アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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長らくお待たせしました。就職試験、スマホの修理、修理の影響からデレステに篭らなければいけなくなったり……ハードな一週間だった「」


第36話 カワイイボクとカリスマ

第36話

カワイイボクとカリスマ

 

「へぇー、アタシのことを知らない人ってまだ居たんだー 」

 俺はすぐに理解した。彼女の纏うそれの異質さや、俺達との違いに。

 別に、目に見える何かが凄い訳では無い。かといって、彼女が何か特殊な力かオーラでも持っているのだろうか? そんなわけあるか。ここは地球、現代日本、フィクションの世界などではない現実だ。

 それでは俺は一体、彼女から何を感じたのだろうか。恐らくだが、その正体が分かってきた。

 

『カリスマだ』

 

 目に見えなくてもわかるその圧倒的なカリスマ性、一見姿は普通の女子高生にしか見えないが、その場慣れした立ち姿、周りのスタッフより落ち着いた行動、雰囲気。全てにおいて、一般人や幸子の様な駆け出しアイドルのそれとは明らかに違う。

 俺は346プロに就職してから、様々な本物のアイドルを、少し離れた場所からではあるがそれなりに見てきた。だが今、プロデューサーという立場になって更に近場から彼女達を見てみると、そのアイドル個々の違いが分かるようになってきた。

 しかし、これがアイドルを仕事としている『本物』のアイドルか。担当として少々悔しいが、幸子にはまだ微塵も感じられないものだな。

「有名アイドルって、カリスマJKアイドルの城ヶ崎美嘉さんじゃないですか!! 知らないんですか!? 城ヶ崎美嘉。今流行りのカリスマJKアイドルですよ!?」

幸子は小声で俺に耳打ちする。その様子からして、幸子は大分驚いているということが分かる。

「カリスマJKアイドルって、お前そういう系に元から興味あったのか?」

「カワイイボクは、あらゆる属性に通じているんです。もちろん、渋谷系やギャルファッションなども例外ではありません。日頃から真面目にリサーチしているんですからね?」

てっきり幸子の中ではカワイイ以外の要素や感覚は無いと思っていたが、それは間違いだったようだな。幸子がそういったジャンルにも詳しいのは意外だった。

「……あっ、ゴメンね? 二人とも別に気にしたりなんてしなくていいよ? これもまだまだアタシを知らない人も居るって再確認できる、良い機会なのかもしれないからさ」

そう言うと、彼女は気にしないでとでも言うかのようにギャル風のピースを俺たちに向ける。

「今日はよろしくねっ!」

「えっ、あっ……よっ、よろしく……」

俺は改めて彼女、城ヶ崎美嘉の風体を見る。カリスマJKアイドルという肩書きが着く程だ。女子高生だと仮定して、やはり幸子や飛鳥達中学生のアイドルとは違い、身長も高く顔つきもどこか大人びでいる。そして何より目を引くのが特徴的な桃色の髪の毛と、鋭くキレのある眼。そして極めつけが完成されたプロポーション。人気の高さを実感できる、ハイスペックの暴力だ。

「……プロデューサーさん、何腑抜けた顔をして立っているんです?」

「ん? もしかしてなんかアタシの顔についてる?」

「い、いや何でもないです」

 なんだか緊張してなのか、上司と話す時みたいに体が硬直してしまう。しかし相手は年齢さえ違うが、幸子と同じ少女だ。なぜここまでうまく接することができない。まるで彼女に自分の影でも踏まれている気分だ。

「プロデューサーさん……!!」

 と、我に返り幸子の方を見ると、幸子はなんだかかなり不機嫌そうな顔でこちらをみていた。明らかにその目が怒っている。

「プロデューサーさん……浮気ですか?」

「いやいやいや誤解だ。それに浮気ってなんだ、俺は幸子の夫か何かなのか?」

「プロデューサーさんはプロデューサーさんですよ。ボク専用のです!」

「はいはい俺にとって常に一番のアイドルは幸子だけです本当にありがとうございました」

「わかってるならいいです!」

 幸子はすぐに普段の笑みに戻る。しかし、その笑みがいつもと違い少しだけ怖い。

「フフッ、何か二人ともイイ感じのプロデューサーとアイドルの関係じゃん」

「えっ……あっ!」

しまった、盛大にやらかしてしまった。完全に今、初対面の相手の前で痛い身内ネタを披露する厄介になってしまっているじゃねえか。

俺は幸子の超強力な幸子力に引っ張られ、いつも通りの雰囲気でやり取りをしてしまう。

「すみません、少し見苦しいやりとりを」

「あー、ちょっとパスパスそういう堅いの。別に、もっと力を抜いた感じで良いよ!」

「あ……ああ、そうです……か」

「敬語なのかタメ口なのか、ハッキリしてくださいよプロデューサーさん……」

「あー……!! ダメだ、やっぱり本物のアイドルと話すのには慣れてないな」

「ボクだってちゃんとした本物のアイドルですよ!!」

 幸子は再び怒り始める。俺はそんな幸子の怒っている姿を見て、いつもの調子を少しだけ取り戻した。

 こういった状況になった時、こんな風にいつもの雰囲気を作り出してくれる幸子には助けられる。

「へぇ〜……二人とも出会ってからは、もう長い感じなの? 本当に仲良さそうだよね〜、ちょっと羨ましいかも」

「フフーン! 勿論ですよ!プロデューサーさんとボクは、一心同体です! 有能プロデューサーとカワイイボクが合わさって、強く見えるんですよ!」

「……まあ、見ての通り仲が良いというかなんというか……色々……」

「良いじゃん、プロデューサーとアイドルは仲がいいことに越したことはなないよ。異動とか、引退とか、そういった事が無ければこれから先、ずっと仕事をやっていく長い付き合いになるんだから。これ、先輩アイドルからのちょっとした助言ね!」

 言われてみればそうだ。それこそアイドルとプロデューサーなんて、引退でもしない限りずっとの付き合いになるわけだからな。そういった意味では、俺と幸子は負ける気がしない。

「まあとりあえず、長話をここでしていてもそろそろ時間が勿体無いかな。繰り返しになるけど今日は宜しくね! 仲の良いお二人さんになら、アタシも安心して仕事を任せられそう」

「こちらこそ、今日はよろしくお願いしますね! 美嘉さん!」

「打ち解けるの早いな幸子……」

「まあまあ、アタシとしてもその方がやりやすいし、幸子ちゃんPももっと気楽に話してくれても良いよ?」

「幸子ちゃんP……?」

 なんだかそのあだ名を俺がつけられることに違和感がある。別に嫌なわけでは無いのだが、自分が言われるとなるとなんとなくしっくりこないものだ。

「さて、とりあえず最初は……まだ外の会場の方が組み立てとか終わってないみたいだし、プロデューサーの方は会場の組み立ての手伝いとかをお願いしようかな。幸子ちゃんは怪我させちゃってもイケナイしね〜……どうしよう」

「別に、ボクもプロデューサーさんと同じ様な仕事で構いませんよ? 今日は最初からお手伝いのつもりで来ていたので」

「いやいや、現場は結構力仕事や危ない仕事も多いし……よしっ、それじゃあ幸子ちゃんは今の所、ここで待機かな? 未来のトップアイドル候補に何かあってからじゃ遅いしね」

「そうだな。彼女が言う通り、こういった力仕事は俺にまかしてくれ、幸子」

「プロデューサーさんと美嘉さんが言ってくれるなら……しょうがないですねえ。しょうがない、しょうがないですから……言ってくれた通り、甘えさせてもらうことにしますね!」

 さて、そんなこんなの経緯があり、俺も早速会場の設営に加わっていくことになった。だが、待っていたのは思っていたより遥かにハードな仕事だった。燃えたぎるような炎天下の中機材を運ぶのは、正直しんどいとしか言葉が出てこない。とりあえず上着は邪魔だし暑いから脱いだが……これは着替えを持ってくるべきだったな。汗で大変だ。

 因みにテントて待機してもらっている幸子にはとりあえず、休憩時間の水配りや、美嘉の身辺の手伝いなどの小さな仕事をしてもらうことになった。仕事自体は確かに小さいかもしれないが、それでもライブに関わる人の努力や苦労は彼女にも伝わるだろう。特に、先輩アイドルの近くならば尚更な。この経験が幸子になにかしらの良い経験になることを期待したい。

 しかし、それにしても今日は本当に暑いな。これからライブやイベントをする機会とかができたとしたら、スタッフや幸子への配慮もしないといけないな、と俺の方も色々と再確認させられる。案外、俺の方も良い勉強をさせてもらっているのかもしれない。

 と、そんな中テントの方を向くと幸子がテントの陰からこちらを見ていた。

「プロデューサーさん! カワイイボクの分も頑張ってください!!」

 ……それにしても、結局全て俺の仕事になっていないか? 

 今日一番肝心な幸子は日陰で、扇風機の風に当たり、涼しい顔で、水を飲みながら、椅子に座って、こちらを見ている。手伝いに来ているはずのアイドルが、今日ライブをするアイドル並にVIP待遇なのは何故なのだろうか。なんだか無性に仕事を投げ出して、家に帰りたくなってきた。

 ちなみに美嘉の方はと言うと、どうやらテントの中で今日のライブのメイクや着替えなどをしている様だ。ちゃんと346専属のメイクさんが担当しているらしいが、専属のメイクさんが居るあたり流石346プロだなと思わされる。

 

 あれから一時間と少し程時間が経ち、意外とあっさり会場の設営は完了した。短時間で建てた割に見た目はなかなかのものだ。

 しかし、こうやってステージを作ってみると達成感があるな。今歌っているアイドルのセットは俺達が作ったんだぞ、と観客に言ってみたくなる。まあ、それを言わずにひっそりと裏から見ているのが本当の裏方仕事というものなのかもしれないが。それならば、その裏方で仕事をしてくれたスタッフさんの分も俺達アイドルとプロデューサーが頑張る、というのがスタッフさんへの労いになるのか。

 と、ふいにテントの方へ目を向ける。すると幸子が仕事の終わったスタッフ一人ひとりを周り、ちゃんと水を配っていた。

「フフーン! 暑い中お疲れ様です! お水どうぞ!」

 何だかんだ彼女なりにできる仕事をしていて、その姿を見て少しほっこりする。まあ彼女はアイドルなんだ。彼女が楽そうにしているのを見て羨ましがっていたようじゃ、まだまだ俺も三流プロデューサーか。

「あ、プロデューサーさん!」

 幸子がこちらに気がついたのか走ってくる。

「どうぞ! 喜んでください、カワイイボクからの差し入れですよ? 」

 スタッフ一人ひとりを走って回っていたせいか、幸子はかなり汗をかいている。俺はそんな彼女の頑張っていた姿に少し涙が出そうになる。全く保護者か俺は。

「素直にお疲れ様ですって言えば良いだろ……まっ、ありがとうな幸子」

「うるさいですねえ、プロデューサーさんはボクの為に汗水垂らして頑張って当然なんですよ!」

「へいへい……」

 と、ペットボトルを受け取るといきなり幸子が手を引っ張ってきた。

「ライブの開始まではしばらく時間があるみたいです。そろそろお昼ですし、次の作業までとりあえずお昼休憩にしましょう、プロデューサーさん! あ、プロデューサさんに拒否権はありません!」

「お昼って言われても、俺は弁当とかは無いぞ……? ん、もしかして俺の分まで弁当でも作ってきてくれたのか?」

「何言ってるんですか、普通に弁当が配布されるんですよ」

「あ……いや、何でもない。そうか、わかった」

そこで俺は、幸子の存在が少しずつ当たり前になってきていることに改めて気がつかされる。あれだけ幸子の弁当を食べさせてもらうことに抵抗があったのに、今となってはもはや違和感を感じない。まったく、俺もだいぶ毒されたな。ある意味、幸子の担当プロデューサー化が進行しているのかもしれない。

「もしかして……ボクの手作りお弁当を自分から求めているんですか? 贅沢な人ですねえ。そんなプロデューサーさんにはあげちゃいます! 今日は流石に無理ですけど明日、プロデューサーさんのために作ってきてあげますよ!」

「そうか、じゃあお言葉に甘えて……明日は頼んだぞ、幸子」

「お礼はいりません! だって、ボクですから!」

 こうして俺は幸子に引っ張られるがままにテントに連れて行かれた。結局、場所は違えどやる事は同じだったか。しかしそんな状況でも幸子の適応能力には驚かされる。

 とりあえず、午後からはまたお客さんも来たりして更に忙しくなるだろう。それまでは休憩だ。暑いし重労働で疲れたし、休憩無しじゃやっていけない。深い事は考えず、飯にするか。




なんでこのタイミングでスマホが壊れるのか不思議でたまりません。
デレステイベント滑り込みで卯月確定しましたけど本当につらい一週間だった……

まあしばらくはまた不定期ですが、幸子に免じて許してやってください。
幸子もりくぼ飛鳥カワイイ。

次回、昼休み(直球)

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