アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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第29話 カワイイボクが行方不明

第29話

カワイイボクが行方不明

 

 

 結局飯を食べ終わった後、幸子とは普段の仕事やレッスン、来週のライブについて話をして過ごした。原因は長い沈黙やこの頭が熱くなる……訂正、痛くような展開に耐えきれなくなった俺だ。流石に休日まで仕事の話はしない方が良いかと思っていたが、話を振ってみると意外にも幸子の方からそれらの話をガツガツとしてきたからだ。

 彼女の話を聞いてみると、普段は自分のことしか考えていないと思っていたが、意外にも彼女なりにアイドルという仕事への熱意やこだわりがあるそうで、ちゃんと後先を考えていたことに驚かされた。来週またプロデュースを再開したら、レッスン以外にも今の幸子でもできるような小さい仕事が無いか、もっと念入りに確かめてみないとな。

 ちなみに、飯についてはあまり食べられなかったのは言うまでもない。俺が色々意識している間に、幸子がフライドポテトを全部食べてしまっていたからだ。謀ったな幸子。策士め。

 ともかくこうして一時間弱ほと昼休憩を取った俺達は、再び幸子の浴衣を買いに店を探すためファストフード店を後にした。

「あー、よく食べました!」

「ああ、ごちそうさまでした……」

「さて、お腹もいっぱいになりましたし午後の部、早く再開しましょうプロデューサーさん!」

「ああ……そうだな」

「あれ? プロデューサーさん、なんかテンション低いですねえ。熱中症ですか?」

「いや、何でもない。大丈夫だ」

 幸子がいつもこのテンションで接してくれれば、俺は何も困らないんだがな……幸子は俺をどうしたいのだろうか。

「……で、それじゃあ次はどうやってその店とやらを探すんだ? というか最初から気になっていたんだが、そもそもその浴衣を売ってる店ってどこにあるんだ? 浴衣なんてどこにでも売ってそうなものだが」

「フフーン! 普通に売ってるやつじゃダメなんですよ! ボクのカワイさに耐えられる浴衣を買うにはあのお店に行くしか……」

 カワイさに耐えられる浴衣って……お前の体は破壊兵器か何かなのか。それだとまさに幸子が言う通り、生きているだけで犯罪級だな。

「いや、だからその店ってどこに……」

「たしかテレビで見かけて……こんな感じの通りのどこかにあったはずなんですが……」

「……まさか、詳しい場所も知らないで来ていたなんて、そんなオチは無いよな……?」

「そうですよ?」

 ああ、俺がスマホの使い方がもう少しわかれば……こんなことすぐに調べて、目的地なんて簡単にわかるのだろう。こうなったのはある意味、俺の技術や経験不足も原因だ。

「仕方ない、こうなったらやっぱり虱潰しに調べるしかないな。今度はもっと人通りの多い場所に行ってみるか……」

「それじゃあプロデューサーさん、そうと決まったなら行きましょう! ここで悩んでいても何も変わりません! はい、また手を繋いでください!」

「はいはいお嬢様……」

 といった感じで、俺は幸子と渋谷散策を再開した。時刻はそろそろ昼の一時を過ぎようとしており、更に休日ということもあってか、街の方は人が昼前以上に多くなってきた。

 そんな街の様子を察してなのか、幸子も先程までとは違い、寄り道をしないでちゃんとその店とやらを探している。

「なかなかわかりませんねえ……人も多くなってきて鬱陶しいし、うるさいですし……とにかく馬車馬の様に頑張ってください、プロデューサーさん!」

「ああ、わかっている」

「それじゃあ、はい!」

 と、俺は唐突に幸子に鞄を手渡される。

「ボクはちょっと疲れました! ボクの鞄ももってください!」

「……了解、わかったよ」

 人混みも駅やビル群に近づく毎に、益々濃くなる。流石の人の数に、目を離したらすぐに幸子を見失ってしまいそうだ。

 幸い、幸子が自分から手を差し出してくれているお陰で、握っている限りはそこに幸子が居るかどうか確認しなくてもわかるので、実際今非常に助かっている。

「ッ……痛いですよ! 気をつけてください!」

「大丈夫か、幸子。一旦人混みを抜けて陰に入るか?」

「プロデューサーさんが手を繋いでそこに居てくれるなら、平気です! ボクは目をつぶってでも歩けますよ!」

「そう言って貰えてありがたいよ、幸子」

 幸子は人混みにあまり慣れていないのか、よく人とぶつかる。そんな幸子の為を思い、俺は人の波をかき分けながら、極力幸子が窮屈にならない空間を探しながら歩いていく。

 と、俺はなんとかして場所を調べられないかと片手でスマホを弄っていた所、気になる項目を見つけてしまった。

「……少し遊びすぎたか……まずい、非常にまずいぞ……」

「どうしました? プロデューサーさん」

「いや、天気予報を見てみたら、関東の方で三時くらいからゲリラ豪雨の可能性があるってさ。こんな雲一つ無い天気のくせして、雷雨の可能性があるってどういうことなんだよ……」

 俺は先程からスマホを弄っていた所、偶然天気予報の機能にたどり着いていた。そしてその画面には、東京の天気が不安定で午後三時程からゲリラ豪雨の可能性あり、と表示されている。

「それは困ります! こんな所で、しかも傘も何も持っていない状態で雨風、ましてや雷になんて襲われたらひとたまりもありません!」

「クソッ、動いてくれ!! ああ……使い方がわかれば……」

 俺は必死にスマホを色々と試してみる。しかし、様々な機能があちらこちらに存在しており、まったくもって何が何だかわからない。更に、周りの人混みや焦りの影響で、手元の操作が安定しない。

「もうプロデューサーさん! 貸してください!」

 そう言うと幸子は俺のスマホをぶんどり、スマホを色々といじり始めた。俺とは違い、非常に慣れた手つきで何かを打ち込み、調べ始める。

「幸子……調べられそうか?」

「まったく、年下のアイドルを頼るなんて、プロデューサー失格ですよ……?」

「とりあえずここで色々やるのはアレだ、一旦人混みを抜けるぞ」

「ですねえ、わかりました!」

 俺はとりあえず前方の方に見えた、休めそうなスペースがある目の前のビルを目指し進んで行く。その時俺はそこそこの速さで歩いており、早歩きになりつつあった。ゲリラ豪雨の予報を見てから内心安心でいていないからだ。

「プロデューサーさん、ちょっと、歩くの早く、ありません?」

「ああ、すまん」

 この時幸子が何かを言っているのは分かっていた、分かっていたのだが、俺はそれに空返事をして先に、先にへと歩いていってしまっていた。

「プロデューサーさん、やっぱり速いですよ! 少しはボクもいるんですから、もうちょっとスピードを考えて……イタッ! あっ……すいません!」

 この時、俺がもう少し気を利かせられる人間だったらあんな大事にはならなかった、恐らく幸子と二人で笑って帰れていたのだろう。俺が幸子と手を離していなかったら、後ろで誰かにぶつかり立ち止まっていた幸子に気が付き足を止められたのだろう。

 俺が幸子が居なくなっていたことに気が付いたのはそれから数分後の事だ。人混みを抜けて手に感覚が無いことに気が付き幸子を探す。

 そうだ、俺は幸子にスマホを渡した時から手を繋いでいなかった。とりあえず人混みを抜けよう、速くしなければ、それだけを考えていたからだ。途中、何度も幸子が俺に何かを伝えようとしていたのは分かっていた。だが、当時の俺からすれば周りの音がうるさくて幸子が言っている言葉がわからなかったのだ。まあ今となってはそれももう言い訳か。聞く気になれば立ち止まって話を聞けた、それにそこまで急ぐ必要だって無かった筈だ。

 俺は幸子に連絡をしようと試みる、しかしそこで様々な問題に気がつく。

 まず、自分の携帯が幸子の手元にあること、幸子の携帯は今日は自宅に忘れてきていること、そして荷物を全て俺に渡してしまっている幸子は財布も、何もかもを持っていない状況だということだ。ましてやそんな状態でゲリラ豪雨に振られ、雷なんて落ちようものならまたこの前みたいに幸子が動けなくなり、外でそんな状態になったら重大な事故を引き起こしかねない。それこそ本当に幸子の身が危ない。

 ああ、まったくもって予期していなかった最悪の事態に陥っている。こんなことをしでかしておいて、担当アイドルを危険に晒しておい、て何がプロデューサーだ、何がトップアイドルにしてやるだ、と自分を責めることしかできなかった。

 だが自分を叱ったところで何も起きない、何も状況は変わらない。まずは何よりも、幸子と合流する事が最優先だ。考えろ、まずはどうするべきか、幸子ならこういった場合どうするか、どこに行くか。

 俺は考えていたのかつもりだった。つもりだった。だが、もう気が付いたその次の瞬間には体が先に動いていた。

 




初めてのシリアス回に入っていきます。
ここからようやく幸子とプロデューサーの関係がようやくアイドルとプロデューサーになっていく予定です。
まあアイマスらしい話に入るのにかなり時間がかかりましたが自称・デレマス外伝、ついに始まります。

ちなみに次回、久々にあの人がでます。

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