叫びながらもあずさは両手を頭上に掲げ、首に掛けてるペンダントを光らせながら必死に魔法を展開する。

 

「お、お願い! みんなを! 高杉さん達を止めて!」

「!」

 

祈る様に訴えていたあずさから急に不穏な気配を感じ取った高杉。

 

コイツ本気で俺達を止める気か? そう思った矢先、彼女を中心に円形状の波動が辺り一帯に展開する。

 

その波動は決して人を傷つける為のモノではなかった、そこにいた高杉や鬼兵隊、蓮蓬達もまたその波動に飲み込まれるも衝撃もダメージも無く、依然と何ら変わらない状況であった。

 

しかし何かおかしい、その場にいた全員がザワザワとしている中、参謀の武市がいち早く自分達の中で何かが変わっている事に気付いた。

 

「コレは驚きました……もしやこれは我々の精神を鎮静化させる魔法なのでは?」

「む、言われてみれば確かに拙者も何か急に頭が冷めたような気がするでござる……なんと面妖な……!」

 

武市の説明を聞いて万斉も気付き、珍しく声を少しだけ大きくして驚く。

 

予想だにしなかった現象に鬼兵隊の連中が不思議がっている中、それは蓮蓬もまた同じで

 

『どういう、事だ……』

『我々は地球人を強く憎んでいる……その筈なのに』

『なんで彼等を目の前にしても落ち着いてられるのだ……』

 

先程まで激しい感情に揺さぶられ、怒りを露にしていた蓮蓬達が皆徐々に落ち着き始めて行ったではないか。

 

まさか鬼兵隊だけでなく蓮蓬達の心も大人しくさせたというのか?

 

高杉が眉をひそめて、目の前で震えるあずさを眺めながら固まっていると、桐原がツカツカと彼の方へ歩み寄り進言する。

 

「中条が使った魔法は梓弓≪あずさゆみ≫という彼女だけが使える情動干渉系魔法だ。 プシオンを震わせた波動で、一定のエリア内にいる人間をある種のトランス状態に誘導する効果がある」

「トランス……つまり一種の洗脳か? 俺達は奴にまんまと思考を支配されていると?」

「いや意識を奪ったり意思を乗っ取る訳じゃないからな、相手を無抵抗状態に陥れたり操ることまでは流石に出来ない。しかし」

 

ちゃんと話聞いてくれる態度になった高杉に内心ほっとしながら、桐原は話を続けた。

 

「一度に多人数相手に使う事が出来る上に興奮状態にある集団を沈静化させるぐらいなら出来る、アンタ達や蓮蓬はみんなコイツの魔法にかかって精神が落ち着きを取り戻したのさ」

「……」

「この状況なら説得も上手くいくかもしれん、コイツ等を坂本さんの所へ連れて行こう。落ち着いたコイツ等なら、まともに話を聞いてくれるかもしれないしな」

 

人を傷つけない魔法、それが銀時や高杉の持つ強さとは違う力、中条だけが持つ「強さ」なのかもしれない。

 

彼女の魔法にまんまとかかってしまった高杉もまた自分の中の激情が沈静化され、落ち着きを取り戻している事に気付く。

 

「チッ、俺としてはこの上なく最悪な魔法だな……」

「ひぃ! ご、ごめんなさい……」

「こんなモンを使いやがって、それで俺がコイツ等斬ろうとしないのは大間違いだぜ」

 

だが落ち着いたのは少しだけの間、すぐに蓮蓬にでなくあずさ本人に対して苛立ちを募らせて再び刀を強く握ろうとする高杉、だが

 

「いや晋助、これはもしやあずさ殿のファインプレーかもしれぬぞ」

「おい万斉、まさかテメェ……」

「ここで蓮蓬を斬れば白夜叉と矛を交えるのは必然、その上異世界の魔法師とも戦わねばならぬ、そうなれば我々の犠牲も必要以上に増える筈」

 

ここでまさかのあずさを庇い始める万斉が登場。何か憑き物が落ちたかのような爽やかな表情を浮かべているので、逆に気味が悪い。

 

「なれば拙者達がやる事は一つ、ここは蓮蓬を処断せずに坂本達に突き渡し、再びあずさ殿の魔法で皆を冷静にさせて改めて説得を試みようではないか、そう平和な解決が一番、ラブ&ピースでござるよ晋助」

「……おい小娘、テメェの力はかかった奴の精神を落ち着かせるだけじゃねぇのか? なんかウチの幹部がどえらい事になってるぞ」

「ええ!? い、いや私の魔法にここまでの効果は無い筈なんですけど……」

 

優しく諭しながら自分に微笑む万斉、柄にも無いどころかキャラまで変わってしまっている彼を見て高杉がすっかりドン引きしていると、今度はまた子の方が彼の肩にそっと手を置き

 

「晋助様、私達の力を坂田銀時達に見せるなら今がチャンスっす。ここでまだ残ってる蓮蓬の連中も無力化させて他の攘夷志士共に見せつけてやればきっと奴等も晋助様を見直して……」

 

『す、すげぇ高杉! まさか俺達がやってのけねぇ事を平然とやってのけるなんてマジ高杉様だよ! マジそこにシビれるんだけど!? マジ憧れるんだけど!?』

『高杉、まさか貴様がここまで我等の為を思ってここまで働いてくれるとは思わなかったぞ! 今日からお前を再び友と呼ばせてくれ! いや義兄弟の契りを交わそう! これからもよろしくな、お義兄様!!』

『うおぉぉぉ高杉! おまんがここまでやってくれるたぁわしは感激じゃあ、涙が止まらん! 決めたぜよ! わし等快援隊は皆揃って鬼兵隊に降っちょるきん! 金も物資も全ておまんのモンじゃアハハハハハハ!!』

 

  

「ってなりますから絶対! これで晋助様もお友達ゲットっす! もう誰も晋助様をハブこうとしませんよ! いつも出してもらえなかったギャグ編にも呼んでくれますって絶対!」

「……」

「ご、ごめんなさい高杉さん! どうやら少し調整に失敗してなんかみんなおかしくなってるのかも……!」

 

銀時、桂、坂本がきっと言ってくれるであろう事を代弁して熱を上げるまた子に対し、高杉は頭を押さえて無言になってしまう。

 

「どうやら一部の者は精神が沈静化されたはいいものの、感情がコントロールできずに暴走しているみたいですな」

「武市……テメェは無事だったのか」

「おかげさまで、ところであずさ殿」

「は、はい?」

 

すっかりおかしくなっている万斉やまた子を置いて一人冷静にしていられるのは武市だった。

 

どうやら彼はなんらおかしい点は無い様子、そして武市は自分に対して苦手意識の強いあずさの方へと音もなく近づいて

 

「この状況を打破する秘策をお持ちしました、これは是非あずさ殿のみにしか出来ない方法なので何卒ご協力を」

「ええもう思いついたんですか!? わ、私に出来る事があれば是非!」

「そういって貰えて助かります、それではまずあずさ殿には……」

 

流石は参謀役、もうこんな状況を解決する策を思いつくとは

 

あずさが快く彼の策に協力すると叫ぶと、武市は突然両膝を折って床の上で正座になった。

 

その途端、あずさに向かって頭を床にこすりつけながら

 

「私の頭を罵倒しながら踏みつけて下さい」

「はい!?」

「変態だのロリコンだの叫びながら力の限り私を踏んだり蹴ったりしてください」

「うえぇぇぇぇぇ!? ど、どういう意味があるんですかそれ!?」

「懺悔します、私はフェミニストと謳っておきながら散々あなたやご友人に無礼な真似をしました。どうかせめて私の罪が少しでも消えるのであれば、何卒私を痛ぶってください」

「た、高杉さぁん! やっぱりこの人もおかしくなってますぅ! 正しそうに見えてやっぱりおかしいですぅ!」

 

今までの数々の変態行為に反省し、せめて彼女に罵倒と暴力を真摯に受けながら罪滅ぼしをしたいと嘆く武市。

 

この状況を打破する秘策があると言ったくせに結局は彼自身も感情のコントロールが暴走しているみたいだ。

 

「ど、どうしましょう、皆さんおかしくなっちゃいました……」

「元よりテメェのせいだろうが、俺は何も知らねぇぞ」

 

困惑しているあずさに冷たくそう言い放つと、高杉は腕を組みながら静かに考え

 

「興覚めだ、蓮蓬を斬り殺すのは後回しだ、とりあえずコイツ等全員連れて坂本の所へ移動だ」

「は、はい!」

 

あずさの恐るべし魔法の力に仕方なく屈した高杉。

 

もしかしたら彼も魔法の影響で若干優しくなった、のかもしれない……というのが桐原の見解だ。

 

それから数分間ずっと鬼兵隊はこんな調子が続いて、程無くして皆正気に返ることが出来るのだが。

 

何故か武市だけはずっとあずさに踏んでくれと要求するのであった。

 

「あの、お金あげますから踏みつけてくれませんか? ちょっと興奮……いやフェミニストとしての新たな道が開きそうなんで」

「うわぁ~ん! やっぱこの人が高杉さんよりもずっと怖いです~!」

「おい桐原、ちょっと武市の奴を斬って来い」

「御意」

 

蓮蓬を斬る事に反対する桐原だが、武市を斬る事に関してはなんの文句も無く速やかに実行する桐原であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司波達也はゆっくりと目を覚ます。

 

まず最初に目の前にあったのは透明な天井、そこには満天の星々が光り輝いていた。

 

それをぼんやりと眺めつつ、まだ何とか動ける状態だと確認していると

 

「起きたか、達也」

 

天井に映る光り輝く星々を背中に纏いながら

 

征夷大将軍、徳川茂茂がこちらを見下ろしているではないか

 

何事も無く元の身体に戻っている彼を見て、達也は自分の身体もまた己のモンだと確認する為にむくりと上半身を起こす。

 

「そうか、終わったのか……」

「ああ、余もそなたも気が付いたら分離し、元の身体に魂が収まっていた」

「残念だな、将軍の権力を使って民を苦しめ悪行三昧でもやってみたかったのだが」

「フ、それなら余はそなたの身体を利用して世界の魔王にでも目指すべきであったな」

 

互いに冗談を言い合いつつ笑みを浮かべると、茂茂はスッと達也に手を差し伸べる。

 

「無事で何よりだ、友よ」

「アンタこそな、これでそよ姫に怒られなくて済む」

「どうであろうな、そなたを危険な目に遭わせたという事でが余がそよに怒られるやもしれん」

 

意地を張らずに素直に彼の手を取って立ち上がる達也は、二人無事に生還出来た事にひとまず安堵するが

 

大事な存在がここにいた事ををふと思い出した。

 

「そういえば深雪は?」

「……すまんがわからぬ、実の所余も先程意識が目覚めたばかりでな」

 

二人の周囲は最後の怪物・魔堕王や自分達が暴れ回った事によって大量の砂埃が待っている。

 

妹である深雪と、ついでに銀時の事もほんの少し心配していると、次第に砂埃は消えて視界が良好になってきた。

 

そしてぼんやりと二つのシルエットが浮き出て、達也はそこを一点集中して目を細めて凝視していると

 

 

 

 

 

「ようやく、ようやく取り戻せたぜ俺の身体……」

「私の身体……ちゃんと元の姿に戻ってる……」

 

二人で自分の身体をまじまじと見つめながら、己の本来の身体になれた事を徐々に実感している

 

坂田銀時と司波深雪がそこにいた。

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 終盤にして遂に紛れもない坂田銀時として復活だぁぁぁぁぁぁ!!! マジ久しぶりなんだけどこの体の感覚! 久しぶり過ぎて股間になんか付いてる事に違和感覚えるけど何はともあれこれでハッピーエンドだチクショウ!! 野郎共祝杯の準備だ! 銀さん無事に男に戻れました記念だ!」」

「ああこの時が来るのをどれだけ待ち望んだ事か……辛く悲しくひもじい生活を送りながら、なんとかお兄様の存在を心の支えにして耐え忍んだかいがありました、これで私は司波深雪として、公にお兄様の妹として再び生きていける事が出来るのですね……」

 

銀時は狂喜乱舞し、深雪もまたしみじみと喜びを噛みしめている。

 

どうやら無事に二人も元に戻れたらしい、ホッと一息突くと達也は自分の身体を取り戻せたことですっかり舞い上がってる二人の下へ歩みよろうとする、だが

 

「「か~ら~の~!!」」

 

歩み寄ろうとした達也の足がピタリと止まる

 

先程まで喜びを表現していた銀時と深雪が、急に豹変して同時に互いの方へ振り向いて

 

「「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」

 

深雪は元に戻る時にいつの間にか手に持っていたCAD搭載の木刀を

 

銀時は傍に落ちていた自分の愛刀の木刀を即拾い上げて

 

力の限り思いっきり相手に向かって斬りかかったではないか。

 

二本の木刀がぶつかり合い、本気で倒す勢いで両者は鍔迫り合いの状態で睨み合う。

 

「いやぁもうホントこの時が来るのを待っていたんだよ銀さん! やっと人の身体借りパクしたこのガキをテメーの身体で痛めつけてやろうとずっと思っていたからさ!」

「不本意ですが私も同じ考えです……! こちとら乙女の身体を奪われた挙句、あまつさえ不良品のポンコツおっさんを渡されて最悪だったんですから……! 絶対にいつかそのこの手で制裁を加えると枕を涙で濡らしながら誓っていたんですよ私……!」

「ほほう気が合いますなぁ深雪さん……! 最期にお前とこうして仲良く語り合えて良かったよ……!」

「そうですね、こうしてお互いの身体に戻って本音を言い合えて良かったですよ銀さん、だからさっさと私の目の前から消えて下さい……! その銀髪天然パーマを見てるだけで無性にイライラするんです……!」

「オメェが消えろ……!」」

「いやあなたが……!」

 

銀時は持ち前の戦闘力で叩き潰そうとするも、深雪は持ち前の魔法の力を行使して氷結魔法を木刀に付加させて負けじと応戦する。

 

何やら本気で相手をぶっ飛ばそうとしているのではないかと察した達也は

 

「全く、真のラスボスは一番傍にいた人物という訳か……ていうかよく融合が出来たモンだ」

 

やれやれと呆れつつ、互いに罵り合いながら木刀を突き合わせている二人の下へと歩を進めた。

 

「戦いは終わったぞ二人共、いい加減にしないか」

「「お兄様!!」」

「……深雪はともかくなんで坂田銀時にまでお兄様と呼ばれたんだ俺」

 

達也が声を掛けた途端二人は戦いを忘れて同時に彼の方へ振り返り

 

すぐ様得物を引いて彼の方へと深雪の方が嬉しそうに駆け寄って来た。

 

「お兄様、今までの数々の暴言をお許しください……この男と一つとなった時にお兄様に色々と酷い事を……むご!」

 

坂波銀雪となっていた時に達也に対して色々と言い過ぎだったと自覚していた深雪は、ここでようやく謝れると思っていた矢先、そんな彼女の顔を掴んで脇にどかして、いけしゃあしゃあと銀時が達也の前に現れる。

 

「いやぁお互い元の身体に戻れたみたいで良かったですねぇお兄様、でもこんなブラザーコンプレックス娘なんざとまた一緒に住む事になるのはコリゴリでしょう、どうですかお兄様? いっその事ウチの世界に移住して万事屋として俺と一緒に働いてみるというのは? 将軍とも仲の良いアンタならさぞかし金が貰える良い仕事取ってくれるかもしれねぇし」

「は!? 何勝手な事を言ってるんですかあなた! まさか将軍とパイプを持つお兄様を利用して金儲けでも考えて!」

 

明らか何か企んでる気満々の様子でいやらしい笑みを浮かべながら達也を万事屋に勧誘しようとする銀時

 

彼に顔を抑えつけながらも、深雪は必死にもがきながら抗議する。

 

「お兄様は私と同じ世界に帰るんです! あなたみたいな下衆と一緒にさせるなんて私が絶対に許しません!」

「あ? いいよお前一人で帰れ。こっちはお兄様を加入させて最強万事屋としてリニューアルオープンする予定なんだよ、あ、それとお兄様だけじゃなくて雫とほのかも寄越せ」

「お兄様だけじゃ飽き足らずあまつさえ私の友人までも奪うおつもりですか!?」

「優先順位的には雫>お兄様>ほのかだな」

「まさかの雫がトップ!?」

「ああ、なんか見てて面白ぇんだよなアイツ」

「確かに不思議とあなたと気が合ってましたけど……でも彼女もお兄様も渡しません! 連れて行くならほのかだけです!」

「アイツは良いのかよ」

 

こちらの世界から人材を補強して最強万事屋として金儲けを企んでいる銀時に、深雪が絶対にそんな横暴な真似をさせてたまるかと面と向かって怒鳴り声を上げている最中

 

二人の醜い争いを前にどうしたもんかと困り果てていた達也がふとある気配に気づいた。

 

同時に何か嫌な予感も覚えながら

 

「……二人共静かにしてくれ、さっき向こうから誰かがいるのを感じた」

 

鋭い視線を前方に向けながら彼が呟くと、銀時と深雪はビクッと反応して同じ方向へと振り向いた。

 

するとその方向からフラリと人影が一つこちらへとゆっくり近づいて来る。

 

その姿はどこか見覚えのある

 

煌びやかな黒いドレスを着飾った妖艶なる美女

 

 

 

 

 

 

 

 

先程倒した筈の四葉真夜だった。

 

「どうやら伯母上も無事だったらしいな……」

「チッあのババァも元の身体に戻れたのか……テメェまだ俺達と戦う気かコラ!?」

 

突如現れた真夜に対してすぐに戦闘態勢を取ろうとする達也と銀時

 

だが真夜はこちらを静かに見据えてしばしの間を取った後にフンと鼻を鳴らして笑みを浮かべると

 

床に落ちてたヒビ付きのグラサンを掛けながら、懐から慣れた感じでタバコを取り出した。

 

「安心しな銀さん、俺はまるでダメな叔母さんではなく、まるでダメなおっさんの方だ」

「そ、その喋り方は、まさか長谷川さん!?」

 

なんと四葉真夜の身体にはまだ長谷川泰三の精神が居座っていたのだ。

 

思いもよらぬ出来事に銀時が驚いて目を見開く。

 

「どういう事だ一体!? アンタなんでまだ四葉真夜の身体でいるんだ!?」

「俺もよくわからんが、どうやらアンタ等と違って俺達は無理矢理魂を肉体を混ぜ合わせちまったから、おかしな事になっちまったらしい」

 

落ち着いた様子でタバコを吸いながら、真夜に戻った長谷川がみんなに話を始めた。

 

「どうやら俺の本当の身体は四葉真夜の魂と共にこの体の奥底に沈んじまってるみてぇなんだ、こうしているとアイツが俺の中にいるのを感じるのさ、だからアイツは今も俺の中で生きている、俺の身体と一緒にな」

「なるほど、本来意志を通じ合わねば出来ない融合を強引にやってしまった結果の反動という訳か」

「歪な融合体であったからイレギュラーが起こり出し、伯母上様は長谷川さんの身体、もといご自分の身体に封印されたという訳ですか?」

「詳しく調べればわかるかもしれないが、現状を見る限りそう推測するのが妥当だろう」

 

四葉真夜の魂は今、長谷川泰三の身体と共に封印されている状態だという事を理解しながら達也は頷き、深雪もわかった様子で彼に振り向く。

 

だが銀時は一人怪しむ様に真夜を見つめていた。

 

「どうだろうねぇ、もしかしてコイツ長谷川さんじゃなくて、長谷川さんの演技してる四葉真夜なんじゃねぇか? 本当に封印されてるのは長谷川さんの方だったりして」

「いやいや銀さん! 長い付き合いなんだからわかるだろ! 俺が本物の長谷川だから! 元幕府の入国管理局局長でエリートコースを進んでいたのに! 一時のテンションに身を任せて無職になっちまった長谷川泰三だよ!」

「冗談だよ、アンタの演技なんざ誰にもできるわけねぇって。だって別の身体なのにあの長谷川さん特有の洗っても落ちねぇ薄汚ねぇダメ人間の臭いがプンプンするんだよ、マダオの貫禄半端ねェもん」

「それはそれで悲しいんだけど!? 俺いつの間にそんなの周りに振り撒いてたの!? 洗ったら落ちるかな!?」

 

あまり嬉しくない証明の仕方に真夜はひどくショックを受けるが、「まあまあ」と言った張本人である銀時が慰める。

 

「何はともあれ生きてて良かったじゃねぇか長谷川さん、もしかしたらあの女と一緒に死んじまったんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだぜ」

「ああそうだな、こうして生き長らえた事には銀さん達に感謝してるよ。ところで感謝するついでにちょっと聞きたいんだけどさ?」

「ん?」

 

吸い終わったタバコを捨ててハイヒールの踵で踏みつけて火を消しながら、真夜はおもむろに銀時達の方へと顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

「俺がどうやったら元の身体に戻れるかってちゃんとみんな考えてくれてるよね? みんなは元の身体に戻れたんだし、俺だけ置いてけぼりとか流石に無いよな?」

「……」

 

ふとした疑問をハハハッと笑いながらぶつけてきた真夜に対し

 

銀時、深雪、達也、茂茂は互いに目を合わせ無言で固まった後

 

しばらくして彼女の方へ顔を戻すと

 

突如四人で一斉にパチパチと拍手し始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「再就職おめでとう、長谷川さん」

「おめでとうございます」

「おめでとう、新伯母上」

「おめでとう、別の世界でも頑張ってくれ」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」 

 

 

銀時、深雪、達也、茂茂の順に祝いの言葉を掛ける中、真夜はあまりにも身勝手な連中に頭を抱えて叫ぶ事しか出来なかった。

 

長谷川泰三、念願の就職決定

 

就職先は異世界・四葉家の当主

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出会いがあれば別れもある

最初は喧嘩もしたり殴り合ったり

最後もやっぱり喧嘩したり殴り合ったり

けれどそういう喧嘩仲間と離れ離れになるというのもそれはそれで寂しいモノ

戦い終われど安心するなかれ、家に帰るまでが修学旅行。

それぞれの居場所へと帰る為に銀時達がもうひと踏ん張り頑張ります。

魔法科高校の攘夷志士・完結編、次回にて開始
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