アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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第41話 カワイイボクとカリスマJK

第41話

カワイイボクとカリスマJK

 

 

 あの後、美嘉の方はファンとの握手会をし、それが終わるとすぐに会場の解体が始まった。会場の解体も組み立てる時よりかは早く終わり、五時になろうとしていた時には既に撤退準備は完了していた。

「なんか、こう見ると終わりは呆気ないものだな」

「いや、だって呆気なく終わらないようじゃ毎日色々なアイドルがライブなんてやってられないし?」

「それを言われたら、確かに美嘉の言う通りだな……」

 俺と幸子、そしてライブを終えた美嘉は何もなくなったライブの跡地に立っていた。

 そこはただの広場で、先程まで居たファンや観客の姿は無く、犬の散歩をしている人などが普通に歩いている。

「さて、撤退も完全に終わったし……幸子ちゃんとプロデューサーは帰りはどうするの?」

「まあ、恐らく一応来た時のスタッフさんの車で一緒に帰る感じかな?」

 一応帰りもその予定だった。というか、この辺りの地理を全く知らないのでそれ以外に帰る方法が無い。

「あれ? 他のスタッフさんの車なら先にほとんど帰っちゃったけど」

「えっ」

 自分の耳を疑った。最後の最後にぶったまげた話が飛んできた。俺はそっと幸子の方を向く。

「どうしよう」

「いや、ボクが知ってるわけないじゃないですか」

 幸子に正論を言われる。先程までの良い感じな話の流れを根本からへし折る様な、とんでもない衝撃展開だ。

 スタッフさん、優しくて丁寧な人だと思っていたがいくら何でもこれ、酷くない?

「だったら、アタシが乗ってきた車に一緒に乗ってく? 二人とも」

「美嘉の車?」

「うん。別にアタシが乗ってきた車なら、丁度二人分位なら乗れるだろうし。それに今日の話とかもまだまだ話したからさ。二人が良いって言うなら、アタシは全然大丈夫だよ?」

「良いのか……?」

「良いんですか……?」

俺と幸子は顔を見合わせたあと、美嘉の方を向いて今日最大級の笑顔を浮かべた。

「いやいやいや、同じ事務所のアイドル同士、やっぱり助け合わなきゃ!」

「ああ……ありがたや……ありがたや……」

 どうやら俺達はとんだカリスマ女神に助けられたようだ。彼女の器の大きさとカリスマ性が、今まで以上に輝いて見える。

「でも、一応アタシが乗ってきた車って言っても、ほかのスタッフさんの車とあまり変わらないから、過度な期待はしないようにね?」

「ああ、むしろもうタイヤがついてる箱なら何でも良い」

 と、言うと美嘉は携帯を取り出し、恐らくその美嘉が乗ってきた車の運転手と思われる人に、連絡をする。

 そして一分程すると美嘉は電話を切る。

「OKだってさ! さあ乗れるって分かったし、早く二人とも行こ!」

「ああ、わかった」

 こうして俺達は美嘉に案内してもらい、美嘉の車に載せてもらった。まあ、やっぱりというか俺達が乗ってきた車よりは、座席の質感など多少質が上だった。

「今日は二人ともお疲れ様。二人のおかげで、アタシも本当に助かったよ!」

「いやいや、俺達は与えられた仕事をしたまでだ」

「それだとしても、プロデューサーは現場スタッフと変わりのない働きぶりだったし? 幸子ちゃんの水の差し入れや笑顔もみんな好評だったし」

「へえ、そんなに俺良い働きしていたのか」

「流石カワイイボク! まさに戦場に舞い降りた天使です!」

 幸子は美嘉に褒められてドヤ顔になる。まあ実際、幸子中幸子なりに暑い中良くやってくれたと思う。一生懸命に水やうちわを配る姿にはこちらも元気づけられたし、俺的にはなんだかちょっと頼もしいと思った。

「今回『だけ』は、素直に戦場の天使だったって認めるよ……」

「今回『だけ』ではなく今回『も』天使だって認めてくださいよ!」

「はいはいエンジェルエンジェル……」

もう少し謙虚さが有れば、本当に完璧なんだがな。彼女の自己顕示のハングリーさには、大食いタレントも真っ青だ。

「でも実際、現場のスタッフさん達には、幸子ちゃんの魅力や努力はちゃんと伝わっていたみたいだよ? だってスタッフさん、みんな幸子ちゃんのファンになったって言ってたし」

「ほう? まさかの手伝いにきた先輩アイドルのライブで、初めてのファンを手に入れちゃった感じか」

「違いますよ! 初めてのファンはプロデューサーさんです!」

「俺が幸子のファン?」

そう俺が聞き返すと、幸子は当然とでも言いたげに「はい!!」と言い、頷いてくる。

「だって、ボクと出会った人はみんなカワイイボクの虜になっちゃうんですから! だから必然的に、一番最初にボクに出会った、プロデューサーさんが最初のファンです!」

 確かに幸子の言う点にも一理あるのかもしれない。

 幸子のドヤ顔……まあ笑顔もだが、アレには謎の魔力がかかっている。仮に、初対面であの小惑星の衝突並なインパクトのドヤ顔を見せられたら、良くも悪くも頭から離れないだろう。俺が身を持って体験しているからな。まさに、彼女はベストドヤ顔二ストだ。

「じゃあ、その理論だとアタシも幸子ちゃんのファンになっちゃうのかな〜、なーんてね」

「当然です! 美嘉さんももうカワイイボクの虜なはずです! 夢の中まで離しませんよ!」

「流石にそれはくどいからやめとけ」

「だからくどいってなんですか!」

 車内には笑いが溢れる。先程までは仕事モードだった美嘉も、スイッチはオフのようだ。

「まあね、確かに甘くて美味しい物も食べすぎるとくどくなるってのもあるし、幸子ちゃんのご利用は計画的にってね」

「そんなこと言わないで、ボクをもっと無駄使いしてください! ボクはお財布の貯金と違って、いくら使ってもたぶん減りませんから!」

「じゃあ、そんな幸子ちゃんでも磨り減って無くなっちゃいそうなくらい、幸子ちゃんのカワイさを堪能しちゃおうかな〜!」

「それはボクが困ります!」

「なんだか、良いコンビになりそうだな……二人とも」

「うん、幸子ちゃん素直だから。それに何より『カワイイ』し、アタシ大好きだよ」

 そういうと美嘉は、仕事が終わり安心したのか、伸びをした後少し姿勢を崩す。そして視線を窓の外へと向けた。

「⋯⋯実はさ、アタシ、今はこんな感じだけど今日本当は凄く心配だったんだよね」

「どうしてだ?」

「いやー、実は丸々の後輩アイドルを持つのは初めてでさ。色々心配だったというか、少し緊張していたんだよね……」

 そういうと美嘉は、俺に今までのアイドルの経歴などを話し始める。

「アタシがデビューした当時はまだ、346プロにはアイドルがほとんど居なくてさ。346のアイドルの最初の顔として厳選され、集められた自分達数十人だけだった」

「確かに、この会社にアイドル部門ができたのが最近の話だったからな」

「そう、だからこそアタシ達は346の看板として、これからの346の未来を背負いアイドルをやってきた」

 美嘉は話を続ける。

「ある意味、今までは自分の事にずっと精一杯だった感じなんだよね。だからこそこうして時が経ち、先輩になり、後輩ができて、今までにないプレッシャーを感じた」

「プレッシャー?」

「後輩を持ったことがないアタシ達が、ちゃんと後輩に先輩らしく接してあげられるのかなーってさ」

「なるほどな。それで美嘉にとって、今日幸子が初めて接した後輩アイドルになる、と」

「そうそう、良い勘してんじゃん。で、アタシとしては幸子ちゃんに先輩らしく居られたのか一日心配だったわけ」

「いや、俺から見れば今日は充分先輩していたぞ?」

「まあ、そんなプロデューサーの言葉は有難いんだけど、これを決めるのは幸子ちゃんなんだとアタシは思うの」

 そういうと美嘉はこちらの方を向き、微笑む。

「でもさ、最後幸子ちゃんはアタシに感謝の一言を言ってくれたじゃん。そしたらアタシ、先輩らしく一日できたのかなって嬉しくなっちゃって……」

「なるほどな、あの涙の理由はそんな複雑な経緯があったわけだと……」

「アタシったら、こんなベテランみたいな雰囲気を出しておいてまだまだデビュー一年弱の駆け出しでさ、まだまだトップアイドルには程遠いから……だからこそ、あの幸子ちゃんの言葉が余計に嬉しかった」

 美嘉は再び目元に涙を浮かべる。余程あの言葉が嬉しかったのだろう。

「何言ってるんですか」

 と、そこで今まで黙っていた幸子が突然口を開く。

「美嘉さんは、ボクというトップアイドルの原石を指導した人なんです! つまりは、ボクがトップアイドルになるまでの間だけは、美嘉さんはもうトップアイドルなんです!」

その言葉を聞いた美嘉の目からは大粒の涙が流れ落ちる。

「ちょっと……パスパス! それ以上優しい言葉言わないで! アタシまた泣いちゃうから!メイク崩れるから!」

 美嘉は慌てて顔を隠す。どうして346のアイドルはこうも皆、行動に魅力があり可愛いらしいのだろうか。

「意外と涙脆いんだな、美嘉は」

「意外とって……アタシだって、一応仕事が終わったら普通の女子高生なんだからね……? カリスマJKだって泣く時は泣くよ……」

 美嘉はハンカチを取り出し、メイクを崩さないように涙を拭き取る。しかし、一瞬見えた泣き顔まで美人とは、流石カリスマJK恐るべしだ。

「まあまあ冗談だ。今日は色々幸子の為に色々やってもらったし、学ばせてもらったし、本当に美嘉様々だよ……ありがとうな」

「まあ、アタシもアイドルの先輩として、できる限りのことをやったまでだから……」

 涙を拭き、再び見せた笑顔。そこにはアイドルとしてではなく、一人の少女に戻った美嘉の姿があった。この笑顔を見た限りではまた、彼女も幸子と同じ一人の少女なんだろうな、と思う。

ああ、そうだ。例え彼女がカリスマアイドルであっても、例え彼女が自称天使だったとしても、彼女たちが一人の少女であることに変わりはない。美嘉の本音を聞き、俺はそう改めて気が付かされた。

「とりあえず、なんかしんみりしてきちゃったしこの話はおしまい! これ以上泣いたら完全にメイク崩壊するから!」

「ああ、そうだな。ライブは成功したんだから、もっと楽しくやって行こうぜ!」

 と、横を見ると幸子が何か物言いたげな目でこちらをじっと見ていた。

「プロデューサーさん……随分と仲良さそうですね……!!」

「あー、これはだな……」

「なーにー? もしかして幸子ちゃんってプロデューサーのこと好きなのー?」

「えっあっ……あー……ち、違います!! プロデューサーさんは浮気癖がある人なので、他のアイドルに気を取られてボクのプロデュースが疎かにならないか、心配なだけなんです!!」

「おい、浮気性ってだからなんでそうなる幸子」

「うるさいです!! ともかくプロデューサーさんはつべこべ言わず、ボクだけ見てれば良いんですー!!」

「フフッ、本当に仲がいいよね二人とも……まあ少なくとも、プロデューサーと幸子ちゃんの方が、やっぱり良いコンビしているよ……」

「おいおい、そんなに幸子を毎日ずっと見ていたら眩しすぎて目が痛くなるわ……」

「ボクは太陽かなんかですか!! 違いますよ!! それにカワイイボクなら恐らく目に入れても痛くないはずです!」

 こうして、俺達を乗せた車はこんなかんじでプロダクションを目指して、賑やかに走っていった。

 気が付けば美嘉もすっかり俺たちの輪に溶け込んでいて、車の中は行きの時よりもなんだかんだうるさくなっていた。まあ、プロダクションに着く頃には皆疲れでぐっすりだったが。

 ともかく、俺と幸子の初仕事はこの通り無事に終わった。正直今までにないくらい疲れていて、今日は家に帰ったら、飯食って風呂入って多分すぐに寝てしまうだろう。それくらい疲れている。でも、不思議とこの前の渋谷の時の様な気持ちが悪い疲れではなかった。

 だが、幸子が売れてきたらこれがかなりの頻度で来るのか……今のうちにある程度、覚悟はしておかなければな。

 俺はようやく使い方が分かってきたスマホを取り出すと、まだ白紙に近い明日以降の予定を確認した。

 




最近またちょっと忙しいので投稿が安定してません。
多分来週からは本腰入れて書けると思います。

話は変わりまずが4th行きたかった……物販のダークイルミネイトのTシャツ欲しかったんですよね。ちくしょう。
受かった皆さん、精一杯楽しんできてください。落ちた人、一緒にデレマスのアニメでも見ていましょう……w

次回、ライブに向けての本格レッスン開始!

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