ゼシカの婚約者 ラグサットとして   作:ひつまぶし食べ隊

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初投稿です。
冗長になってしまったかもしれません。
プロローグが長くなってしまったので二つに分けました。


01 プロローグ前半

 RTAと言うものをご存知だろうか?

 リアルタイムアタック(Real Time Attack)と呼ばれる、基本的にどれだけ早くゲームをクリア出来るかを主眼にプレイし、クリア時の所要現実時間を競うゲームのプレイ形態である。

 大学が夏休みに入り暇を持て余した俺は、自分が一番好きなゲーム「ドラゴンクエストⅧ(PS2版)」でRTAに挑戦し動画に撮る事を思い立った。

 入念に下調べしてどの様に進めて行くかというチャートを作成し、後はプレイするだけになったとき問題が発覚した。排泄問題である。

 ドラゴンクエストⅧのRTAクリアタイムはルールにも依るが、10時間を越えるのもざらにあり、ましてやRTA初心者の俺なら更に掛かるだろう。

 飲食物なら事前に準備出来るが、排泄はどうしようもない。

 3DS版ならトイレに行くことも可能かもしれないが、録画出来ないため断念。

 小だけならペットボトルや紙パックで済む、しかし大はそうはいかない。

 悩みに悩んだ末、大人用紙オムツに頼るという苦渋の決断を下す。

 大人用だから恥ずかしい事など何もなく、独り暮らしのぼっちだから他人に見られることもないと自分に言い聞かせた。

 そしてプレイ当日、真夏日である。大学生の独り暮らしの部屋にエアコンなどという贅沢品は無く、今まで扇風機でしのいで来たが、流石に今日はきつい。

 大事な勝負の日に体力を無駄にする訳にも行かないため、やむを得ず全裸になりオムツ一丁で対処する。

 飲食物よし、オムツよし、チャートよし、録画よし、完璧な準備に満足しPS2の電源を入れる。

 ドラクエのあの曲が流れ、思わず正座になり佇まいを正したとき、聞き慣れない轟音が聞こえた。

 驚き、音のした方に振り向くとトラックが見えた。

 

(何で俺の部屋にトラックが?)

 

 呆気に取られているとあることに気づく、トラックのスピードが遅いのだ、まるでスローモーションの様に。

 そして子供の頃の記憶が頭に流れていく。

 

(これって死の間際に解決策を探るために起こるという現象か?つまり俺は死ぬってことか?)

 

 トラックがゆっくりと、そして確実に迫ってくる中、記憶が現在まで流れ切ったとき確信した。

 

(正座してる所にトラックが突っ込んで来たら、解決策なんかないよな。受け入れるしかないか)

 

 衝突するまで後1m程だろうか?ぼんやりとトラックを眺めながら考える。

 

(両親より先に死ぬとか親不孝もいいとこだ、それが一番の未練か。兄弟達にも迷惑かけるだろうな。彼女いない歴=年齢の童貞ってのもかなり悲しい、来世があるなら今度こそは彼女欲しい。HDDは…トラックに潰されてるから問題無いな。後、RTA1回は走っておきたかった)

 

 考えがRTAに至ったとき、思い出さない方が良い事を思い出してしまった。

 

(俺、パンツ穿いてない。いや、穿いてない…のか?オムツはパンツに含まれるんだろうか?)

どうなんだろう? グーグル先生ならわかるのだろうか?

 

(いや、そんなことよりこのままだと生物的に死んだ後、社会的にも死んでしまう)

 

 トラックがもう目の前に迫っている。

 

(……神よっ!! 人間の神よっ!! 無神論者の俺が…はじめて祈る…!! もし本当に…おまえに人命を司る力があるのなら 俺をっ…!! この素晴らしい男だけは生かしてくれっ!! まだ見ぬ未来の嫁のために俺を死なせないでくれっ !! …神よッ!!!!)

 

 必死の祈りも虚しく、凄まじい衝撃を受けると同時に、意識が無くなっていくのを感じた…

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おお○○よ、全裸にオムツ姿で死んでしまうとは情けない」

 

 ぐうの音も出ない正論を告げられ、意識を取り戻した。

 辺りを見回し状況把握に努める。目の前にはおっさん、周囲は真っ白な空間。予想はついたが逸る気持ちを抑えて話しかけた。

 

「あなたは?」

 

「お前さんが死ぬ間際に祈ってた相手だよ」

 

「神様…」

 

「その通り」

 

「何故私はここに?」

 

「俺が招いたんだ。お前さんの祈りは中々強くてな、ちょっと気になったんだ。まぁ普段なら直ぐに気にしなくなるんだが、死に際が強烈で面白かったのと趣味が合いそうだったからな、少し話してみたかったのさ」

 

「趣味?」

 

「ドラクエさ、好きなんだろ? 死の直前の祈りといい、あんな格好になってまでやろうとしたことといい、好きじゃなきゃ出来んことだ」

 

(あの台詞を有名ドラクエ漫画とはいえ、ドラクエネタと分かるとは… 神だけど確かに趣味は合いそうだ。しかし…)

 

「神様も漫画読んだり、ゲームしたりするんですね」

 

「神だからって毎日世界のために何かしてる訳でもないさ。むしろ世界を創造し、ある程度安定したら見守るだけさ、神の名の下に戦争しようがな。手を出した方が世界に悪影響を与える」

 

「そんなものですか」

 

「そんなもんさ。だから結構暇でな、漫画やゲームだけでなく、映画や小説なんかの娯楽も好きだぞ」

 

「なるほど」

 

「で、どうだ? ドラクエ好きか?」

 

「ええ、特にドラクエⅧが一番好きですね」

 

「一番好きなドラクエも一緒か、いいね気に入ったよ、そんなお前さんに質問だ。ドラクエⅧで仲間のスキル振りはどうしてる? あぁ、RTAじゃなく普通にプレイする事を前提にしてだ」

 

「PS2版ですか? それとも3DS版ですか?」

「3DS版で頼む」

 

「私は通常プレイ時、各キャラの固有スキルは必ず振ることにしてるので、参考になるか分かりませんが?」

 

「そこも俺と一緒だな、是非聞かせてくれ」

 

「分かりました。まず主人公はルーラを覚えるまでゆうきに振り、その後ヤリに雷光一閃突きを覚えるまで振ったら、またゆうきに振ります。ゆうきに振り切ったら剣に、剣にも振り切ったらヤリに、という感じですね」

 

 話を聞いた神が難しい顔をして唸っている。

 

「んー…ブーメランには振らないのか?」

 

「ブーメランは序盤は使いますが、スキルを振りはしませんね」

 

「そうか… ヤンガスはどうだ?」

 

「ヤンガスはオノ一択ですね。振れるまで振って制限に引っ掛かったらにんじょうに振り、余れば鎌にです」

 

「…打撃は?」

 

「打撃は正直微妙ですからね。最後に覚えるデビルクラッシュは強いと思いますが、そのためにスキルポイント100はきついですよ」

 

「んー、ゼシカは?」

 

 またも難しい顔をして唸っている。思い入れがあるのだろうか?

 あまり機嫌を悪くされても怖いが、嘘を吐いてもばれそうなので気にせず話を続ける。

 

「ゼシカも杖一択ですね。振れなくなったらおいろけ、その後は格闘に振ります」

 

「振らないのは短剣とムチか」

 

「短剣は強いと思いますよ、振らないのは好みの問題かな。マダンテにはロマンがありますからね。ムチの場合は弱体化したから、わざわざ選ぶ程のものではないかと」

 

「ふむ、ククールは?」

 

「ククールは少し難しいですね。バイキルト覚えるまで杖に振ると決めてますが… その後は弓を精霊の矢まで、次にカリスマ振り切って弓ですかね。それか、カリスマをディバインスペルまで、その後弓をシャイニングボウまででまたカリスマの二択です」

 

「剣には振らないと?」

 

「なるべく使う武器が被らないようにしますね。ククール専用の剣もありますが、弓はククールしか使えないですから」

 

「使う武器が被らないようにというのは共感出来る」

 

 神が笑顔で嬉しそうにウンウン頷いている。

 

「ゲルダは短剣、扇、アウトローの三つですね。この三つはどれも優良スキルなので、どれから振るか非常に悩みます。作中トップクラスの攻撃力を持つ特技を覚える短剣、ザオリク効果と強力な全体攻撃の特技を覚える扇、ベホマやHP上昇やオート盗みのアウトロー。強いて言えばアウトローをオート盗みかHP+30まで上げてから扇、その後短剣ですかね」

 

「なるほど、ムチは振らないか… 最後のモリーは?」

 

「モリーはザオリク覚えるまでねっけつに振り、専用かつ強力な爪に振り切ったらねっけつ。後の打撃、ブーメラン、格闘はその時の気分次第ですかね」

 

「モリーは格闘が候補にあるんだな」

 

「モリーらしい専用ロマン特技持ってますから。他二つもメタル狩りに便利な特技覚えますので、モリーにしろゲルダにしろ、追加キャラはそこまでハズレというスキルは無いでしょう。二人とも加入時期が遅いのでその時のパーティーの取得特技を考えてスキル選んでも良いと思います」

 

「ありがとさん、参考になったよ」

 

 神は満足そうだが、話していくうちにどんどん調子に乗ってしまった気がする。初対面の人、いや神に質問されたからとはいえ、ゲームキャラのスキル振りなんて長々と話すものでもないだろう。

 

「すみません、神様相手に調子に乗って喋ってしまって」

 

「こっちから質問したんだ気にするな。それに同じ趣味嗜好を持つ者同士の会話が楽しいのは、人も神も一緒さ。話してて楽しかったよ」

 

 神は本当に気にしておらず、楽しそうで安心した。

 

「こちらもこういう話が出来る友達がいなかったので楽しかったです」

 

「ついでにもう一つ聞いておきたいんだが」

 

「なんでしょう?」

 

「お前さんが振ると明言しなかったスキル、ブーメラン、打撃、ムチ。この三つのスキルを使いたいと思わせるには、どうすれば良いと思う? 多少無茶な答えでも構わない、神の力なら問題なく解決出来る」

 

(三つのスキルを『使いたいと思わせる』には… 変な言い方だな、自分が選ぶのではなく誰かに選ばせるのか? 別の神か配下にでも布教したいのかな? まぁいい、俺がそのスキルを選んでもいいと思うとしたら、どんな条件なら使う?)

 

 少し奇妙な質問だがこういうのを考えるのは面白い。

 しばらく考え、答える。

 

「まずブーメランですが欠点は、武器の少なさ攻撃力の低さ、最強武器を手に入れるのに槍の最強武器が必要な上、槍の最強武器がクリア後にしか手に入らないこと。それと主人公なら他の武器スキルが優れているし、覚える特技の威力が低いものが多いことです。モリーの覚える特技なら強力なものがありますので、ブーメランスキルを選ばせるならモリーでしょう。その上でスキルで上がる攻撃力を増やしたり、メタルキングのヤリをクリア前に二本手に入るようにしたり、モリー専用のブーメランを用意すれば良いと思います」

 

「次に打撃ですがこれも武器の少なさ、というよりは武器入手できる間隔が遠いことがあります。武器を増やし、鉄球が打撃武器に含まれればグループ、全体攻撃も出来て選ぶ人も増えるでしょう」

 

「最後にムチですが双竜打ちが弱体化しましたが、強い特技には変わり無く、ゲルダなら全体攻撃特技も覚え、スキルとして決して弱くはないと思います。全体攻撃の強武器もありますし、選ばなかったのはゼシカにしろゲルダにしろ他の武器スキルが優秀だからです」

 

「なるほどな… でもそうなるとモリーが爪、ブーメラン、打撃、ねっけつで全てに振ることが出来んな」

 

 神は俺の答えに満足していないようだ。

 

「まぁLv99でも総スキルポイントは350ですからそうなりますね。解決策としてはスキルの種の入手を容易にするか、総取得スキルポイントを増やすことです」

 

「全てのスキルをマスターしても身体は一つだからなぁ、格闘を含め四種類も武器を使い分けたりするかなぁ? 俺は二種類が限界だと思うんだよなぁ…」

 

 神は浮かない顔をして反応した、気に入らなかったのだろうか? 正直少しイラっとした。

それならばと『無茶な答えでも構わない』と言われた事を免罪符に本心を告げることにした。それが神の罠だと気付かずに…

 

「だったらキャラを増やせばいいんじゃないですか? 武器スキルは全部で13種類、一人二種類で六人じゃどうしても一つ余りますから」

 

「お前さんもそう思うか!? いやー、俺もそう思ってたんだよ!!」

 

 今までに無いほどの笑顔で神は嬉しそうにそう言った。ただのおっさんだったのに後光が差して、神々しいおっさんになっている。ゴッドスマイルだ、無料かもしれないが無料より高いものは無いと言う。

 この流れは不味い流れだ、多少強引にでも流れを断ち切らねば。

 

「ゼシカのおっ「いや、実はお前さんをここに招いたのは先の理由だけじゃなく、頼みごとがあるからなんだ」ぱ…」

 

 いかん、断ち切れなかった。男なら必ず食い付く話題だったのに、向こうの方が上手だ、腐っても神ということか。

 断ち切るのが無理なら逃げよう。俺は神とは逆方向に走り出した。

 

「頼みごとをするからには、聞いてくれたら転生特典を付けよう」

 

 逆方向に走り出したはずなのに、最初からそこに居たかのように神は俺の前に立ち、話し続けた。

 これが『○○はにげだした、しかしまわりこまれた』ってやつなのか?

 混乱している俺に、神はドヤ顔でこう言った。

 

「知らなかったのか? 大魔王からは逃げられない」

 

「大魔王だったのか…」

 

「いや違う、神だ。一度言ってみたかったんだ」

 

 分かるだろ? という顔をしている。正直分からないでもない。

 しかし頼みごとか、逃げられない様だし聞くだけ聞いてみようか、転生特典も気になるし。

 

「取り敢えず、その頼みごとを聞かせて下さい」

 

「ありがとさん、頼みごとは三つある。一つ、俺が創ったドラゴンクエストⅧに似た世界に転生する。二つ、その世界でラプソーンを倒す。三つ、先程言ったあまり使われないスキルを使う。この三つだ、簡単だろう?」

 

神はそう言うと、ニヤリと笑った。

 

 





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