アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜 作:ドラソードP
第39話
カワイイボクと本物のアイドル
会場の設営や事前リハーサルは無事に終わった。それからしばし時は経ち、時刻は二時半を過ぎた頃だろうか。会場の周りには少しずつ人が増えてきていた。
「なんだか賑やかになって来ましたねえ」
「今日は平日だし、そこまでの満員とはいかないだろうが、多分美嘉目当ての女子高生とかのファンが来るんだろうな。ちょうど八月で学生は夏休みだろうし」
公園とはいえ、ここはそれなりに整備された場所で、実際ライブをやる会場の周辺は今回みたいなイベント用になのか、コンクリートで舗装されている。それに公園から出てすぐそこには、大きな駅や通りがあり、わりと人通りは多く賑やかな場所だ。
「確かに、何故わざわざ平日に、しかも公園みたいな場所なんかでライブをやるんだろうと思っていましたが、ファンの層を読んであえてだったんですね!」
「またそれなら平日にやっても人は結構来るんだろうし、ある意味アリなんじゃないかな」
「ファンの層を掴む、これからのボク達のライブの参考になりますね!」
テントの隙間から会場の周りに集まっている人を見ると、中高生、とくに女子が多い様に感じる。読者モデル出身、カリスマギャルの名は伊達じゃ無かった様だ。
「しっかしまだ開催時間の一時間近く前なのに、人が集まるってのも凄いよな」
「ライブなんてそんなものですよ。まあボクのライブは一時間どころか、三時間前には満員のライブになるでしょうけどね!」
「それじゃあそれに見合ったキャパの会場を用意しなきゃな」
「目指せ、宇宙クラスのコロニーライブです!」
と、こんな感じで幸子と話していたがそろそろ時間だ。俺達はライブが始まる前のうちわの配布や、会場のスタッフをすることになっている。
「それじゃあ行くか、幸子」
「まあボクにかかれば、美嘉さんのライブは間違いなく大成功でしょう! 美嘉さんは最高の勝利の女神を引き当てましたよ、本当に!」
「そうだな。幸子の方もその意気込みのまま宜しく頼むぞ」
「プロデューサーさんこそ、観客の女子高生に目を取られて、ミスなんてしないでくださいね?」
「……やれやれだな」
という訳で俺達は会場のテントから外へ出た。実際に外に出て間近で様子を見てみると、かなりの人数だ。俺と幸子はこの一人ひとりにうちわを配って回るのか……
「とりあえず会場は暑いし、見に来てくれている人に片っ端からうちわを配っていくぞ」
「言われなくてもです!」
俺達はダンボールからうちわをできるだけ多く取った。うちわはそこそこの量用意されており、すぐに無くなる事はまず無いだろう。
「フフーン! カワイイボクからうちわを受け取れる美嘉さんのファンは、美嘉さんだけでなくボクのファンになれて倍お得ですね!」
「はいはいカワイイのは分かった分かった」
「あっちょっ……とプロデューサーさん引っ張らないで下さいよ!!」
また自分の世界に入ってしまっている幸子を引っ張り、俺はステージのある方へと行く。
「さあ、幸子は右側から頼んだ。俺は左側からうちわを配布してくる」
「しょうがないですねえ、まあプロデューサーさんの言うことなら聞いてあげます!」
幸子はそう言うと早速お客さんの方へと歩いて行き、うちわを配布していった。俺も幸子が行ったのを確認して、同じ様に配り始める。
「今日は暑いのでうちわを配布します!! みなさん、適度な水分補給等は怠らないでください!! また、気分が悪くなった方や何かあった場合は我々スタッフまで一言お声がけください!!」
我ながら良い感じだ。こんな完璧にスタッフ仕事をしている人間が実はプロデューサーだと、一体誰が思うだろうか。下積み時代三年間、伊達に雑用仕事や裏方仕事はこなしていない!!
「みなさん! 今日は暑いので水分補給とかはちゃんとやってくださいね!! カワイイボクとの約束ですよ!!」
見たところ、幸子も彼女なりに向こう側で一生懸命やっているようた。発言の一つ一つに色々とつっこみたいのは山々だが、汗を垂らしながら頑張っている彼女を見ると、むしろこれでいいのだろうと思えてくる。俺もそんな幸子に負けじと配って回った。
しかし、こうしている間にもファンはどんどんやってくる。配っても配っても終わりが見えてこなく、丸でキリがない。俺や幸子以外にもスタッフさんが配っているが、これはスタッフが一人居ないだけでも大変だろうとよくわかる。
と、ここで他の仕事が終わったスタッフさんが援軍に駆けつける。スタッフさんは俺達以上に手馴れた動作で、まだうちわを受け取っていないファンに配っていく。
「プロデューサーさん! ボクの方は手持ちの分だけなら配り終わりましたよ!」
俺がうだるような熱波と途切れることのない人波に苦戦している中、幸子の方はうちわの配布を終え俺の方へ帰ってきていた。
「早いな、こっちもあと少しで終わりそうだ」
「なんかスタッフさんの話だとお客さん、想定より多くなりそうってことでしたよ?」
「しょうがない、ペース上げてもう一度うちわを補給してから回るぞ!」
「わかりました!」
俺達は走ってダンボールの方へと戻った。そして先程と同じように手に取れるだけありったけのうちわを取っていく。
ちなみにうちわには今日の衣装姿に身を包んだ美嘉の姿と、裏面には346プロとそのアイドル部門についてのPRが書いてある。今日のこの人の集まり具合と美嘉の知名度からして、企業の宣伝効果としてもかなり高そうだ。
流石は346のこれからを背負って走るアイドル、346の顔になるのもそう遠くはない話だろうな。
「そうだ、今日は予想以上に暑い。幸子の方も決して無理はするなよ? 体調悪くなったりしたら後は俺が全部やっとくからさ」
「そのボクを思ってくれる気持ちだけ、受け取っておきます! ありがとうございますプロデューサーさん!」
「へっ、担当のことを考えてやるのなんて当たり前のことよ」
こうして俺達は何度も何度もうちわを配って回った。他のスタッフさん曰く、今日のお客さんの数は想定外のクラスらしい。まさに、嬉しい悲鳴そのものだということだ。
と、うちわを配り始めて四週目に入ろうとした時、突然俺は一人のスタッフさんに止められた。
「すみません、美嘉さんが幸子ちゃんとそのプロデューサーの方に、ステージの舞台裏の方に至急来て欲しいと連絡がありました!!」
「美嘉から?」
「はい、どうやらそろそろ開演時間なので、是非ともおふた方には舞台のすぐそばで見てもらいたいと。うちわの配布の方は私達に任せておいて下さい!」
俺はその伝言を聞いて幸子にもこの事を伝えるため、幸子の元へ走った。幸子に話の内容を伝えると、幸子はうちわの配布があと数枚だから素早く切り上げて、後から合流する、とのことだった。
俺は先に現場を離脱すると、急ぎ舞台裏の方へと向かう。
「あ、ようやく来たね、プロデューサー」
舞台裏に着くとそこでは再び衣装に着替えた美嘉の姿があった。
「すまない、幸子の方は少し遅れそうだ」
「いやいや、むしろちょっと今はその方が都合が良いかも」
そう言うと美嘉はそばに来るよう指示をしてきた。
「ん? どうした?」
「実はさ、アタシ今少し考えていることがあって……」
そう言うと美嘉は耳元で囁き始める。
「……それ、勝手にやっちゃって良いのか?」
「大丈夫大丈夫、もう上の方には連絡とってあるからさ。くれぐれも幸子ちゃんには内緒でね?」
そう言うと美嘉は微笑む。
「大丈夫、アタシに任せといて!」
「そうか……わざわざありがとうな、美嘉」
「いいのいいの! 先輩であるアタシから、後輩である幸子ちゃんにやってあげられるのはこれくらいしかないから……」
俺は美嘉からとある提案をされた。来週にライブを控えた幸子には、恐らくプラスになることだろうと考えてのことらしい。
「城ヶ崎美嘉さん、そろそろ出番の方宜しくお願いします!!」
と、スタッフが忙しそうに走ってくる。時刻は三時半過ぎ、そろそろ時間だ。
「オーケー! アタシの方は準備満タンだよ!」
と、そこにちょうどうちわを配り終えた幸子が走ってきた。
「プロデューサーさん! こっち、終わりましたよ!」
「了解、そろそろライブ始まるぞ」
表の方にはもう司会の人が出て話し始めており、イベントはもう始まった様だ。
「それじゃあ行ってくるね、幸子ちゃん、それと幸子ちゃんのプロデューサー」
「ああ、美嘉の雄姿を二人で見させてもらうよ」
「頑張ってきてください美嘉さん! 美嘉さんには、ボクという勝利の女神が着いていますから!」
「二人とも……ありがとう!! それじゃあ、行ってくるね〜」
美嘉は深呼吸をする。途端に顔がプロの顔つきに変わる。そして数秒後、外の司会の声の後に拍手が聞こえた。
途端に美嘉は舞台に飛び出していく。拍手は美嘉が出ていくのと同時に更に強まり、外からは溢れんばかりの歓声が聞こえる。
『みんなー!! 今日は来てくれてありがとうー!!』
俺と幸子は今、まさに『アイドル』を目にしていた。
今日もこの後デレステのイベントを回してきます。
未央ちゃん……凛ちゃん……待っててな!!
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