アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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第35話 カワイイボクと『アイドル』

第35話

カワイイボクと『アイドル』

 

 

「……さい、起きてくださいプロデューサーさん!!」

「あー……フフッ……やめろって幸子……トップアイドルになったからってそんな……」

「何寝ぼけているんですか! もう会場に着きましたよ! プロデューサーさん!! 起きて!!」

「んあ……?」

 ここはどこだ。確か今、俺は幸子と武道館ライブにリムジンで行っていた筈だったのだが……

「あれ……武道館は……? 黒服のボディガードさんは……? リムジンは……」

「まだ寝ぼけているんですか!! 今日はボクの初仕事ってことで、ライブにお手伝いに来ていたんじゃないですか!!」

 そこまで言われて俺はようやく目を覚ます。

 夢の中で乗っていたリムジンより明らかに狭い車内、居るのは黒服のボディガードじゃなくてライブのスタッフさん、そして派手でも何でもないいつもの普段着に身を包んだ幸子、状況を理解するのに少々時間がかかった。

「そうだったな……思い出したぞ幸子……」

 中途半端に寝すぎたようだ。体が妙にだるいし、頭も痛い。

「まったく、プロデューサーさんぐっすり寝すぎなんですよ。気が付いたらボクの肩で寝ていて……まあ良いですけどね!」

 肩で寝ていた? なるほど、どうやらいつの間にか幸子と立場が逆転していたようだ。幾ら移動中とはいえ、人前で眠ってしまうとはな。俺も知らず知らずのうちに疲れが溜まっていたのだろうか。

「とりあえず、早く車降りますよ! プロデューサーさん!」

 俺は幸子に腕を引っ張られる様な形で外に出る。まだ車内の中で夢と現実を行き来していた意識が、容赦の無い日光により一瞬で覚まさせられる。

「うおッ……!? 眩しッ……」

 俺は顔を塞ぐ。空は雲一つ無い、晴天そのものだった。平日とは言え、ライブをやるのはそこそこ有名アイドルなんだ。恐らくこの天気だと、人の混雑は避けられないだろう。

「なんです? 顔を塞いで。もしかしてボクのカワイさが溢れ過ぎてて、眩しかったんですか?」

「お前の寝起きからのドヤ顔は、眩しいというより少しくどいぞ……」

「くどいってなんですか!! ……いやでももしかして、くどくなるほどカワイイってことなんじゃ――」

「はいはい、行くぞ」

 幸子の言葉を中断させると今度は逆に、俺が幸子の手を引っ張っていく。

「ちょっとプロデューサーさん!! カワイイボクの扱い方がちょっと雑ですよ!! ねえプロデューサーさん!! ……あのー、聞いてます?」

「いや、ほっといたらずっとボクはカワイイって行ってそこから絶対動かないだろ?」

「そうに決まっているじゃないですか!!」

「はいはい、行った行った」

「あっ、ちょ……とプロデューサーさん!!」

 こうして俺達はいつものドタバタした感じの流れで、ライブ会場へと入っていくのであった。

 さて、今日ライブを行う場所は会場とは言っても、小さな公園の中にある小さな広場だ。その為あるのは小さなテントと仮設のステージだけで、その数個立っているテントの中にスタッフや今日のイベントのアイドルが居るらしい。

「しかし、大物アイドルという割には、大分小さなライブイベントだな」

「良いじゃないですか。ファンの人がアイドルを見やすくて」

 辺りではスタッフと思われる人々が着々と集まって来ていた。と、その内の一人がこちらに気が付いたのか近寄って来る。

「ああ! あなた方が今日急遽手伝いに来てくれたというアイドルとそのプロデューサーの方ですか?」

「はい、どうも宜しくお願いします。……ほら、幸子も頭下げて!」

「あっ、宜しくお願いします!!」

俺たちが挨拶をするとスタッフさんは帽子をとり、笑顔で会釈をする。そんな感じの良い応対に、俺の方も仕事モードのスイッチが入る。

「いやー……本当に助かりますよ。流石にこの炎天下だと人が一人居なくなるだけでも色々と大変なので……」

「いえいえ、こちらとしてもまだ駆け出しのアイドルとプロデューサーなので、今日の仕事は色々と参考にさせてもらいます」

「とりあえず今日は暑いですし、詳しい仕事内容などの話はテントの中で説明しますね」

 さて、スタッフに促されとりあえずテントの中に入った俺達は、今日の詳しい日程などを聞くべく、テントの奥に入っていく。そんな関係者用テントの中は夏の強烈な日差しや暑さを防いでくれ、意外と快適な空間だった。

「それにしても案外、中は広いもんだな」

「そうですね。機材とかもたくさんで、現場に来たって実感がわきます」

テントの中には業務用のクーラーや、旋風機が多数置かれている。確かに、パソコンやスピーカーなどの機材は熱に弱いからな。その辺が徹底されているのは納得だ。

「それでは、今日の日程について説明していきますね」

促されるまま着いて行った俺たちは、テントの中に置かれたホワイトボードの前で立ち止まる。そこには今日の一連の流れと思われるものが事細かに書かれている。

「とりあえずライブ自体は午後の三時程からなので、それまでにまず会場の準備を終わらせます。その後準備が終わったら今日は暑いので、来てくださったファンや観客の方へのうちわの配布、他には会場の案内とかですね」

「これは予想通り、幸子よりも大人である俺の方が動かないといけなさそうな内容だな……」

「プロデューサーさん、頑張ってくださいね! カワイイボクのために!」

 幸子は満面の笑みで遠回しに全部やれと言ってくる。無論俺も引き下がらず反撃する。

「なあ幸子、カワイイ子には旅をさせろってことわざ知ってるか?」

「知ってますよ! まあ確かにいくらカワイくたって、外に出なかったらカワイさを知ってもらえないですもんね!」

 ……たまげたな。この純粋な瞳、絶対に俺の言った言葉の意味を理解していない。素でことわざの意味を分かっていないのか、はたまた彼女のカワイイフィルターにより強制的に意味が変えられたのか。いやしかし、でも……うーん……幸子、お前今現役の中学生だろ……?

「……そうだな、プロデューサーはカワイイカワイイ幸子の為に、社畜のように頑張ります……」

「社畜扱いじゃ足りません!」

「俺を過労死させる気か貴様は」

 と、そんな感じで話していると辺りのスタッフが急にざわつき始めた。

「本日のライブのアイドル、到着しましたー!!」

「お、ついに来たのか」

 俺はいよいよ例の有名アイドルとやらが来るのか、と少し緊張をする。流石にテレビにも出ているようなアイドルが来るとなると、あまりいつものようなやり取りや対応はできなくなるな。

 ……ん? そう言えば有名アイドルって言っても、今日来るアイドルって一体誰なんだ? 昨日急遽話が決まったせいで、俺はまだ名前もなんも詳細を聞かされていないぞ。

「なあ幸子、今日ライブをやるアイドルって一体誰なんだ?」

「えっもしかしてプロデューサーさん、誰だか知らないんで引き受けたんですか!?」

「あー……まあ、折角もらえる仕事って話だったからな。あんま考えないで引き受けたのは事実だ」

 俺は今更そこに疑問を持つ。まあ最近は幸子のプロデュースに集中していたこともあるし、そもそも人気のアイドルと言っても今のご時世五万と居る。346プロだけでも多くのアイドルが日常的に出入りしているというのに、流行りのアイドルについてなんて、実際全てを把握しきれるはずがない。

「スタッフさんすみません、今日来るアイドルというのは……」

「はい、今日ライブをするアイドルは今若者の間で急激に話題になってきている……」

 スタッフさんが答えようとした時、突如としてテントの入口が開く。そしてそこには、高校生くらいの一人の少女が立っていた。

「こんにちはー……って、あれ? もしかしてその人とその子が、今日急遽手伝いに来てくれることになったプロデューサーとそのアイドル?」

「あのー、君は……」

「へぇー、アタシのことを知らない人ってまだ居たんだー」

 そう言うと少女はその特徴的な形をした帽子を取る。するとその長くて鮮やかな桃色の髪の毛が顕になる。

「アタシの名前は城ヶ崎美嘉。美嘉って呼んでね。今日は宜しく!」

 俺はその一瞬彼女、城ヶ崎美嘉を見て本能的に何かを感じた。それは言葉では形状しがたい何かだったが、せめて言うならこうだろうか。

 

『彼女が纏っているそのアイドルの雰囲気は、明らかに俺達のそれとは次元が違っていた』




この小説専用のTwitter垢を作りました。
今後の進捗はそちらの方で報告していきます。

さて、みかねえがついに出てきました。
因みに設定としてはまだ、まだ流行りたてのモデル出身のアイドルといった感じです。
そのためアニメ版程は売れてない感じですね。

次回、みかねえと幸子の意外な掛け合いです。
莉嘉は……さあいつかは出るかな?

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