アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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これタグに少しファンダジーって入れた方がいいかなぁ……?


第9話 謎の女神とプロデューサー

第9話

謎の女神とプロデューサー

 

 

 昼飯も終わり、本人も満足できたのか、先程は辛いしんどいと文句を言っていた幸子も、午後のレッスンへと素直に向かっていった。

 正直、俺としてもこんな展開になるとは全く予想していなかった。誰がプロデューサーになると、担当アイドルに手作り弁当を食べさせて貰えるなんて考えるだろうか。それも、あまりにも甘々な展開で。なんだか糖分摂取過多で、高血糖になって目眩がしてきそうだ。

 だが実際、俺はアイドルに弁当を食べさせて貰ったという事実よりも、数年ぶりに誰かによる手作りの料理を食べた事実に、一番感動していた。一人暮らしを始めると、他人の料理を食べる機会どころか、自ら料理という料理をする機会も少なくなるからだ。それ故に、そこまでまともに昼飯を食べていないはずなのだが、なんだかいつも以上に満足な昼飯を食べた気がする。

 さて、話は変わって部屋に残った俺は、再びデスクの前にへと向かう。今日の報告書や、明日以降の予定の整理など、まだまだやる事は山積みだ。気持ちを切り替えて、引き締めていかなければならない。ということで俺は、その書きかけの報告書に手をつける。正直書くネタについては不足することが無いので、自分的にはそんなに苦では無い。それに、二年間弱の下積み時代の経験もあり、書く作業はもはや得意分野の域に達し始めている。俺はそのペンを、どんどん走らせていく。

 そしてデスクの前に向かってしばらく時間が経ったか。俺は同じ格好で作業をしていた為に、少々肩が凝ってきていた。オマケに目が疲れて、文字が少し霞んでくる。また、この時期は気のせいか、エアコンをつけているのにも関わらず、なんだか暑いような、息苦しい様な感じがする。室温を調べてもそこまで高い訳でもないので、おそらく気分の問題なのだろう。

 俺は気分転換の為に、朝から冷蔵庫でキンッキンに冷やしておいた缶コーヒーを取り出した。そしてエアコンの電源を消すと、換気の意味も含めて窓を開ける。

「しっかし、幾ら幸子の弁当が美味かったとは言え、流石にあの量じゃ腹も膨れないな……」

 実際、あの後幸子に食べさせてもらったのはほんの数口だけだ。満足感ばかりが先行して、その時は腹が脹れていた気がしたが、世間一般的な社会人の昼飯としては、あまりにも量が少なすぎる。幸子も手作り弁当を俺に食べさせたがっていた割には、ほとんど自分の分しか用意していなかったからな。まさに、俺に対する配慮は全く無いようだ。

「とりあえず、幸子もまたレッスンに行ったことだし……タイミングを見て、売店で売れ残ってる小さい弁当か菓子パン辺りでも買ってくるか」

 俺はそんな独り言を言いながら外を眺める。

 それにしても、今日はなんだか風が強い。外は別に、これから雨が振りそうだとか、そういったわけでも無さそうだ。天気予報でも、この後はずっと晴れの予報だったしな。だが、それにしてもこの時期にしては、なんだか涼しい気候な気がする。だが、今の所日中室内に篭もりっぱなしの俺にとっては、そんな少し強いくらいの風がなんだか気持ち良かった。

 と、そんなことを考えながら窓の外を眺めていた俺はその時、突然不思議な突風に襲われる。その突然の強い風に、俺は咄嗟に手に持った缶コーヒーを下に落としてしまった。

『にゃあっ!? なんにゃこれ!? 危なっ……て汚いにゃあ!!』

 その声に俺は咄嗟にしゃがみ、窓の影に隠れる。

「またこのパターンかよ……! なんか声まで聞き覚えがあるし!」

 なんだか聞いたことがある絶叫だったが、とりあえず深いことは気にしないことにした。もしまたそこに誰かいたのならば、本当にすまない。

 俺は一人暮らしの男がカツカツの貯金で買ったコーヒーを、ほとんど飲めずに落としてしまった悲しみに暮れながら、こっそりと窓を閉める。

「ったく、勿体ないことをしたな……」

 俺の声が悲しく部屋に響き渡る。正直まだ入社三年目の新入社員で、給料もそんなに良くない。その影響で貯金も結構カツカツなので、あまりその一缶ですら無駄にはしたくなかったのだがな。

 俺は気を取り直して仕事に戻ろうと、渋々窓を閉めた。まあしょうがないか、そう思いつつ俺は部屋の方へと顔を向ける……が、次の瞬間、俺は心の底から驚くことになった。

「ふふっ、こんにちは。新米プロデューサーさん」

 そう、そこには見慣れない人物が立っていた。

「……はい!?」

 もう一度言う、人が立っていたのである。俺が外を見ているたった一瞬の隙に、一切の音を立てることも無く、部屋に人が入ってきていたのである。

 物音ひとつ立てずに、一体どうやって? というかそもそも誰だ? ノックしたか? 居るならとりあえず声を掛けるなりしたらどうなんだ? まさか俺を始末する為に送られてきた暗殺者? それともアイドルになりきれず死んだ女性の幽霊? 俺の頭には、様々な憶測や疑問が飛び交う。

「あのー……すいません、どちら様で?」

 さっきまで俺が座っていたデスクの前には、一人の女性が立っている。冗談はここまでにするとして、真面目な話ここに居るということは、普通に考えてこの会社の関係者なのだろうか。しかし二年弱この346プロに居たが、初めて会う人間だ。可能性として、部屋を間違えて入ってきた新人社員とか……? にしては纏っている雰囲気にはなんだか、ベテランの貫禄というか、新人社員にはありえないただならぬオーラのようなものを感じる。しかしどちらにしろ、ノックもせずに黙って入ってくるとは、少し失礼じゃないか?

「私……ですか? そうですね……今は謎の女神とでも、名乗っておきましょうか」

 他にも有り得る可能性……その整った顔、スラッとしたモデル体型、そして特徴的な青と碧の瞳、恐らくここのプロダクションのアイドルと見るのが妥当だろうか。しかしアイドルと言うには、雰囲気がアイドルの持つそれとは全く違う。どちらかと言うと、モデルや女優といった類に近い物の印象を受ける人だ。

「今、貴方が窓の外に放ってしまったのは、このスタミナドリンクでしょうか? それとも、このスタミナドリンクハーフでしょうか?」

 俺は今、彼女の口から発せられた謎の女神という、核爆弾級のトンデモワードをスルーしようとしていたが、女性はそれでも構わんと勝手に話を続けていく。

「……はい?」

 その一言が現状、俺が返せる唯一の言葉だった。

「はい」

 しかし女神も、それがどうかしたかとばかりに同じく「はい」と一言だけ言葉を返してきた。その様子からは、口にこそはしていないが、早く返答をしろという強い意志を感じる。

「……これは斧の女神様的なやつか……?」

 俺は今までにない程に困惑している。謎の突風に吹かれ、窓からコーヒーを落としてしまったと思ったら、スタドリの女神がそこには居るじゃないか。

 ……いや、待て待て待て待て、何納得しようとしているんだお前は。よく考えろ、女神? というかいきなりなんでこんなことを? いかにも冷静に分析をしているように装って、平常心を保とうとしていたが、そろそろ限界だ。ちょっと説明できる人プリーズミー。

「さあ、答えをお願いします」

 自称女神は変わらず、俺を見つめ返答を待っている。その有無を言わさず返答を待つ様子から、とりあえず話を先に進めるためにも、俺はさっさと質問に答えた方が良いと考え、正直に答えを言った。

「あ、ああ、俺が落としたのは缶コーヒーだ。スタミナドリンクなんかじゃない」

「貴方は正直者ですね」

 しばらく沈黙が続く。

「ああ……で、何なんだ?」

「それだけです。貰えるものは何も無いで賞、ですね。ふふっ」

 おかしいな、クーラーは消していたよな? なんだか季節外れな寒気がする。この人、見た目の割りになかなかえげつないことを言い放つぞ。

「そうですね……それでは、変わりに良い物をあげましょう」

 そう言うとその自称女神は、俺に二つのキーホルダーを渡してきた。ピンクと青の動物のキーホルダーで、バッグとかにぶら下げるのには丁度良さそうなサイズだ。

「幸子ちゃんは、そのキーホルダーを少し前から欲しがっていました。これを彼女にあげれば親密度もグッと上がって、グッドでしょう……ふふっ」

「……もしかして、幸子の知り合いの方か何かでしょうか?」

「いいえ、今は」

 謎だ。益々謎が増えた。話を進めようと会話を続けたら、余計に謎が増えた。ここで幸子のワードが出てくるとは、まったく予想にもしていなかった。

「……わ、わかった。とりあえず受け取っておき……ます」

 と、状況に色々困惑してしまい、流れで言われるがままにキーホルダーを受け取ってしまった。

「しかし、だな……」

 だが、やはり気になるのはこの人の正体だ。いきなり部屋に居て、斧の女神様的なことをしてきたと思ったら、おっさんも真っ青な寒いオヤジギャグを言い放ち、俺にキーホルダーを渡してきた。よくわからないがとりあえず……よくわからない。はっきり言う、これではただの不審者だ。俺は彼女に疑問を問いかける。

「あー……自称女神、やはり気になるのですが、貴方は一体? 一応、どこの部署の人なのか、どんな要件かだけでも聞きたいところなのですが……」

「ふふっ、それはまだ言えません。現時点で言えるのは、私はただの通りすがりの謎の女神だと言うことだけです。他の詳しい事情なども話せません」

 俺は酷く頭が痛い。これは夢か? 幻か? とにかく、この訳が分からなくて頭の悪い展開に、理解が追いついていないのだ。

 まあ、見た感じ悪い人では無さそうだが……ともかく、不思議な人である。

「……あら? どうやらそろそろお時間のようですね。また近い内に、貴方とは会うことになるでしょう。プロデュース、お疲れ様です」

「……いや、ちょって待って。やっぱり一切訳が分からんのだが、一体これ……は……うっ……」

 と、俺は突然眠気と目眩のようなものに襲われ、意識が朦朧としてきた。色々疲れていたのだろうか、急に視界が歪む。そして気がつくと俺は、力が入らなくなり、眠るかのようにその場に倒れ込むと意識を失ってしまった。

 

「いずれまた、出会う時が来ます。その時は、また力をお貸ししましょうか……」

 

 

 

「……さん! プロデューサーさん! 起きてください! もう夕方の五時ですよ! カワイイボクの、夕方のモーニングコールです!」

 気がつくと俺は、仕事机に突っ伏した体勢のまま寝ていた。状況を整理し、先程の出来事が夢だったと確認する。

「……言いたいことは伝わっているが夕方のモーニングコールってなんだ? 腹痛が頭痛と大して意味が変わらないようなこと言ってんぞ」

 なんだ、今のは全て夢だったのか。俺は寝起きで少々痛む頭を起こし、報告書を見る。

「……こっちは、現実であって欲しかったんだけどな」

 ああ、途中から完全に白紙だ。つまり俺は、寝落ちしていたということか。

「プロデューサーさん、ボクが真面目にレッスンをしていたというのに仕事中に居眠りとは、ダメダメですねえ!」

「全く、誰のせいで寝不足だと思っているんだ……」

 俺は椅子から立ち上がる。変な体勢で寝ていたせいか、身体中が痛い。

「いてててっ……寝違えた……か……?」

 と、俺は手の中に感触があり、咄嗟に手を開くとそれを見る。それは紛れも無く、夢の中で見たあのキーホルダーだった。

「あれ? プロデューサーさん、その手に持っているのって……」

 幸子がそれに気が付き、俺に近寄ってくる。そしてその手に握った物の正体を見ると、表情を変えた。

「もしかしてプロデューサーさん、ボクがそのキーホルダーを欲しかったのを知っていたんですか!?」

「……あ、ああこれか? そう、だけど……欲しいならやるぞ」

「い、言われなくても貰いますよ! プロデューサーさんの物は、ボクの物なんですから!」

 俺は喜びを必死に隠す幸子に、キーホルダーを手渡した。因みに受け取った瞬間、幸子の笑みが見えたのは、プロデューサーである俺だけがわかる内緒の話だ。

「ぷ、プロデューサーさんも二日目にしてようやく、ボクのことがわかってきたみたいですねえ!」

 そう言うと幸子は、俺にキーホルダーの片方を渡してきた。

「このキーホルダーはペアルックです。特に渡す相手も居ないので、とりあえず片方はプロデューサーさんに渡しておきます! カワイイボクとのペアルックなんですよ? 喜んでください!」

 俺はキーホルダーの青い方を渡される。そして、それと対になる幸子の方のキーホルダーは、幸子が早速鞄に付けていた。

「フフーン! カワイイボクにお似合いな、カワイイキーホルダーです! ありがとうございます、プロデューサーさん!」

 結局真面目にありがとうと言ってしまう辺り、やっぱり幸子は素直なのかな? と思う。俺にもこんな妹が欲しかったよ……

「さて、プロデューサーさん。そろそろ時間ですし一緒に帰りましょう!」

「あー……幸子、すまないがまだ報告書が終わっていないんだ」

 俺は報告書の方へ一瞬顔を向ける。

「まあまだ、結構時間がかかりそうでな。時間が遅くなると親御さんに心配かけるだろうし、先に帰っていて良いぞ」

「しょうがないですねえ……わかりました! それじゃあ残業で寂しくなったら、カワイイボクのことでも思い出して頑張って下さい! お疲れ様です、プロデューサーさん!」

 幸子はまた今日来た時と同じ不審者スタイルになり、部屋を出ていく。なんだかんだ、充実したプロデューサー生活を送っているな俺、と思った。

「さて、作業に戻るか」

 俺はペンを滑らせる。今日は帰りも遅いだろうし、晩飯は軽めの料理にするか。

「それにしても……人生不思議なことの一つや二つ、あるもんだな……」

 どうやら今夜も寝れなさそうだ。あの女性が誰だったのか、目的は何なのか、そもそもあれが夢なのか現実なのか。それがわかるのはまた、もう少し先の話であった。




ついにお気に入りが30&回覧が1000を突破しましたありがとうございます!
前書いていたオリジナル小説は半年でコメント0お気に入り1の始末だったので正直驚いている限りです。

さて今回はみんな大好きあの人のお話でした。
いや、果たしてあの人なのか、まだまだわかりません(作者は知ってる)

運営さん、SSR楓さん再配信待ってます。

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