アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜 作:ドラソードP
第17話
カワイイボクとトランプpart1
「……参りました」
「あっ……あれ? 勝っちゃいました!」
ああ、俺はかつてトランプ、特にババ抜きではほとんど負けたことが無かった。だが無惨にも今、俺の手札にはジョーカーが握られている。そして相対して座っている幸子の手からは最後の手札が捨てられた。
ああ、完全に俺の負けだ。文句のつけようがない程綺麗に負けた。
高校の頃なんかも、俺はよく数少ない友人と集まってババ抜き等のトランプゲームをしたりしたことはあったが、ババ抜きの場合は大体の場合ジョーカーを引くことなんて無く、最後まで自分以外の誰かにジョーカーを擦り付けたまま勝ち抜けるのがほとんどだった。何故か、実を言うと俺は他人の目を見るとその人の考えや記憶を読み取ることが出来る、邪悪なる鬼の魔眼を生まれつき持っていたのだ!!
……というのは昔、同じ病を患っていた友人とのふざけ話で、実際は俺は他人の心理分析が大の得意だったのだ。
例えばババ抜きだったら相手の表情を少し見ればどれがジョーカーだかある程度わかるし、相手が次に選びそうな場所にジョーカーを配置する事だってできた。そう、俺はその力を扱い幾多のババ抜きを越えてきた。ババ抜きを無双してきた。ババ抜き界の呂布として猛威を奮ってきた。
にも関わらずだ。俺はその分析能力をもってしても今回、幸子に敗北したのだ。
理由? 簡単だ。
そう、幸子は『いかなる時もあのドヤ顔な為に、表情がまったく読み取れない』のだ。
俺はババ抜きのプレイ中、表情や心情を読み取るために必死に彼女の顔を眺めた。だが、見れば見るほど彼女は喜び、こっちはなんだか気不味くなって恥ずかしくなる一方、ただペースを狂わされるだけではないか。
ババ抜きが終わった瞬間、俺には何が起きたのかまるで理解することができなかった。わかり易く例えるならば、気が付いた時俺は既に幸子にジョーカーを取らされ、そして次の瞬間に幸子はあがっていた。ああ、まるであの微笑みは魔力を帯びている。天使? いや、天使の様な小悪魔の微笑みだ。
「プロデューサーさんどうしました? そんなにぼーっとして。カワイイボクに負けたのがそんなに悔しかったんですか?」
「……俺の完敗だ。ああ、証明されたぞ。お前の殺人的カワイさがな」
彼女にはアイドルの才能以前に、ババ抜きの天才的才能を持っている。ババ抜きの神に愛されていると表現するのが最適だろう。仮にも全世界ババ抜きグランプリがあったら彼女は未来永劫頂点にたち続けるに違いない。
「ボクのカワイさは殺人的……やっぱり、カワイイボクは生きてるだけでも重罪なんですねえ……」
幸子は俺に勝てたのが嬉しかったのか、心底満足した様な顔をしている。例えるならばいつものフフーン! が、フフフフーン!!! 位になる勢いだ。
「まあ、とりあえず満足して貰えたのか?」
「まさか、そんなわけないです。お楽しみはこれからですよ? プロデューサーさん!」
恐らく今の幸子の調子の乗りっぷりはこの四日目間で最高潮だ。よほど俺に勝てたのが嬉しかったのだろう、あそこまで壊れそうに笑みを浮かべる幸子は初めて見た。
「さあプロデューサーさん! 負けて何も無く終われるとは思っていませんよねえ? ねっ! プロデューサーさん!!」
「あー……なんだ? 罰ゲームでもあるのか?」
「そうに決まっているじゃないですか!! まあプロデューサーさんには勝っても負けても、どちらにしろ罰ゲームを受けてもらうつもりでしたが」
そうだ、今日は一日幸子の天下だ。幸子の指令には一日『何でも』従わなければいけない。つまり、今回のババ抜きにおいて俺に勝ち目等そもそも最初から無かったのだ。俺は今、ただただ自分の発言を悔やんでいる。
「……で、具体的には何をすればいいんだ?」
「そうですねえ……じゃあ一回まわってワンって言ってください! ワンちゃんなので!」
「宴会の罰ゲームかよおい。というか理由雑過ぎない?」
「あれ? プロデューサーさんは今日一日ボクの言う事は『何でも』聞いてくれるんじゃありませんでした?」
「やります、すいません」
幸子からドS成分が滲み出てくる。お前は本当にどっちなんだ。SなのかMなのかはっきりしてくれ、頼むから。
まあともかく、このままでは『はい』を選ぶまで会話がループするRPGの選択肢並みに話が進まないので、俺は覚悟を決めてとその場に四つん這いになった。そして深呼吸をする。
「さあ! 早く見せてください!」
幸子に促されるまま、俺は全ての恥を捨ててその場で回った。
だが実際、やってみて思ったこと。それは意外と気分は良かったことだ。まるで広大な大草原で走り回る野生動物のように、その心は果てしない開放感で満たされていた。
……待て、もしかして俺はMなのか? いや、そもそもSなのか? なんだか自分のことすらわからなくなってきた。
まあいい。さあ、後はワンと吠えるだけだ俺。どちらにしろここで見ているのは幸子だけだ。くだらない恥なんて捨てちまえ! さあやれ、俺!!
「ワン!!」
「一体キミ達は何をやっているんだい?」
俺は幸子とは違う声に驚きながらも声の方向を向く。そこには、髪にエクステを着けた少女が涼しい顔で立っていた。
あっ、俺終わった。
俺は超速理解した。
「あ、ああああああああ飛鳥!? なぜ飛鳥がここに!?」
「ボクは昼のレッスン終わりで、丁度キミ達の部屋の近くを通りかかったから挨拶に来たつもりでね。ちゃんとノックもしたし、彼女の返事も聞こえてきたから入って来たつもりだったのだけど……」
しまった、集中し過ぎていて地雷の回避に失敗していたようだ。幸子の方に顔を向けると幸子は「ちゃんと返事はしていましたよ」と言い、首を縦に振る。
「フフーン! 飛鳥さん、ボクとプロデューサーは最近仕事が多かったので、休暇をとってトランプをしていたんですよ!」
「トランプ……ああそうだ!! 俺は今トランプで負けたから罰ゲームをしていただけだ! 別に幸子と変なことをしていた訳じゃ……」
「トランプか……なるほど、面白そうなことをしているね。もしキミ達が許してくれるならば、ボクも混ぜてくれないかい? 丁度午後はしばらく暇を持て余していたのでね」
飛鳥は何も気にしていないように話を続け始めた。気にはしていないようだな。よし! むしろそのまま何も気にしないでいてくれ。記憶のハードディスクから映像を削除しろ。今飛鳥は何も見ていないんだ。頼む!
「別にボクは良いですけど……プロデューサーさんは大丈夫です?」
「大丈夫……あ、ああ! 大丈夫だとも! トランプとかは人数が多い方が良いもんな! うんうん……」
「良かった、じゃあ少しお邪魔させて頂くよ」
こうしてなんだかんだあって俺達のトランプに飛鳥が加わる。正直最初は死ぬほど焦ったが、誤解は解けた? 様で良かった。
「そうそう幸子のプロデューサー、キミに一つ忠告だ」
飛鳥が耳元で囁く。
「な、なんだ? 飛鳥」
「あの様なことをするならば部屋の鍵は閉めておいた方が良い。まあボクは口が固いからね、先程のことは第三者には言わないから安心して欲しい。最も、もう脳裏に焼き付いてしまって離れないが」
今の俺から言えるのはただ一言、つらい。現場からは以上です。
因みに私はトランプはババ抜きと神経衰弱しかできません。
どちらかというと自分達はトランプをやるのなら遊戯王をやり始めちゃうからなあ……
それはともかく、いよいよよしのんに声がつくまであと2日ですね。
最近は幻聴以外にも匂いや味までしてきます。
早くよしのん隔離病棟から退院したいところです。
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