斬る?違う、粉砕だ   作:優しい傭兵

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第二十七話

ビャッコのザ・ワールドの拳が俺の腹を貫通し大量の血が噴出す。

 

 

 

「がはぁっ!」

 

「以外にもあっけないもんだな。結局はこの程度かよ。拍子抜けだなぁ」

 

勝ち誇っている顔。人を馬鹿にしたこの根性に俺は腹が立った。

 

「本当に拍子ぬけか?」

 

「あ?」

 

 

 

 

 

 

 

ボフンッ

 

 

俺の姿が煙と化しその場から跡形もなく姿を消した。

 

 

「影分身か!!」

 

「その通りだよマヌケ!!」

 

 

影分身。その名の通り自分の実体を持った自分の分身である。大聖堂の壁をぶち破った瞬間に自分の影分身を作り俺は姿を隠していた。俺に影分身に気付けないのも拍子抜けだな。

 

 

 

「人を馬鹿にしたてめぇの根性!文字通り打ち砕いてやるぜ!!」

 

 

背後から回り込みビャッコの顔面をおもいっきり殴り飛ばす。

 

 

ドゴォォン!!

 

 

「ごほぁぁあ!!」

 

壁に殴り飛ばしたことにより体がめり込み身動きが取れなくなるビャッコ。そのまま放置ってのもいいけどここで止めでもさして能力を返してもらうぜ!!

 

 

 

赤龍帝の籠手を顕現しビャッコに追い討ちをかけるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビチャァアアア!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビャッコの体から黒い液体が飛び出した。

 

 

「な、なんだ!?」

 

ビャッコの体の穴という穴から黒い液体が飛び出し体がビクビクと痙攣を起こし始め気味が悪くなってきた。

 

 

「やはり、まだ改良が必要と言う事か」

 

ボリックの近くで観戦していたエスデスが懐から俺の能力を奪った時に使った勾玉を取り出しビャッコに向ける。その瞬間、ビャッコの体全部が黒い液体となりエスデスの持っている勾玉の中に吸い込まれていく。

 

何が起こったのかわからなかったが今まで色んな驚く事が多かったからほんの少ししか驚かなかった。

 

 

「中々面白いものを見せてもらったぞ。こいつはまだ実験体として未完成の状態なのだ。余興として受け取れナイトレイド!」

 

 

待て。今なんて言った?未完成?あの力で未完成だと?あの俺の能力の上に何かを上乗せする気か!?

 

 

 

 

「ナジェンダ。これで分かっただろう。お前達ナイトレイドが束になっても私やあいつに勝てない。さっきのがその証拠だ。ここで貴様らを拷問室に連れて行く」

 

 

再びレイピアを抜き俺達に近付いてくる。完全に俺達を狩る気だ。

 

 

 

 

だがナジェンダは。

 

 

 

 

「悪いが私達は全員しぶとい。そう簡単にやられるタマじゃないんでな。戦闘不能にしたと思っているだろうが違う。回りを見てみろ」

 

 

 

エスデスの回りを見るとボリックとエスデスの周りをナイトレイド全員で取り囲んでいる状態。俺とビャッコが戦っている時にスーさんがナイトレイド全員に応急処置を施し何とか戦える状態にまで戻した。俺は全然気付かなかったけど・・・・・・。

 

 

 

「今回の我々の目的はボリックの暗殺。お前と戦ってる暇なんてないんだ。スサノオ!!」

 

 

 

ボスの声を聞きスーさんが両手を合わせる。

 

 

 

 

『禍魂顕現』

 

 

スサノオの奥の手が発動される。スサノオの奥の手は狂化。主であるナジェンダの生命力を胸にある勾玉から吸い取り自分の力にする。奥の手を使えるのは三回まで。それ以上使うと主の生命力が尽きるからだ。デメリットの方が大きいがメリットもある。生命力を吸い取って得た力は『絶大』である。

 

 

 

奥の手を使ったスーさんの姿が通常の状態とは違う形態になった。髪は白くなり上半身がゴツゴツとした体型に変化した。下半身は黒いボロボロの袴で草履を履いていた。そして一番目を引いたのが背後にある巨大な鏡らしきもの。

 

 

「奥の手を使ったか。中々楽しめそうだな!」

 

エスデスが氷の刃を出現させスサノオを攻撃する。

 

 

「八咫の鏡!」

 

背後にあった鏡が正面に移動しその鏡で氷の刃を吸い込み氷の刃を反射させる。

 

 

「反射の鏡か・・・・・・」

 

エスデスは反射してきた氷の刃を軽々と避ける。

 

 

 

俺も黙って見ていられない。

 

 

「赤龍帝の鎧!!」

 

 

鎧を身に着けスーさんの助太刀に向かう。

 

 

『Boost!』

 

「ドラゴン・ショット!!」

 

倍加した力を使い魔力の塊を発射する。

 

 

ドオォン!

 

「甘い!」

 

氷の巨大な壁を出現させ攻撃を防ぐ。まだパワーアップが足りないか。

 

 

「リュウ!下がれ!」

 

言われたとおりに下がるとスーさんの右手に巨大な剣が出現した。

 

 

「天叢雲剣!!」

 

 

巨大な剣の柄を両手で握り締めエスデスに向かって薙ぎ払う。

 

 

「ふんっ!」

 

巨大な氷の壁を幾重にも重ね剣の攻撃を防ぐがかなりの破壊力により氷が全て破壊された。

 

 

「中々の威力だだな。ほめてやる。だが私には届かんぞ」

 

「お前にはな、だが『後ろの標的たち』にはどうかな?戦いに興じすぎたな」

 

スサノオの狙いはエスデスへの攻撃ではなくボリックたちへの衝撃波での攻撃であった。氷の壁にガードされて刃は届かなかったがその威力による衝撃波はエスデスの背後にいるボリックたちに届いた。

 

 

 

「クロメ!!」

 

衝撃波によって起こった煙の中からクロメたちが姿を現した。

 

「全員無事です!」

 

そこにはクロメとボリックを抱えたナタラがいた。あの時に粉々にしたはずだったが、どうやら殺して人形にしてきた人間の体を使ってナタラを作ったのだろう。だが本来の自分の体ではないので完全には力は発揮できないはず。

 

 

 

ドサッ

 

 

「ナタラ!!」

 

 

(衝撃波でボリックを狙ったがあれで倒せるほど甘くはないか。だが護衛の力は封じたぞ)

 

 

 

 

「戦いを楽しめないとは・・・・・・護衛任務は二度とやらんぞ」

 

 

エスデスの上空に大量の氷の刃が出現。それが一つにまとまっていく。

 

 

 

(氷の数が今までと違う?)

 

 

「捕獲はせん。帝具人間!貴様の核をすりつぶしてくれる!!」

 

 

『ヴァイスシュナーベル!』

 

 

 

ドドドドドドドドドド!!

 

 

「最強の攻撃力をその身で味わえ!!」

 

 

『八咫の鏡!!』

 

 

鏡で吸い込みそのままエスデスに反射する。

 

 

ドオォン!!

 

(勝機!!)

 

 

エスデスが自分の攻撃を防いでる瞬間、ボリックへ近付くチャンスが出来た。

 

 

『八尺瓊の勾玉!!』

 

体にオーラを纏い高速移動を可能とする技。そのスピードでエスデスの横を通り抜けボリックへと攻撃を仕掛ける。

 

クロメはナタラに視線がいっていた為反応に遅れてしまった。

 

 

 

「とった!」

 

スーさんの拳がボリックを捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

これでボリックを倒して一件落着・・・・・・。かと思っていた。だがここからはありのまま起こった事を話す。ほんの一瞬だ。ほんの一瞬の出来事だ。スーさんとエスデスとはかなりの距離が開いていた。いくら奴でも瞬時に近付くのは不可能である。それが俺だったとしてもそれは無理だ。だが現実だった。何が起こったのか最初全然分からなかった。

 

 

 

『次に気付いた瞬間、スーさんの背後にレイピアを刺していたのだ』

 

 

 

 

「な、なにっ!?」

 

 

レイピアを刺した場所から氷が発生しスーさんの動きを封じていく。

 

 

「スサノオ!脱出しろ!!」

 

「もうそんな隙は与えん!!」

 

 

エスデスがスーさんが凍りついた瞬間にその氷を蹴り砕いた。

 

 

バガッ!!

 

「私の『奥の手』を使わせたのは褒めてやる」

 

 

砕いた氷の中から真っ赤な勾玉が飛び出してきた。

 

「スサノオのコアが!」

 

生物型は心臓部であるコアが無傷ならばすぐにでも再生するがエスデスはその隙も与えることなくそのコアを踏み砕いた。

 

バキィ!!

 

 

「っ!!」

 

「これでこいつも動けまい。ナジェンダ、貴様の帝具は中々面白かったぞ」

 

 

「おい!さっき何をしやがった!!」

 

「知りたいか。教えてやろうこれが私の帝具の奥の手、摩訶鉢特摩(まかはどま)だ。一瞬で時空を凍結させる事が出来る。その時空の中で動けるのは私だけだ」

 

 

ザ・ワールドのようなものか・・・。だが俺達のは時間を止めるであって時空を止めるわけではない。もし俺がスーさんの立場だったら絶対に死んでいた。

 

 

 

ズ・・・・・・ズズ・・・・・・・・・。

 

 

エスデスの攻撃により吹き飛んだスーさんの体の破片が一点に集まっていく。

 

 

「ほうまだ再生しようとするか。だがもう無理だ」

 

 

(スサノオ・・・・・・そんな姿になってまで・・・・・・)

 

 

「さぁこれで存分に戦える。ナイトレイド、貴様ら全員を拷問室に連行す・・・・・・・・・「シュッ!」っ!?」

 

 

 

エスデスの横を何かが通り過ぎた。

 

 

 

「ぎゃああ!!」

 

後ろを振り向くと巨大な風穴が空いたボリックが倒れていた。

 

 

「なんださっきのは・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

 

 

 

 

 

また正面を振り向くとそこに立って居たのは、体から真っ赤なオーラを滲み出しているデストロイヤー、リュウが立っていた。

 

 

 

 

 

「ふー・・・・・・よくもスーさんを殺してくれたな。泣きたい所だけど泣いてられない・・・。エスデス、お前は俺を・・・・・・怒らせたな!!」

 

怒号一発で衝撃波が走る。私、チェルシーは鳥肌が立った。リュウの怒ったところは初めて見た。いつもみんなにからかわれて怒るときもあったがそんなレベルじゃなかった。背中を見てるだけでも分かる。今のリュウは怒っている、おそらく私達でも止められないくらいに・・・・・・。

 

 

 

 

「エスデスゥゥゥ!!」

 

『Boost!』

 

ドガァァァァァァン!!

 

 

パワーの上がった力を右手籠めてエスデスに攻撃を仕掛ける。エスデスは瞬時に分厚い氷を張ったが簡単に砕かれてしまう。

 

 

「ボリックも殺されたか・・・・・・。任務失敗か。だが今はそんなことどうでもいい!今はこの戦いを楽しもう!!」

 

すぐさまレイピアで反撃してくる。

 

 

 

ドオォン!

 

 

音の鳴った方向を見ると空中にスーさんが復活していた。なんで?

 

 

「三度目の・・・禍魂顕現だ・・・。本来重ねがけでするものじゃないが今はそんな事言ってられない・・・。私の生命力を使いきった・・・。後は頼んだぞスサノオ・・・・・・」

 

血を吐きその場に倒れ込むナジェンダをタツミが抱きかかえる。

 

 

「ナジェンダ!貴様!!」

 

『八尺瓊の勾玉!!』

 

高速移動した勢いを使って攻撃を加える。

 

 

「む・・・パワーが上がっている・・・・・・」

 

氷を張ったエスデスを押していき大聖堂の壁に激突する。

 

 

 

 

 

「スーさん!」

 

「逃げるぞ・・・・・・リュウ・・・・・・」

 

「なんでだよ!今なら!」

 

「重ねがけをしたツケだ・・・・・。スサノオのパワーが倍加したわけじゃない・・・。今のままじゃエスデスの命にまだまだ届かない・・・・・・」

 

「分かった・・・・・・」

 

タツミがレオーネとナジェンダを抱え、俺がチェルシーとラバックを抱きかかえる。

 

 

ドォン!!

 

 

壁からスーさんが吹っ飛んできた。

 

「スーさん!!」

 

 

「多少強化されているようだが・・・まだだ。私には遠く及ばん・・・」

 

「クソッタレガ・・・・・・・・・へ?」

 

スーさんが俺達全員を抱きかかえる。

 

 

「絶対にこいつらを放すなよ・・・・・・・・」

 

 

「何を・・・・・・・・・うおぉぉぉわぁぁぁあああ!!?」

 

ブゥン!!

 

スーさんが二人抱きかかえている俺とタツミとアカメとマインを上空に放り投げる。放り投げた先には戦いでできた穴があり俺達はそこを抜け大聖堂の外に出た。

 

 

 

 

「スーさん!?」

 

 

 

 

 

(帝具と生まれてきて千年・・・・。これほど楽しい事は無かった・・・。悔いは無い・・・・・)

 

拳を高々と上げ握りこぶしを作る。

 

 

「さらばだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『スーさん。もしこの戦い全てがおわったらどうする?』

 

 

『そうだな・・・・・・お前達とどこかえ旅をしてみたいな』

 

 

 

 

 

 

 

目から涙が毀れた。約束したのに・・・・・・・・・。

 

 

「スーさあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がしはせぬ!!!」

 

「やらせるか!!」

 

氷の刃を上空に発射するがスサノオの鏡に防がれる。

 

 

「くっ!」

 

反射した攻撃を軽々とよけスサノオとの距離をとる。

 

 

「奴らの追撃はさせん」

 

「自らが囮となって全員を逃がすか・・・。ナジャンダの部下は甘い奴ばかりだな」

 

「俺は帝具人間だ。奥の手も使いきった。これ以上にない適役だ」

 

「お前、名をスサノオと言ったな」

 

「ふんっ。覚えていたのか・・・」

 

「帝具としてではなく戦死としてその名を覚えておいてやる・・・・・・・・・」

 

 

お互いの武器を持ちにらみ合う。

 

 

「その命の塵際・・・その最後まであがいて楽しませて見せろ!!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

俺達が逃げ出した後、スーさんが帰ってくることは無かった。

 




読んでいただきありがとうございます!


これからもよろしくお願いします!





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