2025年、11月7日。SAO事件から1年経ったある日、俺にとってはある日ではないがあいも変わらず俺は学園の一室に隔離されていた。
日が短くなり冬が近いことが感じられ、それだけで寒い気がしてくる。
「……なぁ吹田さん、最近寒くなってきた気がするんだけどさ。暖房とかつかないの?」
「馬鹿野郎、この学園は俺の管轄で動いてるわけじゃねえんだ。冬服着て我慢しやがれガキが」
相変わらず冷たい吹田さん、寒い風に染みる肌に追い打ちをかけてくる。天井から壁のいずれかに絶対隙間がある気がする。
時刻は19時、授業も終わり夕食も終わった頃だ。学園は俺の部屋を残して大体消灯する。
「……さ、向こうの世界にでも行こうかね」
ナーヴギアを被り一言起動コードを呟く。
「リンク・スタート」
SAO、俺がきっと初めてやりたいと思ったモノ。母から逃げられて、自分が前面に押し出せた世界。だがその身勝手が人の自由を奪った。犯罪者はどんな犯罪を犯しても結局は人であり、いくら犯罪者を裁いても俺が犯罪者であることには変わりはない。この世界で俺は罪と責任を背負った。
俺の選択が仲間を危険に晒し、人の命を奪う。自分を俺は攻め続けた、いつしか自分を殺して欲しいとまで思ったことだってあった。
そんな俺に手を差し伸べてくれた人がいた。絶対に命を奪わせない、奪わない。その想いを胸に俺はここまで生きてきた……そして俺は思ってしまった。
皆に会いたいと。
ALO、ユグドラシルシティーの一室にて。ゆっくり起き上がると二人の顔が見えた。
「相変わらず、寝坊するのねアンタ」
「おはようございます、リンネさん!」
「あぁ、おはようカザネ、アモネ」
欠伸をしながら起き上がったそこは街中の宿。現実とは違い陽の光が窓から差し込んでいた。
「今日はどこに行きましょう?新生アインクラッドも結構攻略されてるみたいですし、私たちも挑戦しちゃったり?それとも高難易度のダンジョンに……私、どこでもお供しますよ!」
興奮して前のめりに話すアモネをよそにカザネは呆れてため息をつく。
「いくら明日が土曜日だからって……文字が青いだけで休みじゃないのよ?しかも来れる人今日はこれだけだしそんな大規模なことできないわよ」
「カザネさんまだ若いのにそんなこと言ってたら年寄りに見えてきますよ?若さ大事にしましょう?」
「このガキ……!」
施設内で喧嘩が始まりそうだったため二人の間に入り仲裁する。だが収まりつきそうもない。
「辞めようぜ喧嘩!俺いつか皆と会いたいんだから仲良く!」
言ってしまった。流れというか無理やりというか、今思ってることが口から出た。二人の喧嘩は止まったが不思議そうに顔を見合わせカザネはくすくす笑い出す。
「な、何がおかしいんだよ……」
「そういう発言、ルール違反でしょ?けど本当に会うつもり?」
「で、できれば……直接今までのお礼を言いたいというか」
「ここで十分よ」
満足気にニコッと笑ったカザネ。だが、アモネは次第に涙が目から溢れ始める。なんでなんだ。
「ほ、本当にまた会ってくれるんですか……もし会えた暁にはいろんなところに出かけたりデートしたり……それからそれから……!」
「うん、俺に外の世界を教えてくれ。アモネ」
「リンネさん……♪」
「はいはい、惚気るなよ二人とも。それなら保護者として私が同伴しようかしら?」
「ここの世界だけで十分なんじゃないんですかー、カザネさん?」
「アンタみたいにちんちくりんだと事件に巻き込まれた時どうするのよ?」
再び喧嘩が始まりそうなところを宥める、おそらく次キッカケがあったらきっと喧嘩が始まるんだろうな、多分。
「で、会う日はいつにします?」
「……7年後の今日とかどうだ?」
「長いし中途半端だし……どうして7年後なのよ」
ふと思いついたのが7年後だった。俺があそこから出られるのも大体それくらいと吹田が言ってたからだ。違ったら吹きたが全部悪い、そうだ。7年も経てば俺とアモネも成人を迎えてるし、お酒やタバコもカザネと一緒に楽しめるはずだ。
「じゃあ、7年後。2031年11月7日、帰還者学校の校門で集まろう!」
なんでかはわからない、みんな知ってると思って学校の場所を示した。東京タワーとかもっと色々あったのにも関わらず。後から考えればもっと色々あった気がしたのに、ここなら来てくれる確信があった。
どうかこれが7年後に届いていると嬉しい。それまで生きてくれ。
2024年の僕より