アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜 作:ドラソードP
第23話
幸子の部屋(前半)
乃々は嫌な顔をしながらも、幸子に促される形で渋々椅子に座る……いや、座らさせられた。そして乃々が椅子に座った……座らさせられたのを確認してしばらくすると、急に幸子が口を開いた。
「さあやって参りました! 今週の幸子の部屋。今回のゲストはかの超絶カワイイアイドル、輿水幸子を排出した346プロで有名なネガティブ系アイドル、森久保乃々さんです!」
待て、これはどう見ても完全にあの有名なバラエティ番組だ。成程幸子のやろうとしている事が良くわかった。いや、なぜこのタイミングなのかはわからないが……
「あの……えっと……はい。もりくぼです、宜しくお願いします……」
いや、乗るんかい。
「そもそも先週も何も、今回が初めてじゃないのか……?」
「何か言いました? プロデューサーさん」
「何も言ってないです」
「ともかく、この番組の目的はネガティブ系アイドルである森久保乃々さんに、ボクみたいにポジティブ系カワイイアイドルになって貰うべく、ボクが即興で考えた番組で……」
「なんだかやたら限定的な番組だな」
「……あー!! さっきからガヤばっかり入れてなんなんですか!! プロデューサーさんは黙っていてください!! さっきからボクが雰囲気作っているのに台無しですよ!!」
幸子がまた怒り始める。本人は真面目に怒っているのだろうが、見てるこっちからしたら余計いじりたくなるのだ。彼女はどちらかと言うといじられた方が画的に映える、いじられ芸人気質だからな。
「あー……外野のプロデューサーさんがうるさいですけど、それじゃあ早速始めていきましょうか」
幸子はそう言うと、乃々に早速質問を始めていく。
「それじゃあ早速質問です。乃々さんはアイドルらしいですけどまずはなんでアイドルになったんですか?」
「別に……もりくぼはアイドルになりたくてなったわけじゃないですし……」
「アイドルになりたくてなったわけじゃないんですか? 不思議ですねぇ……この前もレッスンを真面目に受けていて、如何にもトップアイドルアイドルを目指していそうでしたけど」
「いや……だって……」
「乃々さんはボクまでとは到底行きませんけど、そこそこカワイイし普通にアイドルを目指せるんじゃないですか? え? ボクの方がカワイイ? 何を言ってるんですか当たり前じゃないですか!」
この勝手に舞い上がって話していくスタイル、まさにあの番組そのものだ。
「は……はい……もりくぼも幸子さんの方が可愛いと思います」
俺だったらすぐにつっこんでいる所だが、乃々はそのままスルーしている。なんだかこの噛み合っているような噛み合ってないグダグダ感が、逆に心地よくなってきた。
「は、話は戻りますけど……もりくぼはアイドルなんてなる気も無かったのに、あの人に無理やりここに連れてこられたっていうか……」
「無理やり、ですか?」
そう言うと乃々は自らがアイドルになった経緯を話し始めた。
「その日、もりくぼは別にアイドルになりたかったとかそういうこともなく……ただ普通に街を歩いていて……プロデューサーさんと出会ったんです……」
「へえ、もしかしてスカウトされたんですか? ロマンチックで良いじゃないですか! ボクなんて、客室で対面してその流れで、とかいうロマンも何もない出会い出したからねえ……」
お前は出会いの場にまでケチをつけるか、おのれ幸子。俺だってもっと清純派の大人しいアイドルを予想して脳内シュミレーションしていたのに、実際出てきたのはちっこいナルシストお嬢様で、内心少し心配になっていたんだからな?
「あれを……スカウトって呼べるのかは微妙ですけど……もりくぼはいきなりプロデューサーさんから『君、可愛いからアイドルにならない?』と名刺を差し出されたんです……」
「いやいや乃々さん、それをスカウトって言うんですよ!」
「いや……まあ……それで、勿論もりくぼは別にアイドルなんて興味は無かったので、その場を去ろうとしたんですよ……」
「勿体ないですって! スカウトなんて普通受けられないものなんですから! こんなにカワイイボクですらオーディションでは何回か弾かれましたし、直接346プロに乗り込んだ時は追い出されて帰ってきたんですよ? 最終的になんとか合格はしましたけど……」
俺は数週間前に何故か346プロが騒がしかったのを思い出す。丁度事務仕事をしていた時に辺りの同僚や係員が『どこのだか知らない少女がカワイイボクをアイドルにしろ、とエントランスで騒いで帰らない』と言ってドタバタしていたがまさかあれは……いや、まさかそれは無いよな。
「それなら幸子さんは夢が叶って良かったじゃないですか……でも、もりくぼは本当にアイドルになんてなる気が無かったから。でも、あの人は……」
「乃々さんのプロデューサーさんがどうしたんです?」
「もりくぼが逃げるようにその場を去ると、そのあとをずっと歩いて追いかけてきたんです……」
「余程プロデューサーさんの目を引いたんですねえ……正直そこまで誰かに気に入ってもらえるなんて、少し羨ましいですよ」
「それでプロデューサーさんはせめて名刺だけでも受け取って欲しい、頼む、と何度も熱心に頭を下げてきて……もりくぼはそろそろ面倒になってきたので名刺を受け取ったんですよ。そしたら……」
「そしたら?」
「『おお、ようやくアイドルをする気になってくれたのか!』と次の瞬間もりくぼを抱えて……そのまま走り始めたんです……!! うぅ……」
乃々の目が急に恐怖の色一色に染まる。再び乃々はしゃがみこみ、体育座りの格好で震え始めてしまった。
いやしかし、今の話を聞いた限りだと……
「今の話だと……」
「完全に……」
「拉致だな」
「拉致ですね」
乃々の言う通り、確かにロマンチックさなんて欠片も存在し無かった。森久保Pはそこまで乃々に一目惚れしたのかもしれないが……しかし、よく通報されなかったなとある意味関心する。これは周りから見たら完全に通報案件だ。多分俺なら即もしもしポリスメン? だ。
「そして暫くその状態のまま連れ去られ……気が付いたらそのままこの346プロに連れてこられていて……簡単な面接みたいな物をした後、何か書類を書かされたんですよ……」
「本当に乃々さんに可能性を感じたんですねえ。確かにボクも、自分の魅力を他人に伝えなくても理解してもらえる事は沢山ありますけど……」
「もりくぼはその書類を書かされた後、両親の許可と契約書類に印が必要と言われて一旦家に帰されました。そして、家に帰るといつもより帰りが遅くなってしまった為に両親が心配して待っていました……」
俺は彼女の身に何が起きたのか大体想像がついてきた。
「両親に事情を説明すると、話の途中で両親が書類に気が付き……『アイドル事務所からのスカウト!?』『まさか内気な乃々ちゃんが自分を変えるためにアイドルに!?』という話になってしまい、一家はお祭騒ぎ……もりくぼはついに断りづらくなってしまいました……」
「あっ……」
幸子は全てを察し、黙り込む。
あの幸子が珍しく真面目な表情をして、頷きながら何かを考えているかの様な素振りをしている。そして、しばらくすると幸子はようやく口を開いた。
「諦めましょう、やっぱりこうなったらアイドルとして頑張る意外に道は無いですね!」
「いや、諦めるんかい!」
決まった、ようやくツッコめたぞ俺。よく頑張った、よく我慢した、うん。
「……フフーン! 大丈夫です、安心してください乃々さん! 目の前にいる人を誰だと思っているんですか!」
「輿水……幸子さんです」
「そうです! 世界一、いや宇宙一カワイイボクこと輿水幸子です! 乃々さんがアイドルという仕事が楽しくなるようにボクが色々と教えてあげますよ! カワイイボクから直接指導して貰えるなんて……乃々さんは幸運ですねえ?」
「いや……でももりくぼは本当に……」
「あ、お礼や報酬については気にしなくても良いですよ? ボクは寛大なので! まずは……」
「うぅ……むぅーりぃ……」
こうして幸子の部屋は、後半の部へと続いていくのであった。
しかし乃々の不幸っぷりには笑わされる程だ。少しは幸子の『幸』を分けてあげたい。
この小説はひとつひとつの話を小さい括りで作っています。
どちらかと言うと全体で一つのお話にするより、多数の短編を集めて一つの話にする感じです。
その方が色々な話をかけるし、ある意味アイマスらしく? 一人ひとりのキャラを立てた話も作れるので自分はそうしています。
ちなみにこの小説を作る時に参考にしているのはデレマスのアニメとインターネット、そしてなによりも忘れちゃいけない、本家デレマスですね。
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