はじめまして友人   作:ジョキングマン

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時系列は十巻のアインズ親子会話後ぐらい。創造主との関係が反映されるならこんな展開あってもいいなあなんて。

2016/7/28 一部誤字を修正しました。


立つ鳥跡に遺すもの

 ナザリック地下大墳墓、第二階層。かつては聖堂に足を運ぶ大勢の信徒達の足運びを担い、しかし今や朽ち枯れた木片と不吉な怪音をあげる吊り橋―――という設定だが―――の前に一つの影が不動の姿勢で沈黙していた。

 

 ピンク色の卵を彷彿とさせる凹凸のない頭。黒いクレヨンで乱雑に描きあげたような三つの目と口と思わしき黒穴。纏う軍服は欧州アーコロジー戦争でよく知られる、ネオナチ親衛隊が実際に着込んでいたそれと酷似したものだった。

 

 産毛の一本も見当たらないつるりとした頭に乗っかっている軍帽を深々と被りなおすこの怪人こそ、ナザリック地下大墳墓の絶対支配者にして至高の四十一人の長、アインズ・ウール・ゴウンが創造した、ただ一人のNPC。

 

 その名はパンドラズ・アクター。宝物殿の領域守護者という役割を与えられていた彼は現在、神とも形容できるアインズが築き上げた英雄モモンの影武者として、ナザリック外での活動を主としていた。

 

「ああ! これから愛しの宝物殿に戻れると思うと、湧き上がるこの歓喜の衝動を抑えずにはいられない。至高の御方々が創造せしマジックアイテムを磨く一時、データクリスタルを仕分けできる快楽の瞬間。私が感じるこの幸福は全て、我が父上のために捧げましょう!」

 

 城塞都市エ・ランテル―――という名前であった国で長期間モモンとして演じ続けていたパンドラズ・アクターは、久しく訪れる至福の一時に想いを馳せて独りでに大振りなアクションをとっている。

 

 どこかでないはずの背筋に寒気を覚えた支配者がいたような気がしたが、それはまた別の話。

 

 予定では、待ち合わせ場所はこの吊り橋の奥で間違いはなかったはず。身振り手振りを一度止め、パンドラズ・アクターはボロ橋の先に見える石造りの巨大な扉へ歩を進めた。

 

 扉の主が普段から見せる、妖艶で可憐な気配とはまるでかけ離れた、無骨とも評せる巨大な扉。この扉の先に、第一~第三階層守護者であるシャルティア・ブラッドフォールンの私室が設けられている。パンドラズ・アクターは彼女から至高の指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)を受け取るために、転移門(ゲート)をくぐってこの場所へ姿を見せたのだ。

 

 大袈裟にも聞こえる足音に反応するかのように、ボロ切れた木片から甲高い悲鳴にも似た軋みが上がる。だが実のところ外見はみせかけであり、落ちるようにあらかじめ仕組まれた場所さえ踏み抜かなければデス・ナイトが歩こうとも崩壊することはない造りになっている。故にパンドラズ・アクターは歩みを緩めない。

 

 橋下に(ひし)めく(おびただ)しい亡者たちの呻きを足蹴に、パンドラズ・アクターは扉の前まで辿り着いた。念のため軍服や帽子に乱れやしわがないことを確認し、尺取虫のように長い指を丸めて扉を叩く。

 

 石造りの外見に反して、鳴る音は金属質のもの。そんなことは当の承知だったためなんのリアクションもとらず―――瞬間、それは役者(アクター)としては誤った行動なのではと考えたが―――返事を待つ。

 

 少しして、重厚な音をあげて半開きになった扉の隙間から、彼女のシモベである吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が姿を現した。何者かを確認する手順を省略したということは、主から既に話は通っているのだろうとパンドラズ・アクターは推察する。

 

「これは初めまして、麗しき白亜のお嬢様。私はナザリック地下大墳墓の宝物殿の領域守護者、パンドラズ・アクターと申します! 以後お見知りおきを。本日は、貴女が仕えし主に用あってここへ参りました」

 

「よ、ようこそおいでくださいましたパンドラズ・アクター様。我が主、シャルティア様からお話はお伺いしております。シャルティア様は既に部屋でお待ちしておりますので、僭越(せんえつ)ながら私がご案内させていただきます」

 

 若干ひきつったような笑みと共に歓迎する吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)に気付くこともなく、さらにオーバーな御辞儀をもってパンドラズ・アクターは紳士的に対応する。

 

 絶対なる至高の四十一人をまとめ上げる我が創造主、アインズが「そうあれ」と設定してくれた行動に従って何が悪いだろうか。パンドラズ・アクターは誇りともいえるこのアクションを崩すことなく、小気味いい足音をあげて吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)の後をついていく。

 

 数多の女の嬌声や淫靡な気配が支配する部屋の空気を仰々しく肩で切って歩く、はにわ顔の軍服怪人。このミスマッチ具合にはさしものエロの権化やギャップ萌え厨二病も「いやさすがにないわ」と口をそろえて手を横に振るだろう。

 

「こちらでございます」

 

 吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が立ち止まった部屋の前に、パンドラズ・アクターはカツンと踵を揃えて静止した。

 

 三回、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が扉を軽く叩き、パンドラズ・アクターが来訪したことを扉越しの主人に伝える。

 

「入りなんし」

 

 一拍遅れて返って来た返事を確認し、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)は扉の取っ手に手をかけ、パンドラズ・アクターを中へ導いた。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「こうして顔を合わせるのは二度目でありんすね」

 

「実際にこうやってお話しできる機会は初めてではないでしょうか」

 

 ピンク色の薄いベールが天井から垂れ下り、奥に見えるベッドやその他の物を妖しげに映す部屋の中央にちょこんと置かれた丸いテーブルと小さな椅子が二つ。

 

 その片方に座し、純白の陶器に注がれた紅茶で唇を湿らす少女、シャルティア・ブラッドフォールン。

 

 シャルティアが妖艶とも可憐とも分け難い笑みで問うと、パンドラズ・アクターは対して表情を動かすことなく―――そもそも彼に表情筋があることが疑問だが―――溌剌(はつらつ)と答えた。

 

「立ち話もなんでしょう、座りなんし」

 

「それではお言葉に甘えて」

 

 言葉通り、カツカツとわざとらしく音を響かせながら椅子の前まで歩き、パンドラズ・アクターはどかっと小さな椅子に座りこむ。曲がりなりにも成人男性並の体格であるパンドラズ・アクターからしてみれば丈に合わない椅子のはずだが、彼はそれに文句を言うどころか膝を組んで優雅にくつろいで見せた。

 

「なるほどねえ…。アルベドやユリから聞いていた通りではありんすが、これほどとは…」

 

「いかがなさいましたか、第一階層から第三階層―――」

 

「いや、何でもないでありんすえ」

 

 台詞が長くなりそうな気がしたシャルティアは途中で遮り、冷めてしまう前に紅茶を飲むように勧める。

 

 二つ返事で了承したパンドラズ・アクターは、きびきびとした動作でカップの取っ手を長い指で器用に掴み、片手で軍帽を被りなおしながら口と思われる穴へ流し込んだ。

 

「おお、この鼻腔をくすぐるような芳醇な香り! それでいて甘すぎず、すっきりとした後味。色味も『紅茶』の名に恥じない、鮮やかな深紅色! 例えるならこれは宝物殿に保管されている黄金が示唆する栄光あるナザリックの甘美な一時に―――」

 

「あー。それで、至高の指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)を取りに来たのでありんしょう?」

 

 やっぱり長くなる台詞を再び遮り、シャルティアはここへ訪ねた理由をパンドラズ・アクターに思い出させる。

 

「そうでした! 私が管轄している宝物殿へ戻るため、至高の四十一人が所持していた至高の指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)が必要なので受け取りに参りました。この至高の指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)、所持する能力はナザリック地下大墳墓の玉座の間以外の―――」

 

 だめだこりゃ、とシャルティアは早々に匙を投げ捨てた。

 

 アインズがその手で自ら生み出した唯一のNPC、パンドラズ・アクター。その異様な姿を初めて見たのは、シャルティアが何者かの手によりワールドアイテムの効果によって洗脳、アインズに牙を向けたという前代未聞の大事件が解決した後のことだった。

 

 当のシャルティアはアインズの勅命に従い、セバスやソリュシャン、そしてお付きの吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)を二体ほど侍らせて外界へ出立した時からの記憶がすっぽ抜けてしまっている。次に目を覚ました時の記憶は、アインズと守護者全員が玉座の間にて横たわる自身を見下ろしている光景だった。

 

 その中に一人混じっていた見慣れない者こそが、初めてシャルティアがパンドラズ・アクターの姿を目撃した時だった。

 

 その後は激しい自己嫌悪やら極大の罪悪感やら粉々に砕け散ったプライドやらが折り重なっていたためにあまり覚えていないが、こうして彼と正式に言葉を交わすことはなかったはずだとシャルティアは記憶している。

 

「―――失礼。何やら優れないご様子ですが、何か気に障ってしまいましたか?」

 

「え? ああ、いや、何でもないでありんすよ。お気遣い感謝しんす」

 

 どうやら当時の忌まわしい記憶に顔が強張ってしまっていたようだ。左胸に手を当てこちらを覗き込むパンドラズ・アクターに礼を述べ、口直しに紅茶で濡れた唇を湿らす。

 

 三度話が脱線する前に、シャルティアは本来の要件へと話を戻した。

 

「そうそう、至高の指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)でありんしたね。持ってきなんし」

 

 扉へ一声かけると、既に待機していたのか一体の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が一礼と共に入室する。両手で丁重に持ち運んでいる、上からきめ細かい布が被さった小さな箱のような入れ物に、パンドラズ・アクターは首をぐりんと回して注視する。

 

 片膝を立てて深々と頭を下げながら、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)はその手に収まっている箱をシャルティアに差し出した。シャルティアは愛おしそうにその箱を受け取ると、そのままパンドラズ・アクターへと手を差し出す。

 

「では、失礼」

 

 ピアノでも弾くかのようにパンドラズ・アクターは緩やかに手を伸ばし、布の被さった箱を受け取った。それから爆弾でも解除しているかの如く、慎重かつ丁重に布を取り去り、待ち望んでいた蓋を開けた。

 

 中に入っていたものは見間違えるはずもない、創造主(アインズ)がその指に嵌めるナザリックの象徴。至高の指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)

 

「おお…! この輝き、この紋章。まさに、まさに至高の御方々の象徴にして圧倒的な力の証!」

 

 また途中で遮ってやろうかとシャルティアは口を開いたが、何度も光に照らして感極まるパンドラズ・アクターの姿に開けた唇を苦笑に変えた。

 

 今の今までは役者(アクター)の名の通り芝居がかった口調に動きの目立つ奴だったが、至高の指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)に触れている彼の姿はまるで憧れの物を与えられてはしゃぐ子供のように見えたからだ。

 

 動作や言動はくどくて野暮ったい奴だけど、なんとなく嫌いになれないやつだ。自分でも気づいていないそんな無意識的な感想に、シャルティアの笑みが心なしか和らぐ。

 

 傍に控える吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)を目配せ一つで退場させ、シャルティアは指輪に没頭するパンドラズ・アクターへは一つ提案した。

 

「ねえ、パンドラズ・アクター」

 

「おっと、私としたことが興奮していたようで。それでいかがなされましたか、シャルティア嬢」

 

「こうして会えたのも何かの(えにし)。少しお話ししてみるのも、悪くないではありんせんか?」

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「だから、なんで分からないでありんすかねえ。ユリのあの凛と澄んだ佇まい、それが顕著に表れた美しい顔立ち、隠しきれない豊満な女体、白く滑らかな肢体。これが分からずして何がエロだよエロって話でありんすよ」

 

「は、はあ」

 

 ぐいっと身を乗り出して力説するシャルティアから距離をとるように、パンドラズ・アクターは思わず後ろにのけぞる。

 

「最近は普通のプレイでも物足りなくなってきたのよねえ。シモベ達の身体もさ、そりゃあいい身体してることは認めんすよ? でも毎日同じ肉ばっかり食べさせられても飽きるっていうじゃない?」

 

 至って真剣な表情で自分の慰み方について語られている状況のパンドラズ・アクターは、いったいなぜこんな破廉恥極まりない話にぶっ飛んでいったのか聡明な頭脳で整理する。

 

(最初は普通に、そう至って普通に会話をしていたはず。アルベド嬢がどうだとか、アウラ嬢がどうだとか、アインズ様は素晴らしい誠その通りでございますだとか。そうだ、そこからアインズ様の白磁のごとく肢体はこの世の美の結晶という話になり……)

 

 見かけ上はのぺっとしたはにわ顔のままだが、その内なる表情ではこの事態をどう収めるか一人百面相しているところだった。

 

「ちょっと聞いてるでありんすかパンドラズ・アクター?」

 

「え、ええ勿論ですとも。誠に素晴らしいことですな!」

 

「でしょう? あの人間の小娘はもったいなかったでありんすなあ。ナザリックを冒した哀れな侵入者とはいえ、アインズ様に頼み込めばあれをペットとして飼う権利をいただけたかしら」

 

「人間を、ですか。ちなみにペットとして飼うとは、具体的にどのような―――」

 

 そこまで口にしてパンドラズ・アクターは(はた)と口を閉ざす。彼の聡明な頭脳がそう予見したのか、それとも根源的な何かが囁いたのか。このまま全てを口に出したらまずいという予感が背中を走った。

 

 しかし時すでに遅し。情欲にまみれた瞳をとろんととろつかせ、真っ赤な舌で淫靡に舌なめずりした変態吸血鬼の姿がそこにあった。というか発情したシャルティアだった。

 

「そりゃあもう、まずは妾の持ってる○○をあの小娘の○○に挿れて従順になるまで調教してそのあとは骨の髄まで溶かす勢いで舐めて絡めてもみしごいて○○してそのまま○○を○○に―――」

 

「いけない! それ以上はいけないシャルティア嬢! おそらく淑女が口にしていい範囲を超えてしまっている! アウラ嬢に叱られますよ!」

 

 今にも下腹部に手を伸ばしそうなシャルティアを大振りな動作で制したパンドラズ・アクターは、割と初めの方からアウトだったんじゃないだろうかという一人ツッコミがよぎりながらもどうにかこうにか話をずらそうと試行錯誤する。

 

 なぜこの場に関係のないはずの第六階層守護者の片割れの名前が出たのか少し気になったが、それも追々整理することにした。

 

「そ、それよりシャルティア嬢。先ほどいただいた紅茶は非常に甘美でした! よろしければ、もう一杯いただいてもよろしいでしょうか?」

 

「勿論いいでありんすえ」

 

 パンパン、とシャルティアはその場で二回手を叩く。すると、即座に二体の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)が扉から姿を現し、ほのかな湯気を放つ紅茶の入ったカップを二杯分用意した。

 

 一体はそのまま空になったカップを下げ、もう一体は腰かけるシャルティアの横につく。

 

 さてどうしたものかとかっこつけながら紅茶をすするパンドラズ・アクターの目の前で、同じように紅茶に口づけながらシャルティアは再びエロについて雄弁と語りだした。

 

 空いた片手で吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)の胸を揉みしだきながら。

 

「ぶふっ」

 

「ちょっと、汚いでありんしょうが! まさかお前ら、何か変なものを―――」

 

「い、いや違、げほっ! 違うのですシャルティア嬢。彼女達は何も悪くげほっ」

 

 大袈裟なのか本当に詰まったのか、激しく咳き込みながらも主の激怒に触れかけた吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)の無実を主張する。

 

 恐怖と怯えが入り混じった表情だった吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)は、パンドラズ・アクターの助け舟があってか涙目になりながらもほっと安心した顔を浮かべている。

 

(いや、でも胸揉まれていますけど?)

 

 こんなことになった最大の原因は現在進行形で執行中である。シャルティアの掌に合わせて張り出した胸は形をぐにぐにと変え、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)も先ほどの感情はどこへやら、ほんのりと顔を赤らめて吐息も荒くなってきている。

 

「大丈夫でありんすか? 肺にでも紅茶が入ったみたいでありんすが」

 

「え、ええ。御心配には及びません」

 

 あれには触れない方がいいだろう、とパンドラズ・アクターの頭脳はそういう結論に達した。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「長々と引き留める形になって申し訳ありんす。本来は宝物殿へ戻るところを妾が気まぐれに誘ってしまったばっかりに」

 

「いえいえ、とんでもございません。貴重な一時を過ごさせていただき、私としても感謝しきれない感情がこの身体を巡ります!」

 

 その巡った感情が迸っているせいなのか、片足を軸にして落ち着きなくぐるぐる回りながらパンドラズ・アクターは高らかに述べる。

 

 最後まで慣れることのなかった芝居かかった口調にお付きの吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)共々微妙な顔になるが、瞬時に淑女のような美しい笑みを浮かべながらドレスの端をつまみ、シャルティアは可愛らしく一礼する。

 

「それでは御機嫌よう、パンドラズ・アクター。貴方の更なる活躍を願って」

 

 回ることをぴたりと止めたパンドラズ・アクターは、その軍服に相応しい見事なまでの敬礼で返―――そうとして、左胸に手を添えて紳士的に一礼し返した。

 

「こちらこそ、Viel Glück(ごきげんよう)シャルティア嬢。貴女のますますな活躍を願って」

 

「「―――ナザリックに栄光あれ」」

 

 最後に両者が口をそろえたと同時に、至高の指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)の力でパンドラズ・アクターの姿がその場から掻き消えた。

 

 騒々しくて慣れない訪問者の姿が消え、シャルティアは軽く息をつく。

 

 アインズがただ一体として創造されたNPCは、なんとも言えない強烈なキャラクターという印象が強かった。というか強すぎた。それでも内側から溢れ出る守護者特有の気配とアインズより与えられた千差万別の能力に、シャルティアは同じ百レベルNPCとしての認識を強く意識する。

 

 ところで後半の方は話に花が咲きヒートアップしすぎてあんまり記憶が定かではないが、恍惚の表情でとろけていたシモベと何かをあきらめたように見えなくもない領域守護者の姿を見る限り何事もなく終わったのだろう。

 

 話に浸るのもそこそこに、シャルティアは転移門(ゲート)の管理のために再び仕事に戻る。お付きのシモベに後片付けを命じ、軽くのびをしてパンドラズ・アクターの立っていた場所をもう一度だけ振り返った。

 

「ま、なんだかんだ面白い奴でありんしたな」

 

 機会が会えば、もう一度お茶に誘うのも悪くない。

 

 自分でもどこから湧いて出たのかわからないぐらい機嫌のいいシャルティアは、鼻歌交じりで今宵の新鮮な慰め方を考えるのだった。

 

 

 

 

 

 




~後日~

(∵)「父上! 折り入って相談がございます」
▼皿▼「う、うむ? どうした、遠慮せずに言ってみよ」
(∵)「淑女の乳房が激しくもみしだかれている光景を見ても動じないようになりたいのですが」
▼皿▼「は?」
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