ソードアート・オンライン 白い罪人   作:かえー

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罪の重さ

小屋をもらって二週間。嵐の前の静けさはやはり本当で、急にプレイヤーが襲い掛かるようになってきた。が、プレイヤーも一筋縄ではいかず、装備やスキル、ハイエナも減りギルド単位で攻撃するようになったのである。この一年、昨年よりも襲撃された回数は減ったがその分俺の研究をして死神を抹殺する作戦でも立てていたのかもしれない。うぬぼれているわけではないがそんな気がする。そんなことをするぐらいならボス攻略の会議でも参加すればいいのに、暇すぎる。今も小規模ギルドの攻撃に対して迎撃しているところだ。

一年前とは明らかに違う動きを取ってきて、俺を囲んだ上に連続して攻撃してきて俺に攻撃の隙を与えない。一度でも防御をミスれば俺は槍で串刺しにされて死んでしまう。

 

「どっけ!!」

 

一刺しを覚悟し、一人のプレイヤーを切り刻んだ。そこに一瞬穴が開きそこを使い群れの中から抜け出し10人のプレイヤーを一掃した。現場には剣や鎧がドロップされており、明らかに戦争があっただろう状態だ。俺には幻覚か何か知らないがいろんなところに血がこびりついているように見える。その場を後にし渓谷を超えカルマクエストを探す。とそのとき、別行動をとっていたアモネからメッセージが入ってくる。

 

『拘束されました…。ギルド解放軍を名乗る者たちです。命が欲しければ50層まで降りてこいと伝えます』

「アモネ…!!」

 

走って引き返し、第50層まで全速力で戻った。そこには先ほどのギルドの3倍はあろう人数のプレイヤーと二人の女性プレイヤーに羽交い締めにされたアモネが心配そうにこちらを見ていた。すぐにプレイヤーを倒してアモネを救いたいがこの人数は恐らく俺も耐えきれず、アモネも処刑されバッドエンド。俺の身を差し出してもアモネを開放することはないだろう。その状態のまま拮抗状態が続き時間だけが経って行く。そこに一人のプレイヤーが群れの中から現れた。気品のあるコートを着て髪形を整え見たことのある顔。

 

「ミラ…!!」

「随分と汚くなったじゃないかリンネ。見ているだけで吐き気がする」

 

あの頃のミラとは違い、装備は豪華になったものの俺を見るなりゴミ扱いしてくる。流石にゴミ扱いは腹が立ち、背中にある鎌、ギルティサクリファイスを取り出すがその瞬間周りのプレイヤーは俺に襲い掛かってきた。さっきとほぼ同じ状況だが解放軍のプレイヤーの動きは明らかに違う。盾を持つプレイヤーの突進により俺の進行範囲を狭めその後ろに長槍部隊が控え俺を攻撃し俺も拘束されてしまった。その時ミラは全く動かず俺のことをただにやにやして見ていた。何とか拘束を解こうと振り回した手が解放軍兵士の顔面にヒットしたらしく、一瞬だけ拘束が解ける。このチャンスを逃さず渾身の力を込めてミラに斬りかかったが、次の瞬間強い衝撃が腹に伝わり再び元いた場所まで飛ばされてしまった。気持ち致死量を超えるダメージと思われたが、俺のHPは丁度半分に削られておりその横にはパラライズの表記が増えていた。再び拘束されてしまうが、もう俺には抵抗する力が残っていなかった。その様子を見たミラは拍手しながら歩いて近づいてくる。その隣にはさっきまでいなかった巨大なプレイヤーがハンマーを持って威圧するようにゆっくり歩いている。二人は俺の前で歩みを止めミラは俺をまじまじと見つめ話してくる。

 

「どうだ…今の気持ちは?こんなの…俺が味わった苦しみにも至らんけどな」

「…っ!」

「そういえば自己紹介を忘れていたね。俺はヴァイスヴァールハイト団長兼、ギルド解放軍副団長ミラだ。こちら俺の参謀ゴルドレム。とても怪力で前までは前線にいたバリバリのプレイヤーだ」

 

紹介をされたゴルドレムはフンッと大きく息を吐き俺を見てくる。顔は強面で何を考えているか全く分からない。HP…すなわち生命が半分を切っているせいか目の前の空間が歪んで見える。そんな俺の前にまたミラがたち、今度は片手に持つ剣で俺を斬り始めた。何故かダメージ量が少ないがダメージは積み重ねられ、徐々に俺のHPバーは減少を進める。ミラが斬りながら俺に小さな声で呟いてくる。希望を持って話を聞いたが全く希望の持てる話でもなかった。

 

「もうすぐ解放軍は解散するだろう…俺は脱退するつもりだ。が、このギルドはその続きだ、俺の野望だ」

「…何を言っているかわからないな」

「俺はあの襲撃があってから一人になったよ。辛かった、悲しかった。そして俺が仲間になったプレイヤー、仲間にするプレイヤーをお前が……奪っていったんだ……!!」

「俺は自分から…殺しを……しない」

「そんなことは知らない、殺したらそれは罪なんだ。仲間を売って一人で歩いた神気取った生活は楽しかったか?その背景でお前に仲間を殺されたプレイヤーがどれだけ悲しんでいるか知っているのか?本当にお前に殺される罪を犯したのか……?」

 

斬撃は威力を増し、俺のHPバーは赤いゲージまで減ってきた。ここまで来ると空間どころか、意識は朦朧とし、声すらも響いて聞こえるようになった来た。

 

「考えてみろ、お前の悲しみとここにいるプレイヤー達の悲しみ、どちらの方が大きいと思う?」

「………」

「そりゃあ、人間一人の悲しみより多数の人間の方が悲しみが大きい!この問題はお前や、この世界にいるオレンジプレイヤーを抹殺すれば終わるんだ!!俺たちはその被害者で集まり、黒い汚濁を白に染め直す白い真実へと書き換えるんだ…!オレンジプレイヤーの戦意を削ぐにはまず死神のお前の殺害が重要となる。お前も平和を望んでいるんだろう?」

「…あぁ、俺が死ねば、すべて終わるんだな」

「そうだ、だから今ここで俺に殺されて全てを………」

「もうやめてください!!」

 

冷たい空気を一つの声が砕いた。声を出したのは拘束されていたアモネだった。

 

「…私を連れていいです。そのかわりリンネさんを解放してください」

「アモネ!?お前…!!」

 

うっすらとした意識の中で彼女の名前を叫んだ。信頼してくれた相手を裏切りたくはなかった。仲間ではないけれど…友達でも家族でもないけれど…失いたくなかった。が、その声は届かず遠くに彼女は連れていかれ兵士は俺を投げ捨てた挙句何度も蹴り飛ばしてその場を去っていった。何もできない自分が悔しかった。レベルも低い、スキルもない、仲間もいない。

 

「もう……殺してくれ…俺には…何………も…」

 

いきなりの頭痛と極度の疲労でその場から体が動かず、ただ寝ころぶことしか出来なかった。これが死なのだろうか、体が軽くなりすべてがどうでもよくなってくる。周りには何もなくただの草原。俺は眠ることにした。瞼を閉じると目の前は青白くなっていて何かに吸い込まれていく感覚。俺はしばらく眠ることにした。こんな自分を赦してと懺悔しながら。

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