魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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年末だというのに頼れる先輩が家庭の事情で退職し、あまり頼れない後輩が蒸発しました。

おかげで今年もめっさ多忙な日々を送りながら年末を迎えるでしょう……。




第四十五訓 吹出&股間

坂田銀時と司波深雪。桂小太郎と七草真由美。坂本辰馬と千葉エリカ。そして高杉晋助と中条あずさが

 

ラピュタのパワーを経て奇跡の超強化を施されたカイエーンのそれぞれの部位の操作を担当する事が決まっていた頃。

 

他の者達それぞれのカイエーンに取り込まれた船に乗って、バラバラになりながらその光景をモニター越しで眺めていた。

 

「うーん私達の星の命運をあんな連中に託すというのか……」

「いきなり私達の乗ってた船が変形したと思ったら……だ、大丈夫かな銀さんと深雪……」

「いいなー、私もこんな巨大ロボ操作してみたかった、ロケットパンチとか撃ってみたい」

 

コックピットに強制的に閉じ込められた四組のメンバーが各モニターで両端に映っている中で、中心には快援隊の陸奥が映っている。

 

それを操舵室にあるメインモニターで眺めているのは、真由美の友人であり風紀委員長である渡辺摩利と

 

一年生の光井ほのかと北川雫である。

 

彼女達三人は、脱出する際に偶然居合わせてそのまま自分達の地球が危ない事を、先程の陸奥の中継で知ったのだ。

 

「でも早くあの隕石と化した蓮蓬の星をなんとかしないと、私達以外の人類滅亡が確定、つまり地球大ピンチ」

「それにしてもまさか巨大ロボに変形して、更にラピュタと合体して迎撃するって聞いた時は私も驚いたよ……」

 

地球滅亡を前に相も変わらずクールな雫に対し、頬を引きつらせながら困惑している様子のほのか。

 

魔利の方はというとモニターに映る桂と真由美を眺めながらはぁ~と深いため息

 

「服部の奴が何を言い出すかと思ったら……ふざけてるのかどうかは知らないが、とにかく何とかしてもらわないと困るんだ。こうしてただじっと待っているのは性に合わないが、今の私達ではどうする事も出来ない」

 

かつては後輩であり有望な生徒会副会長であった服部がすっかり原型が無くなるぐらい変貌してしまった事に対しては魔利も色々とツッコミたい事はあるのだが、地球滅亡が間近に迫っているこの大変な状況の中ではもはやそんな事をしている暇はない。

 

「ここは連中に託すしかない、真由美や桂、そして侍と生徒の結束の力で地球を救ってもらおう」

「やれやれ、まさか最後に最後に侍とJKが世界を救うなんて大イベントが用意されているとは思わなかった」

「心配だなぁ、桂さんと七草会長は問題ないとして、他の人達はあまり仲良さそうじゃないし……やっぱり深雪と相性良いのは銀さんよりもお兄さんの方が……ってアレ?」

 

世界が救われるのであればふざけてようが構わない。

 

摩利は地球の命運を彼等に託し、雫はフゥと小さく息を漏らしながら肩をすくめている中。

 

不安な様子で一緒に乗り合わせた深雪の兄こと司波達也に尋ねてみようと思って後ろの方へ振り返ったほのかなのだが

 

「……ねぇ雫、お兄さん知らない? さっきまでここに将軍と一緒にいた筈だよね?」

「お兄さん? ああ、将軍様と一緒に出て行ったよ」

「出て行ったって……一体何処に?」

「そこまでは知らない」

 

ちょっと前までいた筈の達也と、将軍・徳川茂茂の姿がどこにも無い。

 

急に消えた事に戸惑いを見せるほのかだが、雫は実にあっけらかんとした様子で答えてあげた。

 

「さっきお兄さんたちが床下から現れた穴に真顔のまま飲まれて消えた所は見えたけど。そっから先はどこに行ったかはわからないもの」

「ああそうなんだ、そうだよねいきなり床から空いた穴に飲まれて消えられちゃわかんないよねってどういう事それ!?」

「イリュージョンです」

「いやイリュージョンじゃなくてさ! まさかお兄さん達も銀さん達みたいに!?」

 

思わずノリツッコミしてしまうほのかであったが、達也と茂茂が銀時達同様に穴に飲まれて消えてしまった事に仰天の表情。

 

「あのロボットの操作する役の人って4組で十分だったんじゃないの!?」

「ほのか落ち着いて、それとあの白ブリーフ一丁の変態さんも一緒にいなくなってるよ」

「白ブリーフの変態さん……? もしかして新八さんの事!?」

「白ブリーフの変態で瞬時に彼だと気付くとは流石ほのか」

 

どうやら白ブリーフの変態こと新八も忽然と消えてしまったらしい。

 

いきなり彼等が消えた事にほのかはますます不安を募らせながら、ジト目でメインモニターを眺める。

 

「どうなっちゃうのかな私達の地球も……私達自身も……」

「でぇじょうぶだ、ドラゴンボールさえあればみんな生き返る」

「いやそんなのないから……」

 

 

 

 

 

一方その頃、ほのか達と一緒の船に乗っていた筈なのに。

 

志村新八はいつの間にかどこか見覚えのある密室空間に立ちすくしていた。

 

「……え? なんで僕までここにいんの?」

『おお、ようやくおまんも搭乗出来たみたいじゃな』

「陸奥さん!?」

 

真っ白な空間を見渡しながら新八は急な出来事に困惑していると、向かいにある操作パネル的なモノからブゥンと音を立てて小さなモニター画面が映し出される。

 

そこに映っているのは銀時達をまとめてボッシュートした張本人、陸奥である。

 

「どういう事ですか一体!? まさか僕も銀さん達みたいにカイエーンの操作をしろって事ですか!?」

『その通りじゃ、そこの部分はおまんぐらいしか適任はおらぬでな』

「すみません……そこの部分ってまさか……」

『うむ』

 

 

 

 

 

『吹き出物です』

「やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

新たにパワーアップしたカイエーンCOだが、頭頂部には一際大きな吹き出物が存在する。

 

その位置を担う存在として選ばれたのが、過去の吹き出物担当という実績を持つ新八だったのだ。

 

「なんでまた吹き出物なんだよ! 明らかいらないだろここの部分!」

『パワーアップしたカイエーンをナメるんじゃなか、全身の武装だけでなく吹き出物もパワーアップしとるんじゃぞ。なんと前よりも若干デカくなってます』

「いらねぇよそんなパワーアップ!! 吹き出物が大きくなったってなんの意味も無いだろうが! いい加減皮膚科行け!!」

 

いらん強化を説明する陸奥にモニター越しで新八はツッコミを入れていると、彼女は更に言葉を付け加える。

 

『それとカイエーンCOの操作役は二人一組じゃ、じゃからおまんにも相棒を用意しておる、上手く結束して吹き出物を自由自在に操ってくれ』

「吹き出物を自由自在に操るってどういう事!? ていうか相棒って誰ですか!? 僕と同じ吹き出物役になってしまった哀れな人って一体!」

『さっきからずっとおまんの隣にいるじゃろ』

「……え?」

 

こちらを指差しながら陸奥が答えると、新八は恐る恐るゆっくりと隣へと振り返った。

 

 

ニヒルな笑みを浮かべながらクイッと駆けている伊達眼鏡を上げる服部大佐がいつの間にかそこに立っていた。

 

『服部大佐です』

「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁ!! なんで僕とこの人がセットなんだよ! ロクに口効いた覚えもねぇよ! なんでこっち見ながら薄ら笑み浮かべてんだよ! そもそもなんなんだよこの人わけわかんねぇよ!!!」

「君も男なら聞き分けたまえ、同じ眼鏡を掛けた者同士で仲良くしようではないか」

「陸奥さん明らか人選ミスです!! 絶対ヤバいですってこの人! 完全にムスカ大佐に憑りつかれています!」

『ヤバいのはおまんも同じじゃろ白ブリーフ』

 

どうしてラピュタの王(自称)である服部が吹き出物担当になったのかはよくわからないが

 

とにかく新八は彼と上手くやっていける自信が無いみたいで早速チェンジを要求するが陸奥はバッサリと切る。

 

『変人同士で仲良うしちょれ、クラスで二人組作ってと言われてはみ出されたモン同士で組まされる事もあるもんじゃき、それと同じじゃ』

「つまりは僕達はみ出しモン同士って事ですか!? はみ出されまくって吹き出物担当にされたんですか僕等は!?」

「時に天才というのは誰にも理解されず孤独に生きるモノなのだよ」

「いやアンタは天才じゃなくてただのバカだから孤独なの!!」

 

隣りでほくそ笑みながら陸奥の代わりに答える服部に新八がイラッとしながら答えていると、モニターに映る陸奥は何やら操作盤をピッピッと何かを操作している様子。

 

『よし、おい吹き出物、おまんの所のモニターをよく見てみろ、おまん以外のカイエーン操縦組が映っちょるじゃろ』

「吹き出物って呼ばないで下さい! 操縦組が見えるって……あ、本当だ! 銀さん達が映ってます!!」

 

吹き出物単体扱いされながらも新八はモニターをよく見てみると、確かに4隅に銀時や深雪、その他のメンバーが映っている。

 

しかもその画面一つ一つに奇妙な数字が表示されているではないか……この数字は一体……

 

「陸奥さんこの数字は一体銀さん達の何を現しているんですか?」

『シンクロ率じゃ』

「シンクロ!?」

『それが高ければ高い程、その二人は上手く互いに理解し合って絆を深めている証拠じゃ。まずはウチの艦長と艦長代理の所を見てみろ』

 

なんだかいきなりSFチックな機能が搭載されている事に新八は戸惑いつつも、とりあえず陸奥に言われがるがまま

 

艦長と艦長代理、つまり左足担当の坂本とエリカが映っている画面に焦点を当てた。そこに表示されている数字は

 

 

【30%】

 

「低ッ! 坂本さん達の結束力低すぎませんか!?」

『ああ、この程度のシンクロ率では小指一本ぐらいしか動かせん。おまん等もっと仲良くせんか』

『そうは言ってものぉ陸奥、この娘っ子さっきからわしに対してATフィールド張って近づこうとさせんのじゃ』

『こんな狭い部屋におっさんと二人っきりにされて身の危険を感じない女の子がどこにいんのよ、さっさとアタシだけ解放しなさい、監禁罪で訴えるわよ』

「女の子の方凄く嫌がってんだけど! テメーの地球が滅亡の危機なのに協力する気ゼロなんだけど!」

『やれやれ、アホとアホじゃから悪くないコンビだと思っとったんじゃがの』

 

苦笑する坂本と、彼の隣でずっとムスッとした表情浮かべながら腕を組むエリカ。これではシンクロ率が低いのも頷ける。

 

ますます新八は不安感を募らせながら、今度は半ば興味心で右足担当の高杉とあずさの方へと目をやる。

 

現れている数字は

 

 

【0%】

 

「全く同調してねぇぇぇぇぇぇ!!! そりゃそうだよ! だってあの高杉さんだもの! 高杉さんこういうノリ全く慣れてないから! こういうことするキャラじゃないですもん!!」

『……』

『た、高杉さん。私達で何とかしないと地球が……』

『……あ?』

『うえぇ~ん! 会長助けて~!』

「高杉さん血走った目をしながらメッチャキレてるよ!! 絶対機嫌悪いよあの人! あんな人と狭い部屋に取り残されたらそりゃ泣くよ誰だって!!」

『高杉なのに低すぎ』

『雫! ちょっと黙って!』

『おい誰だ俺の名前でつまらねぇ洒落言った奴、出て来い』

 

不機嫌だと一目でわかる高杉に向かって恐る恐る話しかけるだけでも十分凄い事である。

 

両手で顔を塞ぎながら泣きじゃくるあずさに新八は不憫に思いながらまた別の一組の方へ視線をずらす。

 

お次は桂と真由美だ

 

 

【400%】

 

「高ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! いや薄々予想はしてたけどここまで高いとむしろ気持ち悪い!! 半端ねぇんだけどこの二人!!」

『フッフッフ、俺と真由美殿のシンクロ率がまだこの程度だと思ったか? その気になれば更なる段階まで上昇することが出来るぞ』

『私達の本気はまだまだよ、ドラゴンボールで例えるならまだスーパーサイヤ人になったぐらいかしら? こっから更に2や3、ゴッドにブルー、そして身勝手の極意と無限の成長を遂げていくのよ私達は』

「いや力隠す必要とかねぇから最初から本気になってくんない!?」

 

両者腕を組みながらまだまだ余裕綽々といった態度で不敵に笑う桂と真由美。

 

どうやら彼等のコンビネーションの真価を発揮するのはまだこれかららしい。

 

『みよ! 俺と真由美殿が同調した事により! カイエーンの左腕部分は繊細なる動きまで出来る様になったのだぞ!』

『桂さんの考えが手に取るようにわかる……今ならこの左手でちっぽけなハエを掴む事だって出来る自信があるわ!』

「凄い! カイエーンの左腕だけ妙にアクティブに稼働している!! 他三つの部分がうんともすんともしねぇのに左腕だけ動きがヤバい!! ヤバいってか気持ち悪い!!」

 

カイエーンを外側から見てみると、左腕の部分だけが正確に桂と真由美のイメージ通りに動いている。

 

カイエーンの各部位の操作方法はハンドルやボタン、レバーを使う必要は無い

 

二人の脳にあるイメージが全く同じになった時にのみ動かすことが出来るのだ。

 

そしてここまで動かせれば二人のシンクロ率がかなり高いという確固たる証拠。

 

やれとも言ってないのに勝手に操作しながら、桂と真由美はカット目を大きく見開かせ、カイエーンの左手を迫りくる蓮蓬の星に向かって突き付けると、指の部分の小指と中指を折った状態で

 

『『ぐわしッ!!』』

「イメージだけじゃなくバカさも同調してんだけど! 巧みに操作出来ても操作してるのがバカ二人だから全く役に立つ気がしねぇ!!」

 

どんどん向かって来る星に向かってどこぞの漫画のポーズを決める事に成功してドヤ顔を浮かべる桂と真由美。

 

『流石は真由美殿、俺が考えていたイメージを瞬時に見抜くとは、これ程完璧なぐわし!は見た事がない』

『フッフッフ、私達の結束の力があれば天下統一も容易いという事ですね』

『その通りだ、これでますます地球に帰る日が楽しみだ、フハハハハハハ!!』

『ダメだコイツ等……このままじゃ地球を護るどころか僕等まで隕石に飲まれて……』

 

全く意味の成さないその行いに新八は頭を抱えながらツッコミを入れ、こんな奴等が世界を救えるわけがないと途方に暮れる。

 

だがその時

 

『おい新八、戦う前に何諦めてんだテメェ』

『! その声は銀さん!』

 

すぐ様バッと右上の方にある画面を見ると、そこにはこの状況でありながらもまだ諦めていない侍がそこにいた。

 

坂田銀時、数多の困難や苦境をも自らの信念に従い続けて乗り越えて来た男。新八にとってこれ以上頼りになる存在はいやしない。

 

『確かに俺達は仲良く手ぇ繋いで戦う事なんざ出来っこねぇ、てんでバラバラの方向を向いてる連中だ。だが共通の目的が出来ればそいつは別だ。隣に立ってる奴が誰であろうと無理矢理引きずって共に前へと進む、そいつが俺達流の結束の仕方なんじゃねぇのか?』

「銀さん!」

『新八さん、お一人だけで悩まないで下さい。こういった土壇場だからこそ私達個々の存在が強く結びつくキッカケになるんです、焦らず勝機を見出しましょう』

「深雪さん! 流石は僕等の世界の主人公とそっちの世界のメインヒロイン! ビシッと決める時は決めてくれるんですね!!」

 

画面越しにこちらに向かって新八を励ましてくれる銀時と、隣で微笑みかける深雪を見て、新八は思わず泣きそうになりながら諦めていた心が再び立ち直ろうとする。

 

そしてチラリと銀時と深雪の画面に映る数字を眺めてみると

 

【-546%】

 

「って0どころか-になってるぅぅぅぅぅぅ!! 結束とか強く結びつくとか言ってる本人が一番団結してねぇじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! アンタ等何やってんだコラァ!」

『え、何言ってんの新八君? ここにいるのは俺一人だよ? アンタ等ってどういう事?』

『私しかおりませんのに何か勘違いしてませんか?』

「いやいやいやいや!! なにまさかアンタ等! あまりにも仲が険悪になり過ぎて互いの存在を無視する事にしたの!? そんな解決策で地球は救われねぇんだよ!! 救われるのはお前等だけなんだよ!!」

 

互いに隣にいる人物について一切触れない態度でケロッとした表情でこちらを見つめ返してくる銀時と深雪。

 

よく見ると狭い部屋の中でも絶対に相手の肩にさえも触れない様にしながら出来る限り両端に立っている。

 

一切相手に干渉しないと言った感じで、まるでここにいるのは自分一人だと振る舞う二人に、新八はさっきまでの安堵していた気持ちをほおり捨ててすぐに怒声を上げて二人に向かって噛みついた。

 

「いい加減にしろテメェ等! 星の命運がかかってるのにずっと喧嘩ばかりしやがって!! こちとらもう見飽きてんだよ!! さっさと仲直りして一緒に戦え!」

『仲直りって誰と? あーもしかして俺と体が入れ替わっていたガキの事? そういやどこ行ったんだろうな、もう死んでるんじゃねぇの?』

『そういえば私の身体を奪って数多くの愚行を行った男がおりましたね、随分前に宇宙の藻屑となって消えたと聞いたんですけど?』

「口を揃えて似たような否定する辺りお前等本当は息ピッタリなんじゃねぇの!? あーやっぱ駄目だ! こんなバカ共じゃ世界を救うなんて出来っこない!!」

 

すっとぼけた口振りで相手の存在を抹消している銀時と深雪に、新八は再び頭を抱えて大きく叫ぶ。

 

上手く結束しているのは桂と真由美だけ、時点で坂本とエリカだがまだ全然。高杉とあずさに至っては同調する絵面さえ思い浮かべられないのだ。

 

そして極めつけは銀時と深雪……もはや前世で殺し合いでもしていたんじゃないかと思うぐらい相性が抜群に悪い。

 

「どうすりゃいいんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

『全く、これは中々の曲者揃いのメンバーが揃ったもんだ』

『だが現状で考えればこの者達が選ばれるのは妥当と考えるべきだ、それにまだ余達の希望は潰えてない』

「え?」

 

喉の奥から一人新八が叫んでいる中、モニターから何やら銀時達ではない声が聞こえて来た。

 

何処かで聞き覚えのある声だったので新八は叫ぶのを一旦止めて、ふと顔を見下ろして画面に目をやる。

 

するとそこには銀時達以外の別の二人組が映し出されている新たなモニターが、しかも……

 

 

【100%】

 

『妥当なのかそうではないのかなんてどうでもいい、役に立たないなら俺達だけでアレをなんとかすればいいだけの話だ、行くぞ茂茂』

『うむ、共に未来を切り開こう、そして達也、友として力を合わせそなたの地球を護り抜くぞ』

「ってえぇえぇぇぇぇぇぇぇ!? 将軍と達也さん!? ど、どうしてそんな所に!」

 

モニターに映って操縦席にいるのはなんと深雪の兄である達也と、こちらの世界の将軍であられる茂茂の姿であった。

 

二人がどうして自分達と同じく操縦席にいるのか新八が驚いていると、陸奥から新たなメッセージが

 

『言い忘れておったが、四つの部位とおまんの所の吹き出物以外にも操作役が必要とする場所があったんでの、最も適材に相応しいもんをそこに用意ばさせたんじゃ』

「もしかしてそれが達也さんと将軍!? ウチのトップと向こうのエースをダブルで必要な場所って一体!」

『無論、この新型カイエーンにとってもっとも大切な要になる場所ぜよ』

「要になるって……」

 

 

 

 

 

 

『局部じゃ』

「トップとエースをとんでもねぇ所に配置させやがったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

まさかのカイエーンの股間の部分に当たる場所の操縦役に抜擢された達也と茂茂。

 

戦略的にも総大将的にも貴重な存在をそんな所に置くという前代未聞の行いに新八は驚愕を露にした。

 

「向こうの主人公とこちらの総大将をなに人体で最も汚らしい部分に置いてんだアンタぁ! いやロボだけど! ロボだけども!!」

『性に興味丸出しの将軍と興味ない振りして実はムンムンの男子高校生を選んだまでの事、適材適所じゃきん』

「どこが適材適所!? 明らか人選ミスだろ! シンクロ率も100%なのにどうして股間にするんだよ!! 股間100%になって何が出来るっていうんだよ!」

『うろたえるな新八、例えどこであろうと俺達が地球を護りに来たのは変わりない』

「た、達也さん!?」

 

陸奥に対して新八がツッコミを連発していると、画面から達也がこちらを見上げながらいつも通りの真顔で腕を組みながら答える。

 

『やるぞ茂茂、地球だけでなく、自分の信念をも護るために』

『剣も魔法もいらぬ、戦いに必要なのは己が持つ諦めない心だ』

「す、凄い! 股間という明らか下ネタ要因ポジションに収まりながら二人の闘志は全く消えていない! むしろ燃え上がっている!!」

 

どうやら二人にとって不遇な扱いを受ける事などさしたる問題ではなかったようだ。

 

達也と茂茂、両者ジッと前方から迫りくる蓮蓬の巨大星目掛けてジッと構え

 

『さあ始めるとしよう、俺達の』

『地球人の底力を』

『カイエェェェェェェェェェェェン!!!!』

 

二人の静かな闘志がカイエーンにも応えたのか、宇宙に轟く程の力強い咆哮を上げる。

 

蓮蓬vs地球連合軍。正真正銘最後の戦いが、遂に始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

『エクスタシィィィィィィィィ!!!』

 

始まりのゴングが鳴った瞬間、カイエーンは叫びながら股間からドゴォォォォン!!と派手な音を鳴らしながら巨大なビーム砲を蓮蓬の星目掛けて発射する。

 

勢いの付いたそのビーム砲は蓮蓬の顔目掛けて見事クリーンヒット。

 

そして

 

『『……』』

 

股間担当の達也と茂茂が無言で同時にバタリと前に倒れて動かなくなってしまった。

 

チーンという悲しい音が聞こえた様な気がしながら、新八は目をパチクリさせながらさっきまで威勢を放ってカッコよく決めていた二人が、10秒も持たずにいきなり必殺技みたいなのを発射した上に、そのまま昇天してしまった現実をゆっくりと受け止めると

 

 

 

 

 

「カイエェェェェェェェン!!! だからイクの早過ぎだろォォォォォォォォォ!!!」

 

パワーアップしても結局カイエーンはカイエーンであった。むしろ前回よりも早漏になってしまっている。

 

恐らく操縦側の二人の体質が影響していたのかもしれない。

 

『将軍家は代々、あっちの方は早撃ち……』

『知識はあっても実戦無経験だといざ本番でヘマをする、なるほど、身に染みて理解した……』

「闘志があっても経験は無いから速攻でフィニッシュかましちゃったよあの二人!! 真っ白な灰になっちゃったよ!!」

 

精魂尽きてた状態で弱々しく呟く茂茂と達也に目をやりながら必死に新八は叫ぶ。

 

頼みの綱がまさかここでダブルノックダウンするとは思っていなかった、もはやここまでかとガックリと肩を落として半ば諦めかけてしまう新八。

 

しかしその一方で

 

 

 

 

 

 

「え、なにお兄様? 弱点無しの最強キャラかと思ったけどあんな弱点あったの?」

「違います! 今日はただちょっとあっちの調子が悪かっただけです! お兄様だって本気になればそりゃあ特命係長並のテクニシャンに!!」

「いやテクニシャン以前の問題だよねあれ? あんなのお店でやられたら嬢も困惑するレベルだよ? 60分コースなのにほぼほぼ無言で終わるのを待つだけの悲しい思い出になっちまうよ?」

「お兄様はそんな店に行きません!」

 

モニター越しで達也のフィニッシュを眺めていた銀時と深雪が、先程まで互いを無視していたにも関わらず

 

あまりの出来事につい会話を始めてしまう。

 

小指で鼻をほじりながら銀時がけだるそうに呟くのに対し、ムキになった様子で深雪は抗議した後

 

顔面にカイエーンの必殺ショットを食らってなお迫りくる怪物を前にキッと睨み付ける。

 

「どうやらお兄様の仇を取るしかないみたいですね……」

「勝手に暴発させちまっただけだけどな」

「不本意ですがあなたの力をまた借りるしかないみたいです」

「……言うと思ったよ、こっちも同じ事考えてた」

 

歯切れの悪そうに深雪が呟いて来たのに対して、隣に立っている銀時はスッと彼女に向かって拳を突き出す。

 

「どうやら俺とオメェの身体は離れてもなお、まだどこかで繋がっているらしい」

「そうみたいですね、理屈はわかりませんがこれもまた融合を行った者同士の特殊な影響という事かもしれません」

 

拳を突き出してきた銀時に対し、深雪は真顔で同じように拳を突き出して合わさる。

 

「出来る事なら今回ばかりだけにしたいです、もうあなたとこういう事になるのは二度とゴメンです」

「同感だ、こちとら同じ女を二度も抱かない主義なんだ、三度目なんざごめんこうむる」

 

悪態を突きつつ二人の拳が付き合わさった瞬間、突然二人の周りがカッと強く光に包まれて、あっという間に二人の姿がその場から忽然と消える。

 

そして代わりに現れたのは一人の

 

 

 

 

 

 

銀髪ロングヘアーであちらこちらにクセッ毛を跳ねらせた、制服の上に着物を羽織った一人の少女が見参した。

 

「やれやれ、原理はわからねぇがやっぱり出来たな、『融合』って奴をよ」

 

坂波銀雪、神威、そして四葉真夜をも倒した銀時と深雪の融合体。

 

どうして入れ替わり装置を破壊し、元凶をも倒した状態にも関わらず、こうして再びこの姿に戻れたのかはわからない。

 

それでも二人はなんとなく出来ると頭の奥底で理解していた、だが理屈や原理はわからないし、正直また分離出来るかさえも知らない……

 

「入れ替わりの謎だけでなくこの融合の仕組みも謎のままって事か……だが好都合だぜ、これで互いにいがみ合わなくて済むってモンよ」

 

銀雪が自分の右手を握ったり開いたりして体の確認をしていると、カイエーンもまた同じように右手を開いたり閉じたりしている。

 

二人で一つの生命体になったので、先程まで最悪だったシンクロ率がケタ違いに上昇していく。

 

「やっぱりここは俺達が出ねぇと締まらねぇよな」

 

そう言って銀雪は向かって来る星に向かってニヤリと笑うと、カイエーンの右手を掲げさせて迎え撃つ覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

「来いよお客様、早漏お兄様に代わって一級テクニシャンの銀雪さんが、見事極楽浄土に連れてってやらぁ」

 

最強融合戦士、再びここに降臨。

 

 

そして彼女に触発されて、他の侍と少女達もまた……

 




私はこれでも下ネタは読むのも見るのも少々苦手ですが、不思議と書く事は出来ます。

ですが今回の話はやはりキツかった、精神的に大分ダメージ入りました……

でもまだこれからなんですよねぇ……

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