アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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おまたせしました、新しい幸子です。
流石に毎秒投稿や毎日投稿は無理でした。

カワイイボクに免じて許してください!!なんでもしますから!!


第5話 カワイイボクと心配症なプロデューサー

第5話

カワイイボクと心配症なプロデューサー

 

 さて、あの後はというものの、俺は幸子に言われるがまま、質問攻めの嵐に晒された。

 内容は住んでいる所についてや、普段は何をしているのか、などのよくある質問から始まり、初対面での自分の印象についてや、一番カワイイ所はどこか、など。

 そして気がつけば、いつしか波のように押し寄せる質問攻めこそ無くなったが、今度は勝手に自分のことについて得意気に話し始めた。

 ただ、一つ意外だったのは、話してみると案外普通な面もあり、少なくとも彼女は、自分の事以外に関しては非常に几帳面で、真面目な性格だったということだ。

 今後のことを考えるなら、彼女についてを知るのは、とても重要なことだからな。そう考えれば、この時間は決して無駄なものでは無かったと思える。

「それにしても、なんだか結構なことを話した気がします」

「そうだな。俺もここまで誰かと話し込んだのは、随分と久しぶりかもしれない」

 そんな訳で、時刻は公園に来てから既に、一時間近くが経過していた。知らないうちに俺たちは結構な間話し込んでいたようだ。目の前で遊んでいた子供たちも顔ぶれが入れ替わっており、それが余計に時間の流れを感じさせる。

「流石に八月ということもあり、少し暑いですねぇ。なんだか、喉が乾きました」

「それならどうする? 飲み物でも買ってくるか?」

「うーん……」

「どうした?」

 と、彼女は俯き、突然何かを考え込み始めた。そして数秒後、突然起き上がると満面の笑顔になり、こちらの方を向く。

「それより、いいことを思いつきました!」

 そう言うと彼女は立ち上がり、その小さい手で、俺の手を再び握り締める。

「なんだ、またプロダクションにでも戻るのか?」

「フフーン! 違いますよ。とりあえず着いてきてください!」

 

 

 

 というわけで俺は、再び幸子に腕を引っ張られ、どこかへと連れて行かれた。先程とは違い、今度は町のどちらかというと賑やかな方へと向かって行く。

 こうしてしばらくの間連れていかれたあと、彼女は一軒の店の前で立ち止まる。そして、こちらの顔を覗き込むと笑みを浮かべた。

「次はここですよ、プロデューサーさん!」

 その見た目からして、ここは喫茶店かなにかだろうか。普段、俺はこういった場所に出入りすることがあまり無いために、詳しくはよくわからない。

「外は随分と暑いことですし、少しだけ中で涼しんで行きましょう、プロデューサーさん!」

「あー……もしかして、前からこういった場所に入ってみたくて、でも一人じゃ入りづらいから、丁度都合良く居た俺を連れてきた、なんてオチじゃ……ないよな?」

「そ、そそっそんなことないですよぷ、プロデューサーさん! ボク位の人間なら、ひとりでこんな所に入るのなんて余裕……余裕ですから!」

 図星か。彼女は本当にすぐ顔と反応に出る。どう頑張っても、嘘が付けないタイプだ。

「あのなぁ、俺はプロデューサーであって、君のお友達でも何でも無いんだからな……」

 そう言って帰るぞ、と来た道の方を向き帰ろうとした瞬間、幸子がまた俺の手を握りこちらの顔を再びじっと見てくる。

「プロデューサーさん」

 その目は何かを言いたそうに、なんというか小動物のような目で俺の目を見て視線を離さない。

「あー……幸子?」

「どこにでも、付き合うんでしたよね?」

「いや、たしかにそうは言ったがこれは……」

 彼女は依然、視線を逸らさない。マズい、なんだこの視線は。ダメだと言いたいのに、まるで蛇に睨まれた蛙……いや、チワワに見つめられたライオンの様に体が言うことを効かない。

 やめろ……俺をそんな目で見るな、やめろ……やめろ!!

 

 

 

 ダメだった。あの視線はきっと誰であっても落ちる。なんとも言えない罪悪感みたいな物に心を鷲掴みにされてしまい、結果的に彼女に従わされてしまう。流石幸子汚い。

 俺は気がついたら仕方ないなと言い、喫茶店の中に入っており、彼女と席に座っていた。

「流石プロデューサーさん! プロデューサーさんなら、きっと一緒に入ってくれると信じていました!」

「今回だけだぞ……次は無いからな」

 真面目な話、彼女との親交を深めることも、今後のプロデュースについて考えれば、重要なことだ。それなら、多少の出費も未来への投資ということで片がつく。

 しかし、そうは言ったが実際、俺はこういった場所にあまり来たことが無いために、どうすればいいのか戸惑っていた。

 まあ別に、ここはただの喫茶店なわけだし、何に戸惑っているのかは自分でもわからないが。だが、そのいかにもTHE・シャレオツな雰囲気に、飲みこまれてしまいそうになる。

「さあプロデューサーさん、男の見せどころですよ!」

「男の見せどころ……? 何のことだ?」

「こんなにカワイイボクと、ふたりっきりなんですよ? カッコよく決めたらボク、オチちゃうかもしれませんよ?」

「あのなぁ、一体何を言っているんだ……」

 まったくこの子の本意が読めん。

 彼女は俺に、媚でも売りたいのだろうか。それとも、よくある展開だが、学生が教師など歳上の大人に憧れてしまう的なサムシングか?

 別に、俺に好意を向けて貰えるこは嬉しいのだが、できればアイドルになったのであれば、その好意をファンの方向に向けてもらいたいものだ。

「……ま、まあ良いでしょう。それじゃあとりあえず、注文を早く頼みましょう、プロデューサーさん!」

「そうだな、わかった。じゃあ俺は、無難にコーヒーでも頼もうか」

「じゃあボクは……オレンジジュースで!」

 俺は店員を呼び、幸子に言われた通りオレンジジュースと、自分用のコーヒーを頼んだ。

 なんだかんだこうしてオレンジジュースとかを頼むあたり、本当に彼女は中学生の少女なんだなと、実感させられる。

 はたして、こんな純粋でまだまだ小さな子が、本当にアイドルになんてなれるのだろうか。いや、それをうまく導くのが俺の仕事なのか。

「さて、先に聞いておくが、まだ予定とかどこかに行きたいとかってのはあるのか? 話に付き合った俺の方にも、多少責任はある。どこか行きたい場所があるというなら、先に言ってくれ」

「そうですねえ……まあ別に、特別行きたい場所とかはもう無いです。プロデューサーさんがボクとの時間に満足してくれたなら、今日はおひらきにしましょうか」

「……なんで俺が、君との時間を要求しているみたいになっているんだ?」

「それは勿論、ボクはカワイイので、プロデューサーさんがボクとの時間を要求するのは、当たり前のことだからですよ!」

 これからこの子の考え方のことを超幸子的理論、略して幸子理論とでも言うことにしようか。

 ある意味この幸子理論だけでそのうち、どこぞの芸人や激アツ男みたいに、毎日幸子カレンダー的ななんかでも作れそうだ。

「カワイイのは認めるが……いや、もうなんでもいいわ」

「……カワイイ? 今ボクのことをカワイイって言いました? カワイイって言いましたね!? プロデューサーさん!!」

「あー!! わかった、わかったよはいはい、カワイイ、カワイイよ幸子ちゃん!! ボクのマイ、エンジェル幸子ちゃん!! FOOOO!!」

 途端に自分の置かれた状況に気が付く。

 周りからの凍てつくように冷たい目線、幸子の驚愕した表情、気がついた時には既に手遅れだった。

「あのー……プロデューサーさん? そんなにボクのことがカワイイからって、外出先で叫ぶのはちょっと……」

 疲れた。はっきり言う、明日以降が不安だ。

「もうどうにでもなってくれ……」

 冷めきった空気の中、店員が注文したものを運んでくる。注文の品を置き、店員が言ったごゆっくりどうぞの言葉が辛かったのは、言うまでもない。

「……まあとりあえず、色々あったが今日はお疲れさん。別に、これと言った仕事をしたわけでもないが」

「こちらこそプロデューサーさん、ボクが満足できるだけの働きぶりをしてくれて、助かりました!」

「上から目線なのか、下から目線なのか、本当にわからないな……」

 俺はコーヒーを一口飲む。そして幸子も、同じタイミングでオレンジジュースを口にした。その飲み方がまた可愛らしく……なんというか、あざとい。

「ところでプロデューサーさん」

「なんだ?」

 俺はコーヒーをもう一口続けて飲む。

「ボク達、ふたりでこんなところに来て……まるでカップルみたいですねえ?」

「ブフッ、ガハッゴホッゴホッ……」

 噴き出した。むせる。

「プロデューサーさん!?」

 再び周りの目線が冷たくなった。店員がそろそろこちらの存在を気にし始めている。

「ゲホッゴホッ!! 」

 

 

 

 しばらくして、ようやくむせが収まってきた。むせすぎて、なんだか口の中が焦げ臭い気がする。

「何を言い出すんだいきなり!?」

「い、いや……なんとなく、それっぽいかなって思っただけですよ。別に、深い意味はありません」

「……とりあえず、もう少し自覚を持ってくれ。まだ今日から活動を開始したばかりのアイドルかもしれんが、それでももうアイドルなんだ。少しは、発言や周りの目を気にしてくれ……」

「そんなこと、気にしなくてもボクの溢れるカワイイオーラで、勝手に人が寄ってきちゃいますよ、プロデューサーさん」

「いや、俺が言いたいのはそういう意味じゃなくてだな……それに、そもそもそんなんでファンや人が寄ってくるなら、そもそもアイドルという肩書きも俺も、要らないだろ……」

 まだ器官のあたりに違和感を感じる。流石にコーヒーでむせるのは、水でむせるのより、なかなかにしんどいものだ。

「ともかく、君はもうアイドルになったんだ。だから、これからは外での発言とかには色々気をつけて話すように頼むよ。最近はゴシップ記事なんかも怖いし」

「しょうがないですねぇ、わかりましたよ」

 

 

 

 さて、そのあとはというものの、しばらくの沈黙が続く。

 幸子も俺も、先程頼んだ飲み物を少しづつ飲むだけになってしまっている。なんだか、互いに場の空気に慣れていないせいか、言葉がうまく続かない。

 先程公園にいた時は、マシンガンを通り越して、まるでガトリングガンか何かのように話し込んでいた彼女だったが、今は少し落ち着いた様子だ。

 また、俺の方はあまり会話が得意でないため、話題の提供などがうまくできない。

「……そういえばプロデューサーさん。プロデューサーさんにはさっきから色々なことを聞きましたが、一つだけ、まだ聞いていないことがありましたね」

 と、そんなことを思っていた中、不意に幸子が口を開いた。

「なんだ? この際だ、質問ならなんでも答えるよ」

「……プロデューサーさんはなんで、プロデューサーになろうと思ったんですか?」

 幸子は今日、初めて真面目な表情を見せた。

「なんだ、珍しく真面目な質問だな」

「珍しくって、さっきからボクは一度もふざけてなんかいません!!」

「悪い悪い、今のは冗談だ」

 幸子はテーブルの向こうから、こちらにとっかかってきそうな勢いで抗議をしてくる。

「で、俺がどうしてプロデューサーになったのかについて?」

「はい。まあ別に、深い意味はありません。ですけど、その……プロデューサーさんは一体、どんな思いでプロデューサーをしているのかなと」

 幸子は再び表情を変えた。

 彼女の見せるその表情、それは先程、彼女と出会った直後に見せた、不安の表情と似たものだった。

 確かに、仮に俺がアイドルだったとして、担当になったプロデューサーが生半可な意気込みや、中途半端な理由で仕事をしていたら嫌なものだ。彼女はおそらく、それが心配なのだろう。

「……そうだな、俺がプロデューサーになったきっかけ……か」

 彼女の質問を聞き、俺の頭の中にはこれまでの記憶が走馬灯のように蘇る。それらはいい思い出とも、悪い思い出とも、一概に一纏めにしては言えない。だが、どれも確実に、今の俺がここに居る理由として、必要な思い出だ。

 ただ、そんな多数ある思い出の中でも唯一、ひとつだけ上げるとしたら、際立って大きな理由が一つだけある。

「伝説のアイドルの引退、かな?」

「伝説のアイドルの引退、ですか?」

 

 

 

 かつて、アイドルブームが来るきっかけになった一つに、一人の伝説となったアイドルが居た。

 そのアイドルはかなり小さな弱小プロダクションの出身で、最初は名前なんて知られたもんじゃ無かった。そして、そのアイドルが所属するプロダクションの方も、なかなかヒットアイドルを生み出せなくて、かなり限界が近かったそうな。

 で、そんな営業苦の中、そこの社長がとある青年を見つけ、ビビッと来たとか何とか、たったそれだけの理由だけで、初対面のその青年をプロデューサーにしてしまったとか。

 勿論その青年はプロデューサーなんてやったことも無い、素人だったそうだ。出会いの経緯とかは知らないが、少なくとも普通のプロダクションなら採用なんて絶対にしない、そんな狂気の沙汰をその社長はやってしまった。

 そしてその青年プロデューサーは、後に伝説となるそのアイドル、そのプロデューサーとなった。

 そこからが凄い話だ。青年プロデューサーはあれよあれよでそのアイドルをプロデュースしていき、わずか一年ほどで当時のアイドル業界最高峰のイベント、アイドルアルティメイトと呼ばれる大会で優勝してしまったのだ。

 何色にも染まっていなかった彼のプロデュースは、新しい時代を切り開く斬新な発想そのもので、彼と彼の担当アイドルは、瞬く間に新時代を作り上げてしまった。

 勿論、当時の社会は湧きに湧いた。さらに彼女と彼女のプロデューサーのおかげで、そのプロダクションは有名プロダクションとして、日本中に知られることとなった。

 だが、そのアイドルは恐らくこれからまだ伸びるであろうはずだったのに、それからしばらくすると、理由も深く語らずに突如として引退してしまったのだ。

 この出来事が世のアイドルブームに更に拍車をかけ、社会は瞬く間にアイドル一色となった。そして日本は、世界に誇る『アイドル国家日本』となった。

 さて、話は戻るが、その話をリアルタイムで見て、聞いた俺も、そんなアイドルブームの流れに乗った一人だった。だが、俺はアイドルではなく、その伝説を作ったプロデューサーの方に心惹かれたのだ。

 それから俺は毎日、プロデューサーという職業に憧れ本を読み、ネットで調べ、時にはアイドルのライブに行き、学校の勉強も熱心に励み、そしてついに、親の反対も押し切りながらも俺はプロデューサーとなった。そして今に至る。

 

 

 

「まっ、そういう訳だ。それ以上でも、それ以下でもなく。俺はプロデューサーになり、担当アイドルと共にアイドル界の頂点を掴むために、プロデューサーになった」

 幸子は俺の言葉を、真剣な表情で黙って聞いている。そんな彼女の姿を見て、俺ははっと我に返される。

「……悪い、なんか熱く語り過ぎたな」

「……いいえ、全然大丈夫です。むしろ、プロデューサーさんの熱い思いを聞いて、なんだか少しだけ安心しました」

「安心……そう言って貰えて、嬉しいよ」

 昔の話をしていたら、なんだか非常に懐かしい気分になってきた。

 いつかの日の俺が思い描いていた今日、そこに俺はまさに今、存在している。プロデューサーになり、誰よりも可愛い担当アイドルと共に、アイドル界のトップを目指そうとしている今に。

「そう、俺もいつか、あの伝説のアイドルとプロデューサーに、絶対に追いついてみせる。だから……」

「だから……?」

 その時、俺の目に見えていた彼女は、誰よりも可愛らしく、誰よりも美しく、そして、誰よりも愛おしく感じた。

 そこに居るのは、先程までと何一つ変わらない幸子。だが、俺の中においての彼女は一瞬にして、別の存在となっていた。

 

 

 

『ああ、そうか。目の前に居る彼女が、俺の担当アイドルなんだ』

 

 

 

 そう、改めて認識した瞬間だった。

「……だから俺は君を、輿水幸子という少女をプロデュースすると決まった時から、俺はトップを取らせてやる、そう最初から決めていた。いや……決まっていた」

「……プロデューサーさん……!!」

 次の瞬間、幸子は今日一番の笑顔を浮かべた。恐らく、彼女の浮かべたその笑顔は、俺が今まで見てきた笑顔の中で、一番の笑顔だった気がする。

「だったら、ボクをプロデュースできて良かったですねえ。その夢、叶いそうですよ?」

「夢が叶う?」

「フフーン! そうです! 超絶カワイイボクと、そんなプロデューサーさんなら、アイドル界の頂上、目指せますよ! ボクがプロデューサーさんを、絶対頂上に立たせてあげます!」

 俺はその時の幸子の笑顔と言葉を、いつまでも覚えている。

 誰よりも純粋で、儚く、尊く、そして何よりもカワイらしい。そんな彼女の、満面の笑みを。

 その顔は、その表情は、あの時俺が見た伝説のアイドルと全く同じ様に……いや、違う。その表情は、全く一緒のものだった。

「……それなら俺は、証明してやるよ。お前が、輿水幸子という少女が、世界一カワイイアイドルだってことをさ」

 俺は一度、大きく深呼吸をする。そして、彼女に向かい笑顔を向けた。

「……ありがとう。そして、これから宜しくな」

「そんなこと、言われなくても当然じゃないですか!」

 そう言うと、彼女は言葉を続ける。

 

 

 

「だって、ボクはプロデューサーさんのアイドルなんですから!」

 

 

 

 俺は店員を呼び、会計を済ませた。勿論幸子の分は俺が払う。なんたって、将来のトップアイドルに金を払わせるようなプロデューサーじゃないからな。

 という訳で、こうして互いに話したい事を全て話し合い、満足した俺達は、喫茶店を後にした。

「さて、プロデューサーさん。カワイイボクには満足しましたか?」

「はいはい、大満足したぞ。どうだ? これで満足か?」

「質問に質問で返すのは、マナー違反ですよ。それに、返事は一回だけで良いんです」

 俺の冗談に対して、幸子に冷静なツッコミを入れられる。

 こういった細かいところにも、彼女の真面目さが現れている気がする。

「まっ、冗談は抜きとして、俺も君の……幸子のことを知れて、色々いい機会だった」

「それじゃあ良かったです」

 空はどこまでも晴れ渡っていた。まるで空までもが、これから始まる俺達のプロデュースを、全力で祝福してくれているみたいに。それ程までに、その日の空は青かった。

「さて、幸子はこれからどうするんだ? もし帰るって言うなら、ここから家まで送って行った方が良いか?」

「お気遣いありがとうございます、プロデューサーさん。でも、プロデューサーさんはまだ仕事が有るんですよね? だったら大丈夫です」

「そうか、分かった」

 すると幸子は、満足そうにその場から歩き始めた。

「それじゃあ、今日は一日、ありがとうございました! プロデューサーさん!」

「ああ、明日からは一気に大変になるだろうから、覚悟しとけよ?」

「プロデューサーさんこそ、ボクに遅れないでついてきてくださいね」

「……まったく、それは俺のセリフだろうが」

 

 

 

 さて、というわけで色々あった一日だったが、正真正銘、俺たち二人による初日のプロデュースは終了した。多分、お互いに考えられる最高のスタートを切れたんだろう、少なくとも俺はそう思う。

 そしてその後はというものの、俺は会社に戻ると翌日以降の予定を立てるべく、パソコンの前に張り付いた。そして定時になった俺は会社を後にして、いつもより良い気分のまま家に帰った。

 玄関をくぐった後、そこはいつもと何一つ変わらない、普通の部屋が広がっていた。いや、広がっていたはずなのに、なんだか今日は、少しだけ明るく感じた。

 

 

 

 そしてその日の夜。

 

 

 

「ん?メールか、送り主は……幸子?」

 俺は送られてきたメールを開く。

『プロデューサーさん、初日のプロデュースありがとうございました。明日からは宜しくお願いします!』

「……あいつもなかなか、カワイらしいところがあるじゃないか……ん? またメール?」

『ところでプロデューサーさん、今日のボクは何がどれくらいどの様にカワイかったでしたか? できれば詳しく聞かせて欲しいです! だって、プロデューサーさんはボクのプロデューサーさんなんですから!』

「おうおうわかったわかった、ん? もう一通……?」

『そうそう、ボクをプロデュースする上での注意点としてまず……』

 何件来るんだ。まるでメールに終わりが無いぞ。

「またメールか」

『あー!! でもやっぱりボクの扱い方2の朝のモーニングコールは……』

「……幸子、お前何通送ってくるつもりなんだよちきしょう!!」

そう、これが俺たちのプロデュースの、始まりの全て。

彼女との、奇跡の出会い。そして、彼女のカワイさを証明するための、長い長い旅の始まり。

 




伝説になったプロダクション、一体何5プロなんだ……

さて次回からはついに仕事が始まります。
幸子のハードスケジュールとか予測できすぎて笑えませんがまあ……バンジーやらスカイダイビングやらシベリア送りやら……

どうか幸子担当がひとりでも増えますように

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