魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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やはり締め切りに間に合わなくなった……という事で他作品で言ってた様に一週間ほど休載します。

次回は11月29日です、申し訳ありません


第四十二訓 服部&痔鰤

銀時達が救世主・服部大佐に助けられるちょっと前の話。

 

坂本辰馬と千葉エリカは、高杉によって連れて来られた蓮蓬達も含め、星に住む蓮蓬の代表として、将軍、レフトドラゴンと席を設けて交渉している真っ最中だった。

 

「オボロロロロロロロロ!!」

「うぇ! ドボロシャァァァァァァァ!!」

 

二人並んで正座に座った状態で、ビニール袋にさっきからずっと吐き続ける坂本とエリカを、将軍は無言で見つめ、二人の背後待機している陸奥はジト目で彼等を眺めている。

 

交渉が始まった途端ずっと忘れていた船酔いが再発したのか。二人は青ざめた表情口から言葉を出せず、出るのは吐瀉物だけである。

 

「ウオォボロロロロロロロロ!!」

「あ、なんかアタシ楽になっ……オロロロロロロロロロ!!!」

 

よくもまあそんな吐けるものだと周りが呆れるどころか感心させしていると、延々と彼等が吐く様を見せられていた将軍はおもむろに彼に向かってスッと手を差し伸べた。

 

すると坂本はゼェゼェと荒い息を吐きながら苦しそうな表情で手を伸ばし

 

その指の無い奇妙な手を強く掴む。

 

「よし……交渉成立じゃ」

「長かったわね……」

「え!?」

 

常にポーカーフェイスを崩さない陸奥が思わず驚きの声を上げてしまう。

それもその筈、ずっと吐瀉物を吐き散らしていただけのバカ二人に対し将軍はなんと自ら先に手を差し伸べて彼等との交渉に承諾する動作をしたのだ。

 

何が何やらさっぱりわからない様子の陸奥に、坂本は一旦ビニール袋から顔を離し、ニヤリと笑いながら振り返る。

 

「陸奥、実はおまんが厠行っとる間に色々と話し合おうておったんじゃ。わしのバナナの叩き売りの如く推しに推し進めた結果、ようやく連中の心ばをほんの少し開く事が出来たみたいじゃきん」

 

自画自賛しつつ己の交渉術はまだまだ健在だと称する坂本だが、そんな彼を尻目にエリカもまた得意げに胸を張る。

 

「自分の才能が恐ろしいわ本当に……まさかあそこで機転を利かしてあんなアイディアを閃かせて、半ば後先に考えずに話を進めた結果こうも上手くなるなんて……アタシやっぱ最強だわ」

「いやいやおまんの交渉術はまだまだぜよ、あそこはわしがちょいとした工夫を施して淡々と話を転がしていった結果、連中がようやく重い腰を上げてくれたんじゃ。おまんも良い腕しちょるが、商人としてはまだまだ半人前もいいとこよ」

「フン、悪いけどアタシの潜在能力に嫉妬してるの見え見えだから、あの巧みに論点をズラしつつ、自分のペースに持っていくというアタシの神業を見て、アンタが悔しそうな表情浮かべてるのチラリと見てたのよアタシは」

「なにをぉ! おまんこそわしのユニーク溢れる笑い話を混ぜたテクニックで! みるみる相手に興味を持たせていくというわしの十八番を見て驚いておったじゃろうて!」

 

二人顔を合わせてどちらが蓮蓬の心を動かせたかと口論し始めるも、突如二人揃って「う!」と呟くと頬を膨らませてすぐに持っていたビニール袋を開いて

 

「「オボロロロロロロロロ!!!」」

「……」

 

またもや吐き出す坂本エリカ、こんな状態で本当に交渉できたのか? 疑問に思った陸奥は将軍の方へと振り返る。

 

「将軍、こ奴等の言葉に揺り動かされて交渉に応じたのはそちらのの本心か?」

『いや、ぶっちゃけ最初から最後までずっとゲロ吐き続けていたので何を言っているのかさっぱりわからなかった』

「やっぱり何も通じておらんではないか!! このバカ共が!!」

「「どふッ!」」

 

スッとプラカードを掲げて、実は何を言っているのかよくわかっていないと正直に告白した将軍。

 

その反応を見てすかさず陸奥は二人の頭に拳骨を一発浴びせて吐瀉物まみれのビニール袋に頭を突っ込んでしまう。

 

しかし将軍はまたしてもプラカードを掲げる。

 

『だが苦しそうに顔をゆがめながらも、懸命に我々に何かを訴えようとするその心意気は評価する、ゆえに怨恨の思いをいったん取り下げて、お前達に我々の望みを言ってみようと思う』

「どうだかのぉ、これで評価されても地球人の質が下がったみたいで癪じゃが……とりあえず冷静に話し合おうてくれるなら、それはそれで蓮蓬の心をちょっとばかり開くことが出来たという事かの……」

 

己の吐いた吐瀉物に顔面をうずめた状態でダウンしている二人をほおっておいて、陸奥は改めて将軍の話を聞く事にした。

 

ちなみに彼、そして他の蓮蓬達が心を静かにし冷静になったのは、全てここにいる中条あずさが使用した魔法の賜物である。

 

と言ってもその魔法のおかげで自分達も影響を受けて数分程少々おかしくなったのだが……

 

「色々と面倒な目に遭ったがこうしておまん等とまともに話せるようになったからよしとするか……で? 和平を求む為におまん等が要求するのはどういったものぜよ?」

『その前にまず一つ尋ねよう、我々がどうしてお前達地球人に復讐を行おうとしたのかわかるか?』

「わし等がおまん等の母星、そしてSAGIを破壊したからじゃろ?」

『それは半分正解であり、半分不正解でもある』

 

陸奥の返答に対し随分と意味深な事を言う将軍、続いて彼が掲げたプラカードに書かれていたのは

 

『当然お前達に恨みはあった、だがしかし、それが元で再び地球人を根絶やしにしようという実行に移そうという者は恐らく誰もいなかった筈だ。恨みはすれど、地球人と手を取り合ったかつての同胞達の思いを汲んで、復讐などするのは止めようと悟っていたからだ』

「袂を分かれても同族への思いは変わらなかっという訳か……」

 

かつての同胞というのは桂の盟友、江蓮率いるもう片方の蓮蓬達の事だ。

 

彼等は地球に対して友好的であり、自分達とは思想がまるっきり違う。しかしこのまま恨みに取り憑かれて地球を再び襲うとなると、もしかしたら彼等とも一戦交える可能性も無くはない。

 

その事を懸念し、将軍たちは今までずっと身を潜めて影のように生き続けていたのであろう。

 

「ではなぜ今になっておまん等は剣を取り、わし等地球人に戦いを申し込んだんじゃ」

『我々の先導者がそう決めたからだ、故に我々は従ったまでの事』

「先導者? それはもしや復活したSAGIと、地球人でありながら地球を売ろうとした逆賊、四葉真夜の事か?」

『左様、我々蓮蓬は常に自分達の上に立つリーダーの言われるがままに行動する事を習性付けられている』

 

元々蓮蓬という種族を造り上げたのはSAGIであり、彼等にとっては名実共にに親である。

 

親の言う事を素直に聞き、その指示に対して何の疑いもせずに行動し、実行するというのが蓮蓬の基本習性でもあったのだ。

 

『無論、我等の中にも親に歯向かい、地球人に手を貸したイレギュラーも生まれた、それこそが今もなお自分の母星となる星を探しているであろう江蓮率いるもう一つの蓮蓬軍だ。しかし我々は彼等と違いそう上手く親を見捨てる真似は出来なかった』

「なるほど、ではおまん等はSAGI、そして新たにおまん等のもう一人の親となった四葉真夜に促されて、こうして二つの地球相手に乗っ取り計画を企てたという事か」

『……それこそが蓮蓬として生まれた者の宿命なのだ、逆らう事は許されない。我々に親に歯向かう拒否権など存在しない』

 

蓮蓬という一族はどうやら親に対しての絶対的な忠誠心というモノがあり、そこから脱却し、江蓮達のように自らの足で歩もうとするモノはほとんどいなかったらしい。

 

彼等の真実を聞かされ、陸奥は「難儀な生き方じゃの」と短く呟きながら頷くと。将軍はしばしの間をおいてゆっくりと新たなプラカードを掲げる。

 

『故に今我々が必要なのは宇宙皇帝・MやSAGIに代わる新しきリーダーだ、我々を導き、正しき道を歩ませてくれる真の王。それをお前達が我々に差し出してくれる事こそが、地球人との和平を結ぶ為の交換条件だ』

「蓮蓬達を導く新たなリーダー……これまた難しいモンを要求してくれるの……つまり我々地球人から一人有能な人物を差しだせっちゅう事か」

 

金や物資であればいくらでも調達できるが、有能な人間となるとかなり限られる。

眉間にしわを寄せて陸奥が思考を巡らせていると、ついさっきダウンしていた筈の坂本とエリカが顔を上げる。

 

「有能なリーダー? その言葉に最もふさわしいのは当然わしじゃろ、何を隠そう攘夷戦争時代は周りの連中を引き連れてずっと導いてたのは他でもないこのわしぜよ」

「すぐに嘘だとわかる様な事ほざいてんじゃないわよ。新たなリーダーともなればやっぱり若く可憐な美少女だと最近のラノベ相場で決まってんのよ。という事であたしが最も適任で相応しいリーダーです」

「おまん等はハナっから候補に入っとらん、座っちょれゲロまみれコンビ。顔にモザイクかかってるぞ」

 

到底人前には見せられない吐瀉物で覆い尽くした顔をモザイクで隠しながら、我こそが蓮蓬達の新たなリーダーだと名乗り出る坂本とエリカを、冷たく突き放ちながら陸奥は彼等を無視して再び考え直す。

 

(坂本のかつての戦友であるあの三人が天人であるこ奴等を導く事は難しい、かといって異世界の地球人の中から選ぶというのはさすがに身が引ける、連中は元々わし等の世界とはなんの関わりも持たぬ筈じゃったしの、やはりここは将軍? いや一番ダメじゃ、将軍は江戸におけるもっとも重要な存在、それを連中に差し出すともなればわし等は確実に逆賊扱いじゃなか……)

 

候補はいるもののやはり駄目、出来るわけがない、任せられないと次々と頭の中で適任のリーダー候補を消していく陸奥。

 

コレは流石に難問である、一体どうすればいいのか……

 

上手くまとめることが出来ず、珍しく陸奥が黙り込んだまま悩んでいる様子を見せていると

 

 

 

 

 

 

 

「どうした、こんな緊急事態の時に何かお困り事かね、お嬢さん?」

「!?」

 

背後から聞こえた突然の声に陸奥はバッと後ろに振り返ると、そこにいたのは……

 

 

 

 

 

 

「なれば光栄に思いたまえ、この特別な存在である私が諸君達に力を貸してやろう」

「お、おまんは……」

 

なぜ彼がここにいるのか、なぜ彼がロボットの肩に立ちながらこちらを見下ろしているのか

 

思わず呆然と見上げる陸奥に対し、”彼”は掛けているグラサンをクイッと上げながら不敵に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全てはこのラピュタ王の導きこそが、諸君らを正しき道へと歩ませる運命となるのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして話と時間は戻り、現在銀時達は危機的状況をまさかの服部、もとい服部・範蔵・ウル・ラピュタによって助けられ、星から脱出する道中、異変に困惑していた新八達も無事に見つける事に成功したのだ。

 

「いやぁ銀さんと深雪さんも元に戻れたみたいで良かったですよ」

「銀ちゃんとユッキーが元に戻れたって事はラスボスやっつけられたアルか?」

「まあな、楽勝だったよ」

「でもあそこにラスボスのオバハンいるアルよ?」

「まあな、長谷川さんだよ」

「なんだマダオアルか、それなら安心ネ」

「いやツッコまないの!?」

 

合流した新八と神楽と久方ぶりに元の身体で対面しつつ、銀時は後ろで叫んでいる長谷川真夜を無視しながら話を続ける。

 

「しっかしどうもこの星の揺れが凄まじいな、こりゃもしかしたら崩壊してるんじゃねぇか?」

「してるも何も完全に崩壊してますってコレ、銀さん、僕等も早くここから脱出しないと」

 

徐々に周りの壁やら天井やらがミシミシと音を立ててヒビ割れていく光景を目の当たりにしながら

 

銀時と新八が嫌な予感を覚えていると、銀時の隣にいた深雪もまた同調する様に頷く。

 

「せっかく戦いを終えたのにこのまま星と、もといブリーフ一丁の変態眼鏡と心中なんざごめんこうむります」

「そこはもとい付けなくていいだろ! 好きでブリーフ一丁になってるんじゃねぇよ!」

「心配しなくてもこのまま一気に突っ切ればすぐに出口だ、コレで晴れてこの陰気臭い星、もとい全身白塗り変態ツッコミ男とはおさらばできるってモンだぜ」

「だからもとい付けんな! なに勝手に僕を置いていこうとしてんだよ! ていうか!!」

 

揃って悪意のある発言をする二人に、新八は汗だくになりつつツッコミながら、限界ギリギリの体力を振り絞って

 

 

 

 

 

 

「いい加減その空飛ぶロボット乗せろやテメェ等!!!! こちとらどんだけ走らされてると思ってんだコラァ!」

 

空中で両手を広げて華麗に飛ぶ、アレな見た目のロボットの背中で

 

リラックスしながら座っている銀時と深雪の背中に向かって

 

必死に追いつこうと全速力で疾走しながら新八は喉の奥から叫んでいた。

 

「二人でなにロボットの背中で足伸ばしてゆっくりくつろいでんだ! そんなに余裕あるなら僕も乗れるでしょ!」

「ああごめん新八、俺ちょっとラスボスとの激闘の末に足痛めてんだ、あー足が痛い、痛みを忘れる為にちょっと寝るわ」

「自宅のソファ感覚で横になってんじゃねぇ!! 偉大なるロボットの背中で寝るとか無礼にも程があるだろ!!」

 

ふわぁ~っと大きなあくびをしながら全然痛がって無さそうなけだるい表情で、ロボットの背中でゴロリと横になる銀時。

 

そして隣にいる深雪はというと、銀時同様横になったまま、肘を突いた状態でいつの間にか所持していた少年ジャンプを読み始める。

 

「なんて事でしょう、私が知らぬ間にいぬまるだしの作者が新連載描いてました。アンケート書いておかないと」

「ジャンプ読んでんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! なんなの深雪さん!? もしかして銀さんと合体して分離した後もまだ銀さんの成分体に宿したままなんじゃないの!?」

「あ、お前何勝手に一人でジャンプ読んでやがんだ! よこせ! 俺が先に読む!」

「な! 離しなさいあなたが触れたらジャンプが汚れます! これは私がコンビニで買って来たものです!」

「人を汚物扱いすんじゃねぇよ! ジャンプは少年の為にあるモンなんだよ! 小娘はマーガレットでも読んどけ!!」

「あなた少年じゃないでしょ! 大人しくヤンジャンに鞍替えしなさい!」

「おうい! 今度は喧嘩まで始めやがったよこの二人! どんだけ仲悪いんだよ! つーかコンビニなんかどこにあったんだ!」

 

ロボットの背中の上でギャーギャーとジャンプを取り合いながら揉み合いを始める銀時と深雪。

 

もはや助ける気など全くない様子の二人にキレそうになっている新八、すると反対側から別のロボットが彼の方へ近寄って来る。

 

「新八! こっちに飛ぶアル! こっちはまだ一人分余裕残ってるネ!」

「神楽ちゃん!」

 

ロボットの上から手を伸ばしてきてくれたのは同じ万事屋の一員、神楽。

 

新八はすぐに嬉しそうな声を上げて近寄る。

 

「やっぱり持つべきモンは仲間だよ! あんな奴等もう仲間でもなんでもないよ!」

「待ってろヨ! いまどかすから!」

「え、どかす?」

 

どかすって何を?

 

新八が疑問に思ったのも束の間、神楽は共に同乗していた人物の方へ振り返り

 

「青白い顔で気を失って、半ば屍状態となって倒れてる龍郎をどかせば新八の座れるスペースが出来るアル!」

「龍郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 見当たらないと思ってたらまだ死にかけてたの!?」

 

チーンという無常な音が響くぐらいグッタリして白目を剥いて、神楽の横で倒れているのは司波龍郎。

 

同乗者が彼だと知って新八はすぐ様ロボットに飛び乗るのをためらうと、すぐに彼に向かって叫び声を上げた。

 

「諦めるな龍郎! こんな所で死ぬなぁ! もうすぐ故郷に帰れるぞ!!」

「とりあえずロボットの足の部分にでもヒモで括り付けておくアルか、凧みたいに飛びそうで面白そうネ」

「止めてぇ!! これ以上彼を傷つけないで! 何もかも失った龍郎にこれ以上の仕打ちを与えるなら僕は乗らなくていいから!!」

 

出会った時から数々の不遇な目に遭う彼には少々同情心が芽生えている新八、龍郎を邪魔そうにどか相当する神楽を必死に止めていると

 

「やれやれ、さっきからよくもまあそんなに走りながらも大きな声で叫べるモンだ」

「え? うおわ!」

 

突如後ろから何か大きな腕に抱き抱えられた新八、一瞬驚くがその腕はすぐに銀時達や神楽達の乗っているあのロボットの腕だと気付く、そしてすぐにロボットは無機質な表情でポイッと雑に彼を背中の上にほおり捨てた。

 

「いた!」

「すまぬな、全員助けたかと思っていたのだがそなたを見落としていた」

「へ? ってああ!」

 

何とか無事にロボットの背中に乗れて一息付けた所に、詫びつつ寄って来たその人物に新八は驚く。

 

「将軍様! そして達也さん!」

「まだそれだけ叫べる体力が残ってたならもうちょっと走らせても良かったかな?」

「達也、意地の悪い事を言うでない」

「フ、冗談だ」

「おぉ、まさかお二人に助けてもらえるなんて……ありがとうございます!」

 

徳川茂茂と司波達也、権力的にも実力的にも、これ以上頼りになる者はいない。

 

「本当に助かりました、いやぁウチの所のバカ主人公なんかと全然違いますよ達也さんは、ほら、あそこで年下の小娘とずっと喧嘩しっ放しなんですよあの天パ野郎」

「その小娘は俺の妹なんだが……深雪、融合化の影響で坂田銀時の成分を体に宿したままなんじゃないか?」

「……だ、大丈夫ですよきっと……」

 

彼等に助けられ事に新八は感謝しながらすぐに頭を下げつつ、不意に思った疑問を彼等にぶつけてみた。

 

「それにしてもこのロボット達ってやっぱあのラピュタっぽい宇宙船にあったモノですよね? 一体どうして星の中へとこんなに入って来て僕等を助けに来たんですか?」

「ああ、どうやらこの星の異変を外から見て気付いた服部先輩が、俺達の脱出経路を確保するために運び込んで来たらしい」

「え、服部先輩ってもしかしてあの春雨相手に無双かましてたエセムスカ大佐……うおぉ!!」

 

前方を見ながらこちを振り向かずに説明する達也に、新八が怪訝な表情で服部の事を思い出していると突然彼の顔スレスレに赤い光線が飛んで来た。

 

すぐに飛んで来た方向へ顔を上げると

 

そこにはロボットの上で絶妙なバランスを保ちながら二本の足で立った状態で

 

こちらを高圧的な目で見下ろす服部がいた。

 

「少年、言葉をつつしみたまえ。君を助けたのはエセムスカ大佐ではない、ラピュタの真なる王だ」

「あぶねぇ!! 今あの人ロボットのビーム撃って来たよ! 城壁だろうが戦車だろうがドロドロに溶かすビームを人に向かってぶっ放しやがった!!」

 

きっとエセムスカ大佐と言われたのが気に食わなかったのであろうが、だからとって魔法で例えるなら明らかに殺傷能力SSは付くであろう強大な力を即使って来るなんてたまったもんじゃない。

 

「ヤバいですよあの人! 達也さんの世界でもあんなんだったんですか!?」

「いや、入学早々突っかかれたのは覚えてるが。その時は見せ場与えずにパパッと瞬殺で倒したせいかそこまで印象に残らない影の薄いキャラだったな、顔もモブ顔だし」

「……なんかさり気に酷い事言ってね?」

「だが今の服部先輩は以前とは比べものにならない程に別人だ」

 

仏頂面で先輩に対し散々な評価を下していた達也に新八がボソッと呟くのも尻目に、彼は自分達より上を飛んでいる服部の方へ見上げる。

 

「以前は魔法の才能の優劣に強いこだわりを見せる男だったが、今はもうそんなキャラ設定を捨てて、ただ前を見据えて己の思うがままに突き進まんとする強いオーラを感じる。ぶっちゃけて言えばラピュタのムスカみたいになったという事だ」

「……もしかして銀さん達のように服部先輩もムスカと合体してるとか無いですよね?」

「……それは流石にないだろ、と思いたい……」

 

以前とはすっかり別人と化してしまった服部を見上げながら、新八の意見に達也が頷いていると。

 

そんな彼等に再び服部は腕を組んだまま嘲笑を浮かべて見下ろしてくる。

 

「どうやら君達は私を誤解している様だ。私はロムスカ・パロ・ウル・ラピュタではない、彼が掴めなかった大いなる志を引き継ぎし者であり、彼に代わるラピュタの王だフハハハハハ!!!!」

「……すみませんあの人何言ってんですか?」

「地球に戻ったら何よりもまず服部先輩を元に戻す事が先決だな、アレだ、前以上に絡みにくい」

「それと会長の方もお願いますね……アレあのままにしてると絶対ヤバいですから、もうそっち原作通りに進めなくなりますから……」

「なに言ってんだ新八」

 

なんとか矯正して彼を前の状態に戻そうと決めた達也に、新八はふと同じくすっかり変貌している七草真由美の事も思い出しと同時に忠告しておいた。

 

しかし達也はというとフッと笑いかけながら振り返り

 

「七草会長はもう完全にそっちの世界の住人じゃないか、俺は知らん」

「おい押し付けんな! あんなのこっちで引き取る余裕なんかねぇよ!」

「ていうかもうアレはもう元に戻す事は出来ない、そうなったのはそっちの世界の桂小太郎の影響だ、そっちが責任取って引き取ってくれ」

「それ言われたら確かにそうかもしれませんけど! でも100%無理って訳じゃないですってきっと! なんか記憶を消すとかそんな便利な魔法あるでしょきっと!」

「俺の母親が出来たけど今はお星さまだからな、ていうかもう会長は記憶改竄でも治らないと思う」

 

服部を元に戻す事については互いに同意するも、七草真由美をどちらの世界に戻すかについては軽く口論を始める達也と新八。

 

そんな事も露知れず、服部は前方に指を突き付けたまま彼等に向かって声を上げる。

 

「おしゃべりはそこまでにしておけ、見たまえ諸君、我々は遂に出口へと到達したぞ」

 

その言葉を聞いて新八達は前方へと目をやると、ひと際大きく開いた場所、宇宙船を待機させておく入港場へと辿り着いたのだ。

 

ここまで来れば後は船に乗って脱出……ひとまずこの星と共に全滅という危機は免れた

 

っと新八がホッと胸を撫で下ろして安堵していたその時だった。

 

「……どういう事だ?」

「マズい事になったな」

「?」

 

両隣にいた茂茂と達也が何やら不穏な空気を放ちながら呟き出す。

 

新八達が乗る為の宇宙船は見る限りちゃんと配備されている。多少傷付いてる点は見受けられるがあの程度ならすぐに出港出来るはずだ。

 

「将軍様と達也さんもどうしたんですか? このまま脱出すれば無事にそれぞれの地球に帰れる筈ですよね?」

「それはわからぬ……少なくともどちらかの地球は……」

「え?」

「新八、宇宙船じゃなくてその先を見ろ。外が見えるように透明になっている大窓を」

「大窓……な!!」

 

宇宙船を出迎える為の大きく頑丈そうな扉にはいくつもの透明な窓が張られ、そこから外を見ることが出来た。

 

達也に言われるがままに新八はそちらへ視点を傾けると、即座にカッと大きく目を開く。

 

そこには信じられない光景が映っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「地球が……! 地球がこんなにも近くにはっきりと見えているなんて一体どうして!!」

「蓮蓬の星があった場所と地球との距離は船でなら2週間近くかかる距離であった筈、達也、これはもしや……」

「完全にしてやられた、SAGIは俺達よりもずっと先を呼んで計算していたのか。俺とした事が迂闊だった」

 

そこに映るのは青く澄んだ海をベースに、多種の生物が住み交う希少な星・地球。

 

遥か遠くの先にある筈の故郷がこんなにも近くまで来ているなんて一体どういう事だと新八が困惑している中

 

達也は静かに腕を組みながら窓に映る地球を睨み付ける。

 

「SAGIはきっと、ハナっからこの手を使うつもりはなかったんだろう、だが万が一の為にと事前に準備を始めていたんだ、もし自分達が地球人と負ける時があった時は俺達にせめて一矢報いてやろうと……」

 

そう、この揺れは単にこの星が崩壊し続けているのではない。

 

身を切り崩しながら猛スピードで地球へと急接近しているのだ。

 

その理由は一つ

 

 

 

 

 

「奴は俺達の地球へ母星を衝突させて、生き残った俺達の前で護るべき存在を見せしめに破壊するつもりだ」

 

SAGIは知っていた、侍というモノは死を恐れず例えどんな相手であろうとテメーの護るモノの為なら身を挺して戦う生き物だという事を

 

だからこそ彼は自らを犠牲にこの手を使った。

 

生き残ってもなお、護るべき存在を失うという絶望を与えさせるという最悪の展開を、奴等に味合わせるために。

 

 

 

蓮舫の星と地球の衝突はもう間近

 

果たしてここにいる者達に残された最後の手段は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

クライマックス突入記念

 

入れ替わり組メンバーの、それぞれの相手に対する印象調査

 

深雪&銀時ペア

 

深雪「死んでください」

銀時「お前が死ね」

 

真由美&桂ペア

 

真由美 非常に長い為にカット、要約すると桂小太郎こそ世界を救う救世主だと称えている

桂「彼女はもはや非の打ち所の無い立派な攘夷志士だ、共に倒幕を為して新たなる日本の夜明けを目指そう!!」

 

エリカ&坂本ペア

 

エリカ「あー悪い奴じゃないんだけど……やっぱウザいわ」

坂本「面白か娘じゃきん、剣の腕も良いし頭の回りも早い。これからどうなるか楽しみじゃアハハハハ!」

 

あずさ&高杉ペア

 

あずさ「怖いです~!!」

高杉「……」

 

リーナ&土方ペア

 

リーナ「夫」

土方「俺の生涯の中で最も会いたくなかった女」

 

龍郎&神楽ペア

 

龍郎「……彼女が私の体でやらかした所業を聞くのが怖い……」

神楽「龍郎は私が育てたアル」

 

小百合&沖田ペア

 

小百合「ご主人様」

沖田「ごめん、誰だっけ?」

 

ゴリラA&近藤ペア

 

ゴリラA「ウホ」

近藤「え! メスだったの!?」

 

ゴリラB&十文字ペア

 

ゴリラB「ウホホ」

十文字「ほう、クロマティ高校という所の生徒だったのか」

 

葉山&源外ペア

 

葉山「喋る機会はありませんでしたが、いずれ直接お会いできる事を楽しみにしております」

源外「会う事は無かったが、いつか会えたら酒でも飲み交わしてみてぇもんだぜ」

 

真夜&長谷川ペア

 

真夜「私はまだ諦めてませんよ?」

長谷川「いいから俺の体返せよ!」

 

達也&茂茂ペア

 

達也「分かち合える相手がいるのも悪くないモンだ」

茂茂「将軍も一族も関係なく、ただの人間としてこれからも友であり続けよう」

 

??&??ペア

 

??「不束者ですがこれからもよろしくお願いします」

??「彼女とはこれからも上手くやっていけそうです」

 

服部&??ペア

 

服部「後の事は任せたまえ、ハッハッハッハ!」

??「期待しているよ少年、ハッハッハッハ!」

 

 

 

 

 

 

 




おまけを書いた理由としては今後彼等の中の者達に今後大きなイベントが待っているからです。

仲が良い者もいれば、最悪な者もいる、はたしてこの相性度が最後にどう影響するか……

この作品における集大成とも呼べる最後のイベントを頑張って書こうと思います

再来週まで楽しみにお待ちください。

それでは

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