アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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カワイイボクへのサプライズ2/3

特別短編

カワイイボクへのサプライズ2/3

 

 

俺は扉を開け調理室に入る。

部屋には普段あまり見慣れない、エプロン姿の志希とありす、乃々がそこにはいた。

 

「あ、プロデューサー来た」

 

「お疲れ様です、幸子さんのプロデューサーさん」

 

「あの〜……はい」

 

「おう、みんなこそ調理お疲れさん。で、ケーキはどんな感じなんだ?」

 

俺は調理台の上を見る。

するとそこにはかろうじてケーキとわかる代物が一つと、名状し難い何かが二つ置かれていた。

 

「……いや待て、この品々は一体何なんだ。どうしてこうなったのか説明を要求したい」

 

「あーそれ? 物体も何も全部ケーキだよ〜?」

 

俺は調理台の上に乗ったその志希曰くケーキを、近くに寄って更に注意深く見てみる。

 

「えーっとまあ早速説明すると〜、左からありすちゃんが作ったイチゴマシマシなストロベリーイチゴケーキ、あたしが作ったタバスコ+アルファな地獄の釜ケーキ、そしてもう一つあたしが作った研究は爆発だ! な錬成ケーキ」

 

まず左のストロベリーイチゴケーキ。

普通ケーキに使うイチゴと言ったら上に乗せる十個程度だと思うのだが、見た限り中にも沢山詰め込まれており、恐らく表面の色からして生クリームにもイチゴが混ぜられていると予想される。

 

「……一応聞くが、このケーキを作る許可を出したのは誰だ?」

 

「あたしだよーん。何かありすちゃんがイチゴが好きだからイチゴ多めにしたケーキ作りたいって言うからさ、多めにした。あたしも〜イチゴ好きだし?」

 

ちょっと、と言える量では明らかに無い。

俺が見た限りだとケーキよりイチゴの割合の方が明らかに多い。

別に食べられはするだろうが、くど過ぎて三口も食べたら飽きるだろう。

 

「プロデューサーさん……ダメでしょうか?」

 

「まあ、これは食べられなくはないだろうが……」

 

俺は次に、イチゴケーキからその隣にある真っ赤に染まったケーキの様な何かに目を向ける。

 

「それねー。あたし、タバスコとか好きだからそれを使って作ってみたんだけど」

 

「なんでそうなんだよ!! どんなに好きでも普通ケーキにタバスコぶっかける発想にはならないだろ!!」

 

「え〜、ダメ? まあダメなら仕方ないし、後でしきちゃん一人で食べます〜」

 

全く、天才の頭の中はどうなっているのか凡人の俺には理解に苦しむ。

天才の脳は一般人のそれとは明らかに違う点があると聞くが、どうやらそれは正解のようだ。

彼女がまさにそれを体現している。

 

「……まあ感想はこんな感じか。とりあえずタバスコは流石にダメだから、ストロベリーイチゴケーキはギリギリOKとして、流石にこれ一つだけだと人によってはくどいだろうから、今からもう一つ位まともなケーキを作って貰えないか?」

 

「あー……プロデューサー? ケーキならそこにもう一つあるじゃんアゼルバイジャン?」

 

「……いや、だからタバスコはダメだって」

 

「そうじゃなくて、タバスコケーキの横のヤツ」

 

俺は白を切る。

志希は必死にタバスコケーキの横にあるケーキの形をしていないドロドロの何かをケーキだと指さすが、俺はそんな物見えない。

 

「……俺にはまあギリギリケーキに見えるのも含めると、二つしかケーキは無いように見えるんだが?」

 

「美味しいよー? それ。見た目はアレだけど〜、ちゃんと材料は計算してケーキの味がする物を錬成したからね。多分成分的に合法の範囲内だと思う」

 

「……もう嫌だ、この子」

 

ぶっ飛んでる。

明らかに俺や俺達凡人には理解ができない域にだ。

これを志希以外の人間がケーキだと言ったのならば俺はプロデューサーを辞めても良い、そこまで言い切れる程その俺の前に置かれた物体は明らかにケーキでは無い邪気を放っていた。

 

「一応乃々ちゃんには実験で食べてもらったけどまあ今の所何もないし、美味しいから大丈夫だよ〜」

 

「いくらかな子の真似をしたってこれは……待て、もう乃々にこれを食わせたのか!?」

 

「うん」

 

俺は乃々の方に駆け寄る。

 

「乃々、体調の方とかに異常は無いか?」

 

「まあ……見た目はアレですけど……一応志希さんが言う通り味的には普通のケーキ……? でしたし。目をつぶってすぐに飲み込めば……」

 

「ほらほら〜、乃々ちゃんだって大丈夫って言ってるじゃん、プロデューサーも一口食べてみたら?」

 

と、志希は言っているが、その志希がケーキと言い張る物が置いてある辺りには、明らかにヤバそうなドクロや、びっくりマークが書かれた薬品の瓶やフラスコが置かれている。

 

「……いや、俺は遠慮しておく」

 

先程脳の造りが違うと言った、撤回しよう。そもそも彼女は俺と同じ種族では無い。

俺が人間なのだとしたら彼女はヒト科、一ノ瀬志希というまた違った生物なのかもしれない。

 

「さあ、どうする? プロデューサー」

 

「さあ、どうする? プロデューサ、じゃねーよ!! こんなの幸子に食わせられるか!!」

 

「にゃーっはっはっはー!!」

 

志希はまるでマッドサイエンティストか何かの様に笑っている。

背景が雷雨なら完璧な構図だと思うのだがな。

 

「この状況、どうするか……」

 

俺は時計を見て時刻を確認した。

針は昼の一時を指している。

 

「……今材料はどれ位残っている」

 

「えーっと……ここにある生地と冷蔵庫にある生地、イチゴがあとケーキ一つ分と生クリームの材料が少しかな〜。他にも色々あるから調べとく価値はあるかも。でもそれがどうしたの?」

 

「分かった、今から俺がこの調理班の指揮をとる」

 

「へっ? プロデューサーが?」

 

もう志希には任せておけん。

何かよからぬ事が起きる前に、俺が直々に調理場に出ることにした。

 

「別に良いけど……でも他の班の仕事とかは大丈夫なの〜?」

 

「他の班の方はもう大方仕事は終わっている。それにあの謎の物体で死者が出るよりはマシだ」

 

俺は上着を脱ぐ。

 

「とりあえず俺の分のエプロン等のセットはあるか?」

 

「あるよ〜。あたし達が来てるのも隣の部屋から持ってきた物だし」

 

「分かった。じゃあ取ってくるから少し待っていてくれ」

 

「あいあいさ〜」

 

 

 

俺は隣から調理用の衣服一色を持ってきて身につけた。

突然の俺の行動にありすや乃々は驚いた表情でこちらを見ている。

 

「にゃはは〜、プロデューサー意外と女子力高いねえ」

 

「まあ昔、俺の妹にこういうのを良く付き合わされたからな」

 

俺はエプロンの紐を絞める。

そして手を洗い調理室のホワイトボードの前に立つ。

 

「さて、ブリーフィングだ。これから『まとも』なケーキを作る。それに当たってここに居る三人には俺の指示に従い、役割を分担して作業に当たってほしい」

 

俺はホワイトボードにケーキの調理過程と担当、材料の配分等を書いていく。

 

「まず志希はその薬品の調合関連での技術を生かして、材料の正確な分量をやってもらいたい。無論タバスコと化学薬品は禁止だ」

 

「タバスコと薬品禁止は残念だけど、まあプロデューサー直々のご指名とあらば、志希ちゃん頑張っちゃうよ〜」

 

「ありすと乃々はトッピングやデコレーションを頼んだ。あ、イチゴは適量でな」

 

「わかりました。イチゴは適量ですね」

 

「あの〜……はい」

 

「宜しい、良い返事だ」

 

何だか俺の中で変なスイッチが入ってしまった様だ。

自分でもいつも以上にやる気になっているのがわかる。

 

「何かプロデューサーがプロデューサーみたいな事してる〜」

 

「言われてみると、これも『ケーキ』のプロデュースだな。確かにいつもよりプロデューサーらしいことをしているといえばそうか」

 

いつもは幸子のプロデュースをしているというより、漫才か何かをやっているような感じだからな。

ある意味、始めての真面目なプロデュースか。

 

「まあ、それじゃあケーキの作成を開始するぞ。各自、手を洗ったらホワイトボードに書かれている順序でやってくれ。なお分からないことがあったらすぐに俺に聞くように。くれぐれもまた錬成とかはやめてくれな?」

 

「はーい、しきちゃん了解しました〜」

 

 

 

という訳で俺の指揮の元ケーキの制作は開始された。

始まってみると三人共真面目な表情をして取り組んでおり、今回は流石にケーキならざるものはできないだろうと思った。

ある意味安心だな。

 

 

と、作業開始から暫く経った頃か、俺がケーキに生クリームを塗っていると志希が話しかけてきた。

 

「てかさー、プロデューサー」

 

「なんだ? 志希」

 

「プロデューサーは、なんでわざわざそこまでして幸子ちゃんの為にケーキを作ってあげるの? まー、別にあたし達は手伝うのは構わないんだけど、ちょっと気になったってカンジ」

 

「そうだな……俺がケーキの制作にわざわざ本気になる理由か」

 

俺は暫く考えた後答える。

 

「自分のアイドルの誕生日にうまいケーキの一つも食わしてあげられないで、担当プロデューサーなどとは言えないだろ?」

 

「自分のアイドルの誕生日にうまいケーキの一つも……にゃはーん、なるほどね〜」

 

「それに皆にやらせっきりで自分は見ているだけってのが嫌いな性でね、要するにでしゃばりなんだよ俺は」

 

実際今回はみんなのおんぶに抱っこになってしまっている点が多かったからな、部屋の飾り付けと言いケーキの制作といい。

どちらかと言うとじっとしている事ができない人間な俺にとってはそんな状況が耐えられ無いのだ。

 

「どうだ、疑問は晴れたか? 科学者の卵さん」

 

「今はあたしはもうアイドル。まあプロデューサーがそれだけ幸子ちゃんの為に本気だってのは分かった。そこまで気にかけてもらえて、ちょっぴり幸子ちゃんが羨ましく感じたけど」

 

「何だ? じゃあ今度俺の担当になって幸子とユニットでも組むか?」

 

「遠慮しておくー。プロデューサー色々頑固で潔癖そうだから失踪できなさそうだし」

 

「そうか。まあ俺も担当になるか? なんてふざけて聞いてみたが実際、幸子だけで手一杯だしな。幸子に加えて志希の担当とかコピーロボットでも欲しくなるよ」

 

「それなら今度晶葉博士にでも頼んで見る? 多分あの子なら作れそう」

 

「そうか、じゃあ頼んでおこうかな」

 

 

 

さて、そんな雑談も終わりそれから黙々と制作は続けられていった。

志希も流石に今回は真面目に作業に取り組んでおり、恐らくもうケーキならざるものができることも無いだろう。

 

 

 

そして制作開始から二時間と少し、ついにケーキは完成した。

 

「素晴らしい、最高の成果じゃないか」

 

「perfect! この比率、この円、この完璧な見た目! プロデューサーが言う通りまさに最高のケーキだね〜!」

 

志希は完成を喜び飛んだり跳ねたりしている。

他のふたりも満足げな顔をしており、まさに完璧なケーキが出来上がったと俺も確信する。

 

「あれ、この上のトッピングは誰が作ったんだ?」

 

と、ケーキの上に乗っかっているチョコを見ると『輿水幸子ちゃん、15歳の誕生日おめでとう!!』と書かれており、更にその周りには小さな可愛い飾り付けがしてある。

 

「その……もりくぼですけど……」

 

乃々が小さい声で答える。

 

「普段幸子さんには色々お世話になっているというか……迷惑をかけていますから……あ、一応全部食べられ……ます」

 

乃々は俺の顔を見て心配そうに反応を待っている。

 

「ありがとうな、乃々」

 

「えっ……! あっ……もりくぼはやれって言われたことやっただけですから」

 

乃々は突然褒められたことに驚き、声を上げ俯いてしまった。

よく見ると俯いている顔が真っ赤だ。

 

「乃々ちゃん照れちゃって可愛い〜」

 

「あうぅ……」

 

こうしてケーキを作り終えた俺達は、とりあえず一旦調理器具を片付けた。

そして全員で調理室のテーブルを囲むようにして座る。

 

「とりあえずみんな長時間お疲れ様。みんな頑張ってくれたしとりあえず試食も込めて、あのケーキの小さい奴をみんなの分作っておいたんだが……みんな食べるか?」

 

「へぇ気が利くねえ、プロデューサー。それじゃあ最後にみんなでそれでも食べる?」

 

「良いですね、私も食べたいです」

 

「えーっと……じゃあ食べます」

 

俺は冷蔵庫の中から四つの小さなショートケーキを取り出し、テーブルに並べていく。

 

「よし、それじゃあ頂きます」

 

「いただきまーす!」

 

「頂きます」

 

「い……いただき……ます」

 

俺達は早速ケーキを口に入れる。

途端に口の中に広がる甘さに皆声を上げる。

 

「おいしーい!! フレーバーも最高で、甘さも絶妙。これケーキ屋さんのケーキと同じか、それ以上に美味しいかも!」

 

「確かに……美味しいですね。これなら幸子さんにも胸を張って渡せそうです」

 

「……おいしい」

 

乃々が珍しく見せた笑顔に俺も少しほっこりする。

どうやら、ケーキの制作は大成功の様だな。

それに俺も自分で食べて、我ながら最高のデキだと思った。

 

「まさに、俺達四人が化学変化を起こして生まれた奇跡の品だな」

 

「ちょっとちょっとプロデューサー、あたしのセリフ取らないでよ〜!」

 

テーブルを囲んだ四人の笑い声が調理室に響き渡る。

まあ、また今度違った機会の時にこういったことをやりたいものだな。

 

勿論、その時は幸子も入れてな。

 

 

 

「さて、俺の方はやることも終わったし一旦部屋に帰るかな。夜に向けて英気も養って起きたいし」

 

「りょうかーい。じゃ、また後で〜」

 

「お疲れ様です、プロデューサーさん」

 

「このあとも……えーっと……頑張ってください」

 

「ああ。じゃあ失礼するよ」

 

 

 

こうして俺は調理室を後にして、一旦事務所に戻ることにした。

 

と、部屋に帰る途中美嘉から電話がかかってきた。

個人的に連絡がかかってくるということはやはり緊急の要件か何かなのだろうか。

 

「あーもしもし? どうした、何かあったか?」

 

『それがさ、ちょいと問題が出てきたっていうかさ』

 

「また問題か……?」

 

『あれ、またってことはもしかして他の班でも何かあったの?』

 

「……調理班の方でちょっとな。それ関係で色々手伝っていた。で、他の班でもってことはそっちでも何かあったのか?」

 

『いや、まあちょっと企画班の方でとある二人の意見が割れて、とりあえず今ので察してくれたと思うけどアスタリスクがまた解散した』

 

「ああ良かった、それ位なら予定を変えるほどじゃないし大丈夫だろ。数十分位放っておけばどうせまた再結成されるだろうから」

 

普通の人なら全く意味がわからない話だろう。

何事もなくさらっと解散だの再結成だの、正直俺もよくわからん。

 

『オーケー、分かった。あとそうそう、飛鳥ちゃんから伝言があるんだけど……』

 

「何と言っていた?」

 

『幸子のエスコートは任せたまえ。彼女は無事、予定時間に会場に送り届ける、パーティの準備は万全か? だって』

 

「あいつらしいな……まあわかった。じゃあ俺からは幸子のエスコート、頼んだって伝えておいてくれ」

 

『オーケー! 了解。じゃあとりあえず後少ししたらアタシ達は仕事の方に行くから、幸子ちゃんの方は任せてね〜』

 

「ああ、頼んだ」

 

 

 

その後、何も問題は起きずに誕生日の準備は順調に進んだ。

とりあえず誕生日会用のケーキも無事に完成したし、部屋の飾り付けの方も終わったし、主要なことは大方終わった。

アスタリスクの方も無事再結成された様で俺としてもホッとした面もある。

 

さて、準備は整ったし後は幸子が仕事から帰ってくるのを待つだけだ。

時刻は三時四十五分を回り予定時刻がいよいよそこまで迫って来る。

 

早くサプライズに幸子が驚く姿を見てみたいものだな。




補足

志希は今後もメインメンバーとして出てくる。

ありすちゃんが少しイチゴキチ寄り

プロデューサーは料理上手

タバスコケーキ実際に作った人居ると聞いたことが……


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