アイドルマスターシンデレラガールズ 〜自称天使の存在証明〜   作:ドラソードP

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お久しぶりです皆さん。
待っていてくれた方も、そうでもない方も、早くしろと急かしてくれた方も、新しい幸子です。

※10月25日修正
ベンチなんかねーよちゃんとしろ作者
※2019年12月17日、この回まで再修正。
待たせて申し訳ない


第43話 カワイイボクと夕暮れ

第43話

カワイイボクと夕暮れ

 

 

「はい! そこで止まって締めのポーズ!!」

「フフーン! 完璧ですねえ!」

 俺達は来週のライブに向けてトレーナーさん監修の元、レッスンルームで中間試験を行っている。今日の中間試験の成果次第ではライブに出られない、ということもありレッスン場にはかつてない緊張が広がっていた。

「そうだな、なかなか良いんじゃないか? 俺の方からは特に問題は見当たらなかったが」

「当然の結果です! むしろプロデューサーさんだけは、例え出来が悪くても良いって言ってください!」

「それじゃあ試験の意味が無いだろう……」

 緊張が広がっていた、ああ。俺とトレーナーさんの間『だけ』にな。

 幸子は大事な試験だというのに結局いつも通りの調子で、緊張でガッチガチ、とかミス連発、とかそういうことは全くなかった。そして意外にもあのずっこけも無くなっており、見た所大方の問題は解決していた。

「さあどうでしたか!? トレーナーさん!」

「……まあ、及第点と言ったところか」

「及第点って……そんなー!!」

「おいおい、普通喜ぶ所だぞ? 要するに一応は合格って事なんだから」

 しかし幸子は不満そうだ。まるで「プロデューサーさんだけは完璧って言ってください!」とでも言いたげにじっと俺の方を見てくる。

「一応ってなんですか!! もっと何事もないようにさらっと試験を合格しなきゃ、まるでボクらしくないじゃないですか!」

「ボクらしいって……いや、何でもない」

 まあ、常に自分が一番だと思っている幸子だから、彼女らしいと言えばこれも彼女らしいのか。それにある意味、この向上心や妥協できない性格自体は別に悪いことでは無いしな。

「トレーナーさん、とりあえず幸子はライブに出せるということで良いんですか?」

「はい、あとは彼女の当日の努力次第と思っていただいて大丈夫かと」

 俺は幸子の方に歩いていく。そして、幸子の頭を撫でる。

「……良く頑張ったな幸子。結構こっちの仕事が色々忙しくて、レッスンの方にはあまり来てあげられなかったが、それでもちゃんと一人で頑張っていたんだな」

「ちょっとプロデューサーさん! だからボクは犬じゃないですって……まあもっと撫でてもくれても良いですけど!」

「悪い悪い、つい癖でな」

 思えば先週、初めてレッスンを見に来た時はまだダンスどころか、基礎練習のステップですら苦戦していた幸子だった。だがあれから一週間、俺が見ない間にアイドルとしての幸子は確実に成長していた。連日ヘトヘトになりながらも、必死に頑張っていた彼女の努力は確実に報われている。

 そんな頑張っていた幸子のことを考えていたらつい、撫でずにはいられなかった。本当だったら、髪の毛がぐしゃぐしゃになるくらいにまで撫で回して、いっそ抱きしめて泣きながら褒めてあげたいくらいなんだが、トレーナーさんが見ている建前そんなことはできない。だが、初めて持った担当アイドルである彼女の成長がそれくらい嬉しくて、泣きそうなのは事実だ。

「とりあえず、ライブ当日までの数少ない日数は細かい点の修正や、ダンスと歌の完成度を更に高めていくのに費やす予定だ。幸い明日、明後日がまるっきりレッスンに費やせそうだからな! みっちり絞ってやるから覚悟しておけよ? 輿水!」

「な、なんだか色々ハードになりそうですねぇ……?」

「……ま、まあ頑張れ! 俺もしっかりと応援してやるからさ! 事務所から!」

 さて、こうして幸子の中間試験が終わり、俺達は部屋に戻って来た。なんだかんだレッスンをしたり、中間試験をしたりしていたら時間もかなり経っていて、そろそろ今日の勤務もまた終わろうとしていた。

 大量の書類の整理や来週のライブが近づいてドタバタしているせいか、なんだか気分的に落ち着かなくて時間が経つのが早い。少しは心の休み場所が欲しい物だ。

「しかし、俺が知らない間に本当に急成長したな幸子。先週の時とはまるで大違いじゃないか」

「勿論ですよ! ボクはアイドルになるために産まれたような、完全無欠で、数百億光年に一度の、神様から授かった天性の才能の持ち主ですから!」

「はいはい光年は距離です本当にありがとうございました。と、それは置いといて、実際お前には本当に何か凄い才能がありそうで怖いんだよな……」

「いや、ありそうなんじゃなくてあるんですってば!」

 実際、ビジュアル面、歌、ダンス、鋼の心臓、正直アイドルとしての才能は真面目に考えてみると、原石としては一定以上の強度はあるのかもしれない。

 昔、俺がこの業界に入るきっかけになった、例の伝説のプロデューサーとアイドル。その二人ですら、その辺を一年以上かけて苦労しながら徐々に成長していった。そうドキュメンタリーでは語っていた。だからこそ、幸子のこの一週間での成長を見ると、なにかしらの輝く素質がありそうだと思ってしまう。

 幸子が極端な早熟型なのか、本当にアイドルとしての天性の才能があったのか、もしくは別の何かがあるのか、詳しいことは俺にも分からない。だがもしかしたら、幸子には本人も自覚していない特別な何かがあるのかもしれない。今まさに、それが目覚めようとしてきているというのだろうか。

「とりあえず、ボクは中間試験に合格したんです! ご褒美に、カワイイボクの言うことを一つだけ聞いてくれても構いませんよねえ?」

「ご褒美? でも言って中間試験を突破しただけだぞ? まだ本番は来週だし、俺の方も書類の整理がまだ少しだけ残っているし……」

「つべこべ言っても無駄です! 今も昔もこれからも、プロデューサーさんにボクへの拒否権はありませんよ!」

「へいへい……わかったわかった。で、何がお望みなんです? 幸子お嬢様?」

 ここで俺は、幸子が理由があって俺に何かをして欲しいのか、という事に気が付いた。幸子がこうやって何かを強く要望してくる時は、大抵何か意図があるからだ。

 幸子は積極的で素直な性格だが、自分の意見を伝えるのが変な所で不器用なことを知っている。特に、俺が関わってくることとなるとな。

「別に、長時間付き合えとは言いません。ただ、少しだけボクととある場所に行ってほしいというか……」

「まあ、今日の予定も仕事も全部終わってるし、別に構わないが……しかし行くってどこまで行くんだ? 最近は色々と疲れてるから、できれば近場で済ましてたいんだが」

「大丈夫です! 本当にここからすぐの場所なので!」

 俺は幸子に言われるがまま、部屋を連れ出される。そして幸子が言うそのどこかとやらへと連れて行かれた。とは言っても本当にそこまで遠くではなく、346プロの中を少し歩いた程度だ。

 という訳でこうして迷宮のように広い社内を数分程歩いたり、エレベーターに乗ったり色々して連れてこられた場所、そこは俺にとって以外な場所だった。

「……なんだ、とある場所って346プロの噴水広場じゃないか」

 噴水広場。辺りには花畑が広がっており、中心には大きな噴水がある。レッスンルームなどが完備されている346プロ別館の屋上に有るのだが、普段用事なども特に無く、あまり来たことがない場所だ。しかし、ここで幸子は一体何をしようというのだろうか。

「フフーン! とりあえずあそこの噴水で座って待っていましょう!」

 幸子は俺の手を引っ張る。まあ書類の整理等もある程度終わっているし、しばらくここでリフレッシュしていくのもありか。そう俺は考えた。

「で、何が始まるっていうんです? まさか連れてきただけで終わりって訳でもあるまい」

「まあまあ、そんなに焦らないでくださいプロデューサーさん! とりあえずカワイイボクとの、淡い二人の時間を満喫しながら待っていてください!」

「それを言ったらいつも二人だろう」

「そ、それもそうですけど……で、でも雰囲気が全然違うじゃないですか! 雰囲気、大事ですよ!」

 幸子は意地でも俺にここに居て貰いたい様だ。別に、俺は最初から幸子にある程度付き合うつもりで来ていたので早々に帰るつもりは無かったのだが、そんな必死な姿もカワイらしく幸子らしいから、あえて放っておく。好き放題やられているし、たまには仕返しだ。

「さ、さて、なんだか涼しくなってきましたねえ……?」

「ああ、そうだな」

 幸子は何かを言うのを躊躇うかの様に何かをもぞもぞしている。

「で、そのー……今日プロデューサーさんを呼び出した理由なんですけど……」

「なんだ? 何か相談でもあるのか?」

「違います! えーっと、だから……」

「別に、何か言いづらいことならば、そんな無理に言わなくても良いぞ? 俺はプロデューサーだからな。ちゃんと担当アイドルのプライバシーや意思は尊重させてもらうよ」

「ま、まあそこまでの大事ではないですし、大丈夫です!」

 そう言うと幸子は俺の方に少しだけ席を詰めてくる。そして一呼吸入れると、一言だけ幸子は発した。

 

 

「今日までありがとうございました、プロデューサーさん!」

 

 

 俺は彼女の言わんとしていることを、伝えようとしといることを察し、音速で立ち上がる。その突然の言葉を言い放った幸子に対して驚き、反射的に体が動いてしまったのだ。

 

 

「⋯⋯ああ、そうか」

 

 

分かっていた。こうなることは、最初から。そう簡単に全てが上手くいくはずがないと。上手く行った様に感じていたのは、全て自分の気の所為だったんじゃないかと。

「……ゴメンな、俺なんかがお前の……君のプロデューサーになったりして。やっぱり俺のプロデュースが、ダメだったのかッ……!!」

呼び出した理由って、つまりそういうことだよな。確かにあの空気じゃ言いづらいよな、それにいつもの場所では。そう考えるのに秒は要らなかった。幸子に対しての今までの塩対応、プロデューサーとしての実力不足、思い当たる節なら幾らでもある。それでも、それでも幸子は無理をしてでも、俺に着いてきてくれていたんだろう。だが、いよいよ彼女にとっての『限界』が訪れた。

しかし幸子は、そんな俺の様子を見て驚いている様子だった。

「⋯⋯あれ⋯⋯? あっ……ちがっ、違います! プロデューサーさん!! そういう意味じゃないんです!!」

「……そういう意味じゃないとは?」

そういうと幸子は、俺にとりあえず座るように促してくる。

「つまりですね、ボクがプロデューサーさんに伝えたかったことは⋯⋯」

そう言うと幸子は、俺の反応を見て気まずそうに説明を始めた。

「⋯⋯感謝の言葉だあ?」

急転直下。俺一人で勝手に盛り上がった思いと言葉は、もれなく真っ逆さまに墜落した。そして、ギャグ漫画のような大爆発を決め、空にはキノコ型の煙が傘を開く。

「……今日もプロデューサーさんは、朝からボクの為に必死に頑張ってくれていたじゃないですか」

我に返った俺は次に、幸子の口から出てきた言葉に驚き、聞き返した。そして別方向から再び遅い来る驚愕と驚愕が正面衝突したかのような衝撃。幸子の口から感謝? それもわざわざこんな場所にまで呼び出して改まって? 俺は悪い夢でも見てるんじゃないか?

「ま、まあ……そりゃあ幸子のプロデューサーだから当たり前だろう」

「そうだとしても、そういったプロデューサーさんによる毎日の努力と、カワイイボクの超異次元的アイドル的素質が合わさった結果、爆発的なエネルギーが生まれ、今日の中間試験突破に繋がったんだとボクは思うんです」

 幸子は珍しく真面目な表情で話を続ける。考えてみれば幸子自身の本音、みたいなものをこうして面と向かって聞くのは、何気にこれが初めてかもしれない。

「別に、ボクだって日頃からちゃんと感謝はしているんですよ? プロデューサーさんが居なかったら、流石のボクでもこうしてテンポよく、アイドルとしての道を進めていたとは思えませんし」

「……面と向かってそこまで言われると、恥ずかしいというか……なんだか照れるな。まあ、ご期待に応えられているようなら、安心したよ」

「ともかくです! ボクだってちゃんと……プロデューサーさんに感謝しているんですからね! その事はちゃんと覚えていてください! 伝えたかったのはそれだけです!」

「ああ、勿論だ」

 日が沈み始める。空がだんだんと夕暮れの色へと染まっていく。あの日、幸子と出会った時の上がっていた太陽が、一区切りを経て沈んでいくかの様に。

「しかし良かった。こんなに改まって今までありがとうございました、なんて言われたらてっきりアイドルを辞めるとでも言われるのかと⋯⋯」

「そんな訳ないじゃないですか。一体何をどうしたらそんな考えに飛躍するんですか」

「だってあの自分のことしか考えてなくて他人への感謝なんてほとんど口にしない宇宙一ナルシストな自称カワイイ輿水幸子が俺をわざわざこんな空気の良い場所に呼び出して感謝の言葉を満面の笑みで言ってきたんだぞ!? ノベルゲーやギャルゲーなら一枚絵が表示されて永遠のお別れになっても文句言えないからな!?」

「今とんでもない早口でだいぶ罵倒されましたよねボク!?」

俺は息を切らしながら言葉を続ける。

「⋯⋯冗談はさておき、そういうことなら良かったよ幸子。ごめんな、いきなり取り乱したりして」

「いえ、ボクの方も少し演出に配慮が足りなかったのかもしれません」

そう言うと幸子は申し訳なさそうに言葉を続ける。

「別に、驚かそうとか考えていた訳ではありません。今日の試験の前にこれを思いついて、中間試験に合格したら少しでもプロデューサーさんに感謝の言葉を伝えたいと思っただけなので」

「まさか、俺も幸子からこんな風に感謝の言葉を言われるとは思っていなかったからな。さっきは冗談で色々言ったけど、本当は俺が何か幸子に感謝されるようなことしたっけなって思ってな」

「はい、知らず知らずのうちに色々と、ですね!」

まったく、不器用にも程がある。とんだ空回りだったよ。

「⋯⋯あとプロデューサーさん、また勘違いされるのもアレですから、丁度この機会に言っておきますね」

「なんだ?」

「ボクがアイドルを辞めることは多分無いですから安心してください! カワイイボクのファンが、一人でも居続けてくれる限りは!」

「⋯⋯ということは、しばらくは意地でもアイドルを辞められなさそうだな」

 要するに、幸子は俺がプロデューサーをしてくれる限りは、と言いたいのだろう。分かっているが、俺はあえてその事に対して何も言わずに幸子の言葉を聞き続ける。

「ボク達のアイドル活動は、まだ始まったばかりですからねっ!」

 空はあっという間に一面のオレンジに染まる。気が付くと青空は消え、俺達の周りは夕暮れに包まれていた。その夕日に照らされ、辺りの噴水や花が、先程以上に鮮やかに映っていく。

「それにしてもなんだか、ここの夕日の景色は偉く綺麗だな」

「だって、今日プロデューサーさんをここに呼び出したもう一つの理由ですから!」

「……なるほどな。つまり、これは普段仕事を頑張っている俺への、幸子お嬢様からのささやかなプレゼントってわけか」

「ちょっとプロデューサーさん! ボクからプレゼントを貰えて当然みたいに言うのはやめてください! そもそもボクから何かを貰えるということだけでも、非常に光栄なことなんですから!」

 幸子は文句を言うものの、プレゼントであることの否定はしない。まったく素直なのか、素直じゃないんだか。

「ともかく、これはカワイイボクからのプレゼントなんです! 喜んでくださいね!」

「ああ、仕事に疲れていた俺にはちょうど良い気分転換になったよ。ありがとうな、幸子」

 そしてしばらくの沈黙が続く。偶然なのか、中庭には俺達以外誰も居なかった。俺達はひっそりと噴水の縁に座り、夕日を眺める。

「なあ、幸子」

「なんです? プロデューサーさん」

「これから……恐らく、ライブが終われば仕事とか、ライブとか、とにかく色々急激に忙しくなってなっていくかもしれない。お互いに色々と大変で辛いかもしれんが、そこが踏ん張りどころだ」

「そんなこと、百も承知です! むしろライブをやる前から忙しくなるなんて、そこまで言い切っちゃって良いんです?」

「なーに言ってんだ」

 俺は再び立ち上がる。

「俺達二人、有能プロデューサーと超絶カワイイのコンビに、敵は無し! だろ?」

「敵って一体誰なんですか……ボク達、行くのはライブ会場であって、戦場に行くんじゃないんですからね? プロデューサーさん……」

 幸子は呆れた様に言いながらも、すぐにこちらを向き笑顔になる。

「まあ、プロデューサーさんが言いたいことは大体伝わりましたけど! とりあえずライブまではよろしくお願いしますね!」

「言われなくてもだ」

 気が付くと早いもので辺りは暗くなり始めており、日は沈んでいた。

 

 幸子の初ライブまで、あと四日……




いや〜……激動の一週間弱だった……
就職、文化祭の準備、内容のスランプ、そんな様々な事件が合わさりこんなに遅れてしまいました。

さて皆さんお久しぶりです!
あの日、4thライブに幸子が来たと聞いた瞬間から私は必死に書いていました(というかモチベーションがカンストしましたw) 自分は本物は見れなかったのですが、それでも幸子が、竹達さんが来てくれたというだけで涙ものでした。

なんか最近アイマス関連で泣いてばっかだな俺……

と言うわけで次回も申し訳ありませんが、不定期です。
ただ、この話は完結させると自分自身と幸子に約束してしまったので絶対に完結させます。約束です。

次回、未定!(というか考え中ですw)

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