斬る?違う、粉砕だ   作:優しい傭兵

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約4ヶ月ぶりでせう。おまたせいたしやした


第三十三話

―帝都スタジアム―

 

 

 

「・・・・・・下半身冷てぇ」

スタジアムの真ん中には処刑人としての俺が氷付けの状態で捕まっている。そして

その俺の目の前にはエスデスと大将軍のブドー。そしてその客席には帝都の住民が大勢俺の処刑を見るために集まってきていた。

「今から殺されるというのに余裕だな?デストロイヤー」

「一回あんたも氷付けにされたら分かるよ。足の感覚無いどころか俺に足があるのかわからなくなってきてんだぞ」

「ふんっ。死ぬ前の戯言として聞き流しておこう」

「聞き流すのかよ」

この雷親父が!!

 

とは言ってもマジでどうしよう。完全に逃げれないぞ・・・。エスデスにブドー。そして俺のすぐ横にはビャッコが氷にもたれ掛かっている。帝国最強クラスが近くに居て能力も封じられてるし氷付けで動く事も出来ない。せめてこの手錠だけでも取れればいいんだけどまあお約束の如く取れないし・・・。

 

「ナイトレイドの連中は来ると思うか?」

「ナジェンダは甘い奴だ。恐らくリュウを助けに来るだろう」

「宮殿を襲うという可能性は?」

「私の部下を置いている。今は我慢してここにいてくれ。ここに私とお前がいるのは脅威を見せしめるためだからな」

「大臣の考えそうな事だ」

 

 

 

 

「オリジナルも中々ドジ踏んじまったようだな」

「うるせえ。喋りかけてくるなクズやろうが」

「おいおい。そんな口利いて良いのかよ。ここでぶっ殺してもいいんだぜ?」

「っ・・・クソッタレが」

「だけどそんなことしたらエスデスにぐちゃぐちゃのひき肉にされそうだから取り合えず手は出さないでおいてやるよ」

 

『取り合えず』か。出そうと思えば出せるんだぞといっているようなものだ。

それとなぜかこいつが近くに居ると落ち着かない。理由は至極簡単。自分の目の前に瓜二つの自分がいるんだ。自分が自分と話すことなんか人生で一度もないはずだからな。あとさっきから以上にこいつがいるとは別の理由で落ち着かない。

 

(こいつの顔をみてから異様に嫌な予感がする・・・これが単なる勘違いだといいんだけど・・・)

 

 

 

 

 

「そろそろ時間か・・・。リュウは私が殺す。死体ももらうぞ」

「そういう約束だ。構わん」

 

 

エスデスがレイピアを引き抜いて俺のゆっくりと近付いてきた。

 

 

「人の殺し方は熟知している。何処を殺したら死ぬか・・・。リュウお前の生命力に期待するぞ」

「あぁそうかよ・・・」

 

なんだよ客の奴ら。俺のこと見て笑ってやがる。そんなに俺が死ぬのが面白いかよ

 

「くはっ」

「リュウ・・・死ね」

 

レイピアが俺の胴体に向かって飛んでくる。流石にこれは死ぬな・・・。

 

 

(みんな・・・あばよ)

 

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドッ!

 

 

 

 

瞬間、上空から大量のレーザー光線が降り注いでくる。

 

 

 

 

 

『!?』

 

 

4人全員が空を見上げる、そこには危険種から飛び降りてきたもの達が居た。

 

 

 

「リュウ!助けに来たぜ!」

「借りは返すぜ!」

「まだ生きてるようでなによりよ!」

 

 

「タツミ、ラバ、マイン・・・・・・」

 

そしてその3人の奥からもう1人落ちてくる。

 

あれは。

 

「チェルシー!!」

 

俺の最愛の少女、チェルシー。

 

 

 

 

____________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちより少し離れた場所に着地した4人はすぐさま自分の帝具を装備する。

 

「エスデス、ブドー、それとビャッコ」

「本当にリュウにそっくりだ。大聖堂と宮殿での屈辱を晴らしてやるぜ!」

「ラバ、あんたは全開じゃないんだから少しは押さえなさいよ。今はリュウを助ける事が最優先!」

 

「ナイトレイド、来たか」

「賊が調子に乗りよって・・・」

 

すぐさまエスデス、ブドーも戦闘態勢にはいる。けどビャッコは動かない。

 

 

「ここで貴様ら纏めて拷問室に連行してやろう!覚悟しろ」

エスデスの回りに冷気が纏わりつきみるみると氷を生成していき、ブドーは腕に装着されてあるアドラメレクに電気を走らせる。

 

『死ね!!』

 

エスデスのヴァイスシュナーベルとブドーのプラズマが4人に向かって一直線に襲ってくる。だけどそれに向かって飛び込む者が居た。タツミでもなくマインでもなくラバックでもない。立ち向かったのは

 

 

「チェルシー!馬鹿野郎!逃げろ!」

 

攻撃型の帝具を持って居ないチェルシーが飛び出していた。ガイアファンデーションにはあんな攻撃を防ぐ能力なんてない。一体何をするつもりだと、血迷ったのかと俯いてしまった。だけどそんな時にチェルシーの口角が上に上がった。

 

 

 

「大丈夫だよリュウ。これがあるから」

 

チェルシーの手には黒の宝石が握られてあり、その宝石を氷の槍とプラズマに向かって投げた。

 

(あれは・・俺がチェルシーに渡したお守り・・・)

 

あの黒い宝石はチェルシーに渡した俺の能力で作ったアイテム。その効力は・・・・・。

 

 

 

 

「お願い・・・リュウを助けて・・・」

 

 

 

持ち主の身が危なくなった時、又は持ち主の強い願いによって発動する仕組みになっている。

宝石が黒色から赤色に染まり出し氷おプラズマに直撃。その瞬間。

 

 

 

 

ゴァッ!

 

 

 

宝石の中から火炎放射の如く炎が噴出した。

 

 

 

「「「!??」」」

 

 

エスデス、ブドー、ビャッコは突然の炎に驚き瞬時に炎から距離を取る。炎は氷とプラズマを完全に飲み込みそのまま氷付けとなっているリュウを飲み込んだ。

 

 

 

(あちちちち!チェルシーあの馬鹿俺ごと巻き込みやがって!)

 

だがそのお陰で俺を凍らせている氷とこの鬱陶しい手錠は熱で溶かされた。つまり俺の体が動くと同時に?

 

 

「さあ・・・反撃の時間だ・・・」

 

 

 

能力の開放を意味する。

 

 

 

 

 

 

 

「ふんっ仲間ごと燃やし尽くしたか。血迷ったか?」

「少しは頭使えカミナリ馬鹿が。ナイトレイドがそんな頭悪い事するとでもおもってんのか?」

「なんだと・・・貴様」

「ビャッコの言うとおりだ。ナイトレイドが今まで無策に挑んでくるはずがない。あの炎は防ぐべきだった」

「・・・っ、まさか」

「そのまさかだ。俺のオリジナルが動けるようになっちまった」

 

 

 

会話が終了するとリュウごと巻き込んでいた炎が一瞬にして風と共に消えた。そしてそこに立っていたのは服の所々が燃えて少し黒焦げになっているリュウが立っていた。

 

 

「よう。待たせたな」

 

「デストロイヤー・・・」

「・・・これは逆に、好都合かもしれないな。エスデス、ビャッコとやら。手は出すな」

「何言ってやがんだ。そいつを殺すのは俺だ」

「ブドー、リュウの処刑は私がすると決めている。貴様が邪魔をするな」

 

3人がグダグダと言い合っているが、そんな隙を与えると思うか?

 

 

「タツミ!マイン!」

「!?」

「ブドーは俺たちに任せろ!」

「援護するわよタツミ!」

 

ブドーに向かってタツミとマインが攻撃を開始する。あの2人なら大丈夫なはずだ。

 

 

「エスデス!」

「アカメか!」

 

ガキィンッ!

 

気配を殺していたアカメの攻撃を簡単に防ぐエスデス。その瞬間を狙ってレオーネが狙い打つ。だがしかしその攻撃すらも片手で防ぐ。

 

 

「中々の腕力だな。だが私にはまだ届かないぞ」

「くそ!」

 

 

チェルシーにはラバがついてくれてる。一先ずは安心か。なら俺の相手は・・・・・・。

 

 

 

こいつしか居ないよな。

 

 

「よう、ビャッコ」

「やっぱり俺たちは引かれ合うんだな。ま、お前は俺で、俺はお前だからな」

「俺の半分の能力と人格を移植されただけだろうが。んなドラマチックなこと言うんじゃねえよ気持ち悪い」

 

いや、この世界に来てる時点でドラマチックな事なんだが・・・。

 

 

 

「まあ、こんな戦争状態の中質問するのもあれだから聞きてぇんだけどよ」

「あん?」

あいつらはまだ知らないんだな(・・・・・・・・・・・・・)

「は?」

「なんのことだ?っていう顔してるよな?覚えてねえのか?この世界に来て初めてやってしまった過ちを」

「っ!?なんでてめえがそれを!」

「知ってるに決まってんだろ?お前の半分を持ってるんだ。人格とか正確とかは分からないが、お前の記憶も入ってるかもしれないって事に疑問は抱かなかったんだな」

「クソッタレが・・・めんどうな事ごと持って行きやがって・・・。思い出したくないことを思い出しちまったじゃねえか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだよなぁ?思い出したくねえよな?だって・・・お前はその数多の能力を手に入れた喜びで、無関係の村人達全員殺したんだからなぁ!(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

『!?』

 

 

 

ビャッコは俺に向かって言った訳じゃない。この場にいるありとあらゆる人の耳に届くように声を張り上げた。アカメ、タツミ、マイン、レオーネ、ラバック、チェルシー、エスデス、ブドー。全員驚きの表情だった。

 

 

 

 

「それ以上!なんにも言うんじゃねえ!!」

 

右手にエリュシデータ、左手にダークリパルサーを持ちビャッコに全速力で突っ込む。

 

 

 

「その程度で倒せると思ってるんじゃねえよな?」

「黙れ!!」

 

 

両の剣が煌く青色の光を放つ。二刀流16連撃ソードスキル『スターバーストストリーム』。右からビャッコの肩に目掛けて斬りおとす。だがその動きはビャッコは熟知している。斬りおとし、斬りあげ、回転斬り、クロス、突き。16回の連続とした攻撃をビャッコはすべて受け流した。

 

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!

 

 

 

「なん・・・だとっ・・・」

「んな攻撃読めるに決まってんだろ?怒りに任せたそんな動き単純化するに決まってんだろ!」

 

ドォンッ!

 

「ぐはっ!」

 

ビャッコの蹴りが俺の腹に食い込む。

 

 

「ほら、もっと頑張ってくれよ。相手はおまえ自身だぜ?」

「少しマジで黙れ・・・本気で潰すぞ?」

「ほー・・・?ならそうしてくれ」

「望みどうり!!」

 

 

虚の仮面を被ろうとした瞬間、俺とビャッコの目の前に雷が落ちた。

 

「は?」

「なんだこりゃ・・・」

 

 

空を見上げると空が黒雲に包まれていた。そしてそのまま視線を移していくとブドーの体の回りに黒いオーラが纏われていた。

 

 

「タツミたち・・・かなり追い込んだのか」

「ほう・・・こりゃ俺は必要無さそうだな」

 

ドンッ!

 

 

「てめえ!どこ行く気だ!」

「ここでお前を殺しても面白くねえ。俺のエネルギーも限界が近いから決着はまた今度だ」

「ふざけんな!俺たちと戦え!

「戦え?俺たちと?そんなこと言えるのかお前に?(・・・・・・・・・・・・・・)

 

ビャッコはそのままスタジアムから姿を消した。

くそっ・・・後味の悪いもん残していきやがって・・・。

 

 

気付いたら俺の周りにはナイトレイドの皆が集まっていた。

 

 

「皆・・・俺は・・・・」

「待ってリュウ。言わないで」

「そうだリュウ。詳しい話はこの戦いが終わったらだ」

「今はエスデスとブドーから逃げてから話の続きを聞かせろ」

「・・・・・・分かった」

 

 

エスデスとブドーに向き直り各々武器を構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあこいナイトレイド」

「賊はここで消し去ってくれる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行くぞ!!』

 

 

 

 

 


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