アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜 作:ドラソードP
第42話
カワイイボクと過労気味のプロデューサー
俺はパソコンの前でひたすら作業を続ける。その内容は、主に来週のライブについてだ。
来週の月曜日に控えた幸子の初ライブ、正確には幸子以外にもアイドルは居るのだが、演出面等は何か案があれば参加するアイドルと、そのプロデューサー同士で考え提出してくれとのことらしい。また、それ以外にもこの前撮った幸子の写真が送られてきたため、それの編集や昨日の報告書の続き、衣装や何やらかんやらの費用の管理など、とにかくハードスケジュールな一日だ。正直炎天下での力仕事をやった次の日に、これははっきり言って過酷労働過ぎる。全国の働くお父さん、お疲れ様です。
という訳で、こうして俺はいつもより数時間早く出勤して、閉じそうな瞼と倒れそうな体に鞭を打ち作業をしているのだ。幸いブラックコーヒーが眠気に良く効く。とりあえず今日は、これらの作業を早く終わらせなければいけない。ライブまで日にちがないために、必然的に全ての期限が早いのだ。さらにさらにそれだけでなく、この後は幸子のレッスンの成果を確認しに行く約束にもなっている。ああ、これ程までに猫の手を借りたいと思ったことは無い。
……しかし、よく猫の手を借りたいと言うがなぜ猫なのだろうか。別に化けて代わりに仕事をやってくれる訳でもないだろうし、なぜなのだ。
ああマズい、集中力が切れてきた。こういう忙しい時に限って、割とどうでもよさそうなことが気になってしまう。どうでもよさそうなこと、例えば幸子の跳ねっ毛の仕組みや、乃々の髪の毛のあのロールについてや、美嘉のあの角つき帽子がどこで売っているのかなど……
……やっていられん。どこのどいつだ、雑用時代の方が楽だったとか言ったどアホは。
俺はパソコンの前でひたすら作業を続ける。深い、深い深淵へと沈んでいきながら……
「おはようございます! プロデューサーさん!」
「うごぉ!?」
俺は背中に突然抱きついてきた小さな妖精により、変な声を上げ意識を取り戻す。どうやら知らない間に意識を失って、幸子が来るいつもの時間になっていたようだ。
「さ、幸子か。おはよう……」
「あ、あれ? プロデューサーさん、なんだか元気ないですねえ? 何かあったんですか?」
「見ての通り、書類整理がこの量でな……朝早くから来て消化していたんだよ」
パソコンの画面を見ると、作業は普通に進んでいた。どうやら俺は、寝ているわけでも起きているわけでもなく『ただ仕事をするためだけ』に余分な感情を切って、二時間ほど無心で作業をしていたようだった。相変わらず人体の神秘には驚かされる。
「ボクの為に自分の肉体を追い込んでまで……ありがとうございます、プロデューサーさん! さあもっと頑張ってください!」
「これ以上頑張ったら本当に死ぬ」
「そ、それは困りますねえ! しょうがないです、とりあえず作業をやめてください! がんばっていたプロデューサーさんへのご褒美に、ボクの事をカワイイって言わせてあげます!」
「へいへい、カワイイカワイイ……」
「フフーン! 一日の始まりのカワイイ、ありがとうございます!」
幸子は朝からこのテンションだ。まあ……朝とは言ってももう十時も近い時間か。今日は色々と時間感覚が崩壊している。
「とりあえずさっきのは本当に冗談です。プロデューサーさんも一旦手を止めて、ボクと朝のお話でもしましょう!」
「ああ……そうだな。だが幸子、いつまでもその状態だと俺が動けないのだが……」
幸子はさっきからずっとあの格好だ。別に嫌という訳でもないのだが、このままでは普通に動けない。
「じゃあこのまま話します?」
「そうか、それなら仕方ないがこのまま作業を続けるぞ……」
「ぐぬ……しょうがない人ですねえ」
幸子はようやく俺から離れ、いつも通り定位置のソファに座る。
「偉い子だ……幸子」
俺はデスクの上を軽く整理すると席を立ち、幸子が座ったソファの方へと向かう。そして崩れる様に俺もソファに座った。
「ふぎゃあっ!? ちょっとプロデューサーさん! そんな座り方をしたら、カワイイボクが飛んじゃいますよ!」
「おっと、悪いな。少々同じ姿勢で座り過ぎて、足が痺れていたようだ」
俺がソファに座ると、その勢いでソファの幸子が座っている方が盛り上がった。幸子は驚いて声を上げ、猛抗議してくる。
「まったく、カワイイボクはもっと慎重に扱ってください! 割れ物注意です!」
「あれ? この前は確かボクはダイヤモンドとか言ってなかったか……?」
「あ、あれは〜……で、でもダイヤモンドだって普通雑には扱わないじゃないですか! それに、ダイヤモンドだってハンマーで叩けば割れますし!」
「へえ、これはためになるトリビアを聞いたな。流石幸子、物知りカワイイ」
「そんな雑な褒め方して! その調子でもっと褒めてください!」
「怒ってんのか嬉しいのかどっちなんだ……」
本当に朝だろうが昼だろうが幸子はまったくブレないな。何事においても判断基準とかが一々掴めない。
「ま、とりあえず幸子の方は調子どうだ? 昨日の今日で疲れたり、体調とか崩していたりしないか?」
「カワイイボクはこの通りです! お気遣い感謝しますね! ありがとうございますプロデューサーさん!」
幸子は昨日の疲れの片鱗すら見せない勢いだ。俺と歳は九歳程しか違わないはずだが……いや、そもそも九歳も違えば、小学生と下手したら高校生か。割と結構な差があるな。そりゃあ幸子の体力が有り余っているのも当たり前か。
ああ、若いって羨ましい……
「まあそれなら良かった。今日からはライブに向けて更に忙しくなっていくからな。体調管理や性格のリズムとか、できる範囲でしっかりしておかないと」
「その言葉、プロデューサーさんにそのままお返しします!」
「ははは……そうだな……」
最近は家でもリズムが狂いがちな毎日だ。朝飯が抜けたり、睡眠、起床時間の乱れで寝不足になったりするのは、そこそこ当たり前になってきている。それに気のせいか、細かいことが色々と雑になった気がする。まあ、今まではそこに気を回せるほど余裕があったってことだけなのかもしれないが。
「プロデューサーさんももっと、ボクを見習って規則正しい生活を送ってみたらどうですか? カワイイボク直伝、輿水流健康生活術です!」
「どうせ、朝起きたら鏡を見てカワイイって言うとかなんとかなんだろ?」
「なんでわかるんですか!!」
「むしろ違ったら驚きだよ!!」
ご覧いただけただろうか、このプロデューサー流エスパー術を。というのは勿論冗談だが、本当に彼女の思考パターンは安易に読めてしまう。
「ま、まあ話は脱線したが幸子が元気だって言うなら俺も……頑張んないとなーっと……」
俺は軽く伸びをし、体をほぐす。長時間座っていたせいで体中の関節がバキバキと痛む。
「はうっ……いててて……」
「何長年の勤務で疲れたオジサンみたいなことしてるんですか」
「オジサンじゃなくてもな……長時間の作業は結構くるもんなんだよ……」
腰が痛い。おまけに肩も痛い。良く親父が仕事から帰ってくると「疲れた」だの「肩こった」など言っていて、まさかアニメじゃないしギャグだろ、と内心少しバカにしていたが、自分の身になってみて初めて同じことを痛感するようになった。疑ってごめん、親父。
「しょうがないプロデューサーさんですねえ……ちょっとそっち向いてください!」
「ん?」
幸子はいきなり体ごと横を向けと指示してきた。いきなりのことでよく分からなかったが、なんだか幸子が早くしろと急かしてくるので俺は指示にしたがう。
「フフーン!」
「ぬぐっ……!?」
突然幸子は俺の肩を揉み始めた。意外となかなかの力で情けない声が漏れる。
「なんだ、今回は幸子がやってくれるのか……」
「いつもカワイイボクのために頑張ってくれている、カワイイボクのプロデューサーさんにご褒美です!」
「んが〜っ……効きますなぁ……」
幸子の肩もみは手馴れており、程よく痛い感じでかなり気持ちが良い。幸子が力を入れる度に、俺は壊れた楽器の様に情けない声を漏らす。
「続けます?」
「それじゃあ、お言葉に甘えてもう少し頼んで良いか?」
「まだ続けろだなんて、プロデューサーさんは本当に贅沢ですね! 良いですよ?」
「そっちから続けるか聞いてきたんじゃ……」
と言った感じで、時間が来るまで幸子の肩もみはしばらく続いて行った。なんだか凄く気持ちが良くて、眠くなってくる。
しかし手馴れている辺り、幸子は家でもこういったことはやっているのだろうか。こうやって家族の肩をもんであげている幸子の姿を想像すると、少しほっこりする。
ああ、俺も将来は娘息子、はては孫ができたらこんな風に肩もみとかをやってもらいたい物だ……
最近は幸子という人物を見て、読み、覚える、そんな毎日です。頭の中に幸子という人格を完全再現することにより、また新たなカワイイボクは生まれる……。
そんなことばかりしてるから投稿が遅れてましたw
みんなも二次創作SSを気軽に書いてみよう!(勧誘)
そうすれば、色々なことも勉強できて、そのキャラがまた更に好きになるし、まさに完璧です!
次回、まあしばらくはまた日常回かな? (どうせまた何か起こる)
文章の改行や空白
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