彼/彼女は涙した。──あぁ、なんて残酷な事をするのだろう、──あぁ、なんて無意味な事をするのだろう。白い人間は一本筋を分ける。白い馬の顔を撫でると、馬は粒子となって溶けていく。力尽きたと言わんばかりに。
「さぁさぁ、ただいまよりご覧に入れますのは、神の告げられた伝説にございます。土地は死に人は絶え、神が下す決定稿。我が主は聖地を覆いなさった! これより、勝利の上に勝利が語られる事でしょう!」
白い人間は三つ柏手を打つ。現れ出るは茶色の表紙に金刺繍。ずっしりと重さを感じられる本を右手に抱えて、表紙を開いた。サティスファクトの中央教会を中心に、カッと真紅が花開く。──雷のような声で「きたれ」と呼ぶのを聞いた。地より這い出る、血色の馬。
なだめるように馬を撫でると慈しむ笑みを浮かべる。人間は瞳を閉じて白となる。そして、詠うように話し始めた。
『おやおやマスター。どうかなさいましたか?』
「あらあらサーヴァント。少しやりすぎではないかしら?」
『いえいえマスター。これは神の御辞にございます』
「えぇえぇサーヴァント。私も心得ているわ」
『ふむふむマスター。それでは何の提言を?』
「そうそうサーヴァント。もっと早く片付けてしまいましょう」
『そんなそんなマスター。私たちの神を急かすと?』
「いえいえサーヴァント。急かしてなどおりません」
『ではではマスター。一体どのような真意で?』
「ふふふふサーヴァント。皆に神を知ってほしいのです」
『ほうほうマスター。それは良い考えだ』
「でしょでしょサーヴァント。三つ目も解いてしまいましょう」
『でもでもマスター。それで”私たち”は生きていられるのか?』
「まぁまぁサーヴァント。気にしなくてもいいでしょう?」
『やれやれマスター。それもそうだった』
「そうそうサーヴァント。他から集めればいいのです」
『──さぁさぁマスター。ご一緒に』
「ほらほらサーヴァント。ご一緒に」
──雷のような声で「きたれ」と呼ぶのを聞いた。
「『第三の封印は解かれた《セブンス・トゥ・アンロック》』」
二つの声が重なりて、馬が天より舞い降りる。天より翔けて降り立つは黒い馬。痩せ細り、血走った眼に写るのは生存する意志。本能。生きる、と。腹が減ったと呼吸だけで伝わる。歯を剥き出しにして、涎を垂らしながら、解かれた封を今か今かと待つ様は忠犬の如く。
「あらあらサーヴァント。貪欲なのね」
『いやいやマスター。これは神のお告げさ』
「えぇえぇサーヴァント。承知しているわ」
人間は、ヒトはヒトリで笑う。第二、第三の封印は解かれた。
──穢れを払え、神の力。
──それを阻止せよ、王の力。
──神を殺せ、神殺しの力。
ここにサーヴァントは出揃いて、物語が動く。──飢餓に理性は刈り取られた。
【一部サーヴァントに狂化スキルを付与。魔力が一時的枯渇を見せ、マスターの魔力が消失しました】