ゼシカの婚約者 ラグサットとして   作:ひつまぶし食べ隊

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誤字報告下さった方、ありがとうございました。
初めその機能の事を知らず、すぐには対応出来ませんでしたが
時間のあるとき弄っていたら何となく理解出来たので修正しました。
今後とも宜しくお願いします。


09 修行再開とゼシカの誕生日

 師匠達にサーベルトの話をした翌日、ケーキの詰め合わせをお土産にリーザス村へ向かった。

 ゼシカの家に着くといつも通りゼシカに手渡す。

 

「今日は頂くけど、お土産はしばらく遠慮するわ」

 

 毎日持って来ているので流石に飽きたのだろうか?

 

「ケーキは飽きたか? それなら他の物にするか?」

 

「そういう問題じゃ無くて、その…」

 

 ゼシカが言い淀んでいると、アローザさんが現れた。

 

「太ったのよ。毎日ケーキ食べてあまり運動もしてない、それは太るわよ」

 

「母さん!」

 

 ゼシカを見るとあまり太ったようには見えない。胸は順調に大きくなっていると思うが…

 

「どこを見てるのよ!」

 

 胸を隠すように掻き抱く、そういう仕草が堪らなく色っぽい。おいろけの片鱗がもう現れているのかもしれない。

 

「いや、ネックレスを…」

 

「今日はしてないわよ! あんた、まさか初めて会った時も胸を見てたんじゃないでしょうね?」

 

 油断した、ゼシカは疑いの視線を向けている。どう言い訳をするか考えているとサーベルトがやってきた。

 

「おはよう、ラグサット」

 

(いいタイミングだ、流石相棒)

 

 師匠達の事を話してうやむやにすることにしよう。

 

「おはよう、サーベルト。今日は良い知らせがある。昨日、師匠達にお前の事を話したら鍛えてくれるってさ」

 

「本当か? いつから鍛えて貰える?」

 

「今日からさ。今日はモンスターと戦わないで師匠達の所に行かないか?」

 

「それがいい、そうしよう」

 

「よし、早速行こう」

 

「よく分からないけど、良かったわね兄さん。行ってらっしゃい」

 

 よし、誤魔化せたようだ。しかし外に出るときアローザさんに手を引かれる。

 

「若いから仕方ないかもしれませんが、あまり女性の胸を露骨に見るものではありませんよ」

 

 アローザさんは誤魔化せなかったらしい。

 

「…気を付けます」

 

「授業料はショートケーキでいいわ」

 

「アローザさんはその… 大丈夫なんですか?」

 

 何がとは言わない。

 

「大丈夫よ、あの子が太ったのは私の分まで食べているからだし。…そうね、数日に一度位でお願いね。それくらいならあの子も大丈夫でしょう」

 

「分かりました」

 

 外に出てサーベルトと合流する。

 

「遅いぞ」

 

「すまない、それじゃあ行こう。バトルロード格闘場へ」

 

 キメラのつばさを使い師匠達の元に飛んだ。

 

「ここがそうなのか?」

 

 サーベルトは辺りをしきりに見回している。まるで上京したての田舎者のようだ。

 

「そうだ、バトルロード格闘場という」

 

「バトルロード格闘場?」

 

「中に入れば分かるさ」

 

 中に入るとマリーさんが居る。早速サーベルトを紹介しよう。

 

「マリーさん、おはようございます。こいつが昨日話したサーベルトです」

 

「サーベルト・アルバートです」

 

「あら、格好良い子ね。モリーちゃん達は訓練場に居るわよ」

 

 師匠達はもう準備しているようだ、早めに向かおう。

 

「マリーさんは俺の扇スキルの師匠だ。後は呪文や呪文戦闘について教わっている」

 

「今日からお願いします」

 

「仕事があるから、たまにしか教えられないけどね」

 

「じゃあ地下に行こう」

 

 サーベルトを地下格闘場に案内すると、感嘆の声を上げる。

 

「凄いなここは」

 

「バトルロードとはモンスターをスカウトし、三匹一組のチームを組んで戦う競技らしい。見ての通り多くの人が観戦する人気競技だ」

 

「初めて知ったよ」

 

 サーベルトはモンスター同士の戦いに魅入っている。夢中の所を悪いが訓練場に向かわせる。

 

「俺達の修行は、そのモンスター用の訓練場のひとつを使わせてもらってる。こっちだ」

 

 訓練場に着くとモリー師匠とライアンさんが居る。トルネコさんは来ていないようだ。

 

「来たかラグサット」

 

「おはようございます、モリー師匠。サーベルト、こちらが俺の師匠のモリーさんだ。ブーメランに打撃に格闘を教わっている」

 

「サーベルト・アルバートです、今日からよろしくお願いいたします」

 

「ラグサットから聞いているよ。私が教えられるのは格闘くらいだが、よろしく頼む」

 

「それでこちらがお前の師匠になるライアンさんだ。俺は対戦士戦闘を教わっている」

 

「サーベルト・アルバートでしゅ、今日からよろしくお願いいたします」

 

 緊張しているようだ、噛んだことを後で弄ってやろう。

 

「拙者はライアンと申す。サーベルトには剣と槍を教えられると思う。少し厳しいかもしれないが強くなれる事は保証しよう」

 

 ライアンさんは笑顔で答える。弟子が出来たのが本当に嬉しいらしい。

 

(少し? ライアンさん基準では少しなのかも知れないな。恐ろしいことだが…)

 

「はい、頑張ります!」

 

「元気がある若者だな。その元気がいつまで続くか楽しみだ」

 

 ライアンさんの笑みが深くなる。その笑顔に不安を感じつつ、今日も修行が始まった。

 

「どうした、サーベルト。もう眠いのか?」

 

 開始数分でサーベルトは地面に転がっている。起き上がる気配がない、少し不味いかもしれない。心配して見ているとサーベルトが動き出す。

 

「まだまだぁ!」

 

 サーベルトがちからのたてを使い回復する。

 

「ハッハッハッ、いい根性だ」

 

 回復したサーベルトはしんくう斬りを放つ。真空がライアンに向かい飛んでくるが、ライアンのひのきの棒一振りでかき消される。

 

「そんな馬鹿な…」

 

「魔法剣か、才能はあるようだ。だがそれだけではな」

 

 ライアンさんは素早くサーベルトに詰め寄り斬り伏せる。

 

「ぐはっ」

 

「早くちからのたてを使え、まだ始まったばかりだぞ。それとも、もう諦めるか?」

 

 倒れ伏すサーベルトを見下ろし、発破を掛けるライアンさん。

 

「まだやれます!」

 

 ライアンさんは当然だがサーベルトも意外に熱い奴だからな、あの師弟の相性は良いようだ。

 

「もう休憩は終わりでいいな、ベホイミ。ほら早く立て、サーベルトに追い抜かれたくはあるまい」

 

 もうちょっと横たわっていたかったが、休憩時間が終わってしまった。モリー師匠に回復してもらい俺も立ち上がる。

 本当にサーベルトがライアンさんの弟子になっても楽になる所か、モリー師匠の修行密度が濃くなり余計にきつくなった気がする。

 午後になり昼食の後、マリーさんと俺達二人で模擬戦をすることになった。そのときにマリーさんに頼み、ある実験をすることにした。

 

「かばうの実験?」

 

「はい、ガーディアンスキルが成長して覚えた特技なんですが、普通にかばうのと何が違うのか試してみたいんです」

 

 かばうという特技を使うと、素早く対象の前に移動出来るのは今までの経験で知っていた。しかし、それだけなのか確かめたかった。

 まずはマリーさんにまどうしの杖で火の玉をサーベルトに飛ばしてもらう。結果は変わらない。

 だが、その後ギラを使ってもらったときに理解できた。普通にかばったときは、後ろのサーベルトにも呪文が届いた。次に特技のかばうを使ったら後ろには呪文は届かなかった、まるで俺の周りに見えない壁があるかのように防がれたのだ。俺にダメージは通るが後ろのサーベルトには無い。

 つまり、単体に効果を及ぼすものは普通にかばっても良いが、複数に効果を及ぼすものは意味が無い。特技のかばうは複数に効果を及ぼすものでも防げる。こんな所だろう。

 

「ガーディアンらしい特技ね」

 

「後衛に魔法使いや僧侶タイプが居るパーティーなら有効そうな特技だ」

 

「だがその分、自分のダメージが増えるな。回復は気を付けろ」

 

 師匠達から評価と忠告を受けた。

 

(これがあればゼシカと一緒にモンスターと戦ったとき、モンスターの攻撃からゼシカをかばい好感度を上げることが出来るな。名付けて大神作戦、効果は大神さんが実証している。フフフ、我ながら良い作戦を思い付いた、実行するときが楽しみだ)

 

 その後トルネコさんも合流し、全員で修行した。トルネコさんはキトンシールドを持って来てくれた、それで来るのが遅れたらしい。プレゼント用の包装までしてくれたトルネコさんには頭が上がらない。

 

「今日はサーベルトが初日だし、ここまでにしよう、明日からはもう少し本格的に修行するからな」

 

「「ありがとうございました」」

 

 二人して地面に倒れ伏しながら礼を言うと、師匠達は引き揚げて行った。

 

「サーベルト、今日はどうだった? 最初は噛む程緊張していたみたいだが?」

 

「忘れろ… しかし、まさかここまでキツイとは思わなかったよ。ラグサットが最初会ったとき、あんなに特技覚えてた理由が良く分かる。覚えたんじゃなくて、覚えなきゃ生きて行けなかったんだな」

 

 サーベルトが同情の目で見てくる。いずれ我が身だということがまだ分かっていないらしい。

 

「理解してくれる人が現れるとは… お前を師匠達に紹介して良かったよ」

 

「散々恨むなと言っていた理由もな!」

 

「恨む訳無いと言っていたよな?」

 

 既に言質は取ってある、何も問題は無い。

 

「強くなれるんだ、恨んでないさ。でも一発殴らせてくれないか?」

 

 爽やかな笑顔だが、目が笑っていない。

 

「何でだよ?」

 

「半分冗談だ、今日のトラペッタの店で奢ってくれれば良いよ。昨日奢らされたしそれくらい良いだろ?」

 

「(半分本気なのか)食べる余裕あるのか?」

 

「正直キツイが、ユリマさんも来るからな。明日から来れるか分からないと、伝えなきゃいけないしな」

 

「毎日よくやるよ、とっとと告白すれば良いのに」

 

 俺がそう言うとサーベルトは引き締まった真面目な顔をしており、目には決意の炎が灯っているのが見える。サーベルトはしっかりと俺の目を見てこう言った。

 

「ユリマさんの誕生日に告白する」

 

 ようやく告白する気になったらしい、まず成功するだろう。そう思っているとサーベルトが視線を反らした。

 

「…予定だ」

 

(ヘタレめ)

 

 ここは友人のために、俺が一肌脱ぐしかないようだ。ちゃんと告白出来るように策を練り、友人の背中を押してやろうと決意した。

 体を動かせるようになると外に出てサーベルトのルーラでトラペッタへ飛び、いつもの店に入る。

 ユリマが合流しいつものように食事と会話を楽しむ。サーベルトが事情を話し、明日から来れるか分からないと告げると、悲しそうな顔をした後笑顔で「頑張って下さいね」と応援していた。

 良い女性だ、すぐにこうして二人の世界に入らなければ尚良い。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 また修行の日々が続く。ある日は師匠達と修行をして技術や戦術を覚え、また別の日はモンスターと戦い覚えた技術や戦術を実践し、自分達のものにしていく。そしてたまに休日。

 サーベルトは休日にユリマと逢ってデートしているらしい。俺も勇気を出してゼシカをデートに誘おうとしたが、最近兄さんが構ってくれないと愚痴られデートどころではない。サーベルトはゼシカにユリマの事をまだ話していないようだ。

 そんな日々を送っていると、ゼシカの誕生日がやってきた。俺も招かれている。

 リーザス村に着くと村中の人間がゼシカの家の前に来ている、村の祭りの様なものなのかもしれない。

 ゼシカの家の前に大きなテーブルが幾つも並び、料理や酒などが乗せられていて村人達が思い思いに楽しんでいる。

 俺はゼシカを探し、プレゼントを渡すことにした。

 

(ゼシカは…見つけた。サーベルトとアローザさんも一緒か)

 

「ゼシカ、15歳の誕生日おめでとう。これはプレゼントだ」

 

 トルネコさんに包装してもらったキトンシールドを渡す。

 

「ありがとうラグサット。開けてもいい?」

 

「勿論」

 

 ゼシカが包装を開けると、嬉しそうに声を上げる。

 

「可愛いー、猫の盾だー」

 

 俺の選択は間違っていなかった、とても喜んでいる。君の方が可愛いと言ってやりたい。

 

「壁に掛けて飾りにも出来るぞ」

 

「本当にありがとう、ラグサット」

 

 今まで見た中で一番いい表情だ、思わずこちらも笑顔になる。

 

「サーベルトは結局、何を贈ったんだ?」

 

 隣に居たサーベルトに尋ねてみた。

 

「絹のローブだ。以前父さんに連れていってもらった船着き場に行って買って来た」

 

 サーベルトにアイコンタクトを送る。

 

(自分で選んだのか?)

 

(いや、ユリマさんにも相談して買い物にも付き合ってもらい、一緒に選んでもらった)

 

(つまり海の見える場所でデートか、いつ家族に紹介するんだ?)

 

(告白して付き合えたら、だ)

 

(告白出来るといいな)

 

(うるさい)

 

「何兄さんと見つめ合ってるのよ。…まさかそういう関係なの?」

 

 とんでも無いことを言い出した、この世界にもそういう概念はあるらしい。そういえばゲームでもククールがそんな話をしていたのを思い出す。

 そんなことを考えていると俺はある策を閃いた、これが上手く行けばサーベルトも告白出来るだろう。友人本人のためとは言え、友人を罠に嵌める様な真似をするのは心苦しいが、きっと後で感謝される様になる筈。まずは最初の一手だ。

 

「俺にそういう趣味は無いからな。サーベルトは女性に興味が無いという噂は聞いたことあるが…」

 

(フフフ、ここからだ。サーベルトの単純… いや、素直さに賭ける。乗ってこい)

 

「僕にだって無いよ、ちゃんと好きな人居るの知ってるだろ?」

 

(かかったなアホが!)

 

 墓穴を掘ったサーベルトにゼシカとアローザさんから同時に追及が入る。

 

「何それ、聞いてないんだけど?」

「サーベルト、本当なの?」

 

 サーベルトはおどろきとまどっている。

 

「最近構ってくれないのはそう言うことだったのね?」

「サーベルトにそういう人が出来るなんて、母さん嬉しいわ」

 

 サーベルトはまごまごしている。

 

「兄さんは私よりその人の方が大事なんだ…」

「どういう娘か見てみたいわ、今度連れて来なさい」

 

 サーベルトはにげだした… しかし、俺にまわりこまれてしまった!

 

「裏切るのか、ラグサットォ!」

 

 サーベルトは必死だ、少し落ち着かせよう。

 

(落ち着け、俺を信じろ。悪いようにはしない)

 

 アイコンタクトでそう伝えるとサーベルトは大人しくなった。数ヶ月もの間、共にモンスターと戦って培った友情は伊達では無い。さぁ、ここからだ。

 

「お二人とも落ち着きましょう」

 

「…ラグサットは知ってたの?」

 

 ゼシカは少し元気が無い、大好きな兄が離れていってしまうようで寂しいのかもしれない。

 

「出会った時、その場にいたからね」

 

「どういう風に出会ったの? どういう娘?」

 

 アローザさんは息子の恋愛話に興味深々なようだ。普段では考えられない位、興奮している。

 

「じき会えますよ、その時に色々聞いてください」

 

 策の最後の一手を決めよう。

 

「実は数ヶ月後その娘の誕生日がありまして、そこでサーベルトは告白するつもりなんです。晴れて恋人になったら紹介するつもりだったんですよ」

 

 サーベルトが目を見開き口を大きく開け、まるで何か信じられないものを見たかのような顔をしている。何を見たんだろうか? 俺には分からない。

 

「そうだったんだ…そっか… 兄さん頑張ってね」

 

 ゼシカは寂しいという気持ちより、兄の応援を優先したようだ。強い女性だ、流石俺の嫁だ。

 

「サーベルト、やるわね! しっかり男を見せなさい!」

 

 アローザさんも母親として応援している、いい家族だ。

 これで我が策、サーベルト包囲網は完成した。ここまでやればヘタレのサーベルトでも、告白せざるを得ない。もし告白しなかったら、家族から何を言われるか分かったものではないからな。

 

「これで告白出来るな、頑張れよサーベルト」

 

 しかし返事が無い、まるでしかばねのようだ。

 しばらくゼシカとアローザさんと同席し食事と会話を楽しんでいたが、ふと見るとゼシカが席を立ち人気の無い方へ歩いていくのが見える。兄に好きな人が居た事がショックだったのだろう。

 

(少し、話してみるか)

 

「少し外します」

 

「あの娘のこと宜しくね」

 

 アローザさんは察しているようだ。未だに放心状態のサーベルトを置いてゼシカを追った。

 ゼシカは家の裏庭に佇んでいる。

 

「ゼシカ」

 

「…ラグサット」

 

 やはり元気が無い。

 

「サーベルトに好きな人が居た事がショックなのか?」

 

 原因を尋ねるとゼシカはしばらく沈黙した後、答えてくれた。

 

「それもあるけど、それよりその事を話してくれなかったことの方がショックかな。兄さん、昔は隠し事なんかしないで、何でも話してくれたのに…」

 

「恥ずかしかったんだと思うよ。ゼシカも誰かを好きになったら、サーベルトに話しにくいんじゃないか?」

 

「そうなのかな? 分からないわ、私まだ誰かを好きになったこと無いもの」

 

 15歳で初恋もまだとは… 確かサーベルト位しか心を開いていないんだったな。もしかしたら、他の男性と会っても判断基準がサーベルトなのではないだろうか?

 それなら理解出来る。サーベルトはイケメンで性格も良く強さも兼ね備えた領主の長男だ。そんな男を基準にしてたら中々好きな男は出来ないだろう。実は付き合っていくと結構ヘタレだったり、方向音痴だったりと駄目な所も見えて来るのだが…

 そんな事を考えていると、ゼシカから質問された。

 

「ラグサットは好きな人居るの?」

 

(なんて質問をしてくるんだ…)

 

 難しい質問だ。素直に君だよと言うか? 向こうからしたら、恐らくただの兄の友人だろう。いきなりそんな事を言われても戸惑う筈。

 むしろそう言って俺を男として意識させるか? いや駄目だった時のリスクが大き過ぎる、まだ慌てる様な時間ではない。

 

「…居ないよ」

 

 考え抜いた結果そう答えた。ヘタレたのではない、断じてだ。

 

「そうなんだ。…私にもいつか好きな人が出来るのかな?」

 

「出来るさ、いつかきっと…」

 

 俺がそうさせてみせる。

 

「ゼシカは素敵な女性だからな、向こうから好きになるんじゃないか?」

 

「ハイハイ、アリガトー。でも最低でも兄さん位の男性じゃなきゃ嫌よ」

 

 やっぱりサーベルトが基準のようだ。あくまでもゼシカから見たサーベルトだと、実物より要求が高そうだ。

 色々と雑談を交わしていると辺りを夕陽が照らしている事に気付く、もうじき帰る時間だ。

 

「主賓がいつまでも席を離れるのはまずいだろ、そろそろ戻ろう」

 

「問題無いわよ、私の誕生日を理由に皆で騒ぎたいだけなんだから。でも、ラグサットはそろそろ帰るのよね? 一人でいつまでもここに居るのもなんだし、私も戻りますか」

 

 二人でゼシカの席に戻るとアローザさんが座っている。

 

「あら、デートはもういいの?」

 

「母さん! そんなんじゃないわよ!」

 

 アローザさんがゼシカを茶化す。それにしても、そんなに強く否定しなくてもいいのに。

 

「そろそろ帰ります、お招きありがとうございました」

 

「またいらして下さいね」

 

「じゃあね、プレゼントありがとう」

 

 その場から少し離れ、キメラのつばさを使う準備をしながら考える。

 ゼシカとは順調に仲良くなってきている、だが異性としては見られていないだろう。兄の友人から先に進めない、やはり婚約者にならなければ。

 

(しかし、本当にこのままでゼシカの婚約者になれるのだろうか?)

 

 そう考えると不安で仕方がない。それでも今は一歩ずつ前に進んでしかないのだ。いつか婚約者になれると信じ信頼を深めて行こう… そう思った。

 

 

 

 

 

 後、サーベルトはいつまでしかばねの様になっているんだろう… そうも思った。




解説し忘れたオリ設定

戦闘中に使える装備について
自分達の闘気、殺気、魔力などと、戦う相手のそれらが混ざり合う戦場の空気に呼応して力を発揮する。
戦闘中に使える武器、例えばまどうしの杖などは杖スキルを持っていないと使えない。
剣のみ、短剣スキルが育ち長剣を装備出来る様になったら剣スキルが無くても使用可能。
ちからのたて等の防具は全員使える。
ふしぎなタンバリン等の道具もククールだけでなく、全員使用可能。

確か何故戦闘中にしか使えないのか、という謎の公式的な答えが無かった筈なので設定しました。
もしあったら変更します。
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