アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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第16話 カワイイボクと二人の時間

第16話

カワイイボクと二人の時間

 

 

「あー……生き返りますねぇ……」

「まあな、こういったことはオヤジに良くさせられていて慣れてるから」

 俺は幸子様のご要望で肩を揉んでいる。彼女の年寄りみたいな反応に対し、お前中学生だろ、というツッコみたい感情が湧くも、これ以上話がややこしくなるのはゴメンなので自分の中に留める。

「プロデューサーさん? もうちょっと力を入れてくれません?」

「じゃあご要望通り……そおいっ!!」

「ふぎゃあ!?」

「あー、ダメだったか?」

「ダメも何も、力強すぎですよ!! カワイイボクの肩が壊れたら、プロデューサーさんに一生養って貰わなきゃならなくなっちゃいますよ!!」

「むしろ、俺の握力如きで壊れたら驚きだよ……」

「ボクは繊細なクリスタル……いや、ダイヤモンドみたいな存在なんですーっ!! もっと貴重品を扱うみたいに、ボクの事は丁寧に扱ってください!」

「ダイヤモンドって……それだと、めちゃくちゃ頑丈ってことになるんじゃ……」

「えっ、あっ……ちち違いますよ! ダイヤモンドみたいな繊細なカワイさが、ボクにはあるって事ですよ! ふ、ふふーん!」

 相変わらず幸子をイジるのは楽しい。ついさっきまであれだけSな感じで強気だったのに、ちょっと粗をつっこまれるだけでボロが出る。まるで、カワイさのメッキとでも言うべきか。

「もういいです、肩もみはやめです! プロデューサーさん、次のことに移りますよ!」

「はいはい……」

 しかし、何故こんな事をさせられているのか。そう、原因を作ったのは他でもない俺自身の盛大な自爆である。俺は今朝、自分の言ってしまった失言により、幸子に犬の様にこき使われているのだ。内容としては肩もみ、飲み物の買出し、暇つぶしの相手、その他諸々、とにかく色々と雑用係の様に扱われている。まるで今の幸子は女王様で、俺は執事か召使いみたいだな。

 まあ、こんな可愛らしい女王様なら、独裁国家でも毎日楽しそうでむしろ平和? なのかもしれないが。

「さあ次は夏休みの宿題の手伝い、お願いしますね! プロデューサーさん!」

「いや、宿題を手伝って貰っちゃ宿題の意味が無いだろう……」

「何言っているんですか、プロデューサーさんにやらせたり答えを教えてもらうつもりはボクはありませんよ?」

「ん、違うのか? 意外だな」

「意外って何ですか!! まったく失礼ですねえ。ボクは一応、勉強は得意なんですよ。プロデューサーさんと一緒にしないでください!」

「俺だって学生時代、勉強はしっかりやっていたぞ。それこそ、プロデューサーになる為にな」

 今こうして考えて見ると、学生時代何故あそこまで熱心に勉強できたのか、正直自分でもわからない。高校三年の時なんか、休みの日は朝起きてから寝るまで様々な業界の事や社会の常識、それから勿論学校の成績の為に普通の勉強も死ぬほどやった。正直、遊ぶ時間なんて数分すら無い程のキツキツな予定だったが、意地でもプロデューサーになってやる、という信念……或いは執念が当時の俺に力をくれていたのかもしれない。

「プロデューサーさんが勉強熱心だったなんて、全然想像つきませんねえ」

「まあ、今のこんな感じを見られていたらそう思われるのも仕方ないか」

「今のプロデューサーさんのイメージと言われると、普段のコーヒーを飲んでいるか、書類とにらめっこしている姿しかありませんからねえ」

「反論できない……」

「フフーン! 大丈夫です。そんなプロデューサーさんの為に、健気で頑張り屋なボクが頑張ってすぐに仕事を持ってきてあげますよ! 安心していてください!」

「何だか、俺はプロデューサーなのに、まるでアイドルに助けてもらって生活しているみたいになってるな……」

「仕方ないじゃないですか! ボクは普通のアイドルとは比べ物にならない、特別な存在ですから! やっぱりカワイイって罪ですねえ……」

 自画自賛も本当に才能や持ってるものがある人間が言うと、何か意味合いが変わってくるなと思う。幸子の場合本当にカワイイから、自画自賛していてもつっこみ所がうまくつっこめなくて、なんかモヤモヤする。

「で、話を戻すと具体的に俺は何を手伝えば良いんだ?」

「夏休みの宿題の答え合わせを手伝って下さい!」

「ん? 肝心の内容の方はやらなくて良いのか?」

「フフーン! そんなのもう、終わらせているに決まっているじゃないですか! ボクは完璧なので、コツコツやっておいたんですよ!」

「やっぱり意外だな。てっきり、八月の終わりになって『しゅ、宿題なんて今からやればいいんですよ!』みたいな事を言って、急いでやり始めるんじゃないかと思っていたんだがな」

「プロデューサーさんはボクをなんだと思っているんですか……」

 そう言って幸子は、自慢げに宿題の問題集の中身を見せてきた。俺はその問題集をざっとめくって見ていく。

「へえ……本当に終わってるな。えーっとなになに、参勤交代の制度を作った徳川家三代目当主は……」

 俺は咄嗟に開いたページの答案を見て驚いた。いや、これはよくわからなくなる問題かもしれないが……仮にでも現役の中学生なんだから理解はしておこうよ。自称勤勉家なら尚更。

「あのー幸子さんすいません、なんで三代目が徳川秀忠なんですかね」

「えっ……あっ」

「秀忠は二代目、三代目は家光な。徳川家はたまによくわからなくなるけどテストに出やすいし。結構覚えておいた方が良いぞ」

「べっ……別にわざとですよ! プロデューサーさんが勉強できるのか試す為にわざと間違えておいたんですよ! ふ、ふふーん!!」

「本当ぉ?」

「あー!! 何ですかその目は!! カワイイボクを信用していませんね!! プロデューサーさんの意地悪!!」

「はいはいすいませーん、と……」

 幸子はまた、壊れたオモチャみたいにぴょんぴょん跳ねて怒っている。やっぱり、幸子はイジりがいがある。

「まっ、しょうがないなあ……それじゃあカワイイカワイイ担当アイドルの為に、俺が特別に勉強を教えてやらないこともないぜ……」

「やらないこともないとかボヤかさないで、素直に教えてください! カワイイボクが困っているんですよ!」

「へいへい了解……それじゃあ出張プロデューサー塾、開校!」

 俺は課題を、今度は最初のページからじっくりと見て行く。実際、彼女も清書が趣味と言うだけあって、その内容は殆ど合っていた。その為俺は、ただただ答えを見ながら丸を付けていくことしかやることが無かった。

 途中、確かに何問か小さな間違いこそあったが、幸い俺が教えられる範囲だった為に、幸子に個人授業をしてあげた。アイドル業のついでに塾もして貰えるなんて、幸子は得をしたな。

「フフーン! どうですかプロデューサーさん! ボクの完璧で、完全な夏休みの課題は!」

「なんだ、つまんないな。もうちょっと指摘して幸子をいじれるかと思ったのに」

「いじるって何ですか!! ボクは、プロデューサーさんのオモチャじゃないんですよ!!」

 いや、その怒っている姿がまさにオモチャの様なんだがな。本人に鏡で見せてやりたい物だ。

「で、結局じゃあ課題の方も終わりなのか?」

「合ってるなら仕方ないじゃないですか! もう勉強は終わりです! 次はボクの暇つぶしの相手をして下さい!」

「いやはや幸子様は忙しない御方です……お飽きになるのがお早いでございます」

「カワイイから飽きるのも早いんです! カワイイボクに許された特権なんです!」

 と、幸子は鞄の中をごそごそと漁り始めた。そしてしばらくすると、中からとある一つの箱を取り出した。

「次はこれです!」

 幸子は箱からカードの束を取り出す。俺はすぐにそれがトランプだとわかった。

「なるほど、今時トランプとは面白いな。現代っ子は、ゲームか何かだと思ったのだが」

「ゲームだと、お互いの顔が良く見えなくてわからないじゃないですか! プロデューサーさんに、もっとカワイイボクの顔を見てもらいたいんですよ!」

「お前らしい理由だな……」

「ともかく、ボクはこのトランプでプロデューサーさんに勝って世界一カワイイことを証明します! プロデューサーさんは、本気でかかって来て下さい!」

「ほう? 俺に本気を出させるか。後悔しても知らんぞ? 幸子」

 こうしてここから話は突然のトランプ大会へと変わっていった。二人だけのトランプ、なんだかすぐに飽きてまたすぐ終わりそうな物だが相手は幸子だ。そう何事も無く終わるはずがないだろう。

 俺は冷蔵庫からコーヒーを出してくる。はたしてどんな事をするのかはまだわからないが、向こうが本気なら俺も本気をだそう。それが、勝負の礼儀というものだ。

「輿水幸子、かつてトランプ最強と言われた俺の力、その目に焼き付けるが良い」

 俺と幸子の殺気が部屋には溢れる。

 部屋にはエアコンと扇風機の風が吹きすさび、そこには戦士の目となったアイドルとそのプロデューサーが座っていた。




お気に入り50突破ありがとうございます!
私もいつもは変なことしか言っていませんが、実はコメントやお気に入りがつく度に本当に感動していました。
1人でも見ていただける方が居るだけでも私は感動です。
これからも幸子のプロデュース、頑張っていきます!

因みにこのroute幸子は初ライブまでの2週間を第一部として考えています。
今回が4日目なのでもう少し話は続きそうですね。

次回、幸子とプロデューサーのトランプガチ勝負です。
途中意外な人が入ってきて話は更にカオスに……?

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