斬る?違う、粉砕だ   作:優しい傭兵

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第三十話

「おいアベックども!頼るのもなんだが相談がある!」

 

ラバの声が厨房に響き渡る。

 

ワイルドハンドの戦いから数日。この日はナイトレイドの休日で、メンバー全員完全回復しいつでも戦える状態になっている。そんな俺たちにボスことナジェンダがほんの少しでもリラックスさせるためにとの事で休日を作ってくれた。

 

ここはお言葉に甘えてゆっくりすごす事にした。俺はチェルシーとマインとタツミの4人でクッキーなどのお菓子作りに時間を費やしている。ん?なんでマインとタツミがいるのかって?二人も作りたいんだとよ~。しかもこいつら・・・・・・付き合ってるらしいぞ。恋人同士と言う事だ。他のメンバーは知ってたけどなぜか俺だけ知らなかったんだぞ!!なんで誰も教えてくれなかったんだよぉぉぉお!

 

「私、一応リュウに言ったんだけどね・・・」

 

「え?」

 

「多分リュウは鈍いからどういう付き合ってるかを理解していなかったんだと思うよ?」

 

「まじすかチェルシーさん・・・・・」

 

てっきり買い物に付き合ってるのかと・・・・・・。

 

まあこの話は置いといて。

 

 

「何だよラバ」

 

「何よいきなり唐突ね~」

 

「こっちは大切な時間をお菓子作りに費やしてるのよ!」

 

「だからあんまり人前でくっ付くなって!」

 

マインさん。タツミと付き合ってからイチャイチャしすぎだろ。リア充爆発しろ!

 

俺もリア充だった・・・。

 

 

「お、俺もそうやってイチャイチャしたいんだよ!だから力を貸してくれ!」

 

 

「「「「はい?」」」」

 

 

 

『会議室』

 

 

 

「なるほどね。ナジェンダが好きだけど中々告白ができないと・・・」

 

「情け無いわね~。男なんだからがつんといきなさいよ」

 

「そのほうが女性は心にグッっとくるもんだよ?」

 

「でも・・・それがだめで今までの関係が崩れたらと思うと・・・・・」

 

おいおい・・・。いつも覗きとかがばれてボコボコになるまで怒られても尚ポジティブなラバが超ネガティブになってる・・・。

 

「男のくせに根性無いわね!」

 

「砕けて来い!!」

 

「砕ける前提で話を進めないでくれ!!」

 

チェルシーとマイン容赦ねえな・・・。

 

ん?

 

「すまんチェルシー。便所いってくる」

 

「は~い」

 

俺は会議室を出てすぐその近くの壁にもたれ掛かっているナジェンダに向かって笑いながら言った。

 

「モテるな。ナジェンダ」

 

「少し・・・恥ずかしい気がするな・・・」

 

「はははっ。で?どーすんだ?」

 

「確かに私はモテるが・・・今は恋をしているわけにもいかない」

 

「ほう・・・」

 

「私はこう見えて尽くしてしまうタイプだからな」

 

「別にそれは聞いてねえよ!!」

 

「む・・・・・・。だが、革命が終わったら・・・・・・それもいいかもな・・・・・・」

 

「そうか。男の決意は強いぜ?ちゃんと考えてやってくれ」

 

「あぁ・・・・・・」

 

 

少し騒がしいまま、その日の休日は幕を閉じた。

 

 

_____________________________________

 

 

『ワイルドハンド詰所』

 

 

自分達の住処として使っていた詰所は、以前のナイトレイドとの闘いのあと、ワイルドハンドの科学者でもあるドロテアがシュラに頼み込み、詰所の半分を自分の研究室&工場にした。

 

 

 

そしてその工場にはあるものを材料に実験をしていた。それは前の戦いで戦死したコスミナだった。

 

工場に用意してある培養器の中にコスミナを投入し錬金術を用いて実験を開始している。

 

「どうだコスミナは?」

 

「おぉシュラか。まったくこやつの胸はけしからん!妾よりも大きく実っておる!」

 

「いや…使えるかどうかって話なんだが……」

 

「まあそこは安心せい。まさに窮地に一生をえておる。デストロイヤーの攻撃を受けながらも生きておるのだからな」

 

「こいつは故郷で魔女扱いされて親も殺されてるからなあ。そのとき色々なもんがぶちぎれたんだろうな。ある意味じゃ人間じゃなかったのかもな」

 

「まあそこはまかせい。妾の錬金術も使って使えるようにする。じゃが心臓を撃ち抜かれた時に脳にもダメージがイっとるが……」

 

「使えるなら壊れていようが関係ない。使えればそれでいい…」

 

(じゃないとまた…親父に呆られちまう……)

 

 

「あとの二人は生き返らせることはできんぞ?完全に死んでおる」

 

「負けるようなやつはいらねえよ。エンシンなんか有利な満月な時に負けやがって」

 

(エンシンとは仲がいいよ思っていたが、こういう切り替えができるのがシュラのすごいところじゃ)

 

 

「んじゃちっと親父のところいってくる。コスミナを頼んだぜ」

 

「あぁ。任せておけ」

 

 

 

_________________________________________

 

 

「そうですか。その女も中々しぶといですねぇ~。とはいえ現在の頭数ではナイトレイドには敵わないんじゃないですか?」

 

「イゾウがいればいればいくらでも巻き返せる」

 

「そんな息子にパパからのプレゼントを」

 

大臣がパンパンと二回手を叩くと、置くからある人物が出てきた。

 

「お呼びでしょうか?」

 

リュウとの戦いで生き埋めにした筈のスズカがいた。

 

「羅刹四鬼のスズカです。シュラに上げましょう」

 

「四鬼じゃなくて一鬼でおめおめ帰ってきたんだろ?いらねえよ雑魚の皇拳寺なんか」

 

「っ・・・・・・」

 

(いきなり言葉責めなんて・・・・・・いい上司になりそう・・・・・・)

 

お忘れないように、スズカはドMである。

 

 

「私も許せなくて拷問部屋に送ったのですが、逆に喜んでいましてね」

 

(筋金入りのドMじゃねえか・・・)

 

「もう殺そうぜこいつ。今ものほほんとしてやがるし」

 

「えぇ。けどいい情報を持っていたので生かしております」

 

「いい情報?」

 

スズカが持っていた一枚の紙をシュラの前に置く。そこに書かれてあったのは素顔がばれていないはずのリュウの似顔絵が書かれていた。

 

 

「ナイトレイドのデストロイヤーと呼ばれている人物です。名前はリュウ。いつも仮面で顔を隠していたので分かりませんでしたが以前の戦いで顔が分かりました。能力は帝具でもなくこの世に存在しないものと思われます。こちらで半分の能力を植えつけたビャッコも同じ顔でした」

 

「私も仮面は取れない常備装備だと思っていましたから気付きませんでした」

 

(前に山頂でエスデスといた奴と似てるが・・・・・・同一人物か?)

 

シュラは顔に手を当て記憶を思い返してみる。

 

「この話は誰にも話しておりません。シュラに任せます」

 

「本当か!サンキュー!親父!」

 

「頑張りなさい。ですが・・・・・・」

 

「っ!」ゾクッ

 

「苦労を見かねての父の愛・・・・・・。無下にしたら怒りますよ・・・・・・シュラ」

 

本当に自分の子供に向ける顔なのかと思われる鋭い目つきでシュラに念を押した。

 

 

「・・・・・・っ。・・・あぁ!やってやるさ!」

 

「後、シュラにも知らせです」

 

「なんだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

「西の異民族を相手にしていた・・・エスデス将軍が帰ってきますよ」

 

 

________________________________

 

 

 

―ナイトレイドside―

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

休日から約一週間が過ぎた。不自然なほどにワイルドハンドが動きを見せない事を不審に思った俺たちは帝都に偵察に来た。メンバーは俺とラバ。顔がばれて居ない変態コンビでの出撃だ。

 

「俺は変態じゃねえよ!」

 

人の心読むなよ!

 

「しかも・・・なんで女装なんだよラバ」

 

「このほうがばれにくいからだ。惚れるなよ?」

 

「そのお花畑の頭に一発きついのをぶち込んでやろうか・・・」

 

冗談はこの辺にして。

 

「情報はどう?俺のほうではだめだったけど」

 

「こっちも駄目だ。どうやら完璧に宮殿内で閉じこもってるな」

 

「まるで引きニートだな」

 

「引きニート?」

 

「いやこっちの話だ。んじゃ早いとこアジトに戻るか。ワイルドハンドは当分諦める・・・・・・」

 

 

ドシュゥッ!

 

『諦めるか』と言おうとした瞬間、上空から帝具・シャンバラで転移してきたシュラが現れた。

 

 

「「っ!?」」

 

「転移!」

 

シュラは俺たちに近付き、地面にシャンバラを押し付け半径5メートルほどの魔方陣を出した。

 

キュイィンンンンンンン!

 

 

 

―宮殿―

 

 

光に包まれて気付いた次の瞬間、俺、ラバ、シュラは帝都の宮殿に転移されていた。

 

 

「はぁ!?」

 

「宮殿だよ!お前達は罠に掛かったんだ!」

 

「っ!!」

 

ラバはシュラの攻撃を避け、帝具であるクローステールを装着するが、

 

ドッ!

 

「がっ!」

 

「峰内ですまぬ。江雪・・・・・・」

 

江雪と言われる刀をもった男、イゾウの攻撃で気絶してしまう。

 

 

「ラバック!」

 

「デストロイヤー!おっひさしぃ!」

 

ガバッ!

 

「てめぇ!ドM!」

 

「羅刹四鬼があんな簡単に死ぬわけ無いでしょ?」

 

「血気盛んな奴は、血を抜いて大人しくさせるに限るの!」

 

ガブッ!

 

「いってぇ!」

 

ドロテアの野郎!俺の首に噛み付きやがった!

 

「むむっ!」

 

(なんて美味い血潮じゃ!妾がこれまで一度も味をしたこともない味じゃ!)

 

 

「てめぇら!調子に乗りやがって!」

 

やるしかねぇのか!

 

「虚化!」

 

仮面を作り装着する。その瞬間、あふれ出した霊圧でスズカとドロテアが吹っ飛んだ。

 

「うわっ!?」

 

「くっ!美味すぎて力が抜けてしもうたわ!」

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・」

 

(今はなんとかして・・・ラバを逃がさないと!)

 

だが、事はそう簡単には行かなかった。1番会いたくない人物達(・・・)に会ってしまった。

 

 

ザッ

 

「・・・・・・リュウ・・・なのか?」

 

「エスデス!?」

 

しまった!顔がばれた!

 

ドォン!

 

俺の背後に落ちてきたのは・・・。

 

「久しぶりだな」

 

「ビャッコ!?」

 

更に。

 

「この殺気・・・・。誰だ・・・宮殿で暴れているのは」

 

奥から出てきた大男。こいつは・・・ナジェンダから聞いたことがある。帝国軍の最上位に君臨する大将軍。

 

 

「てめえが・・・・・・ブドー大将軍・・・・・・」

 

こいつの使う帝具は雷を操る帝具。確か名前は・・・・・・アドラメレク・・・。

 

ラバは気絶して俺の周りには帝国最強のエスデスとブドー。ワイルドハンドのシュラ、イゾウ、ドロテア。羅刹四鬼のスズカに・・・俺の分身ともいえるビャッコ。

 

 

 

 

まさかこの言葉が本当に使うときがあるとはな・・・。この状況まさに・・・。

 

 

 

『絶体絶命』

 

 

 

「ワイルドハンドの待ち伏せプラス、騒ぎを起こせばすぐ最強クラスが駆けつけてくるセキュリティ。詰みだぜナイトレイド!そして手柄は・・・・・・このシュラ様のモンだ!」


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