アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜 作:ドラソードP
第33話
カワイイボクの初仕事はまだですかねえ?
俺はルンルンで会議から戻ってきた。何故って? それは勿論、良いことがあったからに決まっている。とりあえず、俺のスーパーウルトラ凄い話術にかかればこんなことちょろいものだ。ちゃんと約束は果たしたぞ、幸子。
と、そんな感じで調子に乗って部屋の椅子でグルグル回っていた所、狙ったかのようなタイミングでドアが開き幸子が帰ってきた。
「ただいまです! プロデューサー……さん……何やってるんですか?」
「来たか幸子!! おかえりな!!」
俺は回るのをやめて椅子から降りる。しばらく回っていたせいでなんだか気持ちが悪い。
「なんだか怖いくらいにテンションが高いですねえ……もしかして、仕事でも貰えてきたんですか?」
幸子はさほど期待してない目でこちらを見てくる。
「なるほど……これが、いつもお前が言っているフフーンってやつなのか……? ああそうだ。喜べ、まさにその通り初仕事だ! ……うっぷ……気持ち悪い……」
俺は覚束無い足でソファの方へ行き、倒れる様に座る。
そして次の瞬間、数秒の間思考停止して固まっていた幸子は、目の色を変えると荷物をほっぽり出してこちらに飛びかかってきた。
「プロデューサーさん、ついに持ってきてくれたんですか!? やっぱり有能じゃないですか!! 流石プロデューサーさん、ボクは最初からずっと信じていましたよ!!」
「よー言うわ……」
幸子はソファで伸びている俺の肩を思いっきり掴むと、まるでのしかかってくるのかといった様子でこちらの目をじっと見てくる。傍から見るとまるで、俺は幸子に色々な意味で襲われているかのような構図だ。
「それで、どんな仕事なんですか!? 勿論、カワイイボクにつり合ったカワイイ仕事ですよねえ!? ねっプロデューサーさん!?」
「顔が近いって幸子……まあ、勿論そのつもりだ。聞きたいか?」
「早く言ってください!! 焦らす人は嫌われちゃいますよ?」
「そうかそうか、じゃあ言うぞ? 言っちゃうぞ?」
そういうと俺は、勿体ぶるかのように一息置いた。そして、幸子の無をしっかりと見て言い放つ。
「とりあえず、その仕事は明日だ」
「……へ?」
幸子は気の抜けたような声を出し、そのまま思考を停止し、その場で固まる。そして数泊置いたあと、少しずつ幸子の止まった頭は動き出した。
「明日……明日!? いくらなんでも少し急すぎじゃないですか!?」
ついに勢い余って幸子の手は襟元にいく。そして意外にも握力があり、スーツが首元に食い込んで絞まる。
「ま、まあ別に、いつだろうとボクは構いません。ボクは二十四時間四六時中如何なる時も万全なカワイさなので! ……って、そんなことより早く内容を!!」
「どうどうどうどう!! ステイ!! 落ち着け、落ち着いてくれ幸子。首が締まる! というか締まってる!!」
漸く幸子は手に込めた力を緩める。本当にびっくりしたなまったく。
「とっ、とりあえず、肝心のその仕事内容なんだけどな……」
「仕事内容は……?」
「有名アイドルのライブ……」
「有名アイドルのライブ……!?」
そこで俺は再び勿体ぶって黙り込む。
「すぅーっ……」
「早く続きを言ってください!!」
再び幸子は手に力を込める。
「……の、裏方の仕事だ」
「……ズコーッ、なんですかそれ!! それつまり、仕事は仕事でも『アイドルの仕事』じゃなくて『(他)アイドルの(裏方)仕事』じゃないですか!!」
幸子は俺の襟元からようやく手を離すと、両手で駄々をこねるように叩いてくる。多分彼女のやりきれぬ気持ちが発散できずに、余剰エネルギーとなって体を動かしているのだろうな。
「まあ落ち着け、幸子」
「いやです! もうプロデューサーさんのことは信頼しません! やっぱりこうだと思っていましたよ!」
こっちも言わせてもらうとまあこうなるだろうと思っていた、と預言者プロデューサーは語る。だからこそ、あえてすぐに口にはしなかったのだ。
「とはいえ、実はこの話には続きが……ってだから俺を太鼓に見立てて叩くのやめろって幸子!!」
「いやです!! 嘘つきプロデューサーさんが懲りるまでボクはここから降りないし叩くのを辞めませんよ!!」
「まあそう言うならしばらく好きにするが良いさ……あ、できれば肩のあたりを重心的に頼むぞ」
と言うわけで、仕切り直しだ。若干一分程が経ち、幸子は飽きたのか結局いつも通り横に座っている。
「……で、プロデューサーさん。話の続きってなんなんです?」
「要するにだな……」
要するに俺は、会議の後アイドル部門で新たに上司になった人に、相談をしてみたのだ。幸子にそろそろ仕事をあげてみても良いのではないか、と。そうしたら意外にも、上司からは二つ返事で了承を得られたのだ。しかしその代わりに、ある条件を提示されたうえでな。
まず、いきなりデビュー前のアイドルが大きな仕事をするというのは色々な面から考えてリスクも高いし、不安が残る。その為にまず、先輩アイドルの仕事を手伝い、アイドルという仕事がどういう物なのか、仕事とは何なのか、ということを今一度考えて欲しいということらしい。
それと実は本当はこちらの方が本題なのだが、どうやらその明日の仕事とやらのスタッフが急用で不足したのだとか。それで丁度一人『スケジュールが空いていて』『なおかつ仕事が欲しい』『スタッフに向いた人員』が欲しかったと。
俺はこれらの事実を幸子に全て伝えていく。
「……つまり、ただ人員不足の暇人が欲しかっただけじゃないですか! それにスタッフに向いた人員ってなんですか! ボクはアイドルです!! アーイードールー!! プロデューサーさん分かってますか!?」
「ああ勿論だ。それに本来、こんなカワイイカワイイスタッフが居たら主役であるアイドルの仕事がなくなっちゃうからね、うん仕方ない」
「なんだか色々引っかかりますけど……スルーしておいてあげますよ……」
幸子は茶化されたと感じたみたいで少し怒っているが、俺としてもふざけてこの仕事を持ってきた訳では無い。いや、実際幸子の(騙された)反応がちょっとだけ見たてみたかったというのも少しだけはあったが、ちゃんと俺なりにも真面目な考えはある。
「まあ……一応言っておくと、俺としてもこの仕事もちゃんと意味があって持ってきたつもりだ」
「意味があって?」
「実は俺としても、来週のライブの前に幸子には一度、本当のライブや現場を身を持って体感してもらいたいって考えがあったんだ。それにここで良い働きをして上司からの信頼を得れば、更に仕事も貰えるようになってトップアイドルへの道は更に早くなると思ってね」
「……ま、まあプロデューサーさんが言うことも確かに一理ありますねえ」
「カワイイ道もまずは一歩から。極力俺がサポートしてやるから……どちらかというと俺の個人的な頼みも少し入ってしまうが、どうだ? ここまで話しておいて言うのもなんだが、参加するかどうかの最終判断は幸子に任せる。この仕事、考えてくれるか?」
「……プロデューサーさんの頼みなら、仕方ないないですねえ。ボクは仕事を選ばないアイドルですし……そこまでボクを思ってくれてと熱心に言うならすこーしだけ、検討しておいてあげますよ!」
「そうか、分かった。ありがとうな。やっぱり幸子みたいな素直な子が担当アイドルで、本当に良かったよ……」
と俺は何の気なしに幸子の頭を軽く撫でる。別に、深い意味は無かったのだが、幸子は少し照れている。
「べ、べべ別にプロデューサーの為って訳じゃありませんよ? ……まあ優しいって言ってくれてありがとうございます……」
「顔真っ赤だぞ、熱でもあるのか?」
「ち、違いますよ!! 初めてのボイストレーニングちょっと頑張りすぎたから疲れてるだけです! とにかくみ、水です! ボクは喉が乾きました早く持ってきてください!!」
「へいへいお嬢様……」
そう言って俺は水を取りに行く。
因みに、最近は冷蔵庫にちゃんと水やお茶も完備するようにし始めた。幸子曰くこれが当然なのらしいのだが……
「あ、そう言えばプロデューサーさん。話は変わりますが、やっぱりボクって歌の才能もあるらしいんですよ?」
「ああ、ボイスレッスンの話か。まあだろ? やっぱりな、俺が見込んだ通り歌路線は結構行けるだろ」
「フフーン!……カワイくて、優しくて、歌も歌えてダンスも踊れてカワイくて……やっぱりボクって完璧、究極、神の領域! まさにカワイイボクです!」
「はい、カワイイ三回頂きました」
「何カウントしているんですか!! というか実際本当なら、カワイイの無量大数乗位は欲しいところ何ですからね!! ボクは謙虚なのでこれでも少し抑えているんですから……」
「うっ……ボクの体のカワイさが抑えられない……誰かボクを……ボクのカワイさを抱きしめてってか?」
「それ八割飛鳥さん混ざってるじゃないですか……」
「さ、さあな?」
と、言うわけで今週まず最初の大きなイベントは、いきなり入った幸子の初仕事だ。幸子も話に乗ってくれたし、とりあえず第一ステップは通過か。
正直俺もライブの裏側なんて実際にこの目で見たことは無いし、具体的に明日どんなことをやるのか、何をやればいいいのか全くわからない。言ってしまえば俺も幸子と同じく初見の身分だ。だからこそ、ライブの裏側というものを俺としても、この目でしっかりとよく見ておきたいのだ。幸子に仕事をさせる以上、俺も彼女には最高の条件を用意して置かなければならない。
それが、プロデューサーたる俺の仕事だからだと思うからな。
長らくおまたせしてしまいました。
高校の方で今週の金曜日に就職試験が迫っていてその関係や、新たに考えているオリジナル小説の執筆などで遅れてしまいました。
一応言っておきますと作者はこの作品を完走するつもりです。失踪はよほど内容がブレ過ぎて酷いことにならない限りは無いです。
とりあえずしばらくはまた不定期投稿になりそうです。
毎日、幸子を見て助けられている毎日です……
とりあえずもし僅かでも私の作品の進捗が気になる方が居てくださるのならTwitter等である程度は進捗を公開していく予定ですので、そちらを見てください。
次回、ついに幸子がライブ会場に(まあ普通には終わらないのは皆さんが思っているとおりですw)
文章の改行や空白
-
前の方が良い
-
今の新しい方が良い