アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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遅くなりました、新しい幸子です。

ちなみに今は時間があるので毎日ペースですがそのうち不定期更新になります。
その時はデレステか今再放送しているデレアニで幸子を補給してください。


第8話 カワイイボクと手作り弁当

第8話

カワイイボクと手作り弁当

 

 

 幸子は鞄の中を漁っている。どうやら、何かを探しているようだ。

「えーっと……あ! ありました!」

 すると、しばらく鞄を漁った彼女は中からひとつの小包を取り出した。大きさからしておそらく、それは弁当だろうか。彼女らしい可愛い柄の包に包まれている。

「ほう、親御さんの手作り弁当か? いいじゃないか」

「フフーン! 違いますよ、プロデューサーさん! なんとこれはボクの、手作り弁当です!」

「へぇ、手作り弁当か……なるほどな。幸子はそういった、料理とかの類のものもできるのか?」

「もちろんに決まっているじゃないですか! ボクはカワイくて、カンペキで、そして料理だってできるんですよ?」

 そう言うと彼女は、腰に手を当てこれでもかというほど自慢げにドヤ顔をする。そのあまりにものドヤ顔に、なんだか逆に不安を感じてくる。

「しっかし料理か……俺は最近、一人暮らしになってからはあまりして無いかな。正直、幸子みたいな人を将来お嫁さんに貰える人は少し羨ましいよ」

 そう言い俺は缶コーヒーを取り出すと、飲み始める。

「何を言ってるんですかプロデューサーさん! ボクの将来のお婿さんは、プロデューサーさんだけですよ!」

「ブフェッ!! ゲフッゴホッゴホッ」

 なんというクリティカルタイミング。突然の発言に困惑した俺の器官はオープンセサミ。コーヒーは器官にホールインワン。アワレ俺の肺は爆発四散。

 イッタイナニヲイッテイルンダ幸子。事ある事に俺の気管をいじめるのはやめて欲しい。

「まぁ勿論、嘘ですけど……ってプロデューサーさん!?」

 事態に気がついた幸子は俺の元に走ってくる。そんなに驚いて心配をするなら、最初からむせさせるようなことを言うな。

「……ゴフッ、あのなぁ幸子、俺はお前のプロデューサーであって将来のお婿さんでも何でもないからな? からかうのはよしてくれ……」

 器官の方に思いっきりコーヒーが入り込んだ。昨日から二日連続でいじめ抜かれる器官に、少々同情したくなる。

「だっ、大丈夫ですか?」

「ゲフッ、ゴフッ……ああ、一応な。なんだか口の中がコーヒー臭いが」

 むせる俺に対し、幸子はゆっくりと背中をさすってくれている。しかしいかにも心配そうな雰囲気を出しているが、加害者は間違いなく彼女である。

「……婿というのは少し冗談を言い過ぎましたが、実際そんなにからかってなんかいませんよ? プロデューサーさんは、カワイイボクだけのもの、というのは紛れもなく事実です!」

 これは彼女からの好意なのだろうかか、それともいつもの幸子理論なのか? とにかく、彼女の発言は真意が分かりにくい。真相は定かではないが、とりあえずこういった発言は爆弾発言になりかねないし、仕事中や現場などでは、なるべくなら避けて欲しい物だ。

「とりあえずもう本音とかはどうでもいい。誤解を受けるから仕事の時とかは、なるべくそういった発言には気を付けてくれ。間違っても、俺の最期が勘違いで暴徒化したファンによって刺されて死亡、なんて本当に御免だからな。良いな!?」

「フフーン! そんなに照れなくても良いんですよ? まあ、わかりましたよプロデューサーさん!」

 しかし、そう言う幸子の顔は、明らかに分かっていない顔をしていた。

 さて、俺のむせも収まってきて、いよいよ彼女は小包を開け始める。俺も丁度腹が減ってきていたので、購買へ弁当か何かを買ってこようとかなと思っていた。

「さてっ……と。それじゃあ俺も、ちょっと購買で弁当か何かを買ってくるとしようかな。生憎、今日は昼飯を買ってないんだ」

 俺がそう言うと、幸子は俺を引き止めてきた。

「あれ、何ですかプロデューサーさん。もしかしてお昼ご飯無いんですか?」

「今日は色々浮き足立ってしまってな。いつもなら朝、弁当を買ってくるんだが忘れてしまった」

 すると幸子は、好都合とまでに満面の笑みを浮かべる。

「なら丁度良いです。もしそうならば、別に何も買ってこなくて良いですよ?」

「ん? なんでだ?」

「だってプロデューサーさんは、今からボクのお弁当を一緒に食べるんですから」

 

 ……はい?

 

「あー……無理に気を使わなくてもいいんだからな。幸子は弁当全部食べちゃって良いんだぞ? 別に、自分の分をちゃんと買うだけのお金ならあるから」

 そう俺が言うと幸子は、途端に焦った表情になり、俺が購買に行くのを意地でもと止め始めた。

「だ、だから大丈夫ですってプロデューサーさん! プロデューサーさんは、ボクのお弁当だけを食べていればそれだけで良いんです!」

「……そこまで言うならわかったよ、じゃあ少しだけもらおうか」

 そう言うと彼女は笑みを浮かべ、ソファに座った。そして、この前の公園の時と同じように隣を軽く叩く。

「さ、さあプロデューサーさん早く来てください! カワイイボクを待たせていますよ!」

 俺は幸子の横に座る。すると幸子は、弁当の包を解き封を開けた。途端に部屋中に漏れ出す美味しそうな匂い、俺はたちまち腹が減ってくる。

「喜んで下さいプロデューサーさん! これがボクのお弁当です!」

「へぇ、思っていたのと違って随分と美味しそうだな……これ、幸子が朝早くから起きて作ったのか?」

「プロデューサーさん、ボクの腕を疑っていたんですか……」

 弁当の具材は特に変わった事はない、よくある内容だ。だが、彼女が朝早くから頑張って作っていた、ということを考えるとさらに一層美味しそうに見える。

「まあとにかく、その通りですよプロデューサーさん! もっと褒めてください! その方が弁当の具材さん達も、きっと喜んでくれます!」

「じゃあ、そういうことなら少しだけ……頂いて良いのかか?」

 そう言うと幸子は、待ってましたとばかりに箸で具材を取った。

「勿論ですよ! それと、勘違いされない様先に言っておきますが、べ、別にプロデューサーさんの為に作ったわけじゃないんですからね? これ」

「……じゃあつまり、どういう意味なんだ?」

「プロデューサーさんはこれから、ボクの為にお仕事を頑張ってくれるんです。なのに、一人暮らしでろくな昼飯も食べられていなさそうなプロデューサーさんが哀れで、可愛そうだったから、仕方なく作ってあげただけです!」

「うるさいな、俺だって料理くらいできるわ。中学生に心配されるほどガサツじゃないぞ……」

 と言いつつ、実際にここの所の昼飯や帰ってからの晩飯を思い出してみると、ほとんどインスタントの料理かコンビニ弁当、もしくは前日の残飯しか思い出せなかった。

「プロデューサーさん、そう言いつつなんで目をそらすんですか?」

「……一人暮らしをしてると、そこまで凝った飯を作る必要があまり無いんだよ。それに俺、舌は肥えていない方だと思うし」

 しかしなるほど、どうやら彼女の意図が少しずつわかってきた。恐らく幸子は、俺に手作り弁当を食べて欲しいのか。だから購買に行こうとしていた俺をあんな勢いで止めた、と。俺は今ようやく理解した。

 にしても、そうなるとまさにテンプレのようなツンデレだな。つまり、ツンデレ幸子か。本当に彼女のキャラがどんどん増えていくな。万能属性過ぎて、アイドル界の賢者の石か何かかよ、と内心ツッコミを入れる。まあ別に、実際どんな属性でもカワイイから構わんが。

「じゃあ……それなら箸はあるか?」

「そ、そんなものは要りませんよ! ぼぼっボクがプロデューサーさんにちょ、直接食べさせてあげますから!」

「……はい?」

 俺は言葉を理解出来ずに聞き返す。

食べさせてあげる……食べさせてあげる?

「タベサセテアゲル?」

「はい」

「いや、俺は幼稚園児でも無いんだから箸の使い方くらいわかるぞ?」

「そんなの分かってますよ」

「じゃあ……なんの為に?」

 なんの為に、そう聞き返したが、俺は彼女がやりたがっていること、そしてこれから行われる事を本当はわかっていた。そう、つまりこれは……良くドラマやアニメ等では聞いていたシチュエーションだが……

 俺は今、自分が置かれている状況を改めて自覚し、なんだか頭が熱く……いや、訂正する。痛くなってきた。

 

 一体、なんという状況なんだこれは。

 

 俺はプロデューサーの身でありながら、一体担当アイドルに何をさせているんだ? プロデュース二日目にしてもう私利私欲に走るか二十三歳貴様? 相手はまだ、十四歳の少女だぞ? いや、彼女が勝手にやり出したことだから俺はなんも悪くない、悪くない。しかし、なら止めるのが筋だろ。こうして自問自答しているより、早く断れよ。

 気がついたら、俺の頭の中では一人円卓会議が行われていた。あまりにもな展開に、もはや平常心では居られない。

「さ、さあ早く口を開けてくださいプロデューサーさん! はやく!」

「い、いやお、俺は自分で食えるからな幸子? 大丈夫、大丈夫だぞ?」

「そんなことボクは許可していません! プロデューサーさんは、ボクの言うことだけを聞いていればいいんです! さあ早く、あーんしてくださいプロデューサーさん!!」

「ステイ!! ストップ!!」

「止まれません!!」

 しかし、時既に遅し。彼女はもう、箸で具材を掴み、スタンバイをしている形だった。その強引なやり口に、俺は渋々固く閉ざされていた口を開門することとなった。

「……それじゃ、宜しくお願いします……」

 このまま抵抗しても無駄だと判断した俺は、こうして仕方なく口を開ける。仕方なくだ。すると幸子は、箸で掴んでいた卵焼きを口に運んできた。

 俺はその卵焼きを受け止めると、噛み締める。

「……!?!?」

「どうです? プロデューサーさん。ボク自慢の卵焼きは」

 すると途端に広がる、卵本来の味わいと佐藤の仄かな甘さ。ケチャップや醤油は使っていないのだが、その卵焼き本来の甘さが口の中に広がる。咀嚼するほどに浸透する卵の風味、程よく広がる砂糖の甘味、例えるならばそれは……いや、どう例えようと卵焼きだ。

 

 ただ、人類史最高の美味しさのな。

 

 卵も美味しい。だが、彼女が頑張って作った、その事実がこの卵焼きに対しての最高の調味料となっている。

 そして、卵が喉を通り抜けると同時に、その味は最高潮を超えた。

 ああ、まるで俺は宇宙の果てのお花畑で横になって空を眺めているような幸せに包まれる。美味しいのだ。美味しくてたまらないのだ。そのたった一つの卵焼きが、このシチュエーションの効果も加わり、限界を超えて美味しいのだ。

 さようなら、純粋だった俺。俺は今、立場を利用して担当アイドルの卵焼きを食べている。だが、そこに後悔なんてない。俺は今、最高に幸せな気分だ。人生で二つとない程に。

「……プロデューサーさん?」

「……あ、ああ幸子」

 俺は意識を取り戻した。ここは仕事部屋だ。そして、そこには幸子が居る

「卵焼き……美味しくなかったですか?」

 幸子が不安そうな表情でこちらを見ている。早く感想を言わねば。そう考えた俺は、ありのままに弁当の感想を彼女に言った。

「それは、卵焼きと言うにはあまりにも美味し過ぎた」

「じゃあボクのお弁当は美味しかったってことですか!?」

「ああ、そうだ」

「やった! やっぱりカワイイボクが作ったお弁当です! 当然ですよねえ? 美味しくないはずがありませんよ!」

 余程満足だったのであろう、彼女は今までに見たことが無い程、幸せな笑み……もといドヤ顔を浮かべている。

「じゃあ、もう一口貰っていいか?」

「もうダメですプロデューサーさん! これ以上食べられたらカワイイカワイイボクの分がなくなっちゃいますよ!」

「いや、人が昼飯を買いに行こうとしているのを無理やり止めてまで手作り弁当を食べさせておいて、食べさせるのは一口だけなのかよ」

「うーん、そうですねぇ……わかりました。もしもう一口欲しいと言うならば……おねだりしてください! プロデューサーさん!」

「またこの流れかよ!」

 まあ、もう慣れたが。

 しかし、料理もできる……か。昨日から彼女と接してきたが勉強、歌、ダンス……はまだまだ努力が必要だが、そして今回の料理の腕。本当に色々な面を持ち合わせているな。矢継ぎ早に次から次へと新しい一面が出てくる。これらは普段から色々なことに自信を持ち、意欲的に取り組んでいるからこそ生まれた賜物なのだろう。そして自分の様々なことに自信を持っているからこそ、新しいことだろうと躊躇いなく、チャレンジができる。なるほどな、それなら彼女がこうしてアイドルを目指そうと思った理由も充分に理解できる。わざわざアイドル業界という大変な世界に、自らのカワイさを証明するため、という理由だけで飛び込んだのも納得だ。

 なんというか、彼女からは色々な面で積極性というものを感じる。少なくともこの意欲や原動力を、アイドル活動の方に生かせたなら、これから先良い結果を齎せそうだ。

 ともかく、こんな感じでもう少しだけ昼休みは続きそうだ。少なくとも今日、俺はプロデューサーを目指して良かったと強く思った。まるで、俺に小さな孫でもできたような気分だ。

 さて、昼飯が終わったら午後の仕事だ。この少しだけ幸せな時間の分、いつもよりもっと頑張ろう。だがそれまで、それまでだけはもうすこしだけ、この空気を楽しませてくれ。そう俺は考えた。




因みにこの話の幸子はまだ事務所に入って少し、ということで毒素を少しだけ抜いてあります。これから徐々にいつもの幸子になって行くので安心していて下さい。
また、幸子がなぜプロデューサーさんに積極的なのかも徐々に明かしていくつもりなので待っていてください。ボクの願望で幸子がプロデューサーに積極的な訳ではありません。そこは理解して下さい。

後近いうちに他所に投稿していたオリジナル小説をここにも投稿しようと思います。
正直内容はかなり酷いものでまだまだ修正途中ですが、ぜひ見ていただいておかしな点があったら罵ってもらえると主は喜びます。

長いあとがきになりましたが皆さんいつもありがとうございます。

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