予定では説明回は次で終わるはずです。
「何で、あんなことを口走ったんだ…」
しばらくしてレベルアップによる気分の高揚が落ち着き、先程の発言を後悔していた。
(まさか、レベル上がる度にああなるのか? 今後はもう少し抑えるようにしよう)
家に着き中に入る。
「ラグサット、帰ったか。どうだった?」
「武器スキルはブーメラン、打撃、扇、格闘。固有スキルはガーディアンでした、守ることに特化したスキルのようです」
「ガーディアンか、良さそうな固有スキルじゃないか。守ることに特化したスキルなら防具もしっかりとした物を買わなくてはな」
「それでしたら早く髪を切り、買い物に行きましょう」
母上が手配してくれた美容師にバッサリと切ってもらった。おかっぱからショートヘアに変わり、多少はましになったろう。後は服だな。
「さっぱりしたなラグサット。それでは買い物に行く前に良い物をやろう」
そう言って布で出来た袋を手渡された。
(こんな袋が良い物? いや待てよ、ドラクエで袋と言えば…)
「父上、これはまさか…」
「そうだ魔法の袋だ。大き過ぎては入らんが、ある程度の大きさなら入れることが出来、重さも変わらない。優れた袋ならいくらでも入れることが出来るらしいが、それには限度がある。袋の中の広さは、ラグサットの部屋位だな」
(十分過ぎる程広いな)
「ありがとう、父上。大切にします」
「うむ、ではそろそろ買い物に行こうか」
いよいよ買い物だ、まず服屋を希望した。今の自分のセンスに合わない服を着続けるのは苦痛でしかない。
「では、この母が見立ててあげましょう」
今の服も母上の見立てなのだが、買ってもらう手前断れない。なるべく自分の意見も取り入れて貰うように頑張ろう。
そう決意したが、女性との買い物を甘く見ていた。
「ラグサット、これなんかどうかしら?」
「なかなかいいですね。値段は…1980G? 母上、もう少し質素な方が…」
「なに言ってるの、ライトアーム家の息子として、もっと立派なものを着なければ」
とか
「母上、その色は派手過ぎませんか?」
「ラグサットなら似合うわよ」
とか、こちらの意見を聞きやしない。
数時間に及ぶ戦いの後、最後の手段に自分の服も見終わり、休んでいる父上に助けを求めたが、父上も安物は許してくれず、派手さはあまりないが素材がよくデザインも上品な服などを数点買うことになった。
早速着替え、前の服は袋にしまう。
これで外見の改善は済んだ。派手で変な服を着たおかっぱの垂れ目優男から、デザインの良い上物の服を着た爽やかショートの垂れ目優男に変わった。
「次は武器防具と行きたいところなんだが、服を買うのにここまで時間が掛かるとは思わなくてな。もう城に向かわねばならんのだ。お金を渡しておくから自分で選んでくれ、余ったら小遣いにして構わん」
そう言って父上と俺の魔法の袋の口を合わせ、3万Gを移してくれた。
(3万Gって… 金持ちを転生先に選んで良かった)
「私も武具の事は分からないので、家に戻りますね」
母上も帰るようだ、正直助かる。両親と別れ一人店を回ることになった。
(まずは色々回って品揃えや値段を調査しよう)
始めに普段から営業している店を訪れ、バザーの武具を扱っている店を回る。ゲームに有った物は売っていたが、無かった物も売っていた。
例えば、ゲームで兵士が持っていたハルバードも売っており、店の人に尋ねると斧槍(ふそう)というオノとヤリの合の子のようなスキルがあるらしく、兵士になる人の多くが持っているスキルとのことだ。
特に面白かったのは鉄の武具専門店だった。てつのよろいやてつのけんは勿論、てつのつめ、てつのこんまで有り、棍スキルも存在するらしい。
そして何より嬉しかったのは、オークニスにしか売っていないはずのてつのおうぎが手に入った事だ。これで扇スキルを鍛えることが出来る。
武器はブーメランのウィングエッジ、打撃のウォーハンマー、てつのおうぎの三点を購入。
次に防具はまず、まほうのたては確定したが鎧が少し迷った。候補は、まほうのよろい、シルバーメイル。守備力はまほうのよろい>シルバーメイル、呪文軽減はシルバーメイル>まほうのよろい。
悩んだ結果呪文軽減を優先し、シルバーメイルに決めた。
問題だったのは兜だった。候補はてっかめんと、てつかぶと。ゲームならてっかめん一択だろう、しかし実際に着けてみると視界の狭さに戸惑う。そしてゴツい、てっかめんを装備して近づきつつ「フハハ、怖かろう」などと言ったら子供なら泣き出しそうだ。幸いヘルメットのバイザーの様に上にずらせるので、街中では魔法の袋の中に、外では上にずらして視界を確保、戦闘時は下ろすことにして購入することにした。
最後に装飾品だが、怒りのタトゥーを買う。何故ならば、シルバーメイルにてっかめんを着け、左腕にまほうのたて背中にウォーハンマーを背負い、左右の腰にウィングエッジとてつのおうぎを下げていると重いのだ。
レベルアップのお陰でろくに訓練していなくても装備出来るし、動くことも出来る。ただ疲れるのだ。
しかし、怒りのタトゥー(シールの様なもの)を体に貼ったら疲れにくくなったため決断した。
余談だが、装飾品店で二つ以上装備してみたが変化は無かった。店員曰く、二つ以上装備すると干渉しあい、どちらの効果も出ないとのこと。
街中では必要無いだろうと、魔法の袋に怒りのタトゥーとてつのおうぎ以外の装備をしまう。この二つなら邪魔にならないし、護身具位は装備した方がいいだろう。
(後一つ欲しい物があるんだが、見つからない。もう少し探して見るか)
目的の店を探しながら歩いているとき、人だかりを見つけた。注意して見てみると、あまり会いたくない人物を見つけてしまった。
原作より若いはずなのに、大して変わらない太った体。緑色の服と帽子がトレードマークのチャゴス王子だ。
なにやら女の子とぶつかり、手に持っていた食べ物を落とし怒っているようだった。
「お前僕を誰だと思っているんだ? この国の王子チャゴス様だぞ! お前がぶつかってきたせいで串焼きを落としたどころか、お気に入りの服も汚れてしまったではないか」
「あたし止まってたもん。ぶつかってきたのそっちだもん」
不味いな、助けてやりたいのは山々だが、相手は王子で俺は大臣の息子。しかも前世の記憶が戻る前はチャゴスの腰巾着みたいなものだったからな、余計拗れそうだ。
「お前では話にならん、親はどこだ? 弁償させるぞ」
「お金なんてないもん、お父さんは死んじゃったし、お母さんは病気で寝てる。あたしがお母さんのお手伝いしてるの」
前世で同じような状況なら間違いなく見て見ぬふりをするんだが、それでいいのか? 転生するとき第二の人生は、悔いの無いように生きると決意したんじゃ無かったのか? ここで助けなきゃ後悔するぞ?
「なら家を教えろ。家にあるものを売り払って、弁償させてやる。それが嫌なら、お前の母親を牢にぶちこむぞ」
「お母さんをいじめないで」
女の子がチャゴスを睨み付ける。
「貴様!」
チャゴスが馬用の鞭を振り上げたとき、俺は走り出して女の子の前に立ち、てつのおうぎで受け止めた。
「そこまでです、チャゴス王子」
「お前、ラグサットか? 何故お前がその子供を助ける?」
「子供相手に鞭を振るうなど、見過ごせません」
「今まで僕に媚びへつらって来た、お前の言葉とは思えんな。今ならまだ許そう、そこをどけ」
「お断りします」
「僕を誰だと思っているんだ?」
「サザンビーク国の王子です。その王子が自国の子供相手に鞭を振るい、その家族の財産を奪おうとするのですか?」
「お前…父上にこの事を報告するぞ、王子であるこの僕に歯向かったと」
「構いません。王子が何と報告しようが、私も父上を通して真実を王にお話します」
「ラグサット!」
「服と串焼きの代金なら私が立て替えます、ここはお許し下さい」
「もういい! ラグサット覚えておけよ。この事は忘れないぞ」
チャゴスは怒りながら帰っていった。
(良かった、大事にならずに済んだ。チャゴスに恨まれたみたいだけど、父上に影響が無いといいが…)
考え事をしていると、突然歓声が鳴り響いた。
「やるなぁ、兄さん」
褒めてくれるおじさん。
「あの子を助けてくれてありがとう。売り物だけどもらっとくれ」
果物をくれる女の子の知り合いらしきおばさん。
「まさかあんたがチャゴス王子を諫めるとはね。目を付けられたみたいだけど、大丈夫か?」
心配してくれる兵士、仕事しろ。
「素敵、抱いて」
熱い視線を送ってくるマッチョな男性、勘弁して。
その場に居た色々な人に言葉を掛けられた。そして…
「お兄ちゃんありがとー」
助けた女の子のお礼。
俺の性質を表したという固有スキル『ガーディアン』、最初はただ格好良いと思っただけだった。それが今日、前世を含めて初めて人を守ろうと動き、守れたことで実感出来た。『ガーディアン』守護者は、誰かを守る者だということを、誰かを守れたということがこんなにも満ち足りた気持ちになるということを…
「どういたしまして。お母さんの手伝いは良いのかな?」
「忘れてた。早くお店に行かなきゃ」
「なら送るよ」
「ありがとー」
女の子と話しながら歩き女の子の店にたどり着いた。
「お店で何を売っているの?」
「んとね、これ」
女の子が大きめの葉っぱを差し出してきた。
「やくそう? いやこれは、まさか」
「世界樹の葉っぱなんだって」
(世界樹の葉、ようやく見つけた。見つからない訳だ、店の人が居ないんじゃな)
「お兄さんに一つくれないかな?」
「お礼にあげたいんだけど、お母さんのおクスリのお金が…」
「お礼は気にしないで。ちゃんとお金を払うよ」
「高いよ? 1000Gです」
「大丈夫、はい1000G」
1000Gを女の子が数え易いように並べてカウンターに置いた。女の子が確認し終え世界樹の葉を渡してきた。
「毎度ありがとー」
女の子に手を振られ、教会に向かった。
(世界樹の葉は持っていて損は無いからな、手に入って良かった。残金1700G、小遣いとしては十分だ。あとは最後に教会に行って神に聞かなきゃならないことがある)
「おや、またいらっしゃったのですね」
教会に入ったところでシスターに話し掛けられた。
「えぇ、少しお祈りしたくて」
「素晴らしいです。ですが、神父は席を外しておりまして…」
「本当に少しお祈りするだけですので、お気になさらず」
シスターに断りを入れ祭壇に向かう。
(しかし毎日お祈りに来るだけであのシスターとは仲良くなれそうだな。ゼシカに振られたらこの手もありか)
跪き祈りを捧げようとしたら頭に呆れたような声が響いた。
(お前さんさっきは格好良かったのに、随分最低なことを考えとるな)
(見てたんですか。あと心読めるんですか?)
(見てたよ、心は読もうとすれば読めるが、読んでない。ただ教会に居ると思念が流れて来やすいんだ。それで、何の用だ?)
(原作開始までどれくらいか聞きたいのです)
(原作開始までか、大体後三年だな)
(三年ですか、結構ありますね。それまでにどれだけ強くなれるか…)
(不安か? さっきの出来事を見る限り大丈夫そうだがね)
(さっきのだって、親の威光で威張り散らすチャゴスに対し、私も親の地位と貰ったお金で解決しようとしましたからね。私自身の力では無いです。もっと強くなりたい、体も心も武力的な意味だけでなく)
(転生前にも言ったが、鍛えたいなら師を探すといい。良い師なら体も心も強くしてくれるだろうさ、お前さんの望むように武力的な意味だけでなくな)
(師を…)
(お前さんの父親ならいい伝があるだろうさ)
(父上に頼らなくていいよう強くなりたいのに、父上の力を借りるのですか?)
(それでもだ。お前さんには転生特典も与えたし、前世の記憶もある、普通とは違うかもしれない。だが今のお前さんはあの父親からしたらまだ子供だ、いや親からしたらいつまでも子供だ、親が子供に頼られて嫌なものか。子供の内は頼れるなら頼っておけ、頼りっぱなしが嫌ならお前さんが成長したら借りを返してやれ。親にでも自分の子供にでもな)
(そんなものですかね)
(そんなもんだ、お前さんの目的を忘れたか?)
(ゼシカと結婚する)
(違うだろ。いやそれでもいいが、それだけじゃないだろ。『ラプソーンを倒し世界を救う』だ。元凶の俺が言えた義理でもないが、そのために強くならなきゃいかんのだろ、方法なんて選り好みする余裕あるのか? 最善を尽くせ、ラプソーンを倒せなかったらゼシカも死ぬぞ)
(…神様の言う通りですね、父上に話してみます。ありがとうございました)
(気にするな、また助言が欲しければ祈りに来るといいさ。ラグサット・ライトアーム、お前さんは俺の右腕だからな(ドヤっ))
(アッハイ)
教会を出て家に帰り、父上が帰宅するのを待った。
「ラグサット、チャゴス王子とのこと聞いたぞ」
父上が帰ってき次第話し掛けてきた。
「申し訳ありません父上、ですが…」
「いや構わん、クラビウス王もご存知だ。クラビウス王はお前に感謝していたぞ、息子の暴挙をよくぞ止めてくれたと。お前が16歳になったことを期に、変わろうとしているという話をしたら感心なさってな、羨ましがられたよ。チャゴス王子も三年後、16歳になったら変わってくれるだろうかとな」
(チャゴス王子が祝福の儀を受けるのも三年後なのか。王家の試練って祝福の儀の後にやるものなのかもな。まぁそれなら三年後も変わらないって事なんだが…)
「だからお前は気にすることはない、良くやったぞラグサット」
「私も嬉しいですよラグサット。貴方は本当に変わろうとしているのですね」
「ありがとうございます、父上母上。それと父上にお願いがあります」
「言ってみなさい」
「強くなるために師を探して欲しいのです」
「師か… ラグサットのスキルはブーメランと打撃に扇だったな。…あいつが居たな! 分かったラグサット私の古い友人に頼んでみよう」
「お願いします」
それから数日が過ぎた。俺は父上の友人が来るまで、フル装備に怒りのタトゥーを外した状態で走り込みを続けた。ある日走り込みから帰って来ると父上が話し掛けてきた。
「ラグサット私の友人が来たぞ、紹介しよう」
ついに師になってくれる人が来てくれたらしい、期待に胸を膨らませ、友人が居るという部屋に入った。
まさかこの人が父上の友人だったとは…
「君がダイジの息子ラグサットだな。ブーメランスキルと打撃スキルを持っているらしいな、儂もだ」
最初に会うのはゼシカだと思っていた。
「とは言っても、儂の専門はツメスキルと、格闘スキルだがな。まぁブーメランスキルと打撃スキルも多少は鍛えてあるから教えることに問題は無い、格闘スキルも教えよう」
確かにこの人も同じスキルを持っていると知っている。
「あぁ、すまない。まずは自己紹介だな、私の名前は…」
知っています、貴方の名前は…
「モリーだ」
(モリーさん)
自分の名前を言うと、右腕を90度曲げ親指で自分の顔を指すポーズを取る、ドラクエⅧ(3DS版)メインキャラクターの一人モリーが居た。
オリジナル設定の解説
レベルアップ時の気分高揚
3DS版ではレベルアップ時HPMPが全回復するため、その理由付け。
MP=精神力と考えたとき、全回復する状況はどんな時かと考えた設定。
気分高揚に自身を見失うのは初めのうちだけ、例外あり。
魔法の袋
原作でもあるが、もっと広く一般的に普及している。性能に差があり、原作主人公が持っているような制限無く入るものは最上位、トロデーン国国宝。
袋の持ち主は袋の中身を出さずに把握出来、出すときは頭に思い浮かべれば出てくる。袋同士の口をくっ付ければ袋から袋に移動可能。
商人達が多く持ち、商品とお金はなるべく袋に入れ、入り切らない場合馬車などで運ぶ。
ハルハードと斧槍スキル
兵士がよく持っている武器。
武器があるならスキルもあるはずと考え設定。
ラグサットの父 ダイジ・ライトアーム
大臣から