学園都市に就職したけどブラックすぎワロエナイ   作:ドラ夫

2 / 2
第2話

 俺は元は自衛隊に所属していた軍人だ。

 今日から配属先が変わり学園都市での配属となる。これは珍しい事で、現に今年は俺も含めて3人しか学園都市に就職しないという話だ。尤も、俺の場合厳密には就職ではないが。

 外の人間にとって学園都市に配属されるのは一種のステータスだ。その理由は色々あるが、軍人の俺にとって重要なのは兵器に関してだ。

 日本国内で普通殺傷性のある兵器を持つ事は禁止されているが、学園都市では超能力者がいる事や、持ち出されては困る機密情報が多い事などの理由で、兵器の所持が許可されている。

 しかもその兵器が俺たちの世界とは比べものにならないくらい高性能らしい。超能力者と高性能兵器で戦い学生達を正しい道へ導く、これで心が踊らなかったらそいつは男じゃない。

 俺は正義感と期待を胸に学園都市に入った。

 

 

 ──今思えば俺は本当に馬鹿だった。もし学園都市でタイムマシンが開発されたら、俺は俺を殴ってでも止める。

 

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「1班は死体を片付けろ。2班と3班は俺と来い。相手はレベル4の発火能力者だ。一人、二人は死ぬことを覚悟しておけ」

「了解」

 

 

 ──死ぬほどブラックだ。

 

 

 配属された部隊は『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』。

 名前を聞いたときは、アメリカとかにある特殊部隊っぽくてカッコいいなぁ、とか思っていた俺は本当に馬鹿だった。

 よく考えれば、猟犬なんてついてる時点でロクなものじゃなさそうなのに。

 配属された初日、まず隊長にあってもらうと言われた。

 西端な顔の軍人が出てくると期待していた俺は、嬉々として初めての訓練に向かった。出てきたのは顔に刺青を入れた、強面の白衣のおっさんである。

 軍人まで科学者とは、流石学園都市。恐れ入った。

 

「ここのルールは1つだぁ、俺の命令は絶対。破ったやつは殺す」

 

 ここは本当に日本なのだろうか?

 目の前の男の威圧感も、言葉の内容も、渡された装備も全て今から戦場に向かうそれだ。

 そしてその考えは、あながち間違ってはいなかった。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「ぐぁっ!」

「怯むな!撃て撃て撃て!」

「左から大型車!誰かRPG!」

「どいてろ!巻きぞえくらうぞ!」

「まずい、能力者だ!推定レベル3の念動力者!」

「レベル3なら多角面から押せ!」

「っ!?しゅうりゅ───」

「まずい!2人やられた!カバー」

「了解!」

 

 これが学園都市での仕事風景である。

 所謂不良の集まりである『スキルアウト』との戦いが主な仕事なのだが、普通に殺し合いだ。

 もう、学生にちょっと喝を入れるとか、そんは次元じゃない。だいたいどこに銃や爆薬を平気で持ち出してくる不良がいるのか、中東だってもう少し平和だ。

 そしてなにより、能力者が本当に厄介だ。

 奴らのせいで戦闘パターンが尋常じゃなく増えている。外での戦術など、この町ではまったく意味をなさない。

 悪い事をした能力者の道を正して罪を償わせる、とか言ってたやつはすぐに死んでいった。

 

 

 どうやらこの街では能力のレベルが高いほど偉いらしく、差別が激しい。

 当然、レベルどころか超能力者でさえない俺達大人はこの街では最底辺の扱いで、うっかり街を1人で歩こうものなら、あっというまに絡まれる。

 あいつら、大人を舐めきってやがる。

 だが、俺たちは能力者とも互角に戦える。

 戦い方を教えてくれた人は、意外な事に隊長だった。

 この人は見た目がいかつくて、言葉遣いも荒いが、頭が良くて、言うことはいつも正しい。なにより、レベル4以上の能力者にさえ1人で戦い、勝つ。あの人は部隊全員の憧れだ。

 そして当然、俺もあの人に憧れている。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 今日は稀にある、高レベルの能力者達の戦いの後始末だ。

 この仕事は本当に辛い。

 まず規模が大きいために目撃者が多く、そいつらを黙らせないといけない。

 しかし、ここは学生の街。目撃者もまた学生で、あいつらはすぐに拡散させないと気が済まないたちらしい。直ぐにSNSや電子掲示板の類に書きやがる。

 部隊の何人かがSNSなどにアップされた情報を消しながら、目撃者の顔を監視カメラの映像やSNSのアカウント情報から特定して、俺たち実働部隊が脅しに行く。

 この目撃者が高レベルの能力自慢だった場合もまた厄介で、対処出来ない時はたびたび隊長の世話になる。

 この時俺はいつも自分の力のなさに情けなる思いだ。

 

 

 そして戦いがあったということは敗者と勝者がいるわけだ。

 喧嘩両成敗という事で、俺たちは能力者にお灸を据えに行く。高位能力者に度々争われると、色々と困るのだ。

 大人しく捕まって牢獄に入ってくれるといいのだが、今まで大人しく捕まった学生はゼロだ。

 やはり大人がほとんどいないという状況で育つと、罪を犯したら罰する、という意識を生み出し辛いのだろうか。

 

 

 さて、今日の仕事はなんでも【スクール】とかいうやつらの起こした戦いの後始末らしい。そんな名前のスキルアウトは聞いた事がなく、名前からしてもなんだか平和そうだ。【学校】だなんて、どれだけ学校好きなんだそいつら。今日は早く帰れるかもしれないな。

 

──なんて考えてた時期が俺にもありました。

 

 これほどの規模の戦闘痕を見たのは初めてだ。流石の学園都市でも、こんなに街がメチャクチャになっているのは見たことがない。

 まず物理的被害の量が尋常じゃない。

 ここに隕石が降ってきた、と言われても納得できる程だ。

 これを埋め立てるのは別の部隊の仕事で、パワースーツを使ってえぐれた地面を埋め立てていく。俺たちはその間に潰れた死体や、地面に埋まった死体を回収しなければならない。

 学園都市では超能力や兵器が普通に使われるため、しょっちゅう死体が出来上がる。

 特に超能力による死体はグロく、発火能力による半焦げの焼死体や、念動力によって皮が剥がされた死体を最初に見た時は、流石に1週間ほど肉が食えなくなった。

 それでも隊長が「俺の部隊によええ奴はいらねえ!」と言いながら焼肉をおごってくれた事で、部隊のみんなは覚悟を決めて肉を食った。

 実は俺は途中で一回吐いちゃったけど……

 

 

 死体をあらかた片付け終わると、次は情報操作や口封じだ。

 最早手馴れたものだ。その後はメインディッシュともいうべきか、問題を起こした超能力者の制裁なのだが、今回はしなくて良いらしい。

 なんでも【スクール】は上からの命令で動く特殊部隊なのだそうだ。後で隊長がこっそり教えてくれた。

 俺たちの猟犬部隊(ハウンドドッグ)と同じ様なものなのだろうか? それならもうちょっとそれっぽい名前にしろよ、なんだよ【学校】って。勘違いするだろーが。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

「おう、ちょっと練習付き合えや」

「はい! 自分でよろしければ!」

 

 今日は隊長に呼び出され、共に訓練をすることになった。

 何かを隊長から教わることは良くあったが、何かの訓練に付き合うのはこれが初めてだ。待ち望んでいたことでもあるが、俄かに緊張もする。

 

 

 今日、この部隊編成以来の大規模作戦がおこなわれようとしている。

 作戦内容はとある人物の捕獲。コードネーム打ち止め(ラストオーダー)、本名は明かされていない。

 見た目はどっからどう見てもただの少女だが、この街では外見なんてなんのあてにもならない。

 そしてこの少女を護衛するのはレベル5、しかも序列第1位。まず間違いなく死人が出るだろう。いや、全滅さえあり得る。

 だがみんなが気にしている事はもう1つある。なんとこの第1位の男、隊長が育ての親らしいのだ。

 俺たちは最早死を覚悟で隊長についていってる。しかし、いやだからこそ、隊長の子供を殺す事はためらわれた。だから俺は作戦前日、初めて隊長に意見した。

 

「そういうわけで俺があのガキを殺すからてめえらはこの女を誘拐してさっさと逃げろ」

「隊長、俺にやらせて下さい」

「てめえ、何年俺の部隊にいんだ。俺の意見は絶対だ」

「隊長!俺からもお願いします!」

「俺も志願します!」

「いえ、俺がやります!」

「俺に任せてください!」

「ダメだ!あのガキの能力には人数がいくらいても意味がねえ」

「能力を発動させる前に倒します!」

 

 殺られる前に殺る。

 これは隊長が教えてくれた対能力者へのセオリーだ。

 

「チッ、勝手にしろ」

「「「ありがとうございます!」」」

「命令だ、絶対帰ってこい。そしたら居酒屋に連れていってやる」

 

 学生の街である学園都市では居酒屋の件数が少なく、値段はバカみたいに高い。

 

 

 

 

 

 

 

 作戦決行日。

 作戦はシンプルに後ろから気がつかれないように車で接近して轢き殺す、というものだ。

 ……多分この作戦は失敗する、俺は死ぬだろう。だがそれでいい、少しでもあの能力者のバッテリーを減らせれば、バッテリー切れを起こして能力が使えなくなれば、能力者を無力化して生け捕りにできれば、隊長は自分の子供殺さずに済む。

 隊のみんなも俺の考えをわかっているようで、遠くからの狙撃の案などは出なかった。

 さあ、行くぞ!

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「オマエの皮膚の皮五割を剥いでやる。それまでまだ生きてたらゆるしてやるっつってンだよ」

 

 やはり、作戦は失敗した。仲間たちが次々と車で近づき、周囲を取り囲んでいくが、意味がない事はわかっている。

 

「演出ゴクロー。──華々しく散らせてやるから感謝しろ」

 

 結局みんなで命をかけても20秒ももたせられなかったか、そう思って死を覚悟いていると、

 

「だーから言ってんじゃねえかよお」

 

 ……隊長どうして、

 

「あのガキ潰すにゃこんなもんじゃ駄目なんだよ。ガキィあいてだからって甘い事ばっかしやがって。だから最初から俺が出るっつってんじゃねえか」

 

 駄目だ俺は。覚悟を決めたはずなのに、嬉しくて涙が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後隊長はあっというまにレベル5(最強)をボコボコにした。しかも、殺してはいない。

 この人に勝てる人類はいるんだろうか?

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。