ゼシカの婚約者 ラグサットとして   作:ひつまぶし食べ隊

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今回で説明回は終わりなはず
今までのペースだと原作開始まで時間が掛かりそうなので、少し駆け足で進めます


05 モリー師匠と頼れる仲間たち

 赤と緑の服を着たモリーが目の前に立っている、ゲームではなく現実として。しかし、ゲーム同様室内なのに白いマフラーが風になびいている。

 

(まさか一番最初に会うのがゼシカではなく、モリーだったとは。師としては十分だな、扇以外の武器スキルを教えてもらえる。…あ、まだ自己紹介してないや)

 

「初めまして、ダイジの子ラグサット・ライトアームです。えっと、モリー…師匠でいいんですかね?」

 

「…もう一度言ってもらえるか?」

 

「? モリー師匠?」

 

「もう一度だ」

 

「モリー師匠」

 

「もっと大きな声で」

 

「モリー師匠!」

 

 何故か嬉しそうにしている。琴線に触れるものがあったんだろう。

 

「今日からお前は儂の弟子だ、ブーメランと打撃と格闘を教えよう。体は温まっているようだな、早速始めよう」

 

 モリー師匠に連れ出され外に出ると、モリー師匠はキメラのつばさを取り出して放り上げた。

 

「バトルロード格闘場へ」

 

 すると体が浮かび上がり、速いスピードで空を飛んでいく。

 

(これがキメラのつばさの効果か、体験するのは初めてだ。結構、いやかなり怖い。着地どうすんだこれ?)

 

 心配をよそに無事着地出来た。しかし、短時間とはいえ強制的に空を飛ぶのは精神的に疲れる。

 

「弟子はキメラのつばさは初めてだったか?」

 

「はい、今までサザンビークから出たことないですから」

 

「そのうち慣れる。さぁ入れ」

 

 バトルロード格闘場は所々ひび割れ、欠けていて立派な建物とは言い難かったが、中に入ると内装はしっかりしていた。

 カウンターで酒を飲む人、テーブルで食事をしながらモンスターについて語り合う人。囚人風の人から貴族まで様々な人が居た。

 

「モリーちゃん、その人は?」

 

 緑色のバニー姿の女性が近付いて来たモリー師匠を慕う四人のバニーの一人だろう。名前は何だったか、確か共通性があったはずだ。

 

「やぁマリー、紹介しよう。このボーイはラグサット、儂の弟子だ」

 

「弟子ってどっちの?」

 

「戦いの方だ、もう一つの方はまだ分からん」

 

(もう一つというのは、モンスターバトルロードかな)

 

「初めまして、ラグサット・ライトアームと申します」

 

「しばらく預かることになった、よろしく頼む。そうだ、マリーは扇スキルを持っていたな? 時間があるときでいいから、ラグサットに教えてやってくれんか?」

 

(しばらく預かるって、泊まり込みなの? 聞いてないけど…)

 

「いいけどわたしのメインスキルは杖だし、少ししか教えられないわよ?」

 

「少しでも良いです。是非お願いしますマリーさん」

 

「分かったわ、これから始めるの?」

 

「あぁ、地下訓練場で修行開始だ。マリー、確かライアンが来てる筈だから、探して連れてきてくれ」

 

(ライアン? そういえば、バトルロードSランクに出てきたな。本物なのか、似た別人なのか)

 

「こっちだラグサット」

 

 師匠は地下へ続く階段へ案内してくれる。長い階段を降りるとそこはモンスター同士が戦う闘技場だった。予想以上に広く、観客も大勢居る。

 

「ここが、儂が主催するモンスター・バトルロードの闘技場だ。モンスター・バトルロードとは、モンスターをスカウトし三体1チームで戦うものなのだ。そのモンスターチームの訓練や調整を行う訓練場が幾つか有ってな、その内一つを使おう」

 

 モリー師匠に着いていき、広い場所に出た。沢山の木で作られた人形や、的などが見える。ここが訓練場のようだ。

 

「弟子よ、剣や槍などに憧れたことはないか?」

 

「ありますよ。生憎、スキルは得られませんでしたが」

 

「そうか、なら『武器を装備出来る』と言うことはどういうことかから説明しよう」

 

 モリー師匠がどうのつるぎを二本持ち、その一つを手渡してきた。

 

「儂も弟子もどうのつるぎを持っているな。さて、儂達はどうのつるぎを装備していると言えるか?」

 

「言えるんじゃないですか?」

 

「そうだな、そう言えなくもない。ではそこの人形を斬りつけてみなさい」

 

 木の人形の前に立ち、全力で切りかかる。しかし少し切れ目が入った所で止まってしまった。

 

「そんなものだろう。では次に儂がやってみせよう」

 

 モリー師匠が切りかかると、木の人形は斬り裂かれ吹っ飛んだ。

 

「凄い… 剣スキルを持ってなくても斬れるんですね」

 

「いいや、そんなものは斬ったとは言わん。ただ銅の棒で力任せに叩き壊しただけだ。貸してくれ」

 

 ピンク色に近い色をした鎧の色黒で、髭が立派な戦士が歩いてくる。手を差し出してきたのでどうのつるぎを渡した。

 

「斬ると言うのはこういうことだ」

 

 戦士が剣を振ると、木の人形が斜めにズレ落ちた。

 

「流石だなライアン。紹介しよう儂の弟子のラグサットだ」

 

「初めまして、ラグサット・ライトアームです」

 

「拙者はライアンという。それで、何故呼んだんだ?」

 

「弟子に武器の装備について教えたくてな、少し協力してくれ」

 

「分かった」

 

「ライアンの言った通り、儂の場合は力任せに叩いたに過ぎない。切り口を見比べてくれ」

 

 見比べてみるとモリー師匠の方は切り口が荒く、ライアンさんの方は綺麗な切り口だ。

 

「次にブーメランを使ってみよう」

 

 モリー師匠がブーメランを投げると複数の木の人形に当たり手元に戻ってくる。

 

「ライアン、投げてみてくれ」

 

 ライアンさんがブーメランを受け取り、投げる。しかし、一体目に当たると落ちてしまった。

 

「儂とライアンは同じ位の力だが、スキルの有る無しで結果が違う、理由は武器の真価を発揮出来るかどうかだ。スキルがあるということ、そして武器を装備出来るか出来ないかというのは、そういうことだ」

 

 モリー師匠が言うには師匠や俺は剣スキル無いので

上手く斬れないが、ライアンさんは斬れる。

 そして、本来ブーメランは敵に当たっても少し勢いが弱まるだけで済み、手元に戻ってくる様な魔法が掛かっているのだという。

 だがブーメランスキルが無いと効果を発揮出来ず、ライアンさんの時の様に敵に当たってもすぐ落ちてしまうのだそうだ。

 

「スキルを得ただけでも効果は発揮出来るが、更に鍛えるとこういうことも出来る」

 

 再びモリー師匠がブーメランを投げた。同じように複数の木の人形に当たったが、その後軌道を変え最初の木の人形に再度当たり戻ってきた。

 

「今のが、クロスカッターという特技だ。スキルを鍛えると更に武器の真価を発揮したり、特定の種族に強くなったり、特殊な効果が付与されたりする」

 

「後は剣スキルを持っていても全ての剣を装備出来る訳でもない。例えば拙者は剣で斬るのが得意だが、突くことに特化したレイピアは苦手でな、装備しても真価を発揮出来ない。その逆の奴も、両方とも出来る奴も居る。同じスキルでも人によって装備出来るものも覚える特技も違ってくる」

 

「武器の装備については分かりました。防具はどうなんですか?」

 

「防具は武器ほど制限は無い。装備出来る、出来ないというより装備するか、しないかだ。従って、個人的な好みが大きいな」

 

「…個人的な好みですか」

 

 生死が掛かっている状況で好みなんて言ってられるのかと、疑っているとモリー師匠が言った。

 

「信じられないか? ならマリーからバニースーツを借りてくるから試してみるといい。装備出来るはずだ」

 

「うさみみバンドとあみタイツもな」

 

 ライアンさんが余計なことを提案する。

 

「すみませんでした。信じます」

 

「まぁこれは冗談だ、だが好みというのは本当だぞ。例えば盗賊は、動き易さや静音性を重視し、てつのよろいの様な物は装備しない。逆に戦士は防御力を重視して、てつのよろいも装備する。好き嫌いというより、自分の戦闘スタイルに合うか、合わないかだな」

 

 そう言われると納得出来る。

 俺が鎧を買った時は、防御力と呪文軽減力を重視してシルバーメイルを買ったが、もし動き易さを重視していたらまほうの法衣にしただろう。

 ライアンさんが補足する。

 

「他にもラグサットはてっかめんを装備しているが、視界が悪くなるだろ? 守備力を重視するものでもそれを嫌い装備しないものもいる」

 

「成る程、確かに買った時も視界の悪さは気になりましたね」

 

「凄い人だと格好悪いとか、顔を見せ付けられ無くなるとかな。女性は顔を隠す物は嫌ったり、厳ついものは避ける傾向があるな」

 

 女性は命掛けでファッションするのだろう。

 

「稀にだが、武器も防具も特定の人間にしか装備出来ない物も有る。特殊な力を持っていたり、特殊な血筋だったりな」

 

「伝説にある武具もそんな感じだな。昔、そういう装備を見たことがある」

 

 そう言ってライアンさんは遠い目をしている。天空の装備のことだろうか?

 それならこのライアンさんは本物なのか。聞いても何故知っているのか、という話になりかねない。

 万が一転生の事実を知られたら、ゼシカがククールに寝とられる。深くは考えまい。

 

「さて装備についてはこんな所だ。そろそろ始めよう、話が長くなって体も冷えたろうから装備を着けて走り込みだ。温まったら模擬戦をして力量を測る」

 

「分かりました、お願いします」

 

「ふむ、私もしばらくはここに留まるつもりだし、手を貸すぞモリー」

 

 こうして二人がかりの修行が始まった。

 

 

 

 数日経ち、修行中にレベルアップした。気分が高揚するのを抑えようとしたところ、止められた。

 

「ラグサット、何故抑えようとする?」

 

「何故って、モンスターとの戦闘中に心を乱したらまずいのでは?」

 

「確かにそれはまずい。だが抑えるな、抑えずにコントロールし自分の力に変えるんだ」

 

「自分の力に?」

 

「そうだレベルアップ時の精神高揚をコントロールし、自分で高揚出来るようにするんだ。見本を見せよう」

 

 モリー師匠が深呼吸した後、力を溜めるような動作をした。すると、モリー師匠から威圧感を感じる。

 

「力が増しているのが分かるか?」

 

「はい」

 

「このように精神を高揚させると、力が増すんだ。力が増す段階は四つあってな、更に…」

 

 モリー師匠は更に三回高揚させると、紫色のオーラを纏い顔が怖くなった。

 

「これが最大まで力が増した状態だ」

 

(これはスーパーハイテンション、つまりゲームのテンションシステムか。顔が怖くなる所まで再現しなくていいのに…)

 

 モリー師匠はその状態で木の人形を素手で殴り付けると、木の人形は粉々に吹き飛んだ。

 

「凄い…」

(スーパーハイテンションはダメージ7.5倍だったはず。知識としては知っていたが、実際見ると凄まじいな)

 

「このようにコントロール出来るようになれば、レベルアップ時に心を乱すこともなく、戦闘時に自分で精神高揚させ強化も出来る」

 

「このコントロールが難しくてな。人によっては三段階目までしか上げられない人もいるし、四段階目まで上げられる人も確実に上げられない。モリーはかなり得意な方で二段階一気に上げることも出来るし、他人の精神高揚も出来る」

 

「それは儂の固有スキル、ねっけつのお陰だがな。とまあこういうことなんでな、抑えるだけでは駄目だ。コントロール出来るようにするんだ」

 

「分かりました、やってみます」

 

 そしてまた修行の日々が再開される。モリー師匠からはブーメラン、打撃、格闘の基礎を教わり、後は模擬戦。ライアンさんからは剣士との戦い方や盾の有効的な使用法、後は模擬戦。たまにマリーさんからも扇スキルの基礎を教わる。

ある日修行をしていると、縦縞の服を着た中年男性がやって来た。

 

(ライアンさんが居るならこの人もいるよな。同じモンスターバトル・ロードSランクで出てくるし)

 

「面白そうな事をやっていますね、私も混ぜてもらいますよ」

 

 ライアンさんに加え、トルネコさんも時々参加してくれることになった。トルネコさんとの模擬戦時、砂を掛けられたあと攻撃され、抗議するとモンスターとの戦い方には正道など無いと言われ、更にトリッキーな技を使ってきた。転んだ拍子に股間に頭突きされたり、あしばらいを掛けられ「足下がお留守になってますよ」と言われたときはヤムチャの気持ちがよく分かった。

 

「そろそろ呪文戦闘にも慣れよう」

 

 モリー師匠の鶴の一声で、対呪文戦闘についても教わった。マリーさんのまどうしの杖から出る火の玉をまほうのたてだけを使い防ぐという修行は、ライアンさんの教えもあり直ぐに防げるようになったが、更に難易度を上げられ扇スキルの花吹雪を使われたのには参った。

 花吹雪は文字通り花びらを飛ばすマヌーサ効果の特技だが、花びらで視界を塞がれるだけかと思っていた。実際には幻覚作用のある花びららしく、盾で防いだと思ったら別の方向から火の玉が飛んでくる。砂で目を潰れたときと違い、幻惑を受けたのは初めてだったのでいい勉強になった。

 修行を続けているとさらにレベルが上がり、ガーディアンスキルが育ったらしく、スクルトを覚えた。

 

「遂に呪文を修得したか、ガーディアンスキルらしい呪文だな。呪文についてはマリーが詳しい」

 

 マリーさんに呪文について教わる。マリーさん曰く基本的に攻撃呪文や回復呪文ならレベルの上昇や魔力の操作次第で効果が上がるが、それ以外なら効果は一定とのこと。転生特典で選んだ呪文や、今回修得した呪文には関係無かった。

 ひたすら走り込み、基礎修行、様々な条件での模擬戦、レベルが上がれば精神高揚のコントロール修行とひたすら鍛練に明け暮れる。そして一ヶ月経った。

 

「ラグサットよ、随分成長したな。そろそろ実戦に入ってもいいだろう」

 

「遂にですか」

 

「ああ。そうだな…モンスターが弱いトラペッタ辺りから始めよう。儂が見ているから万が一のこともあるまい」

 

「駄目よ、モリーちゃん。ここのところ、ラグサットちゃんに付きっきりで仕事が溜まってるわ。しばらくは仕事してもらわないと」

 

「むっ、そうか… ライアンもトルネコもしばらくは無理だったな?」

 

「うむ、すまんなラグサット」

 

「私も商品の仕入れがありますので」

 

「いえ、修行をつけてもらっただけで十分ありがたいです。そういうことなら一度家に帰って、家族に会ってきます」

 

「そうだな、それがいい」

 

「トラペッタなら一人でも大丈夫ですかね?」

 

「装備も良いし大丈夫だろう。それでも、もう一人くらい一緒に戦う仲間がいた方がいいが」

 

「仲間ですか。そこら辺も含めて父上に相談してみます」

 

「ではこれを差し上げましょう」

 

 そう言ってトルネコさんが、キメラのつばさをくれた。

 

「ありがとうございます」

 

「修行はまだ終わってないからな、しばらくしたらまた来るように」

 

「ゴメンね、ラグサットちゃん。気をつけてね」

 

「次に会うとき、どれ程成長しているか楽しみにしてるよ」

 

「何か入り用でしたら、声を掛けて下さい」

 

「それでは皆さん本当にありがとうございました」

 

 修行をつけてくれた人達にお礼を言い、外に出る。

 

(まだ1ヶ月だが、かなり成長出来たと思う。体つきもしっかりしてきたし、技術面も精神面も鍛えられた。しばらくは実戦で経験を積んで、また師匠達に修行をつけてもらい強くなっていこう)

 

 そう決意し、キメラのつばさ放り上げサザンビークに飛んだ。

 

 

 

「行ったか… 皆に聞きたい。ラグサットをどう思う?」

 

「最初は頼りなかったけど、今は少しは頼りになるようになったかしら」

 

「拙者も初めひょろい優男と思ったが、真面目で礼儀正しく熱心だ」

 

「私は途中からでしたが、大体同じ印象ですね。そしてなにより…」

 

「「「「成長が速い」」」」

 

「やはり皆も感じていたか」

 

「そりゃそうよ。わたしは杖スキルがメインで扇スキルは初めの一年位しか鍛えてなかったけど、もう追い抜かれてると思うわ」

 

「剣スキルを持っていないのが残念だ」

 

「私の格闘特技のあしばらいも覚えちゃいましたしね」

 

「今度はもっと色々な呪文で攻撃しましょう」

 

「確かに、次に修行するときはもっと厳しくしてもいいかもしれんな。モンスターも特技を使ってくるんだ、私も剣スキルの特技を解禁しよう」

 

「私はもっとえげつない攻撃や様々な道具を使いますかね。はじゃのつるぎとか」

 

「何にせよラグサットが何処まで成長し、何を成すか。楽しみだわい」




オリジナル設定解説

武具の装備
ゲームの装備可不可の理由こじつけ。

精神高揚のコントロール
ゲームのテンションシステムの理由付け
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