斬る?違う、粉砕だ   作:優しい傭兵

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第三十二話

「さっさと立ちやがれクソ野郎!てめえはぶっ殺してやる!!」

 

シュラに向けて怒りの咆哮をあげる。シュラはフラフラと立ち上がりながら俺に不敵な笑みを浮かべていた。

 

「あーあ、お前やっちゃたな。こりゃ死刑確定だわ」

「逆だよ。俺がお前を処刑してやるよ!」

シュラはポケットからシャンバラを取り出した。

 

「転っ・・・」

切肉(スライス)シュート!」

 

右手に持っていたシャンバラを蹴り飛ばし、シャンバラは牢屋の隅までコロコロと転がっていく。

 

「男らしく素手できやがれ!!」

「なら・・・お望みどおり!」

 

シュラの右ストレートが飛んできた。俺は両手を前に出して防御の体勢にはいるが。

 

「こっちだよ腰抜け!」

「っ!?」

右のストレートはフェイク。左のアッパーが俺の顎にクリーンヒットした。

「ぶっ!?」

「ここからが俺の得意な殴りごろしだ!」

頬、鼻、額、胸、鳩尾、右と左からのランダムな攻撃が繰り出されてくる。

だけどよ・・・。

 

ガシッ

 

「あん?」

「悪いけど俺、喧嘩慣れしてるんだよ!」

 

バゴォン!

「ぶはっ!?」

全力でシュラの顔面を殴りとばすが、すぐに体勢を立て直してきた。

これは自慢じゃないが現実の世界では俺はちょっとやそっとじゃ学校の喧嘩では負けなかった。

「・・・・・・・・・」

(シュラの野郎・・・あいつの顔から慢心が消えた・・・。こっからが本気か・・・)

「褒めてやるよクズ。俺に本気を出させたんだからな」

「ならお前はまだまだだな。俺に出させてくれよ・・・本気を」

「抜かしやがれ!」

シュラの左フックが飛んでくる。

受付(レセプション)!」

踵を繰り出す蹴りで防ぎ、そのまま片足でジャンプし。

腹肉(フランシェ)シュート!」

腹に向かって遠心力を使って回し蹴りを繰り出すが。

「甘ぇよ・・・」

腹の前にはシュラの右腕がすでに防御に入っていた。

「胸ががら空きだぜ?」

シュラの両手が相撲の張り手のように飛んできた。

 

ドォン!

 

バキゴキッ

 

「がはっ・・・・・・」

 

口から血を吐き出す。さっきの張り手でアバラが何本か折れてしまった。

威力が強すぎたせいか体のバランスを崩し尻餅をついてしまった。

 

「おいおい、今ので終わりかよ・・・・・・こりゃナイトレイドの底がしれるぜ」

「っ!!」

こいつ、またナイトレイドを馬鹿にしやがった。ナイトレイドや自分のことをクソッタレな奴に馬鹿にされると反吐がでる。怒りが収まらなくなってくる。

 

 

「そのまま動くなよ。蹴りで首の骨粉々に砕いてやるからよ!」

シュラが両手を地に付け逆立ちをしている状態になり体を回転しながら俺に蹴りを放ってきた。

 

「死ねぇ!!」

右の蹴りが俺のこめかみに向かって襲ってくる。

 

 

(・・・・・・俺を・・・・・・ナイトレイドのみんなを・・・・・・)

 

 

 

 

舐めるんじゃねえ!!

 

 

 

上部もも肉(カジ)!」

 

ガッ!

 

お互い逆立ちの状態で両方の足が交差する。

 

「「うおおおぁああ!」」

 

ガッ!ドッ!ゴゴッ!ガキッ!

 

「おらぁ!だっ!クラァ!ぜやぁ!!だぁ!」

後バラ肉(タンドロ)上部もも肉(カジ)尾肉(クー)もも肉(キュイソー)すね肉(ジャレ)!」

足での攻撃が止まらず繰り出される。お互いの蹴りのスピードがほぼ同じのため蹴りは防がれ相手の胴体に当たらない。

(もっと!もっと早く!)

体全体の神経に意識を集中する。

「ぐっ・・・・・・」

蹴りを繰り出す瞬間、シュラのバランスが崩れた。

 

 

(今だ!!)

 

俺は足で地面に立った。この瞬間を無駄にしない!

 

 

()(ジュー)(アーシュ)(マントン)!」

「ぶっ!べがっ!だはっ!?」

鼻、頬、口、顎。顔面のあらゆる場所に全力で蹴りを入れる。

「これはお前に傷つけられて死んでいった人達の分!」

「ぶへぁ・・・・・」

シュラの顔面にある穴という穴から血がでている。だめだ・・・これじゃまだ足りない!

 

肩肉(エポール)!」

足をシュラの肩に添えそのまま地面に叩き落す。

 

ガコンッ!

 

「あぐっ!?」

「これはナイトレイドのみんなを馬鹿にした分!」

そして・・・・・・。

 

もも肉(ジゴー)鞍下肉(セル)背肉(コートレット)胸肉(ポワトリーヌ)!」

 

ドッ!ドガッ!ズドンッ!ドズンッ!

 

「ぎゃあ!ごへ!かはっ!ぬあ!?」

 

胸を蹴り飛ばすとシュラはボールのように転がり鉄格子に激突する。

 

「ブッコロス・・・・・・大臣の俺をここまでしたてめえを・・・・・・」

 

あらゆる場所から血を出しながらフラフラと立ち上がるシュラに向かって俺は最後の攻撃を繰り出す。

 

 

これが・・・・・・・・・。

 

 

 

 

―――――――俺の怒りだ!!!

 

 

 

 

 

羊肉(ムートン)・・・・・・・・・・ショット」

 

 

 

ドゴゴゴゴォン!

 

鉄格子を突き破り、その奥の壁に激突するシュラ。その拍子に鉄格子の破片がシュラの胸、心臓の部分を貫通していた。

 

 

「かっ・・・・・・あがっ・・・・・・」

「せいぜい今までの罪を数えながら地獄に行きやがれ・・・んで閻魔様に泣きながら懺悔するんだな」

 

「こんな・・・・・・処で・・・・・・俺がぁ・・・・・・っ」

 

シュラは目から悔しの涙を流しながら目を白目に向けたまま地面に倒れた。

 

 

(これで・・・・・・少しは人が救われたはずだ・・・・・)

 

俺は脱出のために牢獄を飛び出した。今は速めにここを出てナイトレイドの皆と合流しないと。

 

警備や拷問官の目を盗みながら移動する。1番いい手でシャンバラを使うってのもありかもしれなかったが俺はあの帝具がどうも気に入らない。前チェルシーが言ってたな。自分が帝具に対する第一印象が必要だって。じゃあ俺はシャンバラとは相性が悪いのかもな。やっぱ帝具だったらタツミみたいな鎧みたいなカッコイイのがいいし。こんな手錠さえなければすぐに能力使って逃げるんだが・・・・・・。

 

 

そんなこんなで何とか外に出れる扉を見つけた。少しだけ扉を開け周りを見渡す。見た感じだれも居ない。

 

「よし・・このまま王宮を出て・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

扉から一歩。たった一歩を出した瞬間。

 

 

 

 

 

パキィンッ!

 

 

「っ!?」

 

視線を下に移すと俺の胸から下が一瞬で凍り付けにされた。腕も足も完全に動かない・・・・・。牢獄の次は凍りに囚われた。

 

 

「逃がすつもりはないぞ・・・リュウ」

「エスデス・・・・・・」

影から顔を出したエスデス。そのままレイピアを引き抜き俺に近付いてくる。

「大臣の息子を殺したようだな?」

「まあな。今は地獄で火あぶりにでもなってるんじゃねえか?」

「私はあんな奴興味はない。ワイルドハンドは私にとって不快な存在なだけだからな」

「じゃあ俺に感謝するんだな」

「あぁ。私はお前に感謝してる。よくやったな」

エスデスが俺の頭を撫でてくる。以前なら嬉しがってただろうが今はそんな感情出てこない。腕さえ凍り付けにされてなかったらこの撫でてくる手を払いのけるんだけどな。

「お前の処刑日が決まったぞ。明日だ」

「明日・・・・・か。随分気が早いな」

「皇帝さまの命令だ。まあ半分大臣の命令だろうがな」

「大臣が悪の根源だっていうのにそれを放っておくのかよ・・・」

「前にも言ったはずだ。弱者が負けて強者が生き残る。大臣が国民にとっては強者なんだ。まあ、その強者である大臣がいるお陰で革命軍が存在して私もおもいっきり戦いに身を挺する事ができるんだがな」

「お前は根っからの戦闘狂だよ・・・・・・くそたっれが・・・・・・」

「戦いこそ私の全てだ・・・・・じゃあまた明日会おう。処刑場で」

「何を・・・・・・」

 

ガッ!

 

「ぐっ!?」

レイピアの取っ手の部分が後頭部に辺り俺の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

(皆・・・・・・ごめん・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

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革命軍の本隊は帝都へ向け順調に進軍していた。

腐った国を打倒するという志を持ち鍛えられた兵達である。なまりきった帝国の地方軍が勝負できる相手ではなかった。内応を取り付けていた太守以外にも無血開城するう城がほとんどであった。抗戦すれば内部で民の暴動が起きるからである。

こうして革命軍は驚くべき速さで進軍。要害シスイカンを抜ければいよいよ帝都である。

 

だが

 

 

ブドー大将軍率いる近衛兵が守るシスイカンは鉄壁の要塞と化し革命軍の進軍を阻んでいた。

シスイカンにブドー大将軍がいるだけで革命軍に対したらかなりのプレッシャーとなる。更にエスデス将軍とブドー大将軍の存在が周辺に大きな威圧を与えている。

 

大臣はこの上に革命軍の士気を下げる行動に移る。

 

 

 

それは

 

 

 

 

ナイトレイドの一員であるデストロイヤーことリュウの公開処刑である。デストロイヤーを処刑すれば革命軍の戦力は格段に落ちる。

処刑にはエスデス将軍、ブドー大将軍という最強クラスの帝国トップの2人を組み合わせている。

 

デストロイヤーの処刑はナイトレイドをおびき寄せる罠でもあった。仲間を助けにきたところを確固激破。

 

 

 

100%の死が待ち受けている。

 

 

 

 

 

 

 

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(例え罠でも私は行く。リュウは絶対に殺させはしない)

 

チェルシーは帝都に向かうためにアジト付近にある森を全速力で移動中。

リュウの救出を目的としている。

 

森を抜けると、そこには・・・・・・。

 

 

「え!?」

 

 

「先回り成功!」

「どこに行くつもり?チェルシー?」

「ナイトレイドを脱退しますか。かなりぶっ飛んだ思考だな」

 

そこにはナジェンダ、アカメ、レオーネ、マイン、タツミ、ラバックがいた。

 

「な、なんで!?」

「そんなの分かってるだろ?チェルシー」

「大事な仲間をみすみす殺されるわけにもいかないだろ?」

「私達も協力する!」

「リュウには俺を助けてくれた借りがあるしな」

「俺たちには甘いだのなんだの言いながら自分も中々甘いじゃないか」

 

 

「でも・・・・・・そしたらみんなが・・・」

「大変な目に合うって?それは違うぞチェルシー」

「え?」

 

 

『大事な仲間を見捨てない』

 

「それがナイトレイドだ」

「っ・・・・・・あ・・・ぁりがとぅ・・・・・・」

 

チェルシーは両手で顔を隠して涙をながしていた。それをレオーネが抱きしめる。

 

「まったく、色々困るよねウチのメンバーには」

「なあタツミ。リュウを連れ戻したら一発ぶん殴ろうぜ」

「いいな。勿論本気でだ」

「チェルシー。勿論なにかしらの策はあるんだろう?そうじゃなかったらお前1人で特攻なんてしないだろ?」

ナジェンダが吸っていたタバコをチェルシーに差す。

 

 

チェルシーはレオーネから離れて涙を拭うとニヤリと笑った。

 

 

 

「えぇ。策はあるわ」

 

持っていた黒色の宝石をみせる。

これはリュウに渡されたチェルシーの切り札である。

 

 

 

 

 

 

「よかろう・・・ならばその覚悟。汲み取ろう」

 

 

 

 

 

 

4時間後。リュウ処刑時間。

 

 


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