魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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帰りのHR編
第四十一訓 暗躍&脱出


『宇宙皇帝Mが敗れたか……』

 

 

蓮蓬の星、中枢

 

パイプに繋がれた機器の中心にあるのはホルマリン漬けされてるかのように容器に収まった脳

 

プカプカと溜まった液体の中に漂うという禍々しいその物体からは、独り言を呟いているかのように声が発せられている。

 

この声の主にして、中枢に浮かぶ脳こそが、この蓮蓬の母星の正体にして米堕卿を操作していた真の正体。

 

SAGI 全ての蓮蓬達を造り上げた始祖にして四葉真夜と結託して二つの地球を滅ぼそうと企てたもう一人の黒幕である。

 

『人間の身でありながら世界を滅ぼそうとする強い意志と狂気を買っていたのだが、ここで負けてしまったのであれば仕方ない。かくなるう上は我がこの星を操作し、二つの地球に攻め入って自ら滅ぼしに赴こうではないか』

 

基本的に自分の手駒に対して何の愛着を持たないSAGIであったが、四葉真夜が敗れた事に関しては大いなる痛手を感じているらしい。

 

なればと、強大なる要塞であり星そのものでもある自らが地球へと出向こうと動き出す。しかし

 

「残念だけどそうはいかないわ」

『な! 貴様は!』

 

彼が動き出そうとした途端、突如彼の目の前に一人の女性が、この自分以外の者が侵入することが出来ない筈の中枢にツカツカと足音を立てて現れたのだ。

 

『貴様は我の計画を阻止せんと連中と邪魔をしに来た異世界の地球人!』

「フ、まさかまだその程度の認識だったとわね……高性能の知力を持った科学生命体が聞いて呆れるわ」

 

その人物の正体は藤林響子。

司波達也と入れ替わった徳川茂茂の護衛役としてここに来ていた筈の軍部の彼女がどうしてこんな所に……

 

しかも驚くSAGIに対し、彼女は何処か意味深な台詞を呟きながら肩をすくめる。

 

「どうやらまだ私の正体をわかってないみたいだね」

『貴様ぁ! どうして我しか入れぬこの聖域に足を踏み入れられたぁ!』

「何言ってんのさ、私がここに来たのはもう”二度目”だよ? 入り方ぐらいとうに熟知してる」

『な! もしや貴様異世界の地球人ではないな! まさか貴様は……!』

 

どことなく見覚えのある喋り方に彼が勘付いていると、響子はおもむろに自分の頬に手を当て

 

乱暴に掴んだ途端顔の表面がビリリと破け、その中からまた新たな顔が現れたではないか。

 

「もっとも私は、入るより入られる方なんだけど、ね?」

 

新たに現れたのは長いウェーブ上の茶髪を揺らす一人の美女。

その女性を見てSAGIは激しく動揺したかのようにとち狂い出す。

 

『貴様はフミ子! よもや前回の戦いで我と共に心中を図ったと思っていた貴様が!!」

「フン、残念ながらアンタと同じく私もしぶといのよ」

 

フミ子、蓮蓬であり桂の戦友でもあった人物のかつての恋人。

 

彼女は前回、銀時達が蓮蓬達との雌雄を決する最後の戦いで、自らを犠牲にSAGIの弱点を曝け出す事によって

 

結果的に彼女の尊い犠牲のおかげで地球人側は勝利することが出来たのだ。

 

しかし彼女もまた運良く生き延び、こうして同じく生き延びたSAGIと再び対峙する事になる。

 

「アンタが四葉真夜と組んで再び地球を脅威に晒そうとしていたのはずっとお見通しだったのさ」

『まさか異世界に渡って我等の計画を探っていたのか!』

「ええ、協力者がいてくれたおかげで、二つの世界にバッチリ情報流させてもらったよ。やっぱり地球人は優しいね、異世界であろうとさ」

 

フミ子はそう言いながらスーツのシャツをボタンを上から数個外すと、露わになった胸の谷間からボタンの付いた小型携帯機を取り出してフッと彼に笑いかけた。

 

「さあて幕はもう下りたんだ、残念ながらアンタの出番は今回は無し、ここで終わらせてもらうよ」

『貴様一体何をする気……! は!』

 

躊躇なくカチッとボタンを押すと周りに設置されている機械物が次々に爆破されていく。

 

彼女が持っていた小型携帯機の正体はここ等一帯に密集されている

 

自分の生命活動を支える為の機械に密かに仕掛けていた爆弾を爆破する為の装置だったのだ。

 

『まさかここまで早く手が回っていたとは……』

「アンタが死ねばこの星は再び瓦礫と化す、核であるアンタが消えればこの星も時間をかけて崩れ落ちていくだろうさ」

『おのれぇぇぇぇぇぇぇ!!! 一度だけでは飽き足らず! 二度も我を殺す気か! そうはさせるか!』

 

周りが爆発してる中で冷静に口を開くフミ子に対し、怒りと憎しみの感情の下に彼女だけでも殺そうと動こうとするSAGI

 

だが突然

 

『うッ!!』

 

彼が液体漬けに入っている容器を突き破り、巨大な脳を貫通して刀の先がフミ子の前で光り輝く。

 

「あらSAGI、立派なモンをお持ちのようだね。私の元カレには負けるけど」

『そ、そんな馬鹿な! 貴様だけでなくもう一人ここに紛れ込んでいたとは!」

「言っただろ、私は地球の人達と協力しながらここまではるばるやって来たのさ」

 

SAGIを貫いた刀をグイッと半回転し、更に脳細胞を破壊していきながら一気に引き抜いたのは。

 

SAGIを挟んだ状態でフミ子と向かい合う、蓮蓬の格好をした一人の人物。

 

「私を助けてくれた二人の地球人、そして今は二人で一人の地球人さ」

「コレでようやく片付いたようですね、おかげで僕達も何の未練もありません」

「やっぱり融合の時間が長すぎたせいでそれぞれの身体に戻れなかったんだね……けど大丈夫よ、フミ子姉さんがちゃんとアンタ達が元に戻れる方法探してくるから」

「いえ、コレはコレで快適ですよ私達は。こう見えて入れ替わり組の中では一番通じ合ってる仲だと自負していますので」

「あらそう、仲良くやってるみたいで何よりだわ」

 

やや含みある言葉を呟くその者にフミ子が微笑を浮かべていると、SAGIが収まっている容器の貫かれた箇所から徐々にピキピキとヒビが割れ始め、徐々に容器全身に亀裂が走って中の液体が周りに漏れ始める。

 

このままほおっておけば生命活動できなくなったSAGIは生物としても機械としても死に絶えるであろう。

 

しかし

 

突如、ゴゴゴゴゴゴ!と激しい音を立ててその部屋一帯が大きく揺れ始める。

 

「……何かしらこの揺れは?」

「わかりません、もしかして銀時さん達に何か……」

「いや、これはこの部屋中心から揺れが発生しているわ……」

 

機械の爆発の影響ではない予想外の出来事にフミ子は笑みを忘れて怪訝な表情で周りを見渡していると

 

ふとこの部屋の中核に居座っているSAGIの方へと目をやると

 

『フッフッフ……』と不敵な笑い声が響き渡る

 

『こうなっては止むを得まい……世界を我が手中に収めるという野望を果たせぬというのであれば、せめて我に幾度も刃向かう愚かな貴様等に復讐するという目的でも達成させてくれるわ!』

「あ、あなたまさか……!」

『我が死ぬのであればそれはそれでよし! だがタダでは死なぬ! 我の持つありったけの力を振り絞り!』

 

徐々に激しく揺れ始め、流石に立っていられなくなったフミ子が歯がゆそうにSAGIを睨み付けていると

 

彼はその反応を待っていたんと言わんばかりに狂った様に大声を上げ

 

 

 

『この星にいる我が駒と命を共にし! 貴様等も道連れにしてくれよう!』

 

終わった筈の戦いの果てで待ち構えていたアンコール

 

 

最後の敵はこの星自身

 

 

 

 

 

 

 

星全体が揺れ始めたその頃

 

戦いを終えて脱出せんと船へと向かっていた銀時達もまたその異変に気付いた。

 

「おい、なんか揺れてね?」

「ああ、何か嫌な予感がする……走れる気力は残っているか茂茂」

「無論だ、戦が終わってもまだ油断は出来ぬ。皆全員生きて帰る事こそがこの戦の本当の勝利と言えよう」

 

激しい揺れにグラつきそうになりながらも、司波達也と徳川茂茂を先頭に出口へと走り出す。

 

それに続いて坂田銀時と司馬深雪が後を追う。

 

「全く、この忌々しい男とも離れることが出来たのに喜ぶ暇もありませんね……」

「別にその辺で勝手に喜んでたっていいんだぞ、テメェが喜んで踊り狂ってる間に俺達はお前置いて地球に帰るから、テメェはこのままこの星と命を共にしろ」

「踊り狂う訳ないでしょ、あなたがこの星と共に消えて下さい」

「オメェが消えろ、お兄様、ちょっとコイツパパッと分解してくれません?」

 

一緒に走りながらも顔を合わせてまたもや口喧嘩を始め出す銀時と深雪

 

するとその二人の背後から一人の人物がボソッと口を挟む。

 

「あのさ、喧嘩する前に君達さ。まず俺になんか言う事あるんじゃないの?」

「え? ああゴメン、忘れてたわ」

 

暗く低い声で言葉を投げかけて来たその人物に銀時が死んだ目で振り返る。

 

「とりあえず今後はどう呼べばいいのおたく? 長谷川? 四葉真夜?」

「合体させて長谷川真夜とでも呼べばいいんじゃないですか?」

「名前の呼び方についてじゃねぇよ! 元に戻せなくてごめんなさいだろうが!」

 

二人揃って見当違いな事を言う銀時と深雪に耐えかねて

長谷川の魂が主軸となって蘇った四葉真夜、もとい長谷川真夜が怒鳴り散らした。

 

「ホントどうすればいいんだよ俺! もうお先真っ暗じゃねぇか!」

「グラサン外せばいいんじゃね?」

「そう言う意味じゃないから! グラサン取ったらもう完全に俺じゃなくなるだろ! てかもうこの体そのものが俺の体じゃねぇし!!」

 

グラサン掛けたまま彼女がツッコミを入れると、話を聞いていたのか銀時達の前を走る達也が後ろに振り返り

 

「心配するな新伯母上、これからは四葉家の当主としてセレブ感たっぷりの豪勢な生活が出来ると思えばそう悪くないだろ。職務の事は任せろ、俺が裏で暗躍してアンタは俺の言うがままに操られていればそれでいい……」

「ちょっとぉ! この子思ったより腹黒いんだけど!? 伯母上いなくなったことを好機と捉え四葉家まるまる乗っ取ろうとしてるよ!」

「流石はお兄様です、長谷川さんを名ばかりの傀儡に仕立て上げる事で、これで私達も晴れて自由の身ですね」

「流石はお兄様じゃねぇよ! なんだこの可愛い気のねぇ甥っ子と姪っ子は! 絶対お年玉やらねぇからな!!」

 

顔に影を作り早速何やら思惑のある表情で薄ら笑みを浮かべる達也とそれに賛同して彼を称賛する深雪。

 

長谷川が今後いつか絶対権力使ってこの兄妹に嫌がらせしてやろうかと考えながら銀時と深雪を追い抜いていると

 

先頭を走っていた茂茂に予期せぬハプニングが襲い掛かる。

 

「!?」

「茂茂!」

 

突如、彼が走っていた床が抜け落ちたではないか、驚くのも束の間、そのまま底の見えない真下へと急降下しかける茂茂をすぐ様手を伸ばして間一髪で助ける達也

 

しかし

 

「しまった、もう余力が……」

「お兄様!」

 

普段なら片手で大の男を持ち上げる事ぐらいなんて事無いのだが、ちょっと前に命を賭けた激戦を繰り広げていたばかりの達也にはもうあまり力が残されていなかったのだ。

 

茂茂の手を掴んだままグラリと底の抜けた穴へと傾き、そのまま彼と一緒に落下し掛ける達也。

 

だが

 

「伯母上頼む」

「へ!? うおあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

落ちかける寸前でつい手を伸ばした先にあったのは、長谷川の細っこい足首であった。

 

達也に引っ張られてそのまま共に落下し掛ける長谷川だが、一瞬の間の中で目の前に入ったある物を掴んで

 

「いやだぁぁぁぁ!! 銀さん助けてくれぇ!!!」

「ギャァァァァァァァ!! テメェ何処掴んでやがんだコノヤロォォォォォォォ!!!」

 

あろう事か落ちる寸前で目に入った銀時の腰の部分に手を伸ばし、股の先に付いていた男性のシンボル的なアレをつい掴んでしまう長谷川。

 

思わぬ激痛に悲鳴を上げて耐える事が出来ずに、そのまま彼女達と共に落下し掛ける銀時だったが

 

「いだだだだだだ! 死ぬ死ぬマジで死ぬってコレ!!」

「え? うごッ!」

 

傾いて落ちる前に自分の隣にいた深雪の腰の部分を後ろからガッチリホールドして、半ば道連れにする形で穴へと落ちるも

 

突然の出来事に対しても深雪は彼に腰にしがみつかれたまま床に生えていた突起物に両手を伸ばし。

 

4人を吊るしたままなんとか落下を防いだのであった。

 

「んがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 無理無理無理無理です!! 腰から下が千切れちゃいます!!」

「バカ野郎死に物狂いで耐えろ! 俺なんか股間千切れそうなんだぞ!」

「ヒャッハッハ!! もうどうとでもなりやがれ! テメェ等全員まとめて道連れだチクショウ!!」

「今のアンタなら伯母上とキチンとわかり合えた上で正規の融合が出来そうだな」

「下は完全なる暗闇……下手すれば宇宙空間にほおり出される可能性もあるぞ」

 

涙目でなんとかしがみ付いている深雪

 

彼女の腰を掴んで痛みで泣きながら叫ぶ銀時

 

彼の股間を掴んでヤケクソ気味に高笑いを上げている長谷川

 

彼の足首を掴んだまま冷静にそんな彼女を見ている達也。

 

そして彼と手を繋いでる状態で、茂茂は冷静に宙ぶらりんの状態で真下に向かって目を凝らす。

 

「このままでは皆落ちてしまう……止むを得まい、余が犠牲となれば少しは負担も軽く……」

「ふざけた事を考えてるんじゃないぞ茂茂、アンタにはまだ生きてもらわねば困る」

「誰も生きられやしねぇさ! どうせみんな死ぬんだヒャッハッハッッハ!!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 銀さんの竿と玉が! 略して竿玉が持ってかれるぅぅぅぅぅ!!!」

「さっきから私のお尻に顔うずめながら叫ばないで下さい!!」

「うるせぇ! もうここに顔が定着しちゃってるんだから動くに動けねぇんだよ!」

 

下から喚き立てる銀時に深雪が「助かったら絶対殺す!」と固く決意をしながら必死の形相で突起物にしがみ付く。

 

しかしこのままではいずれ深雪の力が尽きて全員真っ逆さまだ。何か、何か助けが来ればいいのだが……

 

「うぎぎぎ……もうダメです両腕の力が……」

「……」

「は!」

 

もはやこれまでかと深雪が諦めかけていたその時だった。

 

ふと彼女の前にフラリト一人の人物が偶然通りがかったかのように現れたのだ。

 

その人物は……

 

「あなたは! 確か真撰組の所の沖田さん!?」

「……」

 

済まし顔でこちらを見下ろしながら無言で見つめて来る沖田がそこにいた。

 

彼の名を深雪が叫ぶのを聞いて銀時は我が耳を疑う。

 

「おいちょっと待って小娘! 今なんつった!? もしかしてお前そこに! よりにもよってドS野郎が現れたとかないよな!」

「あり? そこにいるのは旦那じゃねぇですかぃ? どうやらおたく等も元の体に戻れたようで何よりでさぁ、いやぁお互い無事で何よりだ」

「今この状況のどこが無事だっつうんだよ! 嘘だろオイ! まさかこんな奴がこの状況で来るなんて!!」

 

ヒョイッと穴に向かって顔を出してきた沖田に銀時はツッコミを入れながら悲観に暮れているが

 

彼とはあまり付き合いの長い方ではない深雪は、銀時がどうして嘆いているのかわからず、ただ一心不乱に沖田に言葉を投げかける。

 

「すみませんお手を貸してくれませんか、もしくは今すぐ他の人達に助けを呼んで来て欲しいのですが?」

「……」

「あ、あれ? 聞いてますか沖田さん? ていうかその手に持ってるのって……」

「あ? ああ聞いてる聞いてる、聞いてるけどちょっと後にしてくんない?」

 

深雪のsos信号を受けてなお沖田は仏頂面で取り出している物は自分の携帯電話。

 

慣れた手つきで操作しながら完全にこちらの事よりも携帯の画面の方を眺めている。

 

「知ってやすかぃ旦那、最近のゲームってのは携帯で無料で出来るんですよ。実を言うと俺も最近それを知りましてね。今やってるゲームはとある事務所に配属されているアイドルを自分好みのメス豚に調教できる画期的なゲームで」

「は!? !ちょっと待ってください! 私の助けを無視してまさかの携帯ゲーム!? 何やってんですかあなたは!」

「ごめん、うるさくしないで気が散るから」

「ええ!?」

 

腰から下の感覚が徐々に無くなりかけている深雪を前にしても沖田は彼女の訴えも華麗にスルーして、携帯片手にまたもや彼女の腰にしがみ付いている銀時の方を見下ろす。

 

「あーどうしやしょう旦那、高垣楓と三村かな子、どっちを痛みつけてやろうか迷っちまいました。旦那ならどっちにます?」

「こんな状況で聞く事それ!? よく知らねぇけど高垣楓の方で良いんじゃねぇの!?」

 

この状況下でなに下らない質問しているのだと怒鳴りながら銀時が答える。すると彼の答えを聞いて何故か深雪の方が顔をしかめる。

 

「すみません私もそのゲームについてはよく知りませんけど、その高垣楓という人物に謎の親近感が湧くんですけど……その人に何かしようとするなら許しませんから!!」

「ちょっと待て! 俺もなんかよくわからねぇけどその三村かな子って奴はそっとして置いて欲しいんだよ! かな子に手は出すな! 俺の女に手を出すな!」

「高垣楓のケツに顔うずめたまま言う台詞ですかぃそれ?」

 

物凄く恥ずかしい体制のまま叫んでいる銀時にボソリとツッコミながら、沖田は手に持っていた携帯を懐に仕舞った。

 

「やれやれ、おたく等だけならこのまま落下するのを見下ろすってのも悪くねぇと思ってたが、まさか将軍様まで宙ぶらりんしてたら助けねぇ訳にもいかねぇや。待ってな、近くにいる怪力チャイナ娘でも連れて来てやっ……」

 

散々弄んでおいてどの口が言うかと、深雪は内心そう思いつつ彼を睨んでいると

 

沖田は踵を返して助けを呼びに行こうとする。

 

だが

 

「あ」

「で!」

 

あの沖田がまさかのうっかり足を滑らして自分達のいる穴の方へと背中からダイブしてしまう。

 

目の前の出来事に深雪がギョッとした表情で驚くのも束の間

 

「おっとっと」

「ぐおッ!!」

 

頭から落ちていく状態ですかさず一番下にいた茂茂の足首を手でキャッチ。

 

その途端、またもやズシリと深雪の体にのしかかる男性一人分の体重。

 

「ふー危ねぇ危ねぇ」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

「おいテメェ何してくれてんだ! 助けを呼ぶどころか思いきり足引っ張ってんじゃん! 小娘がすげぇ声で叫んで限界突破してんじゃん!」

「ええ、文字通りこうして足引っ張ってまさぁ」

「うまくねぇんだよ! お前ここで生き延びてもぜってぇ切腹だからな! 将軍様そんな奴蹴落としてください!」 

 

将軍の足にしがみついたままでも、相変わらずの涼しい表情で言ってのける沖田に銀時が罵声を浴びせている中。

 

遂に深雪の両腕の力は完全に無くなり

 

「もう……限界、です……」

「オイィィィィィィィ!! 諦めちゃダメだって! お前はまだやればできる子……」

 

ゼェゼェと荒い息を吐きながら深雪は銀時の応援に応える事出来ずに、力が無くなった彼女の両手はフッと自然としがみ付いていた突起物から離れてしまう。

 

そしてそのまま

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「お許しくださいお兄様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「よっしゃぁコレで全員バッドエンドだざまぁみろ~!!!」

「何か打つ手はないか達也」

「難しいな、少し時間をくれ、しばらく経ったら閃きそうだ」

「いやおたく等なんでそんな冷静に落ちていけるんですかぃ?」

 

銀時は泣きながら

 

深雪は祈るポーズのまま兄に対して許しを請いながら

 

長谷川は一人盛大に爆笑しながら

 

達也と茂茂が頭から真っ逆さまに落ちてる状態で打開策を考えながら

 

そんな二人に沖田はジト目でツッコミを入れながら

 

全員仲良く真っ逆さまに暗闇の空間へとあっという間に落ちていくのであった。

 

床に空いた穴から彼等の姿はみるみる小さくなっていき……

 

やがて一つの点になったと思ったらパッと消えてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

しかし今度は暗闇の穴の底から複数の光がピカッと照らされ徐々に上へと迫っていく。

 

そして

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

人数人分ぐらいの狭い穴を突き破って急浮上してきたのは

 

ついさっき落ちたばかりの銀時と深雪を両肩に掴ませて一体の

 

なんかあの映画に出てた奴と物凄く似ているデザインをした飛行搭載ロボットであった。

 

「す、すげぇぇぇぇぇぇぇ!! 俺達助かったのか!? もしかしてラピュタの民と間違われた!?」

「ど、どうしてこの色々と危ないロボットがここにいるんですか……」

 

両腕に着いた翼を駆使して浮上していくロボットにしがみ付きながら銀時が興奮し、深雪は冷静に呟いていると

 

すぐに突き破った穴から別のロボットが浮上してきた。

 

「皆の者、大事は無いな」

「コレは……どうやら俺達の事態を把握して救助しに来たらしい」

「まさかシータみたいにコイツに助けられるとはな、一生モンの思い出でさぁ」

 

当たり前の様にロボットの両肩に座りながら現れた茂茂と達也、そして背中におんぶされている沖田。

 

ロボットの頭に深雪と一緒にしがみ付きながら銀時は茂茂と達也に「この二人本当表情変わらねぇな……」と小声でボソリと呟いていると

 

「うおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「あ、長谷川さんだ」

「私達と心中図ろうとした不届き物の長谷川さんですね」

 

三体目のロボットが下から猛スピードで上がって来たので、2体のロボットは僅かに空中で体をずらしてそれを難なく避ける。

 

よく見てみるとロボットの肩には長谷川がグラサンの下から涙を流しながら両手でしがみ付いていた。

 

「なんだよチクショウ! こんな俺を助けるんじゃねぇ! 殺せよ! 殺してくれよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

助けられてもなお自暴自棄になっている長谷川、しかしそんな彼に

 

同じロボットの肩に絶妙なバランスで二本の足で立っている一人の男が静かに言い放つ。

 

「この様な形で幕を閉じるのが貴様の人生なのかね? 下らぬ人生だ」

「えぇ!? ア、アンタは一体!?」

 

冷たく突き飛ばされながら長谷川はそんな彼の方へ顔を上げてポカンとしていると

 

一緒に飛んでいた銀時と深雪も彼を見てギョッと目を大きく見開く。

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!? お前が、いやまさかあなた様が助けてくれたのですかぁ!?」

「しばらく見ない内に随分と風格が変わっていたので気付きませんでした……!」

 

ロボットの肩に器用に立つその人物の正体は……

 

 

 

 

 

 

 

「僕、いや私の名は服部・範蔵・ウル・ラピュタ。此度は下々の存在である君達を特別に助けてやったのだ」

「服部くぅぅぅぅぅぅぅん!」

「服部先輩! いやもはや服部大佐ァァァァァァァァァァァ!!!」

「なんなんだよお前! どんだけカッコいいんだよ!」

 

何時の間に着けていた眼鏡をクイッと上げながら得意げにほくそ笑みを浮かべこちらを見下ろすのは

 

ラピュタを操りし者、服部・範蔵・ウル・ラピュタであった。

 

思わぬ援軍を持って来てくれた彼に心の底から感謝し、銀時と深雪は力の限り叫ぶ。

 

次回、全軍一斉の脱出劇が開始される。

 

 

 

 

 




※補足

作中で沖田が言っていた二人のアイドル

高垣楓 うすら寒いダジャレをやたらと連発する人、酒好きの25歳児、中の人が深雪と同じ

三村かな子 ややぽっちゃり気味の人、暇さえあればなんか食ってる。銀さんの中の人が好きなキャラ。 
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